ジネーヴラとルチェッテが部屋から立ち去り、ヘアスティックをあげて崩れた髪形を侍女さん達に直してもらうことになった。申し訳ね〜。
おれが椅子に座ると、侍女さん達はヘアスティック以外にもつけていた物を外して髪の毛をとかしていく。
人数がいすぎても邪魔なので、ユッタはおれの話し相手をしてもらった。
「カテリーネ様、本当にありがとうございます! ルチェと一緒にジネへ色々試しては失敗してたんですよ! 一回でジネを前向きにできるだなんて、とってもとってもすごいです! 流石カテリーネ様!」
キラキラとした目でおれを見つめてくるユッタが眩しくて眩しくて……。
やめろやめろ、おれを褒め称えるな!
単に偉い人から言われて感銘を受けた〜みたいなのだからアレ!
笑顔を作って尊敬の眼差しを受け流しながら、ただただ侍女さん達の支度が終わるのを待った。
支度が終わり次第に移動して本の解読を速攻終わらせ、お昼ご飯をしっかりと咀嚼して味わった。
この後にね……、お腹痛くならないようにね。
緊張と羞恥心でお腹壊したりしたら洒落にならなすぎるから!
じ、自分からやるって言ったよ! 言ったが! う、ううう。
時間が経つのが遅いんだか早いんだか分からなくなってきたわ……。
キリキリする胃の痛みを我慢しながら、護衛にリージーさんを引き連れて予定している場所へと移動していく。
パスクアルが会議を終えて退出する時に必ず通る廊下に面した中庭だ。
おれはそこに待機をしてパスクアルが通りかかるのを待つ。
なおヴァルムントくんはちょっと遅れて到着予定となっている。
なるべく早くくるようにするとは言っていたが、防衛関連のことで遠くの人とかも集めての会議だから、あんまり巻かないようにとは言っておいた。
誰しも都合ってものがあるからね。
お、おれが頑張ればいいだけだから……、うん。
村から戻って以降は中庭に行っていなかったけど、それ以前はちょくちょく行っていたので中庭にいても不自然ではないだろう。
久々の中庭、いいな~。この中庭ってほどほどに人が通るからなんか安心するんだよな~。
なんつうか、人の営みってのが目に見えるからさ。声もかけてもらえるし。
今だってよく見かけていたひとから挨拶をもらった。元気そうでなりより。
んで、い、イチャイチャをどんな風にするかの作戦は真面目には考えていない。
なんでかって、色んな人から「そのまま過ごしていれば問題ないですよ」と言われたのだ。
ま……、まあ、そう言われるのは、……分かる。
最近のヴァルムントくんはストレートに強いムーブを繰り出してくる。
おれがどうこうするまでもない。勝負しかけても結局おれが負けてるし!
これ以上どう反撃しろってんだ!? どうせおれが負けるぞ!?
嘆きながらも静かにベンチへと座って時間が経つのを待つ。
早くパスクアル来てくれ〜。……い、いやまだ来なくても……。
そんな風にうだうだしていた時にようやくパスクアルが会議を終えて通りかかってきた。
パスクアルは中庭におれがいるのを見て、すぐに中庭へと足を向け歩いて近寄ってくる。
「あぁ、カテリーネ様! 再びお会いすることができて誠に光栄です! オレは心の底から貴女を想う日々が続いておりました……。貴女の輝かしい美しさはオレの全てを照らし、忘れるなかれと焦がし尽くしたのです! ああ、なんて罪なお方だ……」
初っ端から頭を抱えそうになったのをどうにか抑えた。
やらなかったおれをどうか褒めちぎってほしい。顔もピクピクしかけてる。
ひでー言葉だと思いながら、口から言葉を捻り出していく。
「パスクアル様、こんにちは。わたくしはそこまで大それた人物ではございませんが、そう仰っていただけるのは嬉しいです。ありがとうございます」
「いいえ、全ての国へカテリーネ様について知らせを飛ばさなければ気が済まないほどです! ああ、カテリーネ様を知らない人物がいるだなんて信じがたいことです……」
どんなに文化が発展しても知らない人がいるのは当たり前なんだから無理だぞ……。
思わず関係ないことを考えながら、とにかくヴァルムントくんがくるまで会話を引き伸ばしに引き伸ばしを精一杯頑張っていく。
「それでしたら、我が国のことを知っていただける方が増えますね。……パスクアル様はこの後、何をご予定されているのでしょうか?」
「オレは少し間を開けた後に訓練場の見学へ行く予定なのです! 我が国から輸出したものがどう使われているかなど、是非ともこの目で見てみたいと思いましてね!」
確かにおれの国とニーヒスター間で武器の輸出入はあるっちゃあるが、そこまで盛んではない。
どちらかっていうと、各々の国で生産しにくい食料とかのが盛んだ。
パスクアルが交渉を謎に伸ばしに伸ばしているからこそ、今回見学する〜って話になったんだろうな。
「そうでしたか……。ぜひ我が国の兵達が貴国の武器をどれだけ使いこなしているか、存分にご覧ください」
「ええ、ええ! 勿論ですとも! ……そうです! カテリーネ様のご予定がよろしければの話にはなりますが、オレと共に見学しに行きませんか!? 研鑽を削り合う空間にも、オレの隣にも、最上級の華は必要だと思うのです!」
きっ……つ! もうちょっとこの芝居がかった話し方やめてくれませんかね!?
引き攣りそうになった口を微笑みに整形しながら、どうにか返答をしようとした時だった。
「お話中のところ、失礼します。……初めまして、パスクアル様。私はこの国の元帥を務めているヴァルムントと申します。以後、お見知り置きを」
ヴァルムントはスッとおれの隣へと歩いてきて、綺麗な礼をパスクアルにかましていった。
ヴァルムントくん! ヴァルムントくん! め〜〜〜っちゃくちゃ待ってたぞ!!