TS生贄娘は役割を遂行したい!   作:雲間

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 エドゥアルダは確かアレよ、何かがきっかけで戦うことになって、最後にエドゥアルダを倒した男のユニットに惚れて仲間になるっていう。

 その男ユニットには何かの条件あったけど、忘れた!

 条件に当てはまってさえいれば誰にでも惚れるから、惚れっぽい人物って言われてたんだよな。

 もっとひどい名称も、あるにはあった……。

 

 エドゥアルダの性能は回避に特化(回避するとは言っていない)してるやつで、クリティカルも発生しやすい(発生するとは言っていない)と言われていて、すっごい使い勝手が悪いから使わなくなったんだよ。

 決まれば強い、決まれば。なお現実。

 エドゥアルダはストーリーで必ず仲間になるキャラじゃないし、おれは周回プレイ時に加入イベントを基本放置してゲームやってたから全然思い出せなかったわけだ!

 さっきエドゥアルダが見せた動きで思い出せたのは、な~んかあの一連のモーションだけがネットミームとして広まってて覚えてたんだよなぁ。

 あの鞭の音も、合わせて鳴るようにしてた謎改造があった。

 いつも音も映像も一緒だった上に、ドット絵だったからとっさに思い出せなかったんだわ。

 

 てか精霊の時もそうだったけどさ、なーんで前倒しでこういうこと起こるの? おかしくない?

 ……いやもしかして、おれのせいだったり。

 帝国が完全に崩れてないし、おれが皇女としている時点で色々変わってるから、そのせいで変わる可能性はあるんだけどもこんなに変わるのか?

 

 と、色々考えてたけど!

 ちょっと、ちょ、ちょっと待ってヴァルムントくん!?

 君が戦わないでほしいんですけど!?

 一番強いヤツって言われたら、ヴァルムントくんなのは多分そうだろうけども……。

 次点でヘルトくんやナッハバールなのかな。

 ゲオフさんやカールさん達は、戦ってる姿をちゃんと見たことないから分からん。

 とにかく、エドゥアルダが君に惚れちゃうじゃん!!

 

 あ……、いや、おれは別にヴァルムントとはなんにもないし、そもそもおれとヴァルムントは決して恋人でも婚約者でもなんでもないし……。

 命だけは繋がってるけど、それだけだ。

 おれとヴァルムントの関係には『命が繋がってる』くらいしか明確な名前はない。

 主従関係かって言われると……、なんか微妙なところすぎる。間違ってはないんだろうけども。

 な〜んか周りからは変な誤解が広まってるけど、それは事実じゃないしさ。

 だからエドゥアルダがヴァルムントに惚れようとも、おれは何も言う権利もなにもなくって……って!

 

 オイこら! おれはどうしておかしな方向に考えてるんですかね!?

 別にそんな、そんな……。おれは、う、ううううう……。

 

 おれが悩んでいる間に、ヴァルムントとエドゥアルダの戦いは進んでいた。

 ヴァルムントはエドゥアルダに対して、手を抜いてないのが真剣な眼差しから見て取れる。

 でも下手に相手に傷をつけて外交問題やらになりたくないって思ってるのか、エドゥアルダに傷がつかないよう対処に止めていた。

 エドゥアルダは『傷付けないようにされている』のに気が付いており、本気にさせて血肉飛び交う戦いに発展させようと躍起になってる。

 攻撃がかすったりとかで皮一枚傷つける程度ならできてるが、負傷といえるほどのダメージが与えられてない。

 楽しそうに戦っているのが分かるんだけど、ヴァルムントによる氷と剣技に苦しめられているみたいで、どことなく表情に余裕のなさが表れていた。

 鞭の他にナイフなどの飛び道具を使っているが、全て弾き飛ばされている。

 攻撃しつつも弾かれてしまったそれらを鞭や足で拾い上げ再利用してて、すごい器用じゃん……って思ってたんだけども、やっぱりヴァルムントには通用していない。

 どこに気が付ける要素があったの? ってものまで綺麗に弾き飛ばしていったのだ。

 しかも打ち返して逆に攻撃に利用してたりする。

 実はヴァルムントくん、第三の眼でもあった……? 戦う者の勘ってヤツ?

 

「なかなかやるじゃないか! 見くびってたんじゃないけど、アタシもアタシの力を全て使わないといけないようだね! 来な!」

「ヴァゥ!」

 

 ヴァルムントと少し距離を置いたエドゥアルダは、ここに来るまでに乗っていた豹もどきの魔物を呼び寄せてきた。

 えっ、いいの!? それってありなの!?

 ちゃんとルールを決めてたんじゃないから、ありってコト!?

 ゲームでそんなの見た覚えないけど!?

 

「一対一じゃなかったのか!?」

「卑怯だぞ!」

「正々堂々戦えーっ!」

 

 当然ながら抗議の野次を兵士さん達が飛ばしていった。

 でもペッソーラ側は卑怯だとも何とも思っていないようで、平然な顔をして声を上げ始める。

 

「卑怯などではない!」

「己が使える全ての技を使ってこそ、強者である」

「強者とは、勝者なのだ!」

 

 その理屈はよう分からん……。

 でも、一番文句言うべきヴァルムントがなんも言っていない。

 余裕も余裕といった様子で、静かにエドゥアルダと一頭を見定めている。

 ヴァルムントは静かに一息ついてから、こう言った。

 

「私は構わない。何であれ、戦うのみ」

「イイねぇ。だが、いいのかい? コイツとアタシの強さは半端じゃないよ?」

「ああ。そのレオペルが出たとしても結果は変わらない。──私が勝つ」

 

 ひゅ、ひゅ~。ヴァルムントくん言うねぇ~。

 負けたらどうなるか分かったもんじゃないからこそ、なんだろうけどさぁ。

 ちょ、ちょっとカッコいいじゃん。

 豹もどきはレオペルっていう種族名なのな。おれ、覚えました。

 

「言うじゃあないか! それでこそ戦い甲斐ってものがある!」

 

 エドゥアルダは狂気の笑みを浮かべて、レオペルと共にヴァルムントへと襲い掛かった。

 息つく間もないといえばいいのだろうか。

 エドゥアルダの鞭が飛んできたと思ったら、すぐ次にレオペルの鋭い爪が生えた手が襲い掛かってきている。

 ヴァルムントは先程以上に氷を多用し、壁にしたり、着地するであろう地点に氷を生やすなどを対応をしていた。

 剣が鞭に絡めとられることもあったが、剣から氷を発生させて無理やり鞭との『間』を作り出し、氷を消すことで隙間を作り出して剣を抜く技を見せる。

 レオペルもエドゥアルダのナイフを蹴ったりしてるし、エドゥアルダはレオペルを踏み台にして上空へと飛んでから鞭攻撃を飛ばしたりと、も~しっちゃかめっちゃかでおれの眼が追いきれていない。

 世はまさに大怪獣バトル! みたいな気持ちで片手を胸に当てながら観戦してたら、ヘルトくんがおれの手を握りなおした。

 

「大丈夫だよ、姉さん。あの調子なら将軍は負けない。絶対に勝つよ」

「ヘルトくん……。……はい、必ず」

 

 おれを心配させまいと声をかけてくれるヘルトきゅん尊い……。

 ま、おれは心配してねーけどな!

 攻撃が激しくなってんのに、ヴァルムントは一度もミスというミスをしていない。

 おれからしたらトンデモな攻撃も、ヴァルムントは冷静に躱したり剣で弾き飛ばしたりしている。

 一度大技っぽいものをエドゥアルダ達が仕掛けてヒヤッとしたが、ヴァルムントは取り乱すことなく対処したもんだから痺れたわ〜。

 ヴァルムントくんの戦い、訓練見学では見たことあったんだけど、実戦に近い戦いを見るのは初めてなんだよね。

 だからさぁ、目の前で男の浪漫が繰り広げられてるのって燃えるじゃん。

 涼やかで鮮やかに繰り広げられる剣捌き!

 氷が瞬く間に発生し陽の反射で煌めいて、攻撃で砕け散ってもなお美しい!

 イケメンが銀の髪の毛を揺らしながら素早く対応していく様とか最高だろ!?

 エドゥアルダとレオペルの動きも良いし、連携がとれてて圧巻ではあるんだけど、ヴァルムントの武の秀美さには及ばないというか……。

 ……男から見てカッコいい男って話だぞ。おれもあんな風に戦ってみたかったわ。

 

「まだ、戦いますか?」

 

 何分たったかもわからないほどの激しい攻防が繰り広げられた後に、ヴァルムントは剣を一振りしてエドゥアルダとレオペルを退けながら言葉を放った。

 手も足も出ないって感じだしさ、エドゥアルダはいい加減あきらめた方が……。

 あ、いや、諦めるってことはつまり惚れるってことだから……う、うう。

 エドゥアルダはヴァルムントの言葉に対して、一度大きなため息をついてから笑い声を上げた。

 

「く、ククククク、アハハハハハハハ! 負けたよ、完敗だ! アタシの負けだ! こうも強いヤツがこんな場所にいたとは……。さあ、アタシのことはどうしたっていいさ!」

 

 豪快な人だなぁ。普通の男だったら勘違いしまくる話なんだけど。

 どうするんだいと尋ねるエドゥアルダに、ヴァルムントは静かに言葉を紡いだ。

 

「我が国との取引をご一考いただければ、と」

「……アンタ、本当にそれだけでいいのかい?」

 

 ヴァルムントがした要求はすごいシンプルなものだった。

 エドゥアルダがそう言うのも頷ける。

 でも、うん、ヴァルムントがそうするのも分かるような……。

 別にここでしたのって正式な国と国とのやりとりって感じじゃないしなぁ。

 後々反故にされたり遺恨になったりするのも面倒だわ。

 ペッソーラの連中って強者に従うべき! って感じだから、そうはならなそうではあるんだけど、憂いは断っておくに越したことはないし。

 もうちょいなんか欲張ってもいい気はするけども、そもそもペッソーラ距離ありすぎて、要求でかすぎるとそれはそれでやり取り大変そうである。

 変にここで約束勝手に取り付けるのも、後々の処理で面倒そうだからな~。

 待機してるペッソーラの人達も怖い顔してるしさ。

 闇深軍師とかだったら狡猾にいってたんだろうけど、今対応してるのはヴァルムントくんだ。

 

「強者の余裕、ってやつかい? あぁ……、痺れるねぇ。ゾクゾクするよ。アンタはどこまで強いんだ」

 

 エドゥアルダが恍惚とし始めてきてアカン。

 ヴァルムントくん、分かってますよね? ね? 君分かってるよね?

 

「アンタ、結婚してたりするのかい?」

「何故今その質問を? ……おりませんが」

 

 馬鹿!! 嘘でいいから「いる」って答えておけ!! ばかばかばかばか!

 馬鹿生真面目ヴァルムントくんのばかばかばかばか!

 お、おれが……、ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎ。

 

 エドゥアルダは鞭を手でいじりながら、うなじを見せるように首を傾げてヴァルムントに視線と声を投げかけた。

 

「アタシ……、アンタのその強さに惚れちまったんだ。アンタとの子供が欲しいから、結婚するってのはどうだい? それなら、もっと国としても融通を利かせることはできるよ……?」

 

 こ、こっ、こ、コラーーーーーーッ!!

 国益の話も絡めてヴァルムントくんを誘惑しにいくんじゃない!!

 





「エドゥアルダと豹が一緒になったSDまで作れって!?」
「はい、スタイルチェンジみたいな形で実装しようかなと」
「無理無理無理無理! 本当に間に合わない! マジで間に合わない! 今からだなんて正気!? ストーリーに関わってくるんならまだしも、そうじゃないよねこのキャラ!? 絶対に必要ない!」
「エドゥアルダの設定でもありますし……」
「本当に実装するとしてもそこのプログラムまで別途用意しなきゃいけないんだよ!? 絶対バグが増える、断言する! 予想以上に手間が倍増する!」
「話題になって人気が出るかなって、言われまして」
「そんなん出ないわ! 言ってきたのが社長だろうが誰だろうが無理なものは無理!! もーマジで無理! 進行に影響出すぎるから絶対にダメ!!」
「いや、でも」
「でもも何もないって言ってるでしょうが! さっさとソイツに無理って言ってこい!」
「ええ……」
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