もうニスリーンさんの歓迎パーティーの日となった。
こんなにもパーティーで決めなきゃいけないのがあるのか……。と戦慄した日が今は遠く感じる。
でも実際やってみたらすごく充実した日々になったし、結果的にやって良かったな〜って思った。
役割があるって素晴らしい!
……まあ、パーティー開催に向けて物凄く準備したとはいえ、そこまで格式ばったものではない。
軽〜い食事会みたいなものだ。
けど手を抜いていい理由にはならないからね!
国の威信ってやつが関わってくる。
評判を落とすまいと、今までパーティーの準備を担当していた人にあれこれ聞きつつ、ここまで漕ぎ着けた。
空で燦々と輝く太陽の下、敷地内にある大きな庭で今回のパーティーは開催される。
20個ほど等間隔で並んだ白いテーブルの上には自国の自慢である料理が並んでおり、華やかさを足す為にオレンジを中心とした花々が彩りを足している。
他にも工夫を施した場所は色々あるが、上げたらキリがないのでこの辺で終わっておく。
要するに満足できる会場になったということだ。
おれはやらなくていいと言われたが我を通してやった会場の最終チェックを済ませ、今回の参加者を会場へと迎え入れた。
おれはニスリーンさんを近くへと呼び、会場にいるみんなの注目を集めてから開催の挨拶を告げる。
「皆様、お越し頂きありがとうございます。この度は遠き彼の地であるレ=カッハピュ国のニスリーン様がお越しいただいたことを祝し、開催いたしました。ではニスリーン様、ご挨拶をお願いします」
「初めましテ、ニスリーンでス。言葉は不慣れですガ、仲良くしていただけると嬉しいでス」
パチパチパチと拍手が起こり、そのまま歓談の流れへと入っていく。
なお参加者はうちの地位ある人間だけでなく、ちょうど滞在しているイブラントの2人やパスクアルも参加している。
ハリソンさんはジネーヴラに魔術を教えつつ、あの魔術師ロッセッラを帝国所属の魔術師と共に追っていた。
今は手詰まりしており、新しい情報が入ってくるまで、万が一の防衛も兼ねてイザベラと共にパーティーへ参加してもらってるのだ。
パスクアルについては……、一応声かけたら参加しますって言われたから参加になっている。
もうそろそろ帝国から去る予定なので、これを乗り越えればパスクアル問題は解決する……はずだ。
引っ掻きまわすだけ引っ掻き回して何がしたかったんだ、アイツ。
ちなみにお兄様とヴァルムントは空いている時間にちょっと顔見せしてくれる予定だ。
ニスリーンさんは早速ほかの人と話を始めたので、おれは護衛を連れながら最近会えていない人を中心に挨拶周りを勤しんだ。
不可抗力とはいえ城に引き篭もってばっかりだったから、ちゃんとおれは元気ですよ〜! なにも問題はないですよ〜! というアピールである。
それでいて最近問題が起きていないかとかの確認もしていた。
もしかしたらおれが解決できてお兄様の助けになれるかもしれないからな〜。
そうやって様々な人と話をしていたら、ふと目の端にとある光景が目に入った。
「──アナタを待っていたのでしょうか? オレとしてはどちらでもいいのですがね」
「フフフ、どうでしょうネ」
ニスリーンさんと小声ながらもちょっと興奮気味なパスクアルが会話をしていたのである。
ま、まさかパスクアル、ニスリーンさんに狙いを定めたんじゃないだろうな!?
確かにニスリーンさんは未婚で婚約者はいないと聞いているけども、果たして止めに入ってもいいんだろうか。
もしかしたら結婚に前向きかもしれないし、ニスリーンさんの意向を聞いてみない限りは……と悩んでいたら、あっさりパスクアルが離れていった。
熱心にパスクアルは話しかけていたが、あまりにもニスリーンさんが暖簾に腕押し状態だったので諦めたっぽい?
本人がいなしたとはいっても本当はどう思っているか分からないので、念の為ニスリーンさんにそれとなく話を聞きにいく。
「ニスリーン様、パーティーはいかがでしょうか? 何か至らない点がございましたら何でも仰って下さい」
「とても素敵なパーティーでス。ワタシの国を理解してくださっているのが分かりましタ。この色を見るト、国を思い出して良い気分になれまス」
「良かったです。この後もどうかお楽しみいただけると嬉しいです。……そういえば先程パスクアル様が熱心にお話されていたようでしたが、差し支えなければ何をお話されていたか伺っても?」
「言っていることがよく分かりませんでしタ。何を伝えたかったのでしょうカ?」
多分おれの時と同じようなことを言ったんだろうな……。
すんごい遠まわしな言い方をしたせいでニスリーンさんに理解されなかったっぽい。
ニスリーンさんが結構喋れているから、伝わるって勘違いしちゃったんだろうな~。
言語の違う外国人相手に裏を読めってのは厳しいものがある。
政治の場なんだからそれくらい読めるだろって?
……いや~、ニスリーンさんって読めててもあえて知らん顔してそうだし。
まあとにかく、パスクアルに対してなんも思ってなさそうだから大丈夫か。
「そうでしたか……。パスクアル様の仰っていることが分からない時は是非お呼び下さい。わたくしが対応をいたします」
「ありがとうございまス。カテリーネ様は本当にお優しいですネ」
「いえ、わたくしはまだまだ未熟者ですので……」
もっとうまい立ち回り方は絶対あるからな~、その辺りもできるようになれたら嬉しい。
性分も絡んでくるから難しいことではあるとは思いつつも心の中で精進を誓った時、俄かに端の方から騒めきが聞こえてくる。
そちらに目をやると、丁度お兄様とヴァルムントが参加者と軽く挨拶を交わしながらこちらへ歩いてきた。
お兄様は他所行きのイケメン笑顔を浮かべながらニスリーンさんに挨拶をした。
「こんにちは、ニスリーン様。我が妹が開催しているパーティーはお楽しみいただけましたでしょうか?」
「エエ、とても素晴らしい心遣いを感じていまス。この後もきっと素晴らしいことが起こると思っていますヨ」
……サプライズを待っているとかじゃないよな!? おれはそんなの考えてなかったぞ!?
やべ〜どうしよう……、と肝を冷やしている最中だった。
突如として、その場にいる全員の耳に、大きく何かが崩れ落ちる音が響き渡ったのである。