落ち着いてから2人でベッドに腰掛けながら話を聞くと、ヴァルムントは噂にならないようにと、わざわざ一般兵士の格好に着替えて警備交代要員に見せかけておれの部屋にきたらしい。
そしてラフな格好に着替えてからベッドまで来たと。
おれが醜聞を気にしていたからって理由からやってくれたのは嬉しいけど、やっぱり負担になっているよな……。
ヴァルムントだってしっかりと眠りたいだろうし。
「ヴァルムント様も落ち着いて心身を休めたい時ですのに、気を使わせてしまい申し訳ございません」
「いいえ。私はカテリーネ様が肩の荷を下ろされたご様子を見ることができ、安心いたしました」
……おれが肩を張りすぎてたせいで不安にさせてたってことだよな。
ううう、本当に申し訳ない。変に意地も張って、絶対周りにも迷惑かけてたよねえ〜……。
やっちまったと反省しながら、ゆっくりおれの頭を撫でてくるヴァルムントを見つめる。
「……では、自室に戻られますか? まだ夜中ですから、早めにお身体を休めるのが先決かと……」
一応おれは落ち着くことができたんだし、ヴァルムントには戻ってちゃんと休んでもらいたい。
……い、いてほしい気持ちがないとは言わないが、今の心の状態なら問題ないってはっきりと言える。
これから肉体労働が一番多いのはヴァルムントなのは間違いないんだしさ。
そう伝えると、ヴァルムントはピタッと体全体を止めておれを凝視し始めた。
「……ヴァルムント様?」
「…………まだ、……まだ、悪夢を見ないという保証はございません。以降も全日できるとは言えませんが、可能な限りカテリーネ様と共に過ごすことが最も重要かと思われます」
そ、そんな神妙な顔でどうしたヴァルムントくん。
確かに悪夢は見るかもしれないが、おれは覚えてない以上、そこまで気にしないで欲しいのが本音だ。
言っている通り、これからも仕事やらなんやらで一緒に眠り続けるのは難しいのもあるはずなのに。
おれが小首を傾げていると、ヴァルムントが一度堪えるような表情をしてからおれを包むように抱きしめ、耳元でこう囁いてきた。
「……貴方のことが心配なのです。……そしてそれ以上に、私が貴方と共にいたいと、貴方を護りたいと思っているのです」
「ゔぁ、ヴァルムント、さま」
甘く焦げ付く声色で伝えられた内容に、おれの脳内まで蕩け落ちそうだった。
やややややややめんかこんな状況でこんな状況でこんな状況でこんな状況で!
ヴァルムントくんだって分かっているだろうに〜!?
パニックで頭がどうにかなりそうになりながらも、必死で否定の言葉を紡ごうとした時に気がついた。
おれに触れているヴァルムントの腕が、少し震えている。
「ヴァルムント様」
いつも強くあろうとしているヴァルムントも一人の人間で、不安なんだ。
お兄様が元に戻るかも分からない。
おれもあんまり良くない状態で、国も不安定な状況に陥っている。
だから、少しの間でもおれの傍にいたいって思っているのかもしれない。
そう気が付いて、拒絶できなくなった。
まったく、し、……し、しょうがないな~~~~っ!
手を動かしてヴァルムントの体をベッドへ倒れるように促すと、勘違いしたのか抱きしめるのを止めてベッドから離れようとする。
待って待って違うから!
おれは慌ててヴァルムントの服の裾を掴んで留めたが、あることに気が付く。
……あっ、うっ、こ、これ流れでじゃなくて言葉で言わなきゃ駄目か? 駄目なのか?
うっ、う、うう……。ううううう……!
苦しいと暴れ回る羞恥心と戦いながら、震える唇で許可を伝える。
「お待ちくださ、い。……ち、違うのです。……わ、わたくしも、……わたくしも、本当は、共にいたいのです」
だって! ヴァルムントが傍にいるのってすっごく安心するんだよ!
安心しすぎちゃうから駄目だって思ったから、離れようって決意してたんだよ~~~っ!
目をつぶって皺くちゃになるくらいぎゅーっと裾を掴んでいると、少しの沈黙を置いてからヴァルムントが動き始めた。
おれを抱き上げてから慎重な動作でベッドへと降ろし、脇で丸まっていた毛布を取ってから隣に体を横に毛布を掛けてくる。
そうして再びおれを抱きしめると、頭に唇を落としてからこう言ってきた。
「……ありがとうございます、カテリーネ様」
お礼を言うのはどちらかというとおれの方だと思うんだけどな。
そう思って言おうとしても、伝わってくる温かさで蕩けきった口が開かなくなってしまった。
完全に体中の力が安心で抜けきってしまい、どうにもならない。
腑抜けてるなあ、おれって。
そんなことを考えながら、意識が夢の中へと落ちていくのであった。