TS生贄娘は役割を遂行したい!   作:雲間

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 めちゃくちゃ1日1日が濃くて長かった気がするけど、それも今日でほぼ終わり!

 本日は戴冠式でございま〜す! いえ〜!

 早朝から侍女さん達総動員でおれとヴァルムントの準備をしていく。

 普段ヴァルムントは自分でなにもかもやるらしいんだけど、今回ばっかりはね。

 ヴァルムントくんはおれの部屋へ行って支度をされている。

 おれの全身は、控えめながらに高級感あふれるものへと仕立て上げられていく。

 今日のドレスは濃紺で落ち着きのあるドレスだ。

 今回の主役はマクシミリアン殿下だからね〜。おれらが目立ちすぎないようにしないといけないのだ。

 ……多分、気にしない人はいるんだろうな。

 

 おれの支度が終わり、最終チェックをリージーさんが目をかっぴらきながらしている中で、先に終わったヴァルムントがこの部屋へと入ってくる。

 目に入ったヴァルムントの姿は、普段の鎧姿とは打って変わった礼服だった。

 紺色をベースにアクセントとして銀を使っている礼服は、すごくヴァルムントに似合っている。

 髪の毛もセットされており、普段からあるピシッとした雰囲気が更に極まっていた。

 う、うわー!! カッコいい! カッコいい!!

 カッコいいしか言葉に出てこねえ……!

 海外ドラマに出てくる超絶イケメン俳優か?

 

「ヴァルムント様、素敵です……」

 

 おれに付いてた侍女さん達もうんうん頷いたので共通認識で間違いない。

 ヴァルムントくん、どこまでカッコよくなれるんだ……? 宇宙の果てまで? 良すぎるよ〜。

 ほえーっとしながら見つめていると、ヴァルムントはおれを見つめてから一度斜め上へと目線を逸らす。

 戻してまた見て、目をパチパチとさせながらこう言った。

 

「贔屓目でも何もなく、今一番輝いているのはカテリーネ様だと思いました」

 

 ……そっ、それ、贔屓目では? 贔屓目でしょ!

 もー! ヴァルムントくんったらまったく……。

 ……は、恥ずかし〜〜! う、嬉しいけど恥ずかし〜〜!!

 事もなげに言っちゃってさ! 贔屓目でしかないよ!

 周りもニコニコしちゃってるしさぁ……。

 でもおれは言葉としては「ありがとうございます……」と、消え入るような声しか出せなかった。

 

 

 今日の進行としては、午前中にマクシミリアン殿下が街中を凱旋。城へ戻ってきて謁見の間で式が行われる。

 おれ達はそこから参加し、午後にあるお昼を兼ねた祝賀会にも出席する予定だ。

 恥のないように! 堂々と! おれはやるぞおれはやるぞ〜!

 

 

 ◆

 

 広々としていた謁見の間の両脇に多くの人々がおり、マクシミリアン殿下の宣誓を見届けようとしている。

 おれとヴァルムントも同様に脇の方でマクシミリアン殿下を見つめていた。

 玉座の前にはマクシミリアン殿下、その少し横には冠を持ち鎧を着た壮年の男性が佇んでいる。

 こっそり教えてくれたヴァルムント曰く、本来あそこに立っていたのはカメロン宰相だった。

 ……めでたい行事が近いのに不祥事を発覚させるのは避けたいと、今は『病気』ということで欠席扱いになっている。

 代わりとしてこの国の将軍でありソフィーさんのお父さんである方が立っているんだとか。

 なお当のソフィーさんはピンクのドレスを着て玉座近くの端で佇んでいる。

 マクシミリアン殿下は前に出てから剣を抜き、鋒を天へと向けた。

 

「我、マクシミリアンは龍の名の下に宣誓をする。国に尽くし、国と共に生き、国に殉ずる。そして、庇護すべき民と国の豊かさを共に創っていく。国の発展を願っていた初代国王エントウィクロンの信念を胸に、今ここに! 戴冠を宣言する!」

 

 ワッという声と共に盛大な拍手が巻き起こった。

 おれ達も拍手をし、マクシミリアン殿下の戴冠を祝福をする。

 マクシミリアン殿下は剣を収めて玉座へと着席をされ、冠を持っていた将軍がマクシミリアン殿下の頭へ冠を乗せていく。

 再び大きな拍手が沸き起こり、皆がマクシミリアン陛下の誕生をお祝いする。

 まっすぐに正面を見つめるその顔立ちは初対面時とは印象が違う。

 初々しさがなくなって、貫く意志が感じられる面持ちに変わっていた。

 

 きっとこれからマクシミリアン陛下には困難が待ち受けているはずだ。

 それでもマクシミリアン陛下が無事に乗り越えるられるよう、おれは祈るしかなかった。

 

 

 大広間で行われる祝賀会には、ゲンブルクの貴族や来賓も交えての盛大なものだ。

 それぞれ国王となったマクシミリアン陛下に挨拶をしたり、交流をしたりしている。

 おれ達は早めにマクシミリアン陛下に格式ばった挨拶を終えて、ホール内に滞在をしていると近寄ってくる二人の姿が見えた。

 1人はあのイザベラだ。やっぱり派手派手なオレンジのドレスを着用している。

 一方の1人は男性で、魔術師の正装とされている黒のローブを身に纏っていた。

 顔は……、すごく一般的な顔だ。なんて言えばいいんだろう。

 ごく普通の家庭を持った優しい男の人……みたいな?

 茶髪に茶色の目をしていて、これでローブを着ていなかったらすごく一般人にしか見えない。

 

「初めまして、カテリーネ様。将軍もこんにちは。私はイブラント国の一魔術師、ハリソンと申します。カテリーネ様はご存知かと思われますが紹介いたします。こちらは妻のイザベラです」

 

 イザベラの旦那さん!?

 確かすごい地位にいる人のはず……。

 それなのに物腰低いし優しそうだし、こんなにも普通の男性っぽいって逆にすごいな。

 イザベラはツンとしているけれど、ヴァルムントに目線を送ってからはしおらしくし始めた。お前……。

 事情を何も知らないからなんも言えないけど、夫が隣にいるのにそれかぁ。

 

「とりあえず、挨拶だけでもいたしたく参りました。この度は妻が失礼なことをしたようで、申し訳ございません」

「いえ、お気になさらず。わたくしも気にしておりません」

 

 平謝りしてきたハリソンさんに、おれは慌てて顔を上げるように言った。

 きちんとしてる人だなー。

 できればもうちょいイザベラの手綱握って欲しいんだけど、本人が……ダメそう。

 謝っているハリソンさんを気にせずヴァルムントに視線バリバリ送ってるし。

 当のヴァルムントくんは気が付いていなさそうだ。ヴァルムントくん……。

 

「何かの折で、そちらの国に伺うこともあるかと思います。その時は、どうぞよろしくお願いします」

「はい、歓迎いたします」

 

 ハリソンさんだけ歓迎して〜。イザベラは来ないで欲しいな〜。

 でもこういうのに限ってくるんだろうな……。

 とか思いながら、ハリソンさんとの挨拶を終えたのであった。

 

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