朝の日差しで目が覚めるとおれを包んでいた安心感はなくなっていて、朝早くにヴァルムントが部屋から出ていったのを悟った。
おれより忙しいだろうから仕方ないとはいえ、……も、もうちょっとゆっくりしていてほしかったな〜。
って思うのはわがままか。
……あまりにも弱気すぎるな、しっかりしないと。
じゅ、……充電はできたんだしさ?
一度大きく息を吐いてから顔を横に振ってリセットをかけ、朝の支度へと入っていった。
「カテリーネ、元気になったな」
「……御心配をおかけしました、おじさま」
支度が済み部屋を出て移動をしようとしたら、護衛であるおじさまが近寄ってきて頭を優しく撫でてきた。
……あれ以来、絶対声かけられていただろうに全然覚えがない。
追い詰められすぎでしょ、おれ。
同じく護衛として待機しているゲオフさんとカールさんにも謝りを入れる。
「ゲオフさんもカールさんも、ごめんなさい」
「え!? いや〜、カテリーネ様が謝る必要はないですわ! 誰だってそうなりますって!」
「カールの言う通りです。全ては我々が強ければ良かった話ですので……」
落ち込むゲオフさんをカールさんがパァンと頭をひっ叩いてちょっと下がっていった。
……そうだよな。その場にいたのに止められなかったゲオフさん達も悔しいはずだ。
本当に自分のことで頭がいっぱいすぎて恥ずかしいと反省をしながら、笑顔で声をかける。
「これからです。これから我々で反撃をしていくのです。力を貸していただけますか?」
「む、無論です!」
焦りながら勢いよく返事をしてくれたゲオフさんに頷きを返した。
──そう、ここからだ。
いつまでも落ち込んでそのままではいられない。
お兄様の意識を取り戻し、二度とこんなことをさせない為に頑張らなくちゃいけないんだ。
決意を新たにしながら、今日のお仕事へと取り掛かっていった。
◆
やるべきことをやり、もう外は真夜中と言っても差し支えのない時間帯になっていた。
いつもならばベッドに入ってお休みの時間に、おれはある小会議室へと入っていく。
そこには立った状態のヴァルムントとセベリアノが資料を見ながら議論を交わしていた。
おれが入ると一旦中断をして礼をし、ヴァルムントが寄ってきておれをエスコートし近くの椅子に座らせてくれた。
「ありがとうございます」
「いえ」
「あ〜……。カテリーネ様、本当にやっと落ち着けたってことでいいんだよね?」
立ったまま腕組みをしたセベリアノがこっちを見ながらそう言ってきた。
今の状況を詳しく知りたいと言ったらここに招かれたのだが、セベリアノとしてはおれが本当に大丈夫か念の為の確認をしたかったのだろう。
いくらヴァルムントが大丈夫だって言っても、贔屓目だったりなんなりあるかもって思ったんだろうな。
気持ちは分かるので、特に気を悪くすることなく冷静に回答をする。
「はい、大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」
「……オレ達が押し付けたってのもあるからさ。……あ〜、その、……さっさと本題に入ろっか」
セベリアノは謎の言い淀みを挟んでから、本題へと話題を移していった。
「それで、パスクアルとニーヒスターについてなんだけど……」
パスクアルはロッセッラと共に突然消えたと思われていたが、実際に起こった事としては少し違っていた。
戦闘となった場所の真下あたりに隠し通路が存在しており、パスクアル達はそこへ魔術で移動をしたのだとハリソンさんが解明してくれたのである。
今現在は転移というものは実現できていない。
しかしながら研究は盛んに進んでおり、近距離でのものについてはそこそこ進んでいたらしい。
ロッセッラも専門ではないものの研究内容は知っていた。
その研究内容を元に転移術を完成させたのであれば不思議ではない、と言われたのだ。
とはいえ、実用に漕ぎ着けるまでは少なくとも50年以上はかかると見積もられていたので、信じにくいことではある、と。
発想の転換とかで一気に開発が進んだ……とかなくはないだろうし、そこまで不思議なことなんだろうか?
まあ、おれが魔術研究に関して専門外だから簡単に言っているだけかもしれない。
「ニーヒスターへ送った使者についてはそろそろ帰ってくるはずなんだけど、当然いい返事は期待できなさそうだ」
ニーヒスターとの貿易は止まり、正式な両国への運航こそ止まっているものの、民間では勝手に行き来することがある。
その人々からの話を聞く限り、ニーヒスター国全体の雰囲気は浮ついており、戦争が始まるのではないかという空気を醸し出しているという。
……戦争は避けられないとみた方がいい、ということだ。
「こっちも防衛の準備は進めてる。正直、今戦争はやめてほしいってのが本音だけどね」
戦争特需でお金こそ回るかもしれないが、そもそも国がガタガタの状況でやるものではない。
だからといって、国がしっかりしている状況でも好んでやるものではないと思う。
めんどくさいことをしやがってと思っている中で、セベリアノが意外なことを言い出した。
「ちなみに、気付いてないだろうから言っておくけど、今ヘルトは出かけてるからね」
「ヘルトくんが……?」
「ハリソンさんとルチェッテ達と一緒にいくつかの場所へ向かってもらってるんだよ。ハリソンさんがロッセッラ達と対峙した時に放たれた魔術を元にして、痕跡みたいなのを辿れるらしくってね。流石イブラント国の筆頭魔術師だけあるよ」
そんなことができたの!?
ていうか症状の確認時にルチェッテがいなかったのはヘルトくんと一緒に行ってたのか。
おれがいっぱいいっぱいすぎて、ルチェッテもヘルトくんもいないのに気が付いていなかった。
「今は大体そんなところかな。……後は、これはちょっと話としてはズレることかもしれないけど、対応してもらうことになるだろうから伝えておくよ。ゲンブルクから使者が来る予定なんだ」
「ゲンブルクから……?」
そういえば追加で連絡がくるとかお兄様が言ってたような気がする。
ということは皇族に関係する何かが分かるかもしれないと拳を強く握っていたら、微妙な顔をしたセベリアノからの言葉に驚いて拳から力が抜けてった。
「えーっと、その使者の人は将軍の娘であるソフィー様らしいんだけど、覚えているよね?」
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