フェリックス殿下より話を聞かされて動揺なさっていたカテリーネ様を一人で眠らせたくない。
たとえ話を聞くことができなくとも、出来うる限りカテリーネ様のお力になりたい。
そう考えていたというのに、粗方の区切りがついた後カテリーネ様のお部屋へと向かおうとした時に兵より連絡が入った。
呼び出された場所である小会議室へと足早に向かうと、部屋の中には不機嫌な顔で歩き回っているセベリアノと、解放軍派であった貴族のトレフェンが佇んでいる。
セベリアノはいつも通りの格好だが、トレフェンは常日頃では整然としていた服装が若干乱れており、念入りに整えているという少々長めの茶の髪も同様に乱れが発生していた。
トレフェンは事件が発生してすぐに代表としてラズリ・オーム国へ協力要請をしに行っており、丁度今日帰ってきたばかりなのだろう。
「ヴァルムント様、夜分遅くに申し訳ございません」
「トレフェン、今は大事な時期だ。気にしていない。セベリアノ、何があった?」
「使者が帰ってきた」
固い返事に、自ずとニーヒスターの返答が理解できた。
「……戦争になるのか」
「なんかさ〜、あっちの主張は第三王子とその部下達に難癖つけて幽閉したのはお前らだろーって感じなんだよね〜。は〜、ホントやってらんない。ここまで戦争がしたいってのが丸わかりなの逆に笑えるよね」
苦笑いをしながら首を振ってくるが、疲れが見えるものだった。
だがセベリアノは両手で自身の頬を叩いた後、腰に手を当てながら続きを話していく。
「ま、オレ達も指咥えてただ待っていた訳じゃない。トレフェン、結果を言ってくれる?」
「はい。俺がラズリ・オーム国へ向かい要請を出しました。結果、無事に援軍として兵の派遣を漕ぎ着けられましたが……。セベリアノ、貴方は何をご存知なのですか? 貴方から別に預かった書簡を渡して読まれた途端に話が簡単にまとまりましたよ」
「……オレしか知らない情報で脅してあげただけだよ。簡単だねえ~」
セベリアノは口を尖らせながら目を細めて得意げにし始める。
当人はラズリ・オーム国にいい感情を持っていないらしく、時折会議などで話題になる度に少々棘が窺える声になっていた。
軍師としての仕事もあるだろうが、その感情も相まって弱みを握れる情報を探していたのではないだろうか。
事情に深く切り込みをすると無駄な時間になると予測ができる為、追及はしないことにした。
「で、オレのことはどうでもよくって。元帥さ〜、ゲンブルク側にも話できる? ここで恩を返してもらおう」
「今のソフィー様に援軍についての許可権限があるとは思えないが……」
内密にフェリックス殿下もいらっしゃるが、記憶を失われている以上、好き勝手に許可する権利は許されていないはずだ。
「分かってる分かってる。でも絶対に口添えはしてくれるだろうし、向こうだって恩を清算しておきたいはずだ」
「……分かった。必ず対応してもらえるよう話をする」
話を通すことによって国が助かり、カテリーネ様の負担が減るのであらば、どんなに惨めに見られようとも助力を願おう。
頷きを返すと、セベリアノは首を回してから片手を扇がせながら喋り始める。
「後は〜、ヘルト達が帰ってくるのを待つだけかな〜。ヘルトなら、きっと情報を掴んで帰ってきてくれるだろうし」
「そうですね。彼ならばやり遂げてくれると、今までの行いが証明しています」
ヘルトには成す力がある。
だからこそ解放軍の旗印を立派に務めることができ、現在に至った。
私もまた、ヘルトならば解決の糸口を見つけてくれると信じている。
「じゃ、あとは諸々の準備を進めておくよ。元帥も遅い時間だけどさ、諸々の手配を進めておいてくれる?」
「……分かった」
カテリーネ様の元へ馳せ参じたい気持ちを抑え、返答をする。
代わりといっては難だが、ほんの少しでも時間を作ってお会いすることを決めた。
長時間寄り添うことはできなくとも、会わないよりはずっと良い。
苦々しい想いを抱えながらも、早々に動くべく足を動かして部屋を退出していった。