パスクアルと会った翌日。
朝起きて準備をし終えた後、お兄様が突撃してきて話し合いを再度行った。
昨日の会った時のも踏まえて言うと、ちゃんと、い……、イチャイチャする許可はもらえた。
……あれを貰えたって言っていいのか分かんないけど。
お兄様がすんごいジッタンバッタンして暴れ散らかした末だったからなぁ……。
別の時にお兄様と過ごすとは決めたものの、それだけじゃ足りなさそうあった。
お兄様はおれによる解決が長丁場になりそうだったら、お兄様の方で条件に合致する女性をそれとなく会わせると言ってきた。
ちんたらしてたらキリがないのは分かるので、その辺はしょうがないと了承するしかない。
おれが長引く前にちゃんと解決すればいい話だから……! うう。
一応言っておくと、ニーヒスターとの契約を強引に押し進めないのは、下手に争い事……それこそ戦争とかになるのを避けたいからだ。
ニーヒスターは割と過激派で有名なんだよね。
元々帝国軍と解放軍の戦争があったばっかりで、もう一度戦争しろって言われても士気は上がりにくいし、兵力も回復しきっていない。
そりゃ攻めてくるようなことがあったら対応するけど、よろしくないのは当たり前だ。
だからこそあんまり強引に契約を推し進めたくないんだとか。
まず、……まずだ!
とにかくパスクアルにはおれを狙っても無駄だと分からせる!
そっ……、そ、それで、で、でっ、おっ、おれとヴァルムントくんが強固な絆があるってのを見せつける!
人によって諦める条件が違うから正直難しい。
でもだからといって何もしないのは違うから、とにかくやるしかない……!
い、イチャイチャの実行日は明後日になった。
おれの都合はどうとでもなるが、ヴァルムントとパスクアルの都合を考えてそうなったのだ。
なので今日は午前中に本の解読と午後に症状研究だけになっている。
空いている時間は大人しくするべく勉強や、パスクアルをどうするべきか考える時間にでも当てておく。
そうして本の解読を終えて部屋に戻り、時間を潰してイザベラを待っていると先にジネーヴラと体調不良から復帰したルチェッテが訪ねてきた。
「カテリーネさん、お体は大丈夫ですか?」
「わたくしは大丈夫です、変わりございません。ルチェッテさんこそお身体は大丈夫ですか?」
「はいっ! この通りです!」
にっこり笑いながら両手で拳を作り元気だと主張してくる。可愛いなぁ~。
「絶対にカテリーネさんの力になりますから! その為にも、もっともっとも~っと観察に勉強を頑張ります!」
「はい、頼りにしております」
ああ~、本当に癒しだ……。
最近のおれに足りなかったのはこれか? これだな。
ルチェッテとユッタに挟まれてぇ~。
なんてしょうもないことを考えながらも、みんなでソファに座ってイザベラが来るのを待った。
少ししてイザベラの来訪を知らせるノック音がすると、ルチェッテとジネーヴラは教わる立場であるからと立ち上がりおれの後ろへと控えていく。
おれもイザベラを迎える為に立ち上がり、入って来たイザベラに軽く礼をする。
「イザベラ様、本日もよろしくお願いします。ルチェッテさん、ご挨拶をお願いします」
「ル、ルチェッテです! よろしくお願いします」
「……はいはい」
イザベラはルチェッテに不審げな目をやりつつ、めんどくさそうな返事をしてきた。
そんなイザベラの返しにルチェッテは少し動揺したものの、どうにか抑えてくれたみたいだ。
……結構ルチェッテって直情型だし、イザベラとルチェッテの相性悪そうなんだよな~。
でもおれの症状を改善するのに相性がどうこう言っていられるほど、のんびりしてはいられない。
なのでルチェッテにはイザベラがどういう人なのか伝え、なるべく喧嘩はしないようにって言ってある。
言ってはあるけどもなぁ……。心配だ。
「じゃあ手と足を見るから、出してください」
「はい」
侍女さんやルチェッテにも手伝われながら手袋を外し足を露出していく。
一応言っておくとジネーヴラも手伝ってこようとしたが、不器用なので外された。
しょぼーんとしているのは可哀そうだったけれども、こういうのを頑張るよりも魔術の方面で頑張ってくれるのが一番だからさ……。そんな気にするなって。
症状の変化はいつ起こるか分からないものなので、基本的な調査は手でやるが足も毎回チェックが入る。
紫色の範囲は相変わらずであることを確認してから、手での調査が始まった。
イザベラは目を細めながら、おれの手を持ち時折手を翳したりしながらじっくりと観察をしていく。
ひたすら無言の空間が続く中で、ふとルチェッテが声を上げた。
「あの……、わたしもジネ……じゃなくて、ジネーヴラと一緒にやってもいいですか? 勿論、カテリーネ様とイザベラ様がよければの話なんですけど……!」
「る、ルチェ!? へ、あ、えっ、え……」
突然巻き込まれたジネーヴラが動揺してワタワタしている。
一方のイザベラはいきなりの申し出に気を更に悪くしたみたいで、ギロリとルチェッテへ視線を向けた。
「何? 邪魔しないでくれる? 見るだけですぐに出来るだなんて思わないで。貴方達とは方法が違うのよ」
「なっ、なら、教えてくれませんか。同時にできた方が早く原因が分かると思うんです!」
「邪魔だって言ってるのが分からないの? 同時にやることでどんな影響がでるかも分からないのに、勝手なことを言わないでくれる?」
「それは……、そう、ですね……」
食い下がりはしたものの、イザベラからの指摘でルチェッテは唇を噛みながら静かに一歩下がってしまった。
ジネーヴラはルチェッテとイザベラの2人を交互に見てひたすら困惑をしている。
や、やめてくれ〜! そんな刺々しい言葉でルチェッテを怒らないでくれ〜!!
おれの為に頑張ろうとしてくれているだけなんだから!
胃をキリキリとさせつつもルチェッテを慰めようと思ったら、ジネーヴラが前に出てきてイザベラが掴んでいないおれの手を持ち上げてきた。
「だっ、だだだだ大丈夫! 大丈夫だ、よ、ルチェ! あ、あたしはできるから……!」
「ちょっとやめなさ……!」
イザベラの静止もきかず、おれが手を引っ込める暇もなく、ジネーヴラは瞬時に手から緑の光を放つ。
『診て』いるのか、ジネーヴラが目を細めて左右に視線を動かしている。
今なら引っ込められるかもしれないが、解析途中で引っ込めて変なことになる方が怖く感じてそのままにした。
イザベラならその辺分かるかなと顔を向けると、
当人は絶句していてわなわなと口を震わせている。
こ、これはアカンやつだぁ……!!
そうして数十秒の長くも短い時間が流れた後、フッとジネーヴラの手から緑の光が消えたと思ったら、ジネーヴラが盛大に後ろへと倒れていく。
「ジネーヴラさん!?」
「ジネっ!!」
慌ててルチェッテが受け止めて床にごっつんこは免れたものの、ジネーヴラは見事に目を回しており「あう、あ……」と言葉になっていない言葉を口から出していた。
「だから言ってるのよ! バカじゃないの!!」
イザベラからの罵倒が飛ぶ中、ジネーヴラを医務室へ運ぶべく部屋の中が慌ただしくなっていくのであった。