嵐珠のために鐘は鳴る   作:瑠和

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彼方!お誕生日おめでとう!嵐珠メインの話だけど、お祝い投稿です!

この話のどこかに、彼方も出てるかも?


第二話 彼方の記憶

「ただいま」

 

少し上ずった声で瑠和は帰宅した。

 

「おかえりなさい」

 

たまたまだろうか、瑠和が帰ってきたところに璃奈がいた。璃奈の姿を見て、瑠和は一瞬動きを止めた。

 

「璃奈…………」

 

「どうかした?」

 

「…………いや、何でも。今からご飯作るから」

 

「うん………」

 

それだけ話すと璃奈は自室へ行ってしまった。璃奈が部屋に入る音を聞いてから瑠和はその場にしゃがみこむ。先ほどまで昂っていたテンションはどこへやら、瑠和は落胆し、ため息をつく。

 

鐘嵐珠に久しぶりに会えたことで少しだけ、この先の人生が明るくなった気がした。それは鐘嵐珠がカガヤキを持っているからだ。

 

だが、瑠和が抱えてる闇は一番身近なところにある。

 

それがこの兄妹関係だ。

 

瑠和は幼いころ、ずっと両親の愛に飢えていた。仕事で忙しく全くかまってもらえなかったからだ。そんな中でも瑠和は兄として、しっかり璃奈の面倒を見ていた。

 

だが、ある日。引っ越しの話が出た。両親の勝手に振り回されたくなかった瑠和は猛反発した。

 

結果、瑠和は近くの親戚に引き取られ、璃奈と離れ離れになった。高校入学と同時に瑠和は家に戻ってきたのだが、再会した璃奈は表情が表に出せず、それが原因で友人も作れなくなった一人ぼっちの妹になっていた。

 

瑠和は璃奈を一人ぼっちにしてしまった罪の意識に苛まれているのだ。

 

「…………」

 

 

―夕食時―

 

 

夕食の時間も当然二人きりだ。

 

ほとんど会話もなく、食器の音だけが居間に響く。

 

「なぁ、璃奈。今日虹ヶ咲に転入生が来たの知ってるか?」

 

「………そうなの?」

 

「ああ。俺のクラスだったんだが、それが、俺が昔時々遊んでたいわゆる幼馴染でさ」

 

「そんな子いたんだ」

 

「あ、ああ。そいつがさ、スクールアイドルやりたいとか言い始めて」

 

「スクールアイドル?」

 

聞きなれない単語に、璃奈は首をかしげる。

 

「学校でアイドルやるってやつらしい。今日うちの学校のスクールアイドルがライブやっててさ、それ見てやりたいって」

 

「そうだったんだ」

 

「…………そいつ、すっごい輝いてるやつでさ………その応援をしてみたいって思うんだ。なぁ璃奈、もしよかったらお前も」

 

「…………私は、いいよ」

 

瑠和の誘いに璃奈は食い気味に断った。その言葉に瑠和は怖気づいてしまった。璃奈が友達を作るいい機会になるかもしれないという考えだったが、こんな言われ方をしてしまっては瑠和もそれ以上は言えない。

 

「……お兄ちゃんに迷惑かけるかもしれないし。、スクールアイドルのこともよく知らないし……」

 

「それは、俺もあいつも一緒だよ………だ、大丈夫だ」

 

「…………でも、私、人付き合い苦手だから。お兄ちゃんの応援はしてるから」

 

「………」

 

瑠和も璃奈を一人にしてしまった手前、それ以上強くは言えなかった。瑠和の憂いは晴れないまま、翌日を迎える。

 

 

 

―翌日―

 

 

 

「おはよう!」

 

「おう、おはよう」

 

今朝も今朝とて瑠和に侑の元気な声が届く。

 

「ねぇ!瑠和君!スクールアイドルって知ってる!?」

 

「!」

 

よもやその言葉を嵐珠以外から聞くこととなるとは瑠和も思っていなかった。

 

「お前、どうしてそれを………」

 

「昨日ダイバーシティでうちの学校のスクールアイドルのライブを歩夢と一緒に観てさぁ!それで、今日会いに行くんだけど………昨日、瑠和君もいたよね!」

 

(そうか。高咲も昨日のステージにいたのか)

 

瑠和たちは気づいていなかったが、侑たちもあの会場におり、瑠和と嵐珠がいることに気付いていたようだ。

 

「ああ、いたけど」

 

「もしよかったら一緒に行かない!?」

 

「………そうだな。俺たちも行こうと思ってたんだ」

 

「本当!?じゃあ一緒に………ん?俺………「たち」?」

 

瑠和の言葉に、侑は喜んだがその言葉の中のワンフレーズを気にした。

 

「ん?ああ、ほら、昨日の嵐珠も一緒にって」

 

「……」

 

 

 

ー放課後ー

 

 

 

放課後になり、瑠和、嵐珠、侑、歩夢の四人は集合した。

 

「紹介するよ。もう知ってるかもしれないけど鐘嵐珠。まぁ、幼なじみ…みたいなものかな」

 

「………改めて、よろしくね。二人もスクールアイドルを目指すの?」

 

「え!?いや、そうじゃないんだけど昨日のライブすごかったから、是非会って感想言ったり、サインとかもらえないかなって!」

 

「……そう」

 

「んでこっちが俺の友達の高咲侑と上原歩夢だ。二人も幼馴染なんだってさ」

 

「よろしくね」

 

「よろしく」

 

「ええ」

 

目的は違えど目指す場所は同じ四人は部室棟へ向かった。

 

「スクールアイドル同好会……ねぇ。5人写真に写ってるけど、なんで昨日は一人だったのかしら」

 

「さぁな。まぁ、会って聞いてみりゃわかるだろ………つーか、なんで上原はそんな機嫌悪いわけ?」

 

瑠和は後ろで侑と並んで歩いている歩夢を見る。歩夢は今朝からずっと妙に機嫌が悪く、部活棟へ向かう道中もどことなく不機嫌なのは伝わっていた。

 

「別に!」

 

ぷいっとそっぽを向かれてしまう。

 

(俺なんかやったかな…)

 

そんなこんなで部活棟に到着すると、改めてその広さに驚かされる。

 

「広いのねぇ…」

 

「俺も初めて見たときは腰を抜かしたよ。まぁ、改めてみても広いもんだな」

 

「ところで、スクールアイドル同好会の部屋はわかってるの?」

 

「それがまだ全然…まぁでも、探せば見つかるでしょ!」

 

楽観的なスタートを切り、四人は部室棟の中を歩き回る。スクールアイドル同好会の部室はどこかと訪ねたり、聞き回ったりもしてみたが一向に見つからなかった。

 

「全然見つからない~」

 

「この学校、同好会だけで100以上あるらしいよ」

 

「マジか…」

 

「もうバテたの?仕方ないわね…」

 

瑠和達とは違い、嵐珠はまだピンピンしていた。大会がどうと言うような話もしていたし、体力はあるのだろうなと思いながら、視線を嵐珠に向けた。

 

「はぁ…ん?」

 

嵐珠を見たとき、たまたま視界の隅に見覚えのある人物が映る。

 

視界に映った人物は、妹である天王寺璃奈と、金髪の女生徒。友達はいないと聞いていた璃奈に、ガラの悪そうな相手が近くにいるとなれば、もはや悪い想像しかできない。

 

(璃奈!?なんでこんなとこに……しかもあいつ…いったい誰だ!?)

 

「ん?瑠和君どうしたの?」

 

「わ、悪い!急用思いだした!!」

 

「ええ!?」

 

瑠和は二人を追いかけて行ってしまった。

 

「…………え~」

 

その場に残されてしまった三人は落胆するしかできなかったが、嵐珠はいい機会だと思った。嵐珠は歩夢の方を見る。

 

「…………ねぇ。歩夢って言ったかしら」

 

「え?う、うん」

 

「アナタ………」

 

「…?」

 

嵐珠は喉まで出た言葉を飲み込んだ。まだ聞くべきことではないと思ったからだ。

 

「ごめんなさい。なんでもないわ。まぁ、ともかく今は探しましょ。同好会の部屋」

 

その後、三人は道を尋ねまくってようやく部室棟の隅にあった同好会の部屋にたどり着いた。

 

「ここが………」

 

「そこで何をしているんですか?」

 

いざ同好会の扉を開けようと手を開けた瞬間、背後から声がした。振り返るとそこには三つ編みに眼鏡をかけたいかにも優等生そうな少女が立っていた。

 

 

 

 

 

 

一方、瑠和は金髪の少女と璃奈の後を追っていた。しばらく追いかけていると、二人は体育館の前で別れた。瑠和はすぐに別の入り口から体育館に入り、金髪の少女が入った入り口の方へ向かう。

 

「さーってと」

 

「なぁおい!」

 

更衣室に入ろうとした金髪の少女に瑠和は声をかける。

 

「ん?キミは…………だれ?」

 

「………お前、さっきの女の子とはどんな関係だ?」

 

あまり見た目で相手を判断したくないが、正直あまりいいイメージではない少女に瑠和は少し強気で話しかけた。

 

「ええ?いやぁ関係って聞かれても……………ん?」

 

急に変なことを聞かれ少女は困惑していたが、話しかけてきた瑠奈の容姿を見て何かに気付く。

 

「ひょっとして、りなりーのお兄ちゃん?」

 

「っ!…………ああそうだ!お前!璃奈のなんだ!」

 

璃奈がこの少女に自分から声をかけたとは考えにくい。もし、イジメのようなものだったときは…。

 

嫌な考えがよぎりながらも瑠和は璃奈との関係性を訪ねた。

 

「……そっか。君がりなりーのお兄ちゃんか…。その様子みてると、りなりーのこと嫌いって訳じゃないんだね」

 

「…なんの話だ?」

 

「…場所、変えよっか」

 

金髪の少女は近くにいたバスケ部の生徒に声をかけてから移動した。どうやら部活の助っ人を頼まれていたらしい。

 

二人は西棟屋上まで来た。

 

「あたしの名前は宮下愛。情報処理学科の二年。よろしくね。とりあえず、誤解がないように言っておくけど、私は別にりなりーのこといじめてるとか、パシりに使ったりしてる訳じゃないよ」

 

こちらの考えを見透かされたような解答が来たことに瑠和は驚く。

 

「なんだ?心でも読めるのか?」

 

「ううん?ほら、私こんなナリだからさ、ひょっとして勘違いしてるかもって」

 

ギャルらしい見た目ゆえのデメリットもある程度理解しているらしい。だが、璃奈をパシリにつかっている訳でもないなら、尚更学年も違う璃奈が懐いていた理由がわからない。

 

「じゃあお前、璃奈のなんなんだ?学科は同じみたいだが…」

 

「……友達だよ」

 

「なに?」

 

「たまたまさ………りなりーが一人でいるの見てさ……その時の顔が、昔の私そっくりだった。私、いまはこんな感じだけどちっちゃい頃は人見知りで、臆病で……だから、一人でいたりなりーが昔の私みたいで、放っておけなかった」

 

愛の表情を見て、少なくとも嘘を言っているわけではないことがわかった。少し安心し、瑠和は座る。

 

「…昔から、人の顔を見ると色が見える」

 

「え?」

 

「その色で、相手の感情とかが結構わかる」

 

「あー共感覚…って言うんだっけ?」

 

「かもな。だからお前が言ってることが嘘じゃないのは、なんとなくわかるよ」

 

「信頼してくれたみたいで、安心したよ…………でも、愛さんはまだ心配してることがあるんだ」

 

そういえばさっき、「りなりーのこと、嫌いって訳じゃないんだね」と愛が言ったことを思い出した。

 

「さっき言ってたのはどういうことだ?」

 

「うんまぁ……りなりーが話してたんだ。もしかしたら、お兄ちゃんに嫌われてるかもって」

 

「…え?」

 

 

 

 

 

「…」

 

瑠和は夕日に照らされた帰路をとぼとぼと歩いていた。

 

愛から聞かされたのは、璃奈が普段話すことのない心情。

 

瑠和が再び一緒に暮らすようになってから、以前とは違い、少し距離を置かれるようになったことに不安を覚えていたようだ。

 

それを愛に相談していたらしい。

 

「………」

 

「瑠和君?」

 

名前を呼ばれ、顔を上げるとそこには私服で買い物袋を持った歩夢がいた。

 

「上原…」

 

 

 

―海風公園―

 

 

 

歩夢は下校後に買い物を頼まれ、帰り道にたまたま瑠和に会ったらしい。

 

「……いったいどうしたの?あんな暗い顔して………」

 

歩夢はあんな顔をしている瑠和を心配し、話を聞こうと公園まで来ていた。だが、瑠和は一応ついて来はしたものの、何も話そうとはしなかった。

 

「…………」

 

(また…………上原に迷惑かけるのか……俺は)

 

 

 

◆◆

 

 

 

―数か月前―

 

それはまだ瑠和や歩夢が一年生だったころの話だ。瑠和は璃奈の中学の卒業式に参加していた。

 

そこで目撃してしまったのだ。卒業式だというのに誰とも話さず、打ち上げというようなクラス全体で集まる約束もせずにさっさと荷物をまとめて教室を出た璃奈の姿を。

 

(…………俺のせいだ)

 

瑠和は璃奈が表情を表に出せず、友人を作れなくなったのは自分のせいだと思うようになった。あの日、自分勝手なわがままで、璃奈を一人ぼっちにした自分のせいだと。

 

もっと自分が一緒にいてやれば……そんな後悔の念ばかりだが溜まり、よく寝付けない日々が続いた。

 

「……………璃奈」

 

そんな寝不足の日々が続いたある日、瑠和も限界が来た。登校の途中、瑠和は意識を失い、倒れかける。だが、それを誰かが支えてくれたことだけはわかった。

 

「おっとと、大丈夫?」

 

「ごめんな………さい………」

 

いままで眠れなかったのに、なぜかその腕に抱かれていると、瑠和は自然と瞼が重くなっていった。

 

「…………う」

 

瑠和は学校の保健室で目を覚ました。

 

「あ、目が覚めた?」

 

声がした。その方向を見てみると、同じクラスのの上原歩夢がいた。

 

「上原………」

 

「正門前で倒れちゃうから、心配したんだよ?でも、保健室の先生がただの寝不足だろうって」

 

「…………そうか…お前が…迷惑かけたな」

 

「気にしないで?それより、もう大丈夫なの?」

 

「ああ、俺は……」

 

刹那、瑠和の脳裏に璃奈の姿がチラついた。

 

その瞬間、瑠和は瞳から涙をこぼしてしまった。

 

「あ………」

 

「る、瑠和君!?どうしたの!?大丈夫!?」

 

「ご………ごめん…………なんでもない」

 

「何でもないわけないよ!どこか痛む?」

 

「…………………心が……痛いんだ」

 

瑠和は涙を流しながら、胸を押さえた。我ながら何を言っているんだろうと思う。歩夢だっていきなりこんなことを言われたら困惑するだろうと思いながらも口に出さずにはいられなかった

 

「…………」

 

歩夢は黙って、そっと瑠和を抱きしめた。

 

「……うえ…………は…ら?」

 

「あ…………えと!ごめんね!その、すっごい寂しそうだったから…………ちょっとは気がまぎれるかなって………」

 

歩夢はいい方法が思いつかず、ついやってしまったことなんだろう。

 

だがそれは

 

瑠和にとって

 

衝撃であり

 

感動であり

 

パズルのピースがハマったような

 

感触だった。

 

「……………」

 

親に甘えるという行動を知らなかった瑠和にとって、歩夢に抱きしめられたその感触は、懐かしく、そして安心する気持ちに、再び涙があふれてきた。

 

「う……………うぅぅぅ………うぁぁぁ……」

 

「ええ!だ、大丈夫!?」

 

「だ、大丈夫だ…ごめん………お前の手の中………すごく、安心できて………」

 

「瑠和君………」

 

泣いていた瑠和は、しばらく泣いた後、泣きつかれたのか歩夢の胸の中で眠ってしまった。

 

「…………」

 

 

 

―放課後―

 

 

 

歩夢が下校しようとしていると、そこに瑠和が現れた。

 

「………よう」

 

「あ、瑠和君」

 

「さっきは悪かったな。……それから、ありがとう」

 

「ううん。気分はどう?」

 

「ああ、さっきよりはいい。ありがとうな」

 

「そっか、よかった」

 

「……」

 

「……」

 

なんとも言えない無言の間があり、二人とも愛想笑いを浮かべる。

 

「最近、寝不足なのかな?隈があるように見えてたけど」

 

「ああ………実はな」

 

「…………さっき、私の手の中なら安心できるって………言ってたよね」

 

「そうだったな。なんだか落ち着けた」

 

「……」

 

歩夢は顔を赤くしながら、もじもじとしていた。何か言い出そうとしているが、恥ずかしいのか、緊張しているのか中々言い出せない様だ。

 

「じゃあ、今日はありがとうな。また明日」

 

瑠和は歩夢の表情から何か言いたそうにしているのを色で判断していたが、それを手助けしてやれるほどの体力を持ち合わせていなかった。

 

だからもう今日は帰ろうとしたのだ。

 

「あ、あのぉ!」

 

帰ろうとした瑠和を歩夢が呼び止めた。

 

「…」

 

「もし、また…寝たくなったら………呼んで?そばにいるよ…」

 

「………ははっ、なんだよそれ」

 

瑠和は歩夢の言葉を冗談として受け流した。

 

 

 

続く




次回は回想の続きになります。
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