嵐珠のために鐘は鳴る   作:瑠和

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完全に行き当たりばったりですが、Anotherdaysシリーズではあります。が、これまでのAnotherdaysシリーズは恋が成就するところまででしたが、今回は完結編まで書きます。これが嵐珠への気持ちだ。


第一話 輝きのない毎日

「それ」に出会ったときの感覚はとても不思議な感覚で、ただそこにいるだけでなにか特別なことをしているわけではない。なのに、「それ」が特別な空間を作り出しているような感じがした。

 

「それ」は、俺にはないカガヤキを持っていた。

 

「それ」は…………

 

「ちゃん……兄ちゃん……………お兄ちゃん……」

 

「ん…………」

 

眼を覚ますと、目の前には妹の姿があった。

 

「……………璃奈」

 

「うなされてたよ、大丈夫?」

 

「………ああ。古い、夢を見てたみたいだ」

 

「そっか。朝ごはんできてるから」

 

「ああ」

 

俺の名前は天王寺 瑠和(るな)。虹ヶ咲学園二年生普通科の人間だ。妹である天王寺璃奈が今年一年生として同じ虹ヶ咲学園に入ってきた。

 

それにしても、古い夢を見た気がした。璃奈の顔を見てからもう、どんな夢を見たか忘れてしまったが。

 

それはそれとして、朝が来てしまった。

 

また憂鬱な一日が始まる。そんな後ろ向きな気持ちが、俺をまた暗い気持ちにさせる。

 

 

 

―虹ヶ咲学園―

 

 

 

「瑠和君!おはよう!」

 

「上原……」

 

学校に着き、教室に向かっていると元気な挨拶が飛んできた。振り向くと、そこには去年から同じクラスの上原歩夢が立っていた。

 

歩夢は瑠和の隣まで速足で来ると、歩幅を合わせ、一緒に歩き始めた。

 

「おはよう………ねみ」

 

「昨日はよく眠れなかった?」

 

「いや………変な……夢見てな……」

 

「夢?それってひょっとして璃奈ちゃんの…」

 

「ん?あ………いや、璃奈のこととは関係ない。いつもありがとうな」

 

二人にしかわからない話題を少し話し、二人は教室に着く。

 

鞄を起き、適当に時間を潰し、ホームルームが始まる。

 

そこからいつもと変わらない日常が流れ始める。何かに熱中するわけでもなく、怠惰に過ごすわけでもない、生産性のない日々が流れていく。

 

「…………瑠和君、お昼、侑ちゃんと食べるけど、瑠和君は?」

 

「ん?俺はいいよ。これ食って昼寝でもしてるから」

 

瑠和は購買で買ったパンを揺らしながら答える。

 

「そっか………じゃあ行ってくるね」

 

(上原は俺に良くはしてくれるけど、別に友人関係を深めたいわけじゃないしなぁ)

 

そんなことを思いながら瑠和はパンをかじる。

 

 

 

―放課後―

 

 

 

その日は放課後となり、歩夢は侑と一緒にお台場によってから帰ろうとしていた。

 

「それでさー、あたらしいトキメキが欲しいなって思うんだけど、何がいいかなぁ」

 

「えー?そんなこと言われても……」

 

校門を出ようとしたとき、歩夢はふと、校舎の方を見た。その時、歩夢の視界に瑠和の姿が映り込む。

 

瑠和は歩夢の方を遠くから眺めている。だが、それが意味することを歩夢は知ってる。いや、歩夢にしかわからないことなのだ。

 

「………………」

 

「歩夢?」

 

急に振り返り、足を止めた歩夢を見て侑がいったいどうしたのかと思う。

 

「ご、ごめんね、侑ちゃん!今日ちょっと用事があったの思いだしちゃって!明日また一緒に行かない?」

 

「え?あ、うん……別に大丈夫だけど……」

 

「ほんとにごめんね!」

 

歩夢はそのまま走って帰って行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

ー上原家ー

 

「ふーっ………」

 

歩夢が帰宅してから十数分。歩夢が宿題をやるために机に向かっていると、部屋の扉が開かれた。

 

「…………よう」

 

部屋に入ってきたのは、瑠和だった。

 

「………ありがとうな、高咲と遊びに行くんだったんだろ?」

 

「ううん、侑ちゃんとはいつでも行けるから。それに、そんなことだと思ったし」

 

「………ベッド、借りるな」

 

「うん、私は宿題してるから」

 

瑠和は歩夢のベッドに入りこむとそのまま寝息を立て始めた。歩夢はそんな瑠和を気にする素振りも見せずにただ宿題に取り組んでいた。

 

「………」

 

それから少しして、歩夢は宿題を終え、振り返るが瑠和はまだ眠っていた。歩夢は机から離れ、瑠和が眠っているベッドの縁に座り、瑠和の寝顔を眺めた。

 

「よく寝てるな………」

 

この二人は、恋人同士ではない。利害などない、友人以上、親友未満といった関係だろうか。この関係はおよそ半年ほど前から続いている。

 

二人がこのような関係になったのはまだ話す時ではない。

 

 

 

―翌日―

 

 

 

「瑠和君」

 

「お」

 

翌日、登校した瑠和の前に歩夢が現れた。

 

「どうかしたか?」

 

「先生から、授業で使う資料運ぶようにお願いされてるんだけど………手伝ってもらえない?」

 

「…………ん」

 

断る理由もなく、何なら昨日ベッドを貸してもらったお礼に瑠和は手伝うことにした。職員室まで行き、授業で使う資料の段ボールをもって教室へ向かう。

 

歩夢と話しながら、歩いていた瑠和はその足を止める。そのことに疑問を持った歩夢は瑠和の視線の先を見る。二人の歩く廊下の先に、誰かが立っているのが見えた。

 

逆光でよく見えなかったが、その光は、廊下の先に立っている人物から放たれているようにも思えた。

 

「久しぶりね、瑠和」

 

その声は、瑠和の耳に届き、脳へ伝わり、その脳の中で奥底に眠る記憶を刺激し、昨日の夢と、一つに重なる。

 

「………………お前……嵐珠!!??」

 

「ええ、覚えててくれたのね。瑠和」

 

「え?ええ?え?知り合い!?」

 

 

 

―ホームルーム―

 

 

 

「上海から転校してきたわ!!鐘嵐珠よ!」

 

「…………」

 

朝のホームルームで転入生の紹介を担任がした。嵐珠と名乗った少女を見ながら、瑠和はあんぐりと口を開けていた。

 

そして、その様子を上原歩夢は不安そうな表情で見ていた。

 

一時間目が終わり、チャイムが鳴ると同時に瑠和は嵐珠の座る机まで行った。

 

「どういうつもりだ」

 

「なにが?」

 

「なんでお前が日本に………」

 

「アタシが日本にいちゃ悪い?」

 

「そうじゃねぇけど………なんでわざわざこの学校に………」

 

嵐珠は少し笑顔になって立ち上がる。

 

「あっちで色んなコンテストに出たけど、殆ど一位を取れたの。日本の中でも、色んな学科のあるこの学校なら、アタシをもっと輝かせてくれる…そう思ったから、ここに来たのよ」

 

なにも変わらない

 

瑠和はそう思った。中国から転入してきた嵐珠は、大人顔負けのスタイルと顔を持っている。そして、そのポテンシャルに見合う能力を持った少女なのだ。

 

なぜ、そんなことを瑠和が知っているか。

 

簡単な話である。瑠和は幼いころこの少女と遊んでいた時期があったのだ。

 

「……そうか」

 

「あなたは……以前よりずっと暗くなったわね」

 

「…………そうかもな」

 

 

 

 

 

 

放課後、帰り支度を進めていた瑠和の前に、歩夢が来た。

 

「ねぇ瑠和君、いつもいく店、新作のコッペパンができたんだって!侑ちゃんとも行く約束してて……よかったら一緒に……」

 

瑠和の顔をまともに見れず、もじもじしながらしゃべってた侑がようやく顔を上げると、そこに瑠和の姿はなかった。

 

「…………あれ?」

 

一方、瑠和は歩夢の言葉を聞こうとした瞬間、嵐珠に引っ張られ、気づいたら廊下を引きずられていた。

 

「瑠和!!ちょっと付き合いなさい!!」

 

「せめて俺の許諾を取れよぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

文句を言いつつも、瑠和は抵抗していなかった。楽しそうに瑠和を引っ張るその姿は、かつて見た景色と全く同じで、瑠和は自然と笑みを零してしまうからだ。

 

 

 

―お台場―

 

 

 

「さぁ!!この街を案内して頂戴!!」

 

瑠和は学校から一気にお台場まで引っ張って来られた。

 

「なんで俺が………」

 

「だってあなた以外に知ってる人がいないもの」

 

そりゃそうかと思いつつも、それでも無理やり引っ張られて案内させられる筋合いはないと思っていた。だが

、そんなのでも昔からの馴染みだ。瑠和はダイバーシティへ向かって歩きはじめる。

 

「…………ま、適当に行きますか」

 

「ええ!」

 

瑠和と嵐珠はまずダイバーシティの内部を愉しみ始めた。雑貨や本屋、アニメショップなどを回りながら日本のトレンドなんかも嵐珠へ伝えた。

 

一通り見てから二人は、ダイバーシティ外にある移動販売でコッペパンを買う。

 

「これも日本のトレンドなの?」

 

「トレンド………じゃねぇけど。よく食べるからな」

 

「へぇ………」

 

二人で適当に腰を掛けて食べようとしたとき、遠くから歓声が聞こえた。

 

「何かしら?」

 

「………行ってみるか」

 

普段なら気にしないような歓声だったが、せっかく嵐珠といるのだしという軽い気持ちで、歓声のする方へ足を向ける。

 

「なりたい自分を我慢しないでいいよ!♪」

 

「…これは…」

 

たどり着いた先にいたのは、一人のアイドル。その会場全てを燃やし尽くさんとする圧倒的なパフォーマンス。最高の歌声。その魅力に、瑠和は、嵐珠は、立ち尽くしていた。

 

「…………ありがとう…ございました」

 

スクールアイドルは曲を終えると、一礼をして去って行った。

 

「…………瑠和」

 

「……」

 

「瑠和ってば!」

 

「あ…ああ、どうした?」

 

瑠和はそのスクールアイドルの魅力、と呼べば良いのか、ともかくステージに見惚れていた。嵐珠の呼び掛けにも反応できず、慌てて嵐珠を見る。

 

「これよ!これだわ!」

 

嵐珠は子供のように目を輝かせて瑠和の肩をつかむ。

 

「な、なにが?」

 

「アタシが日本でやるべきこと!いいえ!嵐珠を輝かせてくれる……カガヤキ!」

 

「っ!」

 

嵐珠の言葉と共に、世界が照らされたような気がした。その事に瑠和は驚き、何かに納得したような表情で笑う。

 

「……………ああ。そうかもな」

 

 

 

「鐘嵐珠」は、全てを照らす、カガヤキを持っていた。

 

 

 

 

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