TS生贄娘は役割を遂行したい!   作:雲間

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 日が過ぎるというのは早いもので、もう大会の開催日となっていた。

 今日から三日間、長丁場だ。参加者とも直接会うのは、緊急でもない限り禁止となっている。

 大会の正式な名前は……、第一回帝国鼓吹武術大会……ええっと……。これであってたっけ?

 まぁ大会でいいよね、うん。おれから名前を言う機会はないだろうし。

 

 それで、開会式を行うのは大きな闘技場だ。

 今朝早くに、おれとお兄様と侍女さん達と護衛と一緒に馬車で移動している先がそこ。

 馬車はおれとお兄様とリージーさんだけになっている。

 おかげでお兄様がすごくテンション高かった。

 

「カテリーネと一緒に出かけてるようなものだな、これは!」

 

 ルンルンすぎるよお兄様!

 ……確かに、あんまりこうやって一緒に移動することなかったね。

 えへへしつつ同意をしておいた。

 

 予選は別々の場所でするとはいえ、しっかり参加者全員に皇族が見てますよ〜ってアピールをする必要がある。

 あと実際に武具を見せるって面もあったり。

 目標がはっきりしてると、気持ちが違うものだからねぇ。

 あと、武闘派で知られていた皇帝の武具を手放すからこそ、もう皇族は戦わないし融和を示すんだとか。

 いわば帝国の力の象徴みたいなもので、それを贈るからこそ力を放棄しますって意味合いにするんだって。

 この理由があるから貴族側には武具が渡されないのだ。

 ヴァルムントが反対しきれなかったのも、これがあったから。

 とまぁそれは置いておいて。

 

 本戦に出場をし、勝ちはしなくとも誰かの……それこそ皇帝の目に留まれば別ルートでの出世もあり得る。

 優勝ともなれば周囲から一目置かれるのは当然だからこそ、皆本戦に出場する為に本気なのだ。

 そこそこの時間馬車に揺られながら外を眺めていると、街のほとんどの人は祭りだからか浮ついていた。

 どんどん先へといくと、繁華街に程近い場所に建てられた闘技場周辺は無数の出店が出ており、元々あるお店も人を呼び込もうと呼びかけを沢山していた。

 

「賑わっていて良いですね、お兄様」

「ああ。これを見られただけでもやってよかったと思う」

 

 お兄様、普段の業務に加えて今回の件についても色々やらなきゃいけなかったみたいだからな〜。

 本当にお疲れ様としか言えん。

 会場へ辿り着いたのか、馬車はゆっくりと止まっていく。

 先にお兄様が降り、おれはお兄様から差し出された手を取って地面へと降り立つ。

 かなりの人数の護衛がずらーっと並ぶ中、エスコートされながら進んでいく。

 少し前の方でお兄様の護衛が先行し、後ろからラドおじさま、ゲオフさん、カールさんにリージーさん達が付いてくる。

 闘技場はかなりでっかく、まさにコロッセオという言葉が似合う円状の格式ある建物だ。

 ……ゲームでは金稼ぎがしやすい施設だった、はず。

 選手や見学者とは別にある入り口からおれ達は入っていき、四階まで階段をぜいぜいしながら一気に上っていく。

 この階段やたら急勾配なんですけど!?

 ラドおじさまに抱き上げようかと言われたが、流石に断った。

 ここだと誰が見てるかわかんねーんだもん!

 皇族専用として作られた観覧席に辿り着くと、用意されていた豪勢な椅子におれもお兄様も座って一息をついた。

 

「大丈夫か、カテリーネ?」

「だ、だいじょうぶです、お兄様……」

 

 リージーさんから差し出されたお水の入ったコップを受け取り一息つく。

 コップを返して落ち着いてから見た目の前の景色は、高い位置なだけあって会場を一望できる場所だった。

 真ん中にはメインとなる闘技場が広がっていて、ここで数々の戦いが繰り広げられる。

 もう既に観客席には人が沢山入ってきており、かなりのざわめく音が聞こえてきた。

 余裕なさ過ぎて笑うしかない。多分おれ達に向かって手を振ってる人もいたので手を振り返していると、兵士さんがお兄様に報告に来ていてやりとりを始めている。

「カテリーネ、間もなく始まるぞ」

「分かりました、お兄様」

 

 手を振るのをやめてまっすぐに会場を見つめていたら、今回の出場者が案内係を先頭として入ってきた。

 おおう、結構な人数がいる。

 あの赤い頭は……ホーウェかな? ……ヘルトくん見つけた!

 ラハイアーは普通の人すぎてどれだか分からん。

 うーんと、割合としては戦士の人が多いけど、魔法使いの人もちらほらいるなぁ。

 ヴァルムントくんは最後の方に入ってきた。やっぱ存在感が違うぜ。

 

 おれ達のいる場所の下辺りに皇帝の武具が置いてあるらしく、参加者はそっちを眺めるか周りを眺めるか、おれ達を眺めるかをしていた。

 中には自分の装備をチェックしたり、ヴァルムントくんみたいにまっすぐ前を向いていたりもしている。

 本当に人様々だなぁと思いながらも、係によって参加者が整列されていくのを眺めた。

 それなりになったのを見てからお兄様が立ち上がったので、おれも立ち上がる。

 お兄様は軽く咳払いをしてから近くにいた兵士に指示し、声が場内全体に響き渡る魔術を使わせる。

 そうしてお兄様は前に出て胸を張り、全員に向けて言葉を発した。

 

「皆の者、よくぞ我が祭典に参加してくれた! ……戦争は終結したが、それぞれ思うことはあるだろう。しかしながら国を良くしていく為に、互いのことを理解し合う時間も必要だ。だからこそ、その切片になればと今回大会を開催するに至った! 俺が見るのは優勝者だけではない。すべての者に等しく様々な可能性がある! それ故に互いに全力でぶつかり合い、対話をし、己が持つ力を発揮し! その栄光を勝ち取って欲しい!」

 

 お兄様の言葉が終わると同時に、会場全体から大きな歓声と拍手が上がっていく。

 こうして、大会が始まりを告げたのであった。

 

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