向こうが攻めてくる前に様々な準備をしなければならない。
人員だったり装備だったりは最適な人が対応するので、おれはおれが最適な仕事をする。
本格的な戦争になる前に避難してほしいと貴賓に伝えて回る役目だ。
実際のところ挨拶回りはおれじゃなくてもできるにはできるが、こういうのは誠意ってものが大事だ。
ちゃんと顔たるおれが行くことで得られるものがある。
いい印象というものは残せるなら残しておかないとね。
色々な時間の都合で、先にゲンブルクの2人が滞在している部屋へと向かっていった。
「カテリーネ様、仰っていただければこちらから伺いましたのに……」
「こちらから伺うのが筋というものですから」
ソフィーさんが入ってきたおれを出迎えに入口まで来てくれた。
おれの護衛や侍女さんがいるからか、後ろにはフルフェイスを被ったままな兵士……多分フェリックス殿下が控えている。
まずは座りましょうとソファに促し対面する形で着席をした。
挨拶もそこそこに、早速本題へと入っていく。
「ソフィー様もご存知であろう通り、我々はニーヒスターと戦うことを決めました。何時こちらが戦場となるやも分かりません。ですので、」
「お待ちください、カテリーネ様」
早く帰った方がいいぜ! と言おうとしたらソフィーさんがいきなりストップをかけてきた。
えっ、ここは分かりましたお元気でムーブなんじゃないの?
「私が後々来る我が軍の指揮を取ります。ですので、このまま滞在をさせていただけないでしょうか?」
考えてもいなかった内容が出てきておれは目をひん剥いた。
いやいやいやいや、ダメでしょ!? てかそんなことしちゃっていいの!?
本当はフェリックス殿下が指揮をとるとしても、してもだよ!?
流石に無理なお話すぎるので慌てて静止に入る。
「危険すぎます。我々の為にそこまでしていただく必要はないのですよ」
「私は今回、『将軍の娘』という立場として参りました。家の恥とならぬよう、日々の鍛錬を怠らずここまで生きて参りました。……考えにくいことだとは思いますが、私は父に匹敵する実力を持っております。武人として戦える者なのです。父もここで引くことは許さないでしょう。陛下も理解して下さるはずです。……それと許されるのであれば、元帥とお手合わせ願いたいほどです」
キリッとした顔で武人の雰囲気を漂わせながらおれへ宣言して来るソフィーさん。
そっ、そういえばご令嬢『ソフィー様』の印象が強すぎて微妙に忘れていたけど、ソフィーさんってトラシク2のメイン級な男装キャラである『ソール』だったわ……。
紙装甲な代わりに火力高いし大体みんな使うキャラだったから、そりゃ強いのは確定しているもんな。
それはおれも知っているから分かっている。
が! 受け入れられるかはまた別問題な訳でしてね?
「ソフィー様のお気持ちは大変ありがたく思っております。ですが、ソフィー様……に何かあっては面目が立たない上に、既に我々はこれ以上ないほどの御礼をいただいております」
ソフィー様に殿下を下手に戦争へ巻き込む訳にはいかないって!
万が一の国際問題を引き起こしたくないんだって!
帝国が要請している援軍とはまた別問題になるんじゃないの!?
「いいえ! 私達は未だに御恩を返し切れていないと思っているのです……!」
ひーこらしながら否定をするがソフィーさんは頑なな態度のままだし、その後ろで待機している殿下が無駄無駄と言わんばかりに小さく首を横に振っているのが見えた。
ちょ、ちょっと! 貴方が一番止めるべき人でしょうがーっ!
どっちも駄目そうな様子に、ひとまずここは折れるしかないのだと悟ってしまった。
「……分かりました。ですが、状況は変わりゆくものです。何かございましたら必ず仰ってください」
「ありがとうございます、カテリーネ様! 必ずお役に立ってみせます」
役に立とうとしなくっていいから!
いつでも帰っていいんだぞという意志だけは伝え、その場を後にしたのだった。
◆
「分かりましタ。ですガ、見てみたいモノがあるのデス。それらを見終わったラ、次の目的地へといきマス」
間に何人かの賓客を挟んでから行ったニスリーンさんの返答は、結構すんなりとしたものだった。
おれは助かる~と思いながら手助けができればと手伝いを申し伝えていく。
「見てみたいもの……とはなんでしょうか? よろしければお聞かせいただけますと嬉しいです」
「フフフ、具体的にドレとは言えないのデスヨ。直感なのデス。デモ、安心してくだサイ。早めにすみますカラ」
「……そうですか。ニスリーン様の出会いが早々に訪れるよう願っております」
「ありがとうございマス」
よく分からないが、多分突っ込んだら負けのやつだ。
ニコニコしてその場を流しておき、次なる仕事へと取り掛かりに行ったのだった。