エルフ子育て記録 ~勇者と魔王の親権争いに巻き込まれたフリーター~   作:龍翠

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79 クリスマスプレゼント

 奏がクリスマスの包装紙で包まれたプレゼントを差し出した。メルは首を傾げて、修司の顔を見上げてくる。

 

「もらっていいぞ」

「うん……。ありがとう、奏おねえちゃん」

「いえいえ! ほらほら、あけてみて!」

 

 奏に促されて、メルは包装紙を破いていく。中から出てきたのは、ピンク色の分厚い、暖かそうなセーターだ。

 

「わあ……」

 

 小さな歓声を上げるメルに、今度はアイリスとケイオスが言う。

 

「私からは、これ」

「俺はこちらだ」

 

 二人が渡したのは、これもまたピンク色の、手袋と毛糸の帽子。

 

「俺からはマフラーだ」

 

 修司はマフラー担当。もちろんピンク色。

 当然ながらこれらは全員で示し合わせた。メルが使う防寒具は施設の子たちと同じで、みんなで使っているものだ。せっかくなので、今後とも使える自分だけの防寒具をプレゼントしようということになった。来年も使えるかは、さすがに分からないが。

 

「ほらほらメルちゃん! 着てみて!」

「う、うん」

 

 戸惑いながら、メルはセーターを着て、手袋をして、帽子をかぶってマフラーを巻く。なんだか全体的にもごもごしたメルになった。

 

「ん……。もこもこメルになった。かわいい」

 

 アイリスの頬がわずかに緩んでいる。修司も同意見だ。

 

「暖かいか?」

「うん!」

 

 メルは大きく頷くと、まずは奏の方へと向かった。奏の手を取り、言う。

 

「奏おねえちゃん、ありがとう!」

「いえいえ! 私も満足してるからね!」

 

 撫でる、のは帽子があるので難しい。奏は短く、ぎゅっとメルを抱きしめた。

 メルは次にアイリスの元へ。同じように、

 

「アイリスおねえちゃん、ありがとう!」

「ん……。んー……」

 

 なにやらアイリスが悩んでいる。その様子にメルは小さく笑うと、手を差し出した。

 

「ぎゅー」

「ん……。ぎゅー」

 

 メルに促されて、アイリスもメルを抱きしめる。なんだか絵になる光景だ。

 満足したのかメルは次にケイオスの元へ。ケイオスへも両手を差し出したが、ケイオスは握手をしただけだった。メルが不満そうに唇を尖らせた。

 

「むー。ぎゅーは?」

「俺がするとただの犯罪だ。父上殿にしてもらえ」

「むう」

 

 理由を聞いてもメルは不満そうだたが、今回は文句を言わずに修司の元へと戻ってきた。足下まで来たので抱き上げて膝の上に載せてやる。なんだかもこもこしていて、抱き心地がいい。ただ、メルの温もりを感じにくいのが少しだけ不満な点だ。

 

「そろそろいいかい?」

 

 誠が声をかけてきた。そちらを見ると、彼の手にはいつの間にかスマホがある。電話をしようとしているわけではなく、持ち方を見ていると写真を撮りたいらしい。

 

「ほら、みんな集まって。記念写真を撮るよ」

 

 誠に促されて、テーブルと椅子を動かしてスペースを作る。真ん中にメルを立たせて、修司はその後ろへ。アイリスが隣に立って、その向こう側にはケイオス。奏は修司を挟んでアイリスの逆隣だ。

 

「はは。シュウ、両手に花だね」

「奏に手を出したら誠に殺されるのに花も何もないと思うんだけど」

「ははは。まさかまさか。あはははは」

 

 誠の笑顔が怖い。いわゆる目が笑っていないというやつだ。誠の視線から、手を出すなよ、という意志が読み取れる。心配しなくても修司から手を出すなんてあり得ない。冗談抜きで誠に殺される気がする。

 軽口を交わしている間に準備が終わったらしい。よしと誠は頷くと、こちらへと走ってきた。そのまま奏の隣に立つ。

 

「十秒後」

「了解。みんな笑顔だぞー。にっこり笑うんだぞー」

「…………。俺がか?」

「あ、ケイオスはそのままでいい。お前が笑うと怖い」

「…………」

「冗談だから落ち込むなよ……」

 

 修司が苦笑して、周りが笑って。ケイオスも咳払いをして、少しぎこちないが笑顔を浮かべた。

 

「メル。にこー」

「にこー!」

 

 それだけで笑顔になるメルはすごいと思う。子供すごい。

 修司も口角を上げたところで、スマホが光った。

 

 

 

 撮影に使ったスマホを持って、奏が奥へと入っていく。おそらく印刷するのだろう。その間に修司たちは後片付けだ。メルもお皿をせっせと運んでいる。率先してお手伝いをするメル。さすが俺の娘、偉い。

 

「シュウ。笑顔が気持ち悪い」

「ひどくないか?」

 

 アイリスに注意されて、修司は片付けに集中する。さすがにちょっとだけ傷ついた。

 片付けを終えたところで、奏が戻ってきた。どうやら終わるのを待っていたらしい。どうせ邪魔になるし、と少しだけ拗ねている。まだ引きずっていたのか、と思わず苦笑した。

 印刷された写真を誠が受け取り、それを小さい額縁に入れた。

 

「はい。僕からのクリスマスプレゼント」

 

 ピンク色の、可愛らしい額縁だった。その額縁に先ほどの写真が収まっている。受け取ったメルは、顔を輝かせて誠へと言った。

 

「ありがとう! 誠おにいちゃん!」

「うん」

 

 微笑みながら、メルを撫でる。メルはもらった写真をためつすがめつ眺めていた。

 

「おとうさん! ほら! ほら!」

 

 満足したのか、嬉しそうに見せびらかしてくる。自分も写っているので何となく恥ずかしく思えてくるが、娘が自慢したそうにしているので見ないわけにもいかない。

 メルと一緒に見た写真は、全員が笑顔だった。

 

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