エルフ子育て記録 ~勇者と魔王の親権争いに巻き込まれたフリーター~   作:龍翠

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「なるほど!」

 

 それはいいことを聞きました。早速その手法を取り入れましょう。

 とりあえず消しゴムで全部消してしまいます。その後に、また同じように書いて、けれど途中で自分の感想を差し入れて。そうすると先ほどよりも文字の量が増えました。これはすごい。

 ちょっとだけ満足していると、誠さんが困ったような笑顔を浮かべていて、隣の奏おねえちゃんに至ってはお腹を押さえてぷるぷる震えています。これはメルにも分かります。笑いを堪えています。

 

「いや、まさか本当に同じことをするなんて……。正直シュウの感想文と大差ないんじゃないかな」

「大差ないどころか、そのまんまよこれ……! だめ、お腹痛い……!」

 

 なんだかちょっと失礼です。おとうさんと一緒で何が悪いのでしょう。

 

「おねえちゃん、どう?」

 

 アイリスおねえちゃんに感想文を渡します。おねえちゃんは不思議そうにしながらもそれを読んで、首を傾げました。

 

「ん……。よく書けてる。お話の流れが分かって、メルがどう思ったのか分かる。二人がどうして笑っているのか分からない」

「ああ、うん。ごめんね、悪気はないんだ」

「ふふ……。そうよ。ちょっと、親子だなと思っただけだから」

 

 二人はそれでもやっぱり楽しそうで。メルとしては、おとうさんと一緒ならやっぱりいいかな、と思います。繋がりが見つけられて満足です。でもやっぱり、こんなに笑われるとちょっとだけ不満になったりもするわけで。

 

「メルちゃん。ショートケーキの苺をあげるわ」

「わあい! ありがとー!」

 

 でもそんな不機嫌も苺で吹き飛びました。

 

 

 

 宿題も終わったので、帰路につきます。もうすぐおとうさんが起きる時間ですし、アイリスおねえちゃんももうちょっとしたらお仕事だそうです。

 施設に帰り着くと、おとうさんが玄関で待っていました。

 

「おかえり、メル」

「おとうさん!」

 

 とりあえず抱きつきます。ぐりぐり頭をこすりつけます。おとうさんは笑いながら、頭を撫でてくれます。いつもの、あったかい手です。

 

「アイリス。いつも悪いな」

「ん……。気にしないで。今日は喫茶店で感想文を書いてた」

「へえ……。感想文か……」

 

 何故かおとうさんが何とも言えない微妙な顔をしました。触れてほしくないものに触れてしまった。、そんな顔です。

 

「これ! 書いたの!」

 

 メルが感想文を取り出して渡すと、おとうさんはメルを撫でて読み始めました。そして。

 

「いやあ……。親子だな……。こんなところで似なくていいんだけど」

 

 頬が引きつっていました。

 メルが首を傾げると、おとうさんは苦笑してまた撫でてくれます。何でも無いよ、と。

 

「あと、おとうさん! これ、院長先生のお使いだよ」

 

 メルがおねえちゃんの持っている袋を指し示します。本当はメルが持ちたかったのですが、さすがに重たいのでおねえちゃんにお願いしました。

 中に入っているのは小さくて丸いケーキです。院長先生がみんなのお土産にたまに買うものだそうです。

 

「ああ、聞いてるよ。ありがとう。早速院長に持って行こうか」

「うん!」

 

 おとうさんが袋を受け取って、ふと思い出したように言いました。

 

「アイリスはどうする? 食べていくか?」

「う……。仕事があるから……」

 

 かなり残念そうな声音です。それが分かったのでしょう、おとうさんは笑いながら、

 

「じゃあ、また今度だな。そのうちそっちにも食べに行くよ」

「ん……。待ってる」

 

 おねえちゃんは名残惜しそうにしながらも、帰っていってしまいました。ちょっとだけ、寂しく思ってしまいます。

 おとうさんと一緒に院長先生にケーキを届けます。ケーキは食後のデザートとして出してくれるそうです。あまりないことなので疑問に思っていると、部屋に戻った後におとうさんが教えてくれました。

 月に一回だけ、みんなにケーキを振る舞う日があるそうです。大した意味はないそうですが、ご褒美みたいなものなのだそうです。

 ちょっとだけ楽しみにしつつ、メルはおとうさんとのお話を楽しむのでした。

 

   ・・・・・

 

 修司が見守る前で、メルは楽しそうに明日の準備をしていた。明日の、学校の準備だ。頑張って終わらせた宿題をせっせと纏めている。

 

「もう夏休みも終わりか……」

 

 長いようで短かった。少しだけ寂しく思えてくる。もっとも、メルは修司以上にそう感じているようで、

 

「おとうさーん」

 

 さっきから何度もひっついてくる。呆れながらも、甘えてくる娘はやっぱりかわいい。

 

「準備は終わったのか?」

「終わったよ。ほめて?」

「よしよし。えらいぞ、メル」

「えへへー」

 

 ぎゅっとメルがしがみついてくる。そんなメルを、修司は優しく撫でてやる。

 

「おとうさん」

「ん?」

「呼んでみただけー」

「仕方ないやつだなあ……」

 

 自分にべったりなのは、嬉しい反面、心配にもなる。大きくなったら、ちゃんと自分から離れることはできるのだろうか。少しだけ、不安だ。

 もっとも、その不安も。

 

「んふふー」

 

 メルの笑顔の前には霧散してしまうのだが。

 

「メル。明日からちゃんと勉強がんばるんだぞ?」

「はーい」

 

 こうして返事をしてくれるのなら、大丈夫だ。修司はそう自分に言い聞かせることにした。

 

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