”裏”の戦争
―――会場の
歓声が止まない。貴族生徒も平民生徒も、1年生も2年生も、皆等しく聞き入っている。
舞台上で輝くのは12人の生徒。人種性別階級の垣根を超えて集った真紅の制服を纏う彼らが、今は純白の衣装を着て歓声を浴び続けている。
一曲目を歌い切ったマキアスがマイクを下ろす。額には汗が浮かび、疲れが押し寄せてきた。
だが、悪くない疲れだ。怠いと思う以前に、高揚感が身を満たす。
ポン、と背が叩かれた。
いつものような自信満々の笑みを浮かべて、彼は言った。お疲れ、次は俺だ。と。
マイクを渡す。その代わりにベースはマキアスに移り、満を持して彼が舞台最前に立つ。
一瞬だけ、シンと静まり返った。
彼が歓迎されていないのではない。そうなるように仕向けたのだ。視線を集め、集中を高め、一度の呼吸で気持ちを切り替える。
まさかこんな日が来るとは思わなかった。自分が、努めて目立つような立場からは避けていた自分が、スポットライトを浴びて舞台の上に立っている。
偽りでも何でもない、レイ・クレイドルという自分自身のオンステージ。仲間たちが奏でる音を背後に、その声で先程以上に観客を沸かせなければならない。
―――上等。あの魔女に比べれば児戯にも等しい技術だが、その程度はやってみせるとも。
ステージ上から観客席を見渡す。……知っている顔が幾つもある。
それならば、無様な真似は見せられない。今更、この程度で緊張などはしない。
無言のまま、マイクを数秒手で
場は整った。後はひたすら盛り上げるだけだ。
『熱を上げる準備はできたか? 歓声を上げる喉の調子は? 此処に集まった皆、残らず全員必ず満足させてやるよ』
わざとキザったい口上を皮切りに、演奏が始まる。
口角を吊り上げ、声を張る。思えば初めてなのかもしれないと思いながら。
晴れ舞台で、自分が主人公になって盛り上げる。身内だけではなく、学院際を、自分たちのライブを見に来た人全てを盛り上げる役目。
悪くない―――そう、素直に思えた。
―――*―――*―――
コレに自分は拒絶されている。お前は入れぬという意思を感じる。
それを、意外には思わなかった。以前この旧校舎に来た際に扉に拒絶された時は少々解せない所もあったが、今ならば理解もできる。
突如、旧校舎を覆ったこの結界は、無論の事教官も含めて大騒動となった。
旧校舎敷地内以外に影響を齎していないとはいえ、時間が経てばどうなるかなど誰も分からない。故に、影響が出る可能性を考慮して翌日に迫った学院際そのものの中止を検討されるまでに至ってしまった。
しかし、それに待ったをかけた。
元より旧校舎探索は彼らの仕事。潜る度に新しい世界に誘われ、現代の科学では解明できないような超常現象がそこかしこに散らばっていた。
ならば、今回のこの異常現象もその延長線上だ。
自分たちが潜り、解決し、帰還する。ただそれだけの事。
何より、今まで学生たちが懸命に準備をしてきた学院際がこのような事で中止になるなど許されない。
その考えは一緒だった。だからこそリィンを先頭に、躊躇う事も無く結界を潜り抜けた。潜り抜けられなかったのは、ただ一人。
その理由。理解ができるだけで、面白くは無かったが。
「(そんなに嫌かね。この魂と刀が)」
ふぅ、と息を吐くと、それを落胆と捉えてしまったのかリィンが話しかけてくる。
「レイ……」
「気にするな。お前たちが通れるって事は、これはお前たちが乗り越えるべき試練って事だ。―――何も変わらない。今までの特別実習の延長戦みたいなものだ。お前らなら出来る」
だから、と。
結界の向こう側に行った彼らに向けて、レイは握り拳を突き出した。
「明日を掴んで来い。全員、揃って帰って来いよ」
「あぁ、勿論だ」
向こう側にいる全員が、レイに握り拳を返してきた。
即答でそう返せるのならば、心配はいらないだろう。それに、レイの予想が正しければ、これは乗り越えられない試練ではないはずだ。
横目でエマを見ると、神妙な顔で一つ頷いていた。
ならば、
全員が、後ろ髪を引かれるかのように最後にレイの姿を一瞥してから、旧校舎の扉の中に消えていく。
その後ろ姿を見送ってから、レイは再び、先程結界に触れようとしていた自分の掌を見る。
明確な拒絶。あのまま無理矢理に手を突っ込んでいたら、間違いなく腕ごと消し飛んでいただろう。
《灰》の方が拒絶したのではない。恐らくはもっと根幹の―――深く根付いた方からのものだ。
「―――っは」
笑った。
自分という存在を厭うだけならば、寧ろ誘い込むべきだった。誘い込んだ上で、消し飛ばせば良いだけの話。
わざわざ自身の領域に招かなかったというのは、つまるところ少しは恐れたのだ。
神にも近しい存在が、ただ一人の人間を僅かでも恐れる。それが面白可笑しくなくて何だと言うのだ。
「アンタは―――」
隣にいたサラが何か言葉を挟もうとする。
振り返ってみれば、レイ・クレイドルが今までの特別実習で彼らと共に戦った事など数えるほどしかない。
理由は単純、
ケルディックでは複数の大型魔獣を引き付けて戦い。
バリアハートでは拘束されたマキアスの没収されていた武装を取り返すために単独で行動し。
ノルドと帝都では《Ⅹ》―――ザナレイアとの死闘を繰り広げ。
クロスベルではオズボーンとの密約に則ってテロ組織の殲滅に手を貸し。
ルーレでは《結社》の《使徒》の一人である《
それが、仕方がない事であるのも理解していた。
力を持っているというのはそういう事だ。そしてそれは同時に、それまではリィン達がまだ「守られる側の存在」であったという事。
しかし、今回は違う。レイは彼らを送り出した。「お前らならばできる」という、信頼の言葉を投げかけて。
それでも。
彼の横顔は確かに笑ってはいたが、それでも―――。
何処か、悲しそうな顔はしていたのだ。
「……ま、悔しくねぇって言ったら嘘になるわな」
苦笑しながら、それでも本心は隠さずに言い放つ。
「アイツらと轡を並べて、背中を預けて戦うってのはある意味で俺の望みの一つでもある。……別にアイツらが弱いって訳じゃねぇ。ただ単に今まで相手が悪すぎた」
”達人級”と相対して、生き残るだけの地力を彼らは有していなかった。
それを弱いなどと誹るつもりは毛頭ない。そんな事を言えるのは物事をよく知らない阿呆だけだ。
そしてレイも、そんな敵らを前にしてリィン達を護り切る確信は無かった。
でも今なら、今ならばと。
今回ならば皆と一緒に戦えるかもしれないと思った矢先の拒絶である。
面白可笑しい、と思うのも確かだが、同時にこうも思っていた。―――
いけないと自制した。
この程度の事で苛立ちを見せてはならない。これが最後のチャンスであるわけでもない。心に浮き上がった波を鎮めようとして―――。
ゾクリ、と。
比喩ではなく真に刹那の瞬間、形容し難い悍ましい殺意を感じた。
潜む必殺の意思。泥の中に霊を垣間見たようなそれとは違う。一寸先も見通せない闇の中で刃の煌めきを視認した時の恐怖だ。
だが、この旧校舎前に集った者たちの中でそれを感じたのはレイ一人。
此処にはサラがいる。自分と同じ”達人級”のヴァンダイクもいる。そして何より、そうした殺意に何より敏感な筈のシャロンでさえ反応していない。
悟った。その悪い視界の中、野次馬を含めて多数集まった人間の中から唯一人にだけ刺し殺すかのような殺気を飛ばせる存在。
そしてこの殺気の質。……嘗て追いかけ回されたことがあるから、良く知っている。
殺気の元を感知しようとするが、無論引っかからない。そこまで足掻いてみたところで、レイは諦めた。
「サラ」
「どうしたのよ?」
「少し、離れる」
それだけを短く告げ、【瞬刻】を用いてその場を離れる。
旧校舎周辺は木々が生い茂るエリアだ。下手をすれば、移動するだけでも東西南北の感覚が曖昧になる。
そこを駆け抜ける。駆け出した直後から、僅かに鼻先を気配が掠めている。まるで、餌を眼前に吊らされた魚のように。
そして、止まった。旧校舎からも大分離れた場所。鬱蒼と茂った木々の葉の所為で月の光すらもまともに届かない暗闇の中、レイは携えていた愛刀の柄に手を掛ける。
視線を動かさずに、ただ伏せる。
此処に至って、視覚に頼るのは寧ろ愚策。柄に指先を当てた状態のまま、意識を静寂の中に沈みこませる。
波紋の一つすら浮かび上がらない水面。その状態まで精神を研ぎ澄ませれば、例え蜘蛛の糸程度の異物であろうとも入り込めば即座に反応できる。
ただ、世の中には存在するのだ。
”達人級”の武人がそこまで備えても尚、直感に頼らざるを得なくなるほどに気配を隠す
―――首と、心臓。
人の凡そ急所と呼べるその二ヶ所を、黒い刃が狙い刺す。
それを、レイは極致に至った反応力で防ぐ。首に至ろうとした刃には刀身を、心臓に至ろうとした刃には鞘を以て。
賭けだった。その人物が狙うのならばきっとこの二ヶ所だろうと、そう予想していたからこそ、ギリギリで防げた。
冷や汗が背中を伝う。
全くもって心臓に悪すぎる。今この人は、その一瞬だけ手加減抜きで本気でレイ・クレイドルを殺しに来たのだ。
ザァッと木々の間を吹き抜ける風。その風が彼女が纏った漆黒のローブをはためかせ、そこでようやくその輪郭が現れる。
褐色肌に黒髪。その肌の大半を覆う服は僅かの曇りもない漆黒。その中で炯々と輝く真紅の双眸。
そしてその表情が、変わったところを見た事がない。まるで、喜怒哀楽の感情を全て奪われた殺戮兵器のように。
「……どういうつもりだ、《
「…………」
「いや、それが狙いならわざわざ俺を誘い出すまでもねぇか。アンタが本気だったらあの場所でも誰にも気づかれず俺を殺せる」
すると、《
「失礼を。久方ぶりですね《天剣》殿。当兵の事を覚えておいででしたか。ハイ」
「当代最強の暗殺者なんぞ、忘れたくても忘れられねぇよ。アンタに追いかけ回されて、一体何度死にかけたと思っていやがる」
皮肉を言いながら、刀身を鞘に収める。本来であれば夜間にこの人物の前で無防備になるなど自殺行為と同等だが、彼方があっさりと引いたという事は、少なくとも此方をこれ以上害する意図は無いという事。
「光栄です。ハイ。先程の一撃はまぁ、
「……チッ」
特化型の”達人級”の極み。それを十全に相手するには、レイはまだ練度が足りない。
小手調べであっても、防ぐのが精一杯だったのだ。つまりは、今の自分ではこの程度が限界という事。
影に潜み、影を生み、影を統べる暗殺者。
そして夜は、
だからこそ、これ以上の抵抗は無意味だ。そう諦めた瞬間、周囲の空間が不自然に歪曲した。
半異空間化。レイが使える結界呪術とは段階が違う。その瞬間、囲まれたその空間内だけが”外”と半次元ズレた状態となる。
「説明は、貰えるんだろうな? 副長殿?」
「―――えぇ、勿論です。そしてレシアさん? 余計な事はしないで下さいと、散々言いましたよね?」
「是。しかしこの程度は挨拶のようなものです。ハイ。”余計な事”というカテゴリには含まれないと判断いたしました。ハイ」
「……頭が痛くなってきますね、ホント」
「上にも下にも問題抱えるとか割と騎士団も魔境だよな」
片手で頭を抱えながら、トールズ士官学院歴史教官―――を仮の姿とする《
「単刀直入にお訊きしますよ。レイ・クレイドル君。―――今の君は、ちゃんと”人間”ですか?」
「何?」
馬鹿にしている、という様子ではない。
とはいえ、笑えないのも事実だ。これ見よがしに鍔を鳴らして不機嫌さを表に出しながら、答える。
「”俺”は”俺”だ。ヒトをやめたつもりも、神に堕ちたつもりもない。……大方クロスベル方面の異変と、今回の旧校舎の異変を重ねて確かめてつもりだろうが、無意味だよ」
「…………」
「誤魔化さないで言えよ、《匣使い》。もし俺がアレらの影響を受けて”神堕ち”していたら一撃で仕留めるために《
苦しむ前に、人ならざるものに成ってしまう前に一息に、というのは慈悲なのだろう。その優しさだけは受け入れる。……だが。
「俺よりも先にどうにかしなきゃならん奴がいるんじゃないか? それとも、
それが誰を指しているのか、他ならない”副長”であるトマスが知らないわけがない。
一瞬だけ言葉を言い澱み、しかし流石に騙し切れないと悟ったのか、その疑問に対して答えを返した。
「……フラウフェーン卿に関しては、教会上層部から「手出し無用」と。それだけで、察していただけますね?」
「ハッ、教義の為だ何だと面倒臭ぇ。枢機卿の爺共、現人神の可能性にそれだけお熱ってところか」
ザナレイア・フラウフェーン。元七耀教会《
約50年前、近年の中では最高戦力であったと謳われていた騎士団の中にあって、長らく不在であった第二位に変わり副長を務めてあげていた彼女は、ある日《
部下であった正騎士・従騎士十数名を一人残らず惨殺し、止めに向かった当時の《守護騎士》第五位、第九位をも殺害し、逃亡。《封聖省》設立以来最悪の事件として知られ、当時の上層部の面子がまるっとすり替わったとか。
その後、彼女はどんな経緯を経たのか《
だからこそ、レイはザナレイアという教会にとっては稀代の背信者が、何故今まで野放しにされ続けているのかと気になっていた。
ザナレイアは確かに《
それこそ、此処にいるレシアを差し向ければ、斃せるか否かは不明だが深手を負わせることはできるだろうと。
だが、今の短い説明で理解した。
神に成りかけている今のザナレイアは、善悪どうであれ教会の悲願の一つであるのだろう。
見方を変えてみれば、嘗ての至宝の残滓に
人が、神と成る。それは女神を祀る彼らにとっては禁忌であり、悲願でもあるのだろう。だからこそ、彼女を生かしている。
そして、神と成るのは嘗て女神に仕えていた栄えある騎士
《結社》を抜けた後、妄執すら感じさせるほどのしつこさで騎士団の連中がレイの聖遺物を狙ってきた真意の一つはそれなのだろう。
「だが残念だな。その悲願は叶わない。―――アレは俺が殺す。殺さなきゃならない。例え教会の連中にだって、それは邪魔させねぇ」
それは、レイ・クレイドルの使命だ。
亡き義姉への手向けでもあり、同じように運命に狂わされた者へ対するせめてもの慈悲。
誰にも邪魔はさせないし、誰にも手出しはさせない。
「……これは私個人の考えですが、フラウフェーン卿はこのままにしておくべきではないと思っています」
「ほう?」
「神とは
「神に仕える者としての信条か」
「まぁそれもありますが、半分以上私の信条です。歴史教師は仮の姿ではありますが、歴史好きなのは本当ですからね。ヒトが歩んできた歴史を学んでいると、あまり大層すぎるものに手を伸ばそうとは思わなくなるのです」
「そういうモンかね」
「嘗て《空》の至宝の恩恵を享受していた人類は堕落の極みに在ったと言います。過ぎたる愛は毒になるものですよ」
価値観としてはマトモだ。神は人にとって掛け替えのないものであるという事実を享受しながらも、歴史を紡ぐのは人間であるべきと思っている。
神とは神以外の何物でも在ってはならない。その考えは、レイも同じであった。……その神が、人間を助けるか否かは別問題だが。
「アンタはどうなんだ、レシア」
「?」
「アンタも一応騎士団の一員だろう。人が神に成る事を喜ぶ上層部と同じ考えなのか否か、それを訊いている」
すると彼女は、小首を傾げた。
「
「……流石は教会の単独暗殺機構。教義すらもどうでもいいってか」
《守護騎士》の中で唯一、
部下を持たず、
七耀教会の中でも《
第十位の地位。存在しているはずなのに、姿が見えない幻のようなもの。夜にのみ現れ、教会上層部が定めた神敵の命を狩り続ける暗殺機構。
そこに慈悲は無い。そこに情けは無い。標的がどのような過去を持ち、どのような悲劇に見舞われていようとも、彼女は
その凶手から逃れられた者など、数えるほどしかいない。
その逃れられた数少ない一人として、レイは彼女への警戒を未だに解いていなかった。
「―――まぁいい。それで、これからアンタらはどうする? まさか今の旧校舎の最奥に在るモノを、知らないわけじゃないだろう?」
「えぇ。教会としては見過ごせない事態が進むでしょう。今のところは様子見をするよう言われていますが、そうも言ってはいられないでしょうね」
「だろうな。《結社》も《使徒》二人と《執行者》数名を送り込んで来てやがる。近々、
そしてそれを、一介の学生のみで止める事などもはや不可能。
否、そもそも此処に至って止められる者などいるのだろうか。
「表の戦争と、裏の戦争が始まる。教会から戦力を出すつもりはあるのか?」
「……仕え人の辛いところでしてね。上層部が傍観を選ぶ限り、私たちが何かを指示することはできないのです」
まぁそうだろうな、と息を吐く。
《守護騎士》の最大人数は12名。今代に於いてはその全てが揃っているわけではないが、その半数ほどは”達人級”の武人が占める。そして、正騎士クラスにも強い者はゴロゴロいる。
彼らが味方となってくれれば少しは楽ができるのだが、それが叶わないのならば仕方がない。
「ならいい。精々死なないように上手く立ち回れよ、副長殿」
「お気遣い、ありがとうございます。ですが、その言葉は私の方から君へも送らせていただきますよ」
「うん?」
「死なないように上手く立ち回ってください。信じてもらえるかは分かりませんが、教官の仕事は、結構気に入っているんですよ? 優秀な生徒が出席しなくなってしまうのは悲しいですからね」
そう言ってトマスが指を鳴らすと、周囲の景色が元に戻る。
”匣”の解除。それが為されたという事は、話はここで終わりという事だ。
それと同時に、トマス自身の姿も消えていた。恐らくはまた旧校舎前に戻ったのだろう。残されたレシアは、再び黒色のフードを深く被り直した。
「では当兵もこれにて。以降、敵として相見えない事を祈っております。ハイ」
「それはコッチのセリフだ。死神と好き好んで戯れる物好きなんざ早々居やしねぇよ」
烏の羽のようなものが、舞った。闇に沈むようにその姿は見えなくなり、やがてレイだけがそこに残る。
すると、そこでようやく自分の手が汗で濡れていることを理解する。
”匣”に囲まれた状態で、当代最凶の暗殺者が傍にいる状態。引き千切れんばかりに張り詰めていた緊張感を緩ませて、汗腺も緩んだのだろう。
心臓に悪いやり取りだった。―――尤も、今旧校舎内に突入している面々を思えば、この程度でめげているわけには行かなかったが。
「突入してから、一時間か。夜明けまでには、戻ってきそうだな」
その時は、正面から出迎えてやろう。
お前たちのお陰で此方には何の影響もなかったと、そう感謝の言葉を投げかけて。
夜が明けた時の事を考えれば、その程度の虚勢など何の苦にもならないだろうから。
どうも十三です。《隻狼》の二周目をようやくクリアした十三です。何度やっても「剣聖・一心」戦は手に汗握るね。
再登場したレシアさん。ゲーム的に言うならば、夜間限定でデフォで完全回避(アーツ、Sクラ含む)付き。通常攻撃の全てに即死付与。SPD値最高クラス。負けゲー確定演出とか入るレベル。やってらんねぇ。
正直トマス副長の《匣》の力って良く分からないんですよねぇ。Ⅲ、Ⅳだと空間転移させたり足場作ったりと割といい感じにパシられてましたが、この能力の真骨頂はそんなんじゃないと思うんですよ。まだ《聖痕》も解放してないし。
さて、それじゃあまた次回。お会いしましょう。
あ、どこかの話の中に載せてたかもしれませんけど、載せたかもしれない本人が忘れてるのでもう一度レシア姐さんのイラスト貼っておきます。
【挿絵表示】