英雄伝説 天の軌跡 (完結済)   作:十三

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※この外伝には以下の要素が含まれています。

・過去編
・遊撃士時代の主人公
・労働基準法? 何それ美味しいの?
・倫理観? アイツなら実家に帰ったよ。
・これが日常とか嘘やろ?→残念、本当だ。
・慣れないジャンルに手を出した系

それでも大丈夫な方はゆっくりして行ってネ。







外伝 クロスベル支部のとある一日 後篇

 

 

 

 

 

PM 2:00

―――――――――

 

 

 現在手に入っている情報を整理する。

 

 とは言っても、”事実”として精査するには些か足りない伝聞調の情報だ。ランディがこの期に及んで出鱈目な情報を寄越すとは思えないが、憶測は時に足元を掬われる要因になりかねない。特にこのクロスベルでは顕著だ。

 

 ”『ベルガード門』の司令が連日”裏”の人間たちと連絡を取り合っている”―――成程、腐敗した組織運営の中にあっては、官人が公にはできない方法で公にできない存在とコンタクトを取るのは珍しくない。

 

 それだけならば、何もレイが気にかけるような事ではない。このクロスベルで一々そんな事を気にしていては、それこそ夜もまともに眠れなくなるレベルだ。

 官人の腐敗など昨今始まった事ではない。そもそもクロスベルの政治を司る自治州議会ですら、『帝国派』と『共和国派』に分かれて日夜醜い政争を繰り広げている。その政争に警察、警備隊、果ては民間企業やマフィアまで巻き込んでいるのだから、そんな様相を呈している中で清い関係を維持するというのが無理だ。断言してもいいが、不可能である。

 

 しかしそんな混沌入り乱れる腐敗情勢の中で、今回の一件がレイの琴線に引っかかったのは、偶然だとは思えなかった。

 

 本能レベルでの危機察知能力は一流遊撃士には必須の能力である。特にA級クラスの遊撃士にもなると、まるで未来予知が出来るかのように先回りをし、事態を最小限の被害で収束させる者達がいる。

 彼らに言わせれば、全ては経験がモノを言うらしい。つまりは他人からアドバイスを貰ってどうこうなるものではない。

 その言葉を素直に受け入れて今まで遊撃士として活動してきた経験に照らし合わせてみると―――やはりこの一件はキナ臭く思えるのだ。

 

 「何故?」と問われれば「なんとなく」としか答えられない。

 だから初期段階である今は、心を落ち着けた状態のまま推理を組み立てて行くしかない。

 それと同時に、サボる事なく手も動かしているのだが。

 

 

「おーい、レイ君。すまんが大道具のシャンデリアの接合部分が若干甘いみたいなんだ、見てくれないか?」

 

「うっす、了解でーす」

 

 慣れたような声色で了承し、レイは狭い足場を跳躍しながら舞台の最上部へと登っていき、天井部分から吊り下がっているシャンデリアの接合部分に手を伸ばす。

 接合が甘いと言っても、ほんの僅かにネジが緩んでいるだけ。放っておいても大事には至らないのだろうが、それでも彼らはプロ集団。万が一が起こりそうなリスクは片っ端から潰しておくに越したことはない。

 腰に取り付けたベルトからドライバーを抜き取ってネジを締め直すと、再び自分の仕事に戻るために舞台の上へとジャンプして降りる。

 

 午後のレイに課せられた依頼の一つが、劇団『アルカンシェル』での舞台設置の手伝いだった。

 大道具と小道具係、それぞれ一名ずつが流行りの風邪にやられて寝込んでしまった為に急遽要請が飛んで来たのだが、しかしそれは誰にでも務まる仕事ではない。

 

 何せ天下の『アルカンシェル』の舞台設置だ。僅かの狂い、僅かの設置ミスも許されない。全ては満員御礼の観客の視線を受けて舞う一流のアーティストに最高の演技をしてもらう為。その為には例え日陰の裏方であろうとも、プロフェッショナルの腕前が求められる。

 

 だからこそ、幾ら多彩な人材が揃うクロスベル支部の遊撃士であっても、本来は根本的なところには手は出せない。

 その道のプロにしか理解し得ない物の道理というものは確かにあり、それは赤の他人が横から軽々しく口や手を出して良い領域ではない。―――しかし。

 

「ハインツさん、照明の配置終わったっす。電圧が右翼と左翼のとで少し違ってたんで直しときました。あ、それと垂れ幕の結び目が解けかかってたんでそっちも結んでおいたんで」

 

「あぁ、すまないね。本来ならコッチが気付かなきゃならんところまでやってくれて助かるよ」

 

「気にせんといて下さい。舞台裏に脱ぎ捨ててあった衣装は後でカレリアさんのとこに持ってった方がいいですか?」

 

「衣装? あぁ、またセリーヌかニコルが忘れて行ったな。放っておいてくれ、若手とはいえ彼らもアーティストだ。それくらいは自分でやらせなきゃイカン」

 

「了解っす。そんじゃ、舞台下の装置の点検行って来ますわ」

 

「気を付けて―――ってのは君には無粋かな?」

 

「もう慣れたっすよ」

 

 支部の中でも屈指の手先の器用さ、そして物覚えの早さと順応力の高さを誇るレイは、過去に数回、同じような依頼を請け負っただけで既に『アルカンシェル』内の舞台配置、装置の点検方法からガタが来やすい箇所まで全て頭の中に叩き込んで記憶している。

 ともすれば今は、そこいらの裏方作業員よりも整備方法を熟知している可能性すらあった。流石に舞台のメインである大掛かりな装置には極力手を触れないようにしているが。

 

 請け負った仕事に全力を注ぎながら、それでも僅かに空いた脳の片隅で推論を組み立てて行く作業はやめない。

 俗に”並列思考”と呼ばれる技術だ。木製の階段を降りて行った先にある、アーティストを移動させるための昇降装置。一般人が見てもどうして動いているのかすら分からないそれを慣れた手つきで点検し、時にはスパナやドライバーで接続部分を調節しながら作業を終えて、一息を吐くために楽屋近くの休憩所に赴く。

 

 そしてそこに続く廊下で、見覚えのある人達を見つけ、レイは極力不自然さを残さない声色で声をかけた。

 

「おいっす、トップアーティスト三人衆。もう楽屋入りか?」

 

「あら、レイじゃない。……そういや今日、アリスタとローエルの代わりに遊撃士に手伝って貰うって団長言ってたわね。……それにしても」

 

「?」

 

「本当に場に馴染むのが上手いわね、アナタ。全く違和感がなかったわ」

 

「ま、どっちかって言うと裏方でいる方が好きだからな。性分じゃね?」

 

「良く言うわよ、《クロスベルの二剣》。この街アナタの事知らない人なんてもうそんなにいないでしょ? 良い意味でも悪い意味でも」

 

「アンタに言われると光栄なのか皮肉られてんのか分かんねぇなぁ、《炎の舞姫》」

 

 実際、このクロスベルに住んでいる人間の中でイリア・プラティエの名を知らない人間はあまりいないだろう。何せ、周辺諸国にまで熱烈なファンがいるほどだ。

 『アルカンシェル』が誇る看板トップアーティスト。たとえ舞台劇に興味がない人間であっても、彼女の舞を見た者は老若男女の別なく魅せられる。

 人はここまで美しく動けるのかという極致。鍛えぬいた全てを使って何かを傷つける武人とは違い、鍛えぬいた全てを使って魅了する彼女の存在は、同じようでいて違うのだが、それでもプロである事に変わりない。

 ……私生活の自堕落っぷりを除けば、だが。

 

「つーか、後輩二人に迎えに行かせるのいい加減止めさせてやれって」

 

「アタシは別に一人で起きようと思えば起きれるし、遅刻したこともないもの。甲斐甲斐しく迎えに来てくれる優しい後輩が二人もいて幸せだわ♪」

 

「さっすが、家の掃除を遊撃士協会に依頼しに来る人は言う事が違ぇや」

 

 主にその依頼を請け負わされている被害者としては忸怩たる思いが少しばかりあるのも事実だが、視線が火花を散らす前に「まぁまぁ」と両脇に居た他の二人が止めに入った。

 

「イリアさん、遊撃士の方に迷惑掛けるの止めてくださいって言ったじゃないですか‼ 掃除なら私がちゃんとやりますから‼」

 

「えー、でもレイが掃除してくれるとすっごいキッチリしてて清々しいんだもん。そこらのヘルパーよりちゃんとやってくれるわよ?」

 

「……レイさん、そんなにキッチリやってるんですか?」

 

「仕事だからな」

 

 ゴミ屋敷の清掃というのは思いの外ハードワークではあるが、それでもやり始めるとピカピカにするまで納得できないというのが性分である。

 仕事と言ってはみたが、実際の所は生真面目さゆえに投げ出せないだけだ。

 どこか遠い目でそう言うレイを見て、イリアの後輩である二人は申し訳なさそうな表情で苦笑した。

 

 リーシャ・マオと、マイヤ・クラディウス。

 両者ともまだ新人の域を出てはいないが、『アルカンシェル』の中では注目株と呼ばれて客の興味を引いている二人である。

 鮮烈にして麗美なイリアとは違い、静謐ながらも上品さを漂わせる演技をするリーシャ、そして脇役ながらも卓越した技術と動きで一定層のファンを確立させているマイヤ。

 二人ともイリアがアーティストとして見出した逸材であり、その甲斐もあってか『アルカンシェル』は新時代に突入したという触れ込みが売り文句になっている。

 

 ……そういったこともあって、頻繁に自由奔放なイリアの犠牲になっているという事実もあるのだが。

 

「リーシャもマイヤも大変だろうに」

 

「もう慣れました」

 

「もう諦めました」

 

「マイヤってちょいちょい自然に毒吐いてくるわよね?」

 

「完全に自業自得なんだよなぁ」

 

 せめて酒瓶くらい自分で処理しろよと思ったレイ本人が、数ヶ月後に恋人に対して同じことを思うのはまた別の話である。

 

 そのまま他愛のない話を続けていると、不意にリーシャがふぁ、と小さな欠伸を漏らした。

 

「何だ、寝不足か? 珍しい」

 

「そうですよね。リーシャは普段イリヤさんと違って規則正しい生活を送っていますから、眠そうな顔をしているのは久し振りに見た気がします」

 

「レイ、アタシの可愛い後輩が反抗期みたいなんだけど」

 

「だからもうちっと生活習慣を改めて、あとついでにスキンシップを控えめにした方がいんじゃね? 女同士でもセクハラって適用されるんだぜ」

 

 そんな事を言い合っていると、リーシャは「大丈夫です」と笑顔を見せた。

 

「別に夜更かししてたとか不眠症とかじゃなくて、昨日ちょっと市街区の中でずっと音がしてて眠れなかったんです」

 

「音? また不良連中が騒いでやがったのか?」

 

「リーシャ、だからあそこに住むのはやめた方がいいと言ったじゃないですか。せめて東街区に引っ越しましょう。あそこなら問題が起きたら遊撃士の方がすっ飛んできてくれますから」

 

「あそこで問題起こしたらものの数分でクロスベル支部(ウチ)の誰かがすっ飛んで制圧できるからな」

 

 『アルカンシェル』のアーティストとして少なくない給金を貰っているにも拘らず、リーシャの住まいはクロスベルに来た時から変わらず旧市街のアパルトメント『ロータスハイツ』であった。

 旧市街区は基本的にクロスベル警察の手が入らない治外法権地区でもあり、治安はお世辞にも良いとは言えない。あの場所をねぐらとしている二つの不良集団による衝突が後を絶たなかったりと、静かに暮らすにはお世辞にも相応しくない場所だ。

 

「言うても、一昨日喧嘩中に調子こいて一般人巻き込んだ連中を締め上げたばっかりだから流石に大人しくしてると思うんだがなぁ」

 

「サラッと物騒なこと言ったわね」

 

「クロスベル支部だと日常茶飯事みたいですよ」

 

 実際、不良同士の抗争で当人たちだけに被害が出ているのなら支部の方も黙認している。

 だが、その抗争が過激になり、旧市街に住まう一般人に被害が及んだ事が分かった瞬間、荒事に慣れ切った遊撃士が介入して力づくでも鎮圧するのが日常茶飯事の光景なのだ。

 

 レイの経験上、武力鎮圧が起こってから一週間はどちらのグループも大人しくしているのだが、今回ばかりは勝手が違ったのだろうか―――そう思っていたら、リーシャが首を横に振った。

 

「いえ、抗争とかそういうものではなくて、何と言うか……重たいものを運んでいるような大型車が昨日の夜中、旧市街区に出入りしていたんです」

 

「車の出入り? それだけでそんなに騒がしかったのか?」

 

「えっと、音からして旧市街区の南の方だと思います。……あの場所に出入りする大型車両なんてほとんど見なかったので、印象に残ってしまって」

 

「あら、確かに整地が不安定なあそこを大型車が通ってたなら、そりゃ大きな音も出るわよね」

 

「リーシャは耳が良いですからね。今度からは耳栓を常備しておくのをオススメします」

 

「はい。そうさせてもらいます」

 

 タチの悪い工事に出くわしてしまった少女を慰める世間話。傍から見ればそうでしかないはずだった。

 事実、この時のレイも世間話程度にしか聞いていなかった。その後、稽古の時間が迫ってきたという事で三人とも別れ、ひとまずの機材のセッティングや点検を終えたレイも、劇場の支配人や団長などにお礼を言われながら『アルカンシェル』を後にする。

 

 そうして次の依頼書に目を通しながら、レイの足取りは自然に陽の差さない場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

PM 3:40

―――――――――

 

 

「あいよ婆さん。お探しのアンティークのペンダントはこれだろ?」

 

「おぉ、これだこれだ。すまないねぇ、イッヒッヒ。アンタら遊撃士に依頼すると仕事が早くて助かるよ」

 

「ならもうちっと楽な依頼を寄越してくれよ。三日前に池ポチャした時計を探してくれだなんて、事と次第によっちゃ無理ゲーだぞ」

 

 そんな無茶な探し物の依頼を僅か数十分で果たす事ができたのは、ほぼほぼ運の要素が強かった。

 裏通りの一角にアンティークショップを構える大富豪、イメルダ夫人が住宅街で紛失したペンダントは、用水路に流される直前のパイプの腐食して変形していた部分に運よく引っかかっていたのを回収しただけである。

 

 運が悪ければ一日を費やしても見つからない依頼ではあったが、この時ばかりは自分の悪運を褒め称えるしかなかった。

 

「このペンダントはそこそこ価値のあるシロモノでねぇ。嘗てはこれの所有権を巡って貴族たちが血生臭い争いをしたってほどなのさ」

 

「ンな呪われたモン、わざわざ俺が探さなくても婆さんのトコに戻って来たんじゃねぇの?」

 

「イッヒッヒ、そうもいかんさね。―――まぁ、早々に片づけてくれた礼だ。そこいらにあるもの、一つだけなら持って行っても構わんよ」

 

「要らん要らん。こういうのは価値が分かるやつが持ってるから意味があるんだよ。―――いや」

 

 申し出を断って店を出て行こうとしたレイだったが、ふと思い至る事があって足を止め、再びカウンターの奥でチェアに腰かけたイメルダ夫人に向き合った。

 

「そうだな、報酬ついでに婆さん、ちょいと訊きたいことがある」

 

「ほう、何だい」

 

「昨日の深夜、旧市街区に来てた大型車と人間。それの詳細を訊きたい」

 

 そう言うとイメルダ夫人は僅かに肩を揺らし、しかしその直後には再び不気味な笑い声を漏らした。

 

「それを訊いてどうするんだい? まさか本格的に探偵業を始めようってわけじゃないだろうに」

 

「必要に駆られりゃ、な。しかし婆さん、アンタが露骨に話題を変えたってことは、やっぱその連中、ただの出入りの”業者”じゃねぇな?」

 

 イメルダ夫人はこんな裏通りに趣味で店を構えているだけあって、裏社会でもかなり顔が利く人物でもある。

 長らくその道に身を置いていただけはあり、抱える情報網はかなりのもの。それ故に彼女から情報を貰う際には膨大な見返りを必要とするのが常なのだが、今回はそれを請求してくることはなかった。

 

「アタシにも立場ってモノがあるからね。全部を応えるわけにゃいかんが、まぁその点に関してはアンタの予想通りさ」

 

「旧市街区に正規のルートで入るなら、街道側から来るにしろ中央広場、湾岸区側から来るにしろ、必ず支部の前を通る必要がある。誰も気づかなかったって事は、そいつらは旧市街区の裏手から入ったって事か」

 

 先程リーシャから訊いた、車が出入りし始めた時刻から逆算すると、その時はちょうど酔っぱらって帰ってきたリンが受付でミシェルにタチの悪い絡み方をしていた時間帯と合致する。

 幾ら酔っていたとはいえ、それでもB級遊撃士。時間帯に見合わない車の出入りを見逃すはずはない。だとすれば、普段は禁じられている封鎖道路から旧市街区に入っていったと考えるのが妥当だろう。

 

 とはいえ旧市街区はその特性ゆえに、違法物を狙った”運び屋”の出入りもある無法地帯。正規の手続きを受けていない車の出入りは珍しくはないが、しかしそういった人間もその手のプロだ。極力目立たないようにする為に、付近の住民に不審がられるようなヘマはすまい。そう考えると、益々キナ臭くなってくる。

 

「ありがとな、婆さん。それが訊けりゃ充分だ」

 

「何だ、もういいのかい。ヒッヒ、あいにくアタシゃ今夜は少し出かけるからね、後で話を訊こうとしても遅いよ」

 

「大丈夫だっての。そんじゃな」

 

 情報としてはそれを引き出せただけでも上等であり、レイは一言礼を述べると店の扉を開けた。この時間帯はまだ裏通りに軒を連ねる酒場も開店しておらず、ネオンの光も灯っていない。

 そんな薄暗い場所で、レイは近くの建物の壁に寄り掛かって腕を組んだ。

 

 ただの世間話。そう決定づけてリーシャの不幸話を流していたらこの線は繋がらなかった。

 旧市街区への違法侵入を行えるルートというのは複数考えられるが、それでもかなり限定されるのが現状である。それも人力でなく、車での出入りとあれば尚更だ。

 

 まずクロスベルという土地の地形上、車を使った違法侵入は東側からは罷り通らない。東部から南東部に拡がるエルム湖が進行を妨げるからだ。

 だとするならば、西側からの侵入に限定される。それも普段出入りするような”運び屋”ではなく、一般人にもバレるような”素人”の出入りであるとするならば、恐らくクロスベル自治州内に拠点を構えている連中の仕業ではないだろう。

 

 であれば、元々は国外からの進入と見て間違いない。そして西側の国外との接点はといえば―――『ベルガード門』だ。

 

「………」

 

 レイの頭の中で、バラバラだったパズルのピースが一つ、カチリと填まった。

 

 だが、詳細を確かめるために『ベルガード門』に問い合わせたところで、恐らくマトモな回答は得られまい。こんな場所ではあるが、それでも国外利用者に対してのプライバシーはある。

 そして捜査権を持たない遊撃士には、それをこじ開ける権利はない。

 

 そこまで推理が及んでも、しかしパズルは未だ空白が残っているのが現状。

 いつの間にか壁に寄り掛かるのをやめて次の依頼先であるクロスベル南部に向かって足が進み、駅前通りから少し外れたところに辿り着いた時、ふと何処からか視線を感じた。

 

 否、「何処からか」というのは正確には語弊であり、正体は既に分かっている。建物の影からこちらを伺っている黒服サングラスの二人組。

 明らかに一般人(カタギ)ではない雰囲気を撒き散らしているその二人の所属はわざわざ確認しなくとも分かる。どうやらイメルダ夫人の店で話し込み過ぎたせいで、尾行を着けられたらしい。

 

 とはいえ、今はそんなお粗末な尾行に(かかず)らってはいられない。

 現在こなした午後の依頼は5件。そしてこの後に5件。ペースを乱されて遅れを生じさせるのは、末席であるとはいえクロスベル支部の遊撃士である以上有り得ない事だ。

 

 尾行を撒くためにレイは、クロスベル市内から出るのと同時に【瞬刻】を発動させてその場から消え去った。

 その結果、一瞬でターゲットを見失った黒服二人が狼狽している姿を市民が奇怪なものを見るような目で見ていたのだが、それは別の話である。

 

 

 

 

 

 

PM 5:00

―――――――――

 

 

 冬季における陽の沈み方の早さというものは、当然このクロスベルに於いても変わらない。

 午後5時ともなれば、既に市街地には導力灯が灯り、元気よく遊んでいた子供らの姿も見えなくなる。昼間とは一風変わった夜のクロスベルは、幻想的でありながらも退廃的だ。

 

 そんな夜の街の間を縫うように、レイは建物の屋上を跳躍しながら進んでいく。

 夜間であれば、こういう方法で移動をしてもバレにくいという利点がある。多少無茶をしても交通課の職員に説教を食らわないというのはありがたい事であり、駅前通りから西街区を経て、裏通りへと侵入したレイは、そのままとある場所へと向かった。

 

 入り組んだ路地裏の、その奥の奥。一般人(カタギ)は迷い込まない限り入ってこられない場所に、その建物はある。

 

 『ルバーチェ商会』事務所。表向きは営業本部の形を取ってはいるが、その実態はクロスベル最大規模のマフィアの拠点である。

 8年前に5代目代表に就任したマルコーニの勢力拡大方針の影響で、現在では『ルバーチェ商会』がクロスベルにおける利権の殆どを有しているという状態であり、裏社会においてはもはや顔役と称しても過言ではない。

 

 そしてそれは同時に、クロスベルで日々渦巻き続ける謀略の渦中に存在し続けているという事を意味しており、だからこそレイは、単独でこの場所へとやってきたのだ。

 

 事務所に繋がる裏通りに立ち続けている構成員は、森の中のムササビの如く自由自在に移動するレイの姿を捉える事は出来ず、暗夜の中、事務所の入り口の前の硬いコンクリートの上に着地する彼の姿を咎める者は誰もいない―――筈だった。

 

「―――っと」

 

 闇の中から突如として襲来した豪拳に、しかしレイは慌てるような素振りも見せずに半身になって攻撃を躱す。

 その拳撃は空を切ったにも関わらず遠方のコンクリート壁を歪ませるほどの圧撃を放っており、それだけでも攻撃を仕掛けてきたのは只者ではないという事は分かる。

 

 そしてその数瞬後、レイは襲撃者の男の喉元に愛刀の刃を突き付ける形で、男はレイの側頭部に引き戻した拳を突き付ける形で相対した。

 着火寸前の火薬庫のような緊張感が一瞬迸り、しかしそれは互いに戦意を収めた事で霧散する。

 

Guten Abend(よう、こんばんは)。ご機嫌どうよ、《熊殺し(キリングベア)》」

 

「テメェが来ると分かってたから最悪だぜ。ウォッカの酔いも一瞬で醒めるってモンだ」

 

「そりゃ良いや。酔い醒めついでに真っ当になってくれりゃ、コッチとしても楽なんだがね」

 

「寝言は寝てから言えや。どう足掻いたって遊撃士(テメェら)とは相容れねぇよ」

 

「だよな」

 

 クツクツと笑うレイとは対照的に、巌から直接削り出したかのような厳つい表情をしたままの大男―――ガルシア・ロッシは眉間の皺をより深く刻んだ。

 『ルバーチェ商会』営業本部長にして若頭。実質組織のナンバー2である彼とは確かに立場的には相容れないが、性格的にはそれ程険悪ではないのだと思っていた。

 

 両者とも、本当の戦場を知っている。人が人を殺す極致、本当の地獄を潜り抜けてきた者同士。

 レイは《結社》の《執行者》として、ガルシアは元《西風の旅団》連隊長として、生涯をかけても洗い流せない程の血を浴びてきた者同士にしか分からない考え方というのは確かにある。

 

 とはいえ、ここは策謀入り乱れるクロスベル。表面上だけでも貿易都市と銘打たれている以上、立場というのはまず第一に考慮に入れておかなければならないのだ。

 

「まぁいいや。俺が此処に来る事が分かってたんなら、俺が訊こうとしてた事も分かってんだろ?」

 

「………」

 

「お互い暇じゃねぇし、お前相手に腹の探り合いとか時間の無駄だからド直球で訊くぞ」

 

 するとレイは浮かべていた苦笑を引っ込めて、鋭い眼光で睨みつける。

 嗜み程度にしか武術を修めていない者や、そこいらのゴロツキが相手ならば、この視線だけで全身の動きが縫い付けられ、心臓の鼓動は恐怖で跳ね上がるだろう。まるで蛇に睨まれた蛙の如く。

 だがガルシアは、元大陸屈指の猟兵団の連隊長。武人としても”準達人級”の領域に至っている傑物だ。その眼光に負けじと睨み返す。

 

「テメェらが()()()()()()()()()()()()()()。訊きたいのはそれだけだ」

 

「……何を言っているのか皆目見当つかんな」

 

「此処に来る前に、旧市街区の『ナインヴァリ』に立ち寄ってアシュリーから話を訊いてきた。ここ最近、街の区画一つくらいは余裕で吹き飛ばせる高性能導力爆弾の取引きがエレボニア方面でされてたらしい」

 

「………」

 

「正直に言えよ、ガルシア。お前自身最大級にキナ臭ぇとは思ってても、お前ントコの頭からは何も情報が得られねぇんだろ? だから、自由に探ってる俺から情報を引き出すために手下共に駄目元で尾行(ツケ)させていた……違うか?」

 

 わざわざ『ベルガード門』の司令が虚偽の申告をしてまでクロスベル市内に通し、表立って見咎められない真夜中に裏口を通って旧市街区に侵入し、公にはされていない旧市街区の南にある扉から地下区画(ジオフロント)へと侵入していった正体不明の人間たち。

 更に言えば『ベルガード門』の司令が『帝国派』の議員に擦り寄ってるという事はそこそこ有名な話だ。であれば、『帝国派』議員のリーダーであるハルトマン議長と昵懇の間柄である『ルバーチェ商会』の介入を疑うのは無理からぬこと。

 

 だが、ガルシアの反応を見て、レイは否と断言できた。

 ガルシアは何も知らない。というよりは知らされていない。それは、『帝国派』と『共和国派』などという二大派閥の謀略の枠組みに収まらない、もっと深いところで物事が動いている事を現していた。

 

 

 しかし、そんな事はレイには()()()()

 保身と利権にしか興味がない政治家共の醜い争い、どうぞ好きなだけやってくれ。単純な正義感に駆られて腐敗を正そうなどとする程甘い考えは持ち合わせていない。

 

 だが、その政争が一般市民にまで飛び火するならば話は別だ。

 

 例えばクロスベルの守護者、《風の剣聖》アリオス・マクレイン。彼は帝国と共和国の諜報戦、それにクロスベルの政治家が介入して巻き起こった爆発事故に巻き込まれて妻を喪い、娘の視力は奪われた。

 それだけではなく、同じような深い疵を負った人々が、このクロスベルには少なからずいるのだ。

 

 宿命と言っても過言ではない。この自治州の成り立ちがそうさせた、決して目を背けてはならない業だ。

 そんな不条理に巻き込まれて命を落とす人々を一人でも救えるように、可能な限りこの街に住まう人々が笑顔でいられるように。―――そんな儚い願望を抱き、それを実現させるために、この支部の遊撃士は存在している。

 

「……俺は会長(ボス)の命令に従うまでだ。尤も、会長は今帝国側とのやり取りに躍起になってあまり足元が見えていないところもあるが」

 

「組織勤めってのは窮屈だな。ガッチガチに上下関係が定められてるところは特に」

 

「組織としての在り方はその方が正しいだろうが」

 

「残念、俺は比較的自由にやってきたぜ。―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、今まで死ぬほど味わってきたからな」

 

 吐き捨てるようにそう言うと、右手をヒラヒラと泳がせながら踵を返す。

 

「まぁ良い。テメェらが関わってねぇってのが分かっただけでも大収穫だ。目星は大体着いたからとっとと締め上げに行くとするさ」

 

「ハン、優秀なこった。テメェも随分、”正義の味方”ってのが板について来たんじゃねぇのか?」

 

 その言葉に、レイはピタリと動きを止めた。

 癪に障った訳でもなければ、怒りを覚えたわけではない。漏らしたのは自虐じみた笑みで、しかしそれでも目だけは笑えていなかった。

 

「馬鹿言え。俺はそんなモノになろうとは思わねぇし、言われたいとも思わねぇよ」

 

「んじゃあテメェは、何で遊撃士なんぞをやっている?」

 

()()()()()()()()―――結局はただの自己満足だ。俺がやりたいからやってるだけ。テメェがテメェんトコのボスに付き従ってんのと同じ理由だ。……見返りを求めてやってるわけじゃねぇんだろうが」

 

 そう。見返りなど求めてはいない。

 

 初めは贖罪から始まった。《結社》を抜けた自分が、この力を使ってできる事はと言えば、護れる範囲の人を護るという事だけ。

 それは、義務感というよりかは強迫観念に近しいものだった。今まで散々命を奪い、奪われてきた果てにある生であるならば、せめて次の在り方は何かを護れる存在で()()()()()()()()という思い。

 

 ただし、それが傲慢な考えである事も重々承知している。

 本当の”正義の味方”であれば、そんな強迫観念に突き動かされずとも必ず誰かを護ってみせるだろう。このような、どうしようもなく()()()()()()人間にはそう呼ばれる資格など無い。

 

 だから、本当に面倒臭い人間だと自虐を重ねていくのだ。

 だがそれで不貞腐れるほど子供ではない。そんな事を考えている暇があるのなら、この街の仮初の安寧を維持するために動き続けた方が余程良い。

 

 『ルバーチェ商会』事務所の前から離れて、とある雑居ビルの屋上に佇みながら空を見上げる。

 月はまだ昇っていない。それでも宵空に栄える綺羅星の数々と、眼下に見える幻想的な光のアート。

 そんな美しい街の中でも、きっと今この瞬間ですら誰かが不幸に見舞われている。それら全てを助けられるわけがない。それができるとするならば―――それこそ神ぐらいのものだろうか。

 

 だが、レイ・クレイドルは”人間”だ。たとえその身体に神の呪いを宿していたのだとしても、それだけは変わらない。

 

 

どれくらい、呆けたまま佇んでいただろうか。自分以外誰もいない筈の雑居ビルの屋上に足音と気配を感じて、意識を再び表層に浮かび上がらせる。

 とはいえ―――誰が来たのかぐらいは察しがついていた。

 

 

「寒っ‼ ココ寒っ‼ ビル風が想像以上に辛い‼」

 

「軟弱だぞスコット。俺が帝都支部に居た頃のアイゼンガルド連峰での強化訓練に比べればこちらの方が十二分にマシだ」

 

「これだけ見事な景色を見ながらだと、お酒飲みたくなるねぇ。ま、持ってないけど」

 

「お酒を飲んで酔っ払ったレイ君……酩酊状態で半脱ぎの服……ハッ、閃いた‼」

 

「……同期として言わせてもらうけど、そろそろ妄想罪なんていう罪が適応されるレベルだと思うんだよな」

 

 4人はいつものように、特に気負う事もなく自然体のままでそこにいた。

 何をするでもなく、ただ世間話をしに来ただけと言わんばかり。しかしレイは呆れながらも苦笑して、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を外してエオリアに放り投げた。

 

「そら、返すぞ。……ただし今日みたいな時以外に使ったら問答無用で全力コブラツイストな」

 

「……できる限り自然に取り付けたと思ったのに、やっぱりバレちゃってた?」

 

「当然。本職に比べたらまだまだだな」

 

 昼に支部に立ち寄って抱きしめられた時。エオリアがレイに小型発信機を取り付けた手管については心の中では感嘆していたレイだったが、それを直接本人に言うのは避けた。

 搦め手の技術が上がったのは遊撃士としては喜ばしい事なのだが、それと比例してストーカーとしての技術も上がるようならば、一度師匠仕込みの徹底的な制裁を行わなければなるまい。

 

「ミシェルの指示だろ?」

 

「うん。君が一人で何かしようとしてるのは分かってたからな。ルバーチェの事務所前で反応があったから、こりゃヤバいと思って追って来たんだ」

 

「仕事の事は気にするな。全員、既にノルマは終えて来ている」

 

 その言葉を聞き、レイは4人からは見えない角度でニッと笑った。

 

「お人好し共め」

 

「うーん、レイ君には言われたくないかなぁ」

 

「同感。―――ま、そんなに斜に構えるなよ。”仲間”だろ? アタシらは」

 

 内心息を吐いたのは、何も彼らに対する呆れではない。事此処に至ってまで一匹狼のスタイルを張り続けようとしていた自分に対して呆れていたからだ。

 自分よりも長く、遊撃士として様々な国の民間人を助けてきた先達たち。今のこの状況で、これ以上頼もしい存在はいない。

 

「それじゃあ―――手を貸してくれ」

 

 だからこそレイは、衒う事もなくそう言う事ができたのだ。

 

 

 

 

 

 

PM 6:10

―――――――――

 

 

 クロスベル市の地下には地下区画(ジオフロント)と呼ばれる複雑怪奇に入り混じったエリアが存在する。

 本来は下水処理施設や配電施設、地下焼却炉などが配置された区画であったのだが、公にできない事柄を隠蔽するのに最適な場所であると政治家たちが気付いた結果、横領資金の隠れ蓑や違法物の極秘取引の現場、謀略の結果生まれた死体の処理など、多岐に渡って利用されている。

 

 前述の通り、立場も所属も違う権威者が独断で工事を発行した区画も少なからず存在するため、現在その構造を隅から隅まで書き写した詳細な地図は公式には存在していない。一歩興味本位で細道に入ろうものならば、下手をすれば延々と機械とパイプが入り乱れる無機質な場所を彷徨うハメになる可能性も高い。

 

 そして、数あるジオフロントへの入り口の中で、最も公式に認知されていないのが、旧市街区の南、廃屋などが立ち並ぶ寂れた一角に存在するジオフロントD地区への入り口だ。

 元々旧市街区という場所は、高度経済成長を遂げたクロスベルの中にあって、交通の不便さや元来の治安の悪さもあって意図的に取り残された区域である。

 治安維持組織も旧市街区にはノータッチで振る舞う事が多く、だからこそ前述の通り不法取引なども横行する場所なのだ。

 

 そんな旧市街区だからこそ、小規模であれジオフロントの入り口が存在しているのは役に立つ。無論、非常時における緊急避難場所というのは建前ではあるのだが。

 

 そして、クロスベルに現存しているAからD区画までの4つのジオフロントは、特定のルートを使えば自由に行き来できるようになっている。迷宮神殿(ラビュリントス)もかくやと言わんばかりのその中に紛れれば、並の人間が追跡をすることはほぼ不可能だろう。

 

 ―――そう。()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 言ってしまえば”彼ら”は、猟兵になりきれていない傭兵の集団。ランクとしては猟兵団のそれよりも幾分か落ちる武装集団であった。

 

 彼らが受けた依頼は、陸路を使ってエレボニア帝国経由で『ベルガード門』からクロスベル自治州内に入り、裏道を使って旧市街地区に侵入。運送屋を装った大型車の荷台から展開し、ジオフロントのD地区へと降りた後に用意された地図に従って各ジオフロントに展開。4つのジオフロント区画のそれぞれに決められた導力式高性能爆弾を仕掛けるというものであった。

 

 逆に言えば任務内容はそれだけであり、何故そんな作戦を行うのかという詳細は一切聞かされなかった。その上、仲介人を介して依頼が渡ってきたため、大本の依頼人も分からずじまい。

 ただ確かな事は、この作戦をこなした暁には莫大な報酬が転がり込んでくるという事と、”猟兵団”としての地位が確立されるという事。大した戦果を挙げる事ができずに燻っていた”彼ら”はそれに飛びついた。

 

 もし”彼ら”に精神的余裕があれば引き受けなかったか否かなどは分からない。

 だが、このゼムリア大陸に存在する猟兵・傭兵団の中で、プロであるが故の本当の意味での戦争屋という存在は存外少ないものなのだ。

 猟兵団として一旗揚げる為ならば、どのような理不尽でも引き受ける。たとえそれが、どれ程の無辜の一般人を葬り去る依頼であったとしても、だ。

 

 

 作戦自体は不気味なほどに恙無く進み、最後のジオフロントB地区の奥地、大木程の太さのコンクリート柱が乱立する広大な一角に爆弾を仕掛け終わった”彼ら”は、昨夜から作業を続けてきた面々と共に余裕の笑みを浮かべ合った。

 後は決められた出口から脱出した後に遠隔操作で爆弾を起動させれば作戦は完了。混乱に乗じて自治州内から出てしまえば、晴れて”猟兵団”としての旗揚げが叶う事となる。

 

 そんな青写真を描きながら悦に浸っていた”彼ら”は、しかしその空間に音もなく侵入してきた人物に気付いて慌てたように視線を向け―――しかしその直後、肩透かしを食らったような様子を見せた。

 

 

「どうもこんばんはー。遊撃士協会でーす」

 

 姿を見せたのは、やっと第二次性徴の兆しを見せた頃合いの中性的な少年。無論の事線も細く、見合わない長刀を右手に携えてはいるが、それを振るえるような筋力があるとは思えなかった。

 本来であればそんな子供が遊撃士であるなどとは信じないのだが、服の肩口に『支える篭手』のマークのワッペンが縫い付けてあることから、それだけは虚偽でないと分かる。

 

 だとしても、こんな年端もいかない子供の遊撃士が一人。次第に周囲には、下卑た笑い声が響き渡る。

 

「ハハッ、こんなガキが遊撃士だとよ‼」

 

「何だ、クロスベルの遊撃士サマってのは相当ランクが低いのか? じゃなきゃこんなガキに遊撃士なんて務まるはずねぇもんな‼」

 

「おいおい少年、見逃してやるからとっとと消えな。その小綺麗な顔に弾痕刻みたくねぇだろう?」

 

 そんな嘲笑う声が飛んできても、少年はニコニコとした笑みを崩そうとはしなかった。

 

 ―――この時点で、真に戦場慣れしているものであれば、多少なりとも警戒心を抱くものである。

 否、高ランクの猟兵団に所属しているものであれば、戦場における”子供”の脅威というものはそもそも身に染みて理解しているものだ。表面上では笑みを取り繕っていても、その真価が鬼……否、それ以上に悍ましいモノであるかどうかの判断がついていない時点で、”彼ら”の命運は既に尽きていたと言えよう。

 

 すると少年は、自分の足元に置いていたそれを蹴り上げて、”彼ら”の眼前に乱暴に落とした。

 それは、彼らが昨晩から必死に各ジオフロントに取り付けた高性能爆弾。その()()であった。

 あるものは丁寧に解体され、あるものはアーツで氷漬けにされたそれは、もはや爆弾の体を成していない、ただの鉄屑となり果てていた。

 

「断言しようか。遊撃士(俺ら)以上にこのジオフロントの裏道に精通してる人間は、このクロスベルにはいねぇ」

 

 カッ、と。少年の背後から新たに二人の遊撃士が顔を出す。

 

「更に言えば、お前らが必至こいて仕掛けたその三つの爆弾は全て偽物のハリボテだった。本命は、今お前らが設置したばかりのソレだ」

 

 三人目と四人目の靴音が、空間の中に響き渡る。

 

「この場所は裏通り―――あぁ、ちょうど()()()()()()()()()()()()あたりか。この場所を裏通り周辺ごと木っ端微塵に吹き飛ばせば、お前らの依頼者の目的も果たせるって事か」

 

 少年のその言葉に、しかしそもそも依頼者を知らない”彼ら”は、少年の言葉に眉を顰めるばかり。

 

「……ま、知らねぇなら知らねぇままの方が幸せかね」

 

「それもそうだな。……しかし、こいつらはさっき聞き捨てならない事を吐き捨てたな」

 

「あぁ、”クロスベルの遊撃士はランクが低いのか?”だっけ?」

 

 すると、額に鉢巻を撒き、首を鳴らしていた女性が失笑する。

 

「アタシらもそんなこと言われたの久し振りだね。最近だとどこの()()()()()()でも、クロスベル支部の事は知ってると思ったのに」

 

「あら、新鮮でいいじゃない。まだ私たちがクロスベル支部に着任した当初の頃を思い出すもの。初心は大事、でしょう?」

 

 そこで漸く、”彼ら”の中の数人が、手にしていた軽機関銃(サブマシンガン)を構えだした。

 遊撃士たちから漏れ出ていたのは、人間の本能レベルにまで訴えかける程の闘気だった。思わず銃を構えた面々も、何故自分が考えるよりも早く銃を構えたのか、そして何故こんなにも手が震えているのか。そういった事を理解しないままに臨戦態勢に入っていた。

 

 それを考えれば、”彼ら”は寧ろ幸運であったのかもしれなかった。

 本当の戦場であれば、これよりももっと容赦のない殺気を放ってくる連中は数多くいる。そしてそんな連中と相対せば、場慣れしていない者達は何の抵抗もできないままに命を落とすだろう。

 だが眼前の彼らは、遊撃士は少なくとも「命を取る」までの事はしない。四肢の一本や二本、骨の十本や二十本、或いは数週間くらい前後不覚になる程度でそれを学べたのならば、授業料としては安いものである。

 

「う、う……うわあああああっ‼」

 

 やがて、錯乱した一人が軽機関銃(サブマシンガン)の引き金を引くと、撒き散らさせた弾丸が死の具現となって遊撃士たちに襲い掛かる。しかし―――。

 

「―――フッ」

 

 鞘より引き抜かれた長刀の一閃。”彼ら”にはただ横薙ぎに振り抜いたようにしか見えなかったそれは、しかし直後には幾重もの斬撃となって放たれた弾丸の()()を叩き斬った。

 発射初速は亜音速に迫る銃弾を、まるで戯れるような容易さで弾き斬る。やがて軽機関銃(サブマシンガン)のマガジンの中の弾丸が空になり、周囲には硝煙が立ち込め、空薬莢が散乱する。

 

 周囲の地面、コンクリート柱ごと抉り取った銃弾の猛威は、しかし遊撃士たちには僅かの効果もなかった。肌を抉る事もなければ服を擦過したわけでもなく、届いた銃弾の全ては純白に輝く刃の前に無威と化した。

 

 ここで間髪を入れずに一斉掃射をすれば、或いは最初の主導権は握れた可能性はある。

 だが、数百発という単位でバラ撒かれた弾丸を完全に防ぎきるという有り得ない光景を前に、”彼ら”は一様に尻込みをした。それは、致命的であったと言える。

 

「さて、と。本日の締めに()()()()()()を遂行するとしようか」

 

「あー、アレ思い出すね、アレ。正遊撃士昇格試験。レマンの訓練所でやったヤツ」

 

「あぁ、先輩が猟兵に扮して試すヤツか。アレはまだやってるのか?」

 

「少なくともフィリス管理人は今でもやる気みたいよ?」

 

 口調こそ軽いが、その全員が隠していた気迫を漲らせていた。各々の得物を手に、狩るべき対象を視界に収めている。

 

 

「さて、出来損ないの猟兵モドキ共」

 

 白刃の剣鋩が、真っ直ぐに目線に突き刺さる。

 容赦はしない、ただ踏みつぶされろと一方的に宣告されたような圧迫感に支配され、そして”彼ら”の運命は決まった。

 

 

 

「地獄へようこそ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 8:25

―――――――――

 

 

「それで、結局最後の手柄は全部捜査一課の方に投げてきた、ってか」

 

「モドキとはいえ、傭兵連中の処分なんざ遊撃士(オレら)の手に余るからな。元々捜査一課(アッチ)にリークはしておいたから、置き手紙だけ残して全員でトンズラして来た」

 

「流っ石。抜け目ねぇなぁ」

 

「多分これでまたダドリーさんからのヘイト値はガン上がりしただろうけどな‼」

 

 

 東通りに居を構える宿酒場『龍老飯店』。カルバード共和国の東方人街出身の主人、チャンホイが振る舞う絶品中華料理が人気のこの店の隅の一角で、私服姿のレイとランディはテーブルを挟んで飲み物を飲みながら話していた。既にランディの奢りで運ばれてきた料理は二人の胃に収まり、後はデザートが運ばれるのを待つばかりになっている。

 

 店内の賑やかさは時間の関係もあって最高潮に達しており、多少ヤバめの話をしても誰かの耳に入る可能性は極めて少ない。だからこそ彼らは、ここで事の顛末を堂々と話していた。

 

「んで? そのモドキ連中を雇ってた依頼人(ホシ)まで分かったのか?」

 

「個人名までは流石に知らね。でも、どういうヤツが雇ったのかってのまでは推理できた」

 

「……やっぱり『帝国派』の議員か?」

 

「70点。模範解答は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ」

 

 その言葉に、流石のランディも一瞬驚愕の表情を浮かべたが、すぐに酒を呷って息を吐き、気を落ち着かせる。

 

「……何だってまた、そんな複雑な所に辿り着けたんだよ」

 

「モドキ連中が仕掛けた導力式高性能爆弾、四つの内三つはハリボテだったってのは言ったろ?」

 

「あぁ。んで、ルバーチェの事務所の真下に仕掛けたのが本物だったと……いや、そうか」

 

「そういうこった。『帝国派』議員の仕業なら、奴らのトップのハルトマンと(ねんご)ろの関係のルバーチェ事務所を爆破するなんていうバカはしねぇ。ハリボテの三つが仕掛けられた場所の真上は全部『共和国派』の後ろ暗い金の流れ先だったが、それは全部他の『帝国派』の連中を欺く為の偽装(フェイク)だったんだろうな」

 

「表向きは『帝国派』議員の仕組んだゲームだったのにも関わらずルバーチェ事務所だけが木っ端微塵にやられりゃあ、『帝国派』の裏社会での信頼は一気に地面まで急落下、か」

 

「裏通りのイメルダ婆さんが「今夜は出かける」なんて意味深な事を言ったから引っかかって調べてみりゃこのザマだ。モドキ共をしこたまブン殴った後にわざわざ『タングラム門』まで行って、詰めてたソーニャ副指令にカマまでかけて探ってみたら案の定だ。もう既に議員サマが一人、カルバードに高飛びした後だったよ」

 

「結局捕まえられず終い、か。……一課の連中、そのモドキ共をシバけるかねぇ?」

 

「いやいや、無理だろ。お上の顔色ばっか窺ってるあの局長と副局長がテメェの地位を投げ捨ててまで公にして裁けるわけねぇっての。このまま闇に葬られるに10000ミラ」

 

「んじゃ、俺もそれに10000ミラ」

 

「……賭けが成立しねぇ」

 

「そんくらい有り得ねぇってことだ」

 

 そう笑ってジョッキを傾けたランディは、ついさっき自分が一気に酒を呷っていた事に気付き、通りすがった店員にもう一杯酒を注文する。

 

 ―――流石に言えない事ではあったが、レイはこの一連の騒動の裏に、ある組織が絡んでいると見ていた。

 近年、カルバード共和国のロックスミス大統領直轄化に発足したと言われている諜報組織、『ロックスミス機関』。その手の者が手段を回して起こった騒動と考えれば、説明はつく。

 だが、機関の代表室長であるキリカ・ロウランが、このような周辺住民も巻き込む可能性があった()()()な作戦を立案したとは思えない。

 

 であれば、()()()()手が伸びていたのか。―――流石にここまで深いところを探るとなると、今のレイには厳しく、また彼自身も探ろうとは思わなかった。

 レイが今回最後まで動き切ったのも、爆弾の影響で裏通りに隣接する周辺住民への被害を考慮したからに過ぎず、政治屋の闘争などには一欠けらの興味もない。

 

 ()()()()()()、自治州内どころか諸外国の影響まで受けて巻き起こされた事件の未然解決。

 恐らく今回の遊撃士の活躍は表には出てこないだろうが、だとしてもレイは何も困らない。一仕事を終えて一日が終わり、明日にはまたノルマの依頼をこなすために自治州内を駆けずり回る。ただそれだけなのだ。

 

 

「にしても、ご苦労さんだったな。まさか俺がポロッと漏らした言葉からエラい事に巻き込んじまった。スマン」

 

「気にすんな。お陰で爆破テロを未然に防げたんだからコッチとしちゃ万々歳だ。そっちの司令も、これで懲りて当分は大人しくなるだろ」

 

「だと良いんだがなぁ」

 

 そこまで話したところで、『龍老飯店』の看板娘であるサンサンが運んできてくれたデザートの杏仁豆腐に舌鼓を打つ。

 性懲りもなくサンサンをナンパしようとしたランディの頭をレンゲで叩きながら、反省会じみた食事の席は終わろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

PM 9:00

―――――――――

 

 

「ふぅ」

 

 ランディと『龍老飯店』前で別れた後、レイは寒空の下、港湾区の中央に設けられた公園のベンチに腰かけていた。

 先程までは星だけが散りばめられていた夜空にも、立派な望月が鎮座している。それを眺めながらレイは、周囲の状況に気を配った。

 

 普段であれば幾らか屋台が立ち並んでいるこの地域も、今日は何故かガランとしており、人の姿はレイ以外見えない。

 理由としてはクロスベル警察が「地下区画におけるガス漏れ事故」と称して周辺区画を封鎖しているからなのだが、本当の事情を知っているレイは、そんな事など気にせずに居座っているという訳である。

 

 ふぁ、と小さい欠伸を一つ漏らしてから、ベンチの背もたれを二回ノックする。

 すると、満月が作り出した影の中から、音もなく”何か”が現れた。

 

「異常はねぇか?」

 

『はい。クロスベル自治州内全域に於いて、新たな武装勢力の介入は確認されておりません』

 

「今回はここまで、か。……しっかし、本気でテロを成功させるつもりなら、何であんな半端モンを雇ったのかねぇ」

 

 存外、大本の狙いは”クロスベルにおける『帝国派』の権威失墜”ではなく、こうした事態における”遊撃士の動きの監視”であったのかもしれない―――そういった野暮な推測が思い浮かんだ瞬間、レイは冗談じみた笑みを伏せて目を細めた。

 

「……『泥眼(でいがん)』」

 

『ハッ』

 

「今回の件に関して、深入りをしようとはするな。あまり深淵を覗き込み過ぎると、悪辣な魔女(メイガス)のしたり顔を見る羽目になるかもしれん」

 

 考えすぎ、と。それであればどれだけ良いか。

 だがレイは、一度不安材料が浮き彫りになった事に対しては、できる限りの対処は行う人間だ。探る方向ではなく、()()()()()()()で。

 

『……承知致しました。引き続き、己の任を全うする事と致します』

 

「宜しく。……あぁ、そうだ」

 

『?』

 

「来月の末になるかな。俺、エレボニアに行く事になった」

 

 思い返すのは忙しい中半ば拉致の形で連れ去られたエレボニア帝国の皇族専用避暑地『カレル離宮』での出来事。

 あの表向きは調子のいい阿呆であるクセに、真意は探れない油断のならない皇子に乗せられて士官学院への推薦入学願書を受け取ってしまったところから始まった。

 

 それだけならば、特にこの時期にクロスベルを離れる必要はなかった。依頼をこなしながら適当に試験勉強をこなし、推薦試験を通過して入学ギリギリにエレボニアに向かえば良いだけの話だったのだが、そうもいかなくなったのだ。

 

 今月の初めに、ゼムリア大陸中央部で起こったとある出来事。その結果独りぼっちになり、何をするでもなく彷徨っていた()()()()()を知り合いが拾い、レイと同じ士官学院を受けさせる事になった為に勉強を見てやってくれと頼まれたのである。

 その知り合いとも仔猫とも浅はからぬ間柄ではあった為、溜息交じりではあるが引き受けてしまった。恐らく底辺に近い彼女の学力を、たった二ヶ月かそこらで帝国随一の士官学院の合格ラインまで引き上げなければならないというのは、もしかしたら遊撃士として受けて来たどんな依頼よりも難しいのかもしれない。

 

『―――左様でございますか』

 

「ん。だからお前には負担を掛けちまうことになるが……まぁ、頑張ってくれ。色々な意味で」

 

『お気遣い、感謝致します。―――それでは、自分はこれにて』

 

「おう、悪かったな」

 

 そう声を掛けると、音もなく影の中に消えて行った優秀な諜報員の残声を背に、レイもベンチから立って支部に戻るために歩き始める。

 

「(……そうだった。この景色が普通なのも、あと一ヶ月なんだよな)」

 

 そう思ってしまうと、途端に全てが名残惜しく思えてしまう。

 雑多な街並みも、無機質な摩天楼も、善悪入り混じった人々の価値観も。―――そんなものに別に感情移入はしないと思ってはいても、流石に2年近くも居続ければ多少の愛着は湧くというもの。

 自分が居なくてもクロスベルは何も変わらない。その事実が、僅かばかり寂寥感を感じさせるのだ。

 

 そんな事を思いながらクロスベル支部の扉を開けると―――。

 

 

「何ぃ? ヴェンツェル。アタシの酒が飲めないってぇのぉ?」

 

「お前は人が酔いつぶれてもまだ酒を注ぎこもうとするだろうが……ッ‼ 少しはマトモな酔い方をしろ、リン‼」

 

「うーん、今日ちょっとこの麻痺毒使ってみたんだけどダメっぽい。あの程度の傭兵相手に一瞬で全身麻痺を起こせないようじゃ、レイ君を痺れさせるなんてまだまだ先の話ねぇ」

 

「エオリア、悪い事は言わないからそっち方面に才能を尖らせるのはやめなさい」

 

「ウチの女性陣は相変わらずいっつもぶっ壊れてるなぁ」

 

 そこには、変わらない同僚の姿があった。あんな事があってもバカ騒ぎできる程度の胆力がなければ、この支部で遊撃士は務まらない。

 そんな様子を見て僅かに安堵したレイは、口元に穏やかな笑みを浮かべながら暖炉の温かさが広がっている中へと入る。全員がレイが帰ってきた事に気付いて視線を向けると、いつもの、不敵な微笑へと切り替えた。

 

 

「ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ここは、遊撃士協会クロスベル支部。

 

 

 今日も変わらず、平常運転の一日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 はい。というわけでクロスベル支部の日常編をお送りいたしましたが、いかがでしたでしょうか。
 ……え?こんな波乱万丈な一日が日常なわけないって? ハハッ、またまた御冗談を。こんなのは日常茶飯事ですよぉ(ゲス顔)。

 実際クロスベルって政治家たちがお互いの揚げ足を取ることだけに必死になって、それに他の機関も追随するわけだからワケ分かんない事が起きて当たり前なんだよなぁ。
 警察もマトモに動かない(動けない)わけだから、クロスベル支部の遊撃士にはこれくらいの事件は普通に解決できる程度の腕前が求められます。

 
 そんでこの一ヶ月後、レイは遊撃士を休職してエレボニアに渡り、フィーと地獄の勉強合宿をします。このお話もいずれ書けたらいいなぁと。


 では、また戦場で。

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