エルフ子育て記録 ~勇者と魔王の親権争いに巻き込まれたフリーター~   作:龍翠

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 さて、ここからは自由行動です。クラスメイトのみんなは滑り台の入口へと向かって歩いて行っています。やっぱりみんな、滑り台に興味津々のようです。

 そんな中、メルはみいちゃん、なのちゃんの二人と一緒に、その場で待機です。先生が不思議そうにしていますが、他のクラスの友達を待っていると言うと、納得してくれました。

 三人で回る順番を考えていると、すぐに次のクラスがやってきました。先生からの注意事項を受けて、そして解散、自由行動です。その一団の中に、待っている友達がいました。

 

「あかりちゃん! あずさちゃん!」

「メルちゃん!」

 

 二人がこちらへと駆けてきます。ようやくこれで五人集合です。

 

「じゃ、滑り台から行こう!」

 

 みいちゃんがわくわくを隠さずに言って、みんなで笑いながら頷きました。

 緩やかな、けれど長い階段を上って、滑り台の入口へ。てっぺんから改めて見ると、どうやらとても高い場所まで来ていたようです。ちょっと怖い。

 滑り台の入口は三カ所です。長さはどれも一緒ということなので、五人で一緒に奥の入口に並びます。

 

「はい。ここが入口だよ。段ボールは持ってる? ない? それじゃあこれを使ってね。今日一日使ってくれていいからね。お尻が痛くならないようにだよ。返却は帰り際に、専用の場所があるから、そこでね。僕の合図を待ってから、入ってね」

 

 そんな説明が係員のお兄さんがしてくれます。お兄さんから段ボールを手渡されて、いよいよ滑り台の入口へ。

 この滑り台は公園のものと違って、細長い筒状の何かが底面にずらっと並んでいます。滑りやすくしているのでしょう。確かにこれは、直に滑るとお尻が痛くなりそうです。

 段ボールを敷いて、いざ出発! ころころころとお尻の下からの音を聞きながら、ゆっくりゆっくり、滑っていきます。少しずつ速くなっていますが、怖いほどではありません。

 たっぷりたっぷり滑って。ぽてんと、ゴールして地面にたどり着きました。

 

「わー……」

 

 あまり速くはならなかったので、怖くはありません。ただそれが分からなかったので、最初はちょっと緊張してしまって回りを見る余裕はありませんでした。でもこれなら、次は周りの景色を楽しむことができそうです。

 みんなが滑ってくるのを待ってから、さらにもう一度滑るためにまた上ります。そうして再び滑り始めて、今度は景色を楽しみます。周囲はたくさんの木々で覆われていて、とても良い場所です。下の方、公園を見て見れば、みんなも楽しそうに遊んで……。

 

「何やってるの……?」

 

 勇者と魔王が公園の片隅にいました。缶ジュース片手にこちらを見ています。あ、おねえちゃんと目が合った。手を振ってみると、お姉ちゃんは笑いながら手を振り返してくれます。

 今は姿を消していないのか、姿がはっきりと見えます。どうやらここにいる間は諦めたようです。

 おねえちゃんの隣、ケイオスさんは缶ジュースをひっくり返したり振ってみたりとしています。開け方が分からないのかな? と思っていると、お姉ちゃんがそれに気付いて、ひったくって開けてあげていました。なんだかんだとお姉ちゃんは面倒見がいいと思います。

 そうしている間にゴール。とりあえず、二人に挨拶でもしておきましょう。

 

「で、何やってるの?」

 

 友達四人に、知り合いがいたから声をかけてくると言うと、待っていてくれるとのことでさくっと終わらせることにします。

 

「ん……。心配だから、ついてきた」

「走って?」

「やはり気付いていたか……」

 

 ケイオスおじさんが苦笑します。メルがため息をつくと、二人ともびくりと肩を震わせました。何かに怯えているようですが……。

 

「ああ……。うん。おとうさんには言わないでおいてあげる」

「そ、そうか!」

「ごめんね。ありがとう」

 

 やはりそれが気がかりだったようです。それなら最初から来なければいいのに、とちょっとだけ思ってしまいます。

 

「あれ? アイリスさん?」

 

 メルの後ろからの声。みんな、こっちが気になってきてしまったみたいです。声をかけてきたのは公園でも何度か会っているなのちゃんです。あかりちゃんとあずさちゃんは、どことなく呆れた様子です。おねえちゃんがメルのことを必要以上に気にかけてしているのは周知の事実なので、来るだろうと予想していたのかもしれません。

 

「もしかして、シュウお兄ちゃんも来てる?」

 

 あかりちゃんが聞いて、これにはメルが首を振りました。

 

「来てないはずだよ。今日もお仕事だし、おうちで寝てるはず」

 

 お父さんはメルにとても優しいですが、こうした学校行事に着いてくるようなことはしません。そこは単純に、

 

「アイリスおねえちゃんとケイオスさんがおかしいだけだから」

「う……」

「ぬ……」

 

 二人が気まずそうに口を閉ざしてそっぽを向きました。自覚はあるようです。メルは小さく笑いながら、友達に言います。

 

「次に行こう!」

 

 メルの号令の元、次の遊具に向かいます。お姉ちゃんとケイオスさんは手を振って見送ってくれました。

 

 

 

 お昼は公園の休憩所でみんなでお弁当を食べます。この後はまたバスに乗って学校に帰ることになります。

 メルたち五人は一つのテーブルを使って、お弁当を広げました。それぞれ違ったお弁当で、見ていて楽しいです。もっとも、メルとあかりちゃん、あずさちゃんはどことなく似通っているお弁当ですが。

 施設のご飯は職員さんが主に作っていますが、お弁当だけは昔から働いているベテランさんが作っています。全員の好みを覚えている人で、その子供の好みに合わせたお弁当を作ってくれるのです。メルのお弁当には、大きめのハンバーグがあります。あかりちゃんはスパゲッティ、あずさちゃんは唐揚げです。そういった好みの違いはありますが、やっぱり作ってる人は同じなので、その他のおかずや盛りつけは似通っています。

 

 視線を巡らせて勇者と魔王を探します。すぐに見つけました。少し遠くで、なにやら会話をしています。表情から察するに少し険悪に見えますが、きっと大丈夫でしょう。こんなところで暴れないはずです。暴れないよね?

 みんなでおかずを交換しながら食べたお弁当は、とても美味しかったです。ハンバーグも半分ほど交換しちゃいましたが、みんな美味しそうに食べてくれたので満足です。

 お片付けをして、帰宅準備。最後にちらりと滑り台を見ます。学校とは関係のない小さな女の子が、お母さんと一緒に滑っています。

 

「お母さんに会いたい?」

 

 いつの間にか隣に立っていたアイリスお姉ちゃんが聞いてきます。その質問に、メルは笑顔で答えます。

 

「会いたくない」

 

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