英雄伝説 天の軌跡 (完結済)   作:十三

26 / 162
 



 ノートPCの調子が悪くなり、インターネットに全く繋がらなくなってから焦りまくっておりましたがなんとか復旧できました。お待たせして申し訳ありません。


第3章
剣士ではなく、料理人として


 レイが料理という分野に対してかなり熱を入れている理由は何かと問われると、彼は迷う事無くこう答える。―――”生きるために必要だからだ”と。

 

 ”食欲”という感性が心理学の分野で三大欲求の一つに数えられている事からも分かるように、人間が人間である以上、”食べる”という行為は絶対に必要になる。

しかしそれだけでは、食べて必要分の栄養を摂取できれば人間の欲求は満たされている、という事になってしまう。勿論、ゆっくりと卓を囲って食事をする余裕がない場面があるという事もあり、レイ自身そんな切羽詰まった場面に身を投じた事など幾らでもあった。

 だが同時に、料理人が丹精を込めて作った料理を食べて人々が笑顔になる事もまた知っている。美味な食事を終えて幸福度を満たした人間というのは、時に思わぬ真価を発揮する。……というのは流石に言い過ぎかもしれないが、ともかく、嘗て幼少の頃に母親の料理を食べて顔を綻ばせていた時の記憶が、彼を今でも厨房に立たせる原動力となっている。

 美味い料理を食べられるのは幸せだ。

同時に、渾身の料理を作り上げて食した人物に美味いと言って貰えるのもまた、幸せを感じる一つの方法だ。

 

 だから、やった。

 

 日が昇ろうが暮れようが戦闘と兵站補給と酒盛りに明け暮れるある意味社会不適合者の尖兵達を籠絡した。

酒のツマミ程度から始め、そこらで適当に拾って来た大きめの鍋と山岳での作戦行動中についでで集めて来た山菜や野生動物の肉などをベースに補給物資の香辛料を加え、レーション至上主義の万年戦闘者共に美味いと思わせる食事を提供した。

そんな事を続けていた末に、何故だか一部の人間に崇められたりもしたが、そこは無慈悲に蹴りで対応していた。

食材の現地調達、及び限られた資材の中で料理する術と、銃声や硝煙の臭いが飛び交う状況で料理し続ける胆力はそこで身に着けた。

 

 またある時は、過剰労働がレッドゾーンに突入していた修羅の職場で、常時空腹に飢えたこれまた修羅の仲間を相手に、仕事の合間の限られた時間で料理を作ったりもした。

近代都市ならではの多種多様な食文化や食材に触れ、その調理法を学べた事も、レイにとっては僥倖だった。またある時は仕事と称して手が足りていなかったレストランや食堂の厨房で腕を振るい、大衆に好まれる料理、上流階級に好まれる料理の違いも発見した。

 

 

 そこで一つ分かった事がある。

 質の良い食材というものは、必ずしも高価な食材とはイコールにならないという事だ。

どんな食材であれ、それを生かすも殺すも料理人の腕次第。そこにプロとしてのプライドの全てを懸けて来た人たちを何人か間近で見て来たから分かる。

 しかし、そうは言っても出来得る限り質の良い食材で料理をしたいというのは少しでも料理を齧っている者としては常に考える事だ。

 だからレイも、そこには少し拘る。

店頭に並ぶ食材の新鮮さを見極める審美眼は勿論、時には自分自身で食材を調達する事もある。

 

 そして今日も、釣竿を片手にザリーガの上位種であるブリザリーガを目当てにトリスタの一角にある釣り場で悠々と釣り糸を垂らしていたのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうしてこうなったし」

 

 

 

 

 

 

 気付けば西トリスタ街道の川の浅瀬で全身ずぶ濡れになりながら、右腕には白い制服を着た同級生を抱え、左手には釣竿。そして目の前の砂利の上には、栄養状態が良かったのか、巨大に成長した魚、ゴルドサモーナが未だ元気よくビチビチと跳ね回っていた。

 思わず呟いてしまったその一言がこの状況のカオスさを良く表しており、同級生を降ろし、暴れているサモーナをとりあえず踏みつけて動きを封じてから、どうしてこうなったのかと、状況整理を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 きっかけは、朝食が終わった後、食堂に集まっていた全員に夕食の献立の希望を聞いていた時に、徐に口を開いたフィーの言葉だった。

 

「じゃあ、久しぶりにレイの中華料理食べたい」

 

 その聞き慣れない料理の名前に、全員が食いついたのは言うまでもない。

唯一リィンは名前くらいは聞いた事があったようだが、実際に食べた経験はなかったようで、唯一調理方法を知るレイが、全員揃っての登校がてら説明する事から始まった。

 

 大陸東部カルバード共和国、その中でも東方系の移民が数多く居を構える東方人街においては比較的ポピュラーであるこの料理も、生粋の帝国人であるならば接する機会は極めて少ない。

フィーは猟兵として、サラは遊撃士時代に各地を回っている時にその味に触れる機会があったのだが如何せんエレボニアとカルバードは敵国同士の間柄だ。

必然、互いの文化に触れる回数は減るし、特に貴族ともなれば敵国の伝統料理を口にしようと考える者は少ないだろう。まぁ、この場に集まっている貴族はあまりそういう事に頓着しない人物ばかりではあるが。

 リィンは剣の師であるユン・カーファイが東方系の人物であったという事もあるし、ラウラは帝国でも有名な武門の名家。伝統よりも拘るべき事があったために、道楽に耽る余裕などなかった。元々は庶子の出であるユーシスも、舌は肥えているが食に対してのジャンルには特に拘りは見せていない。あれでいて、普通に庶民が食べるような料理でも何でもないように平らげるのだ。

 

 話を戻すと、そんなカルバードの伝統料理の中でも”中華”というジャンルは特に大衆的な料理でもある。

無論、上流階級の人間が食するような味の質も、見た目の質も豪勢な物も存在するのだが、中華の基本コンセプトは早く、安く、美味いという三つである。

 レイが遊撃士としてクロスベルに在中していた際に贔屓にしていた店である宿酒場『龍老飯店』で出されていた料理はその三原則を忠実に守った物が多かった。

専用の鍋に具材を投入し、それを油と高火力で一気に炒めあげる。シンプルさの中にやはり料理人の技量がダイレクトに反映される奥深い料理に魅せられ、店の人手が足りない際に遊撃士の仕事とは別に無給で厨房に入れてもらい、一流の料理人の腕前を横目で見ながら盗み取って技術を習得しようと躍起になった日々も、今では良い思い出である。

 調理にかかる時間こそ他ジャンルの料理に比べて短いものの、それは決して安っぽいという事とイコールではない。むしろ短い時間の中でどれだけの持ち得る技術を詰め込んで如何に高いクオリティの料理に仕上げていくかという時間との一対一の勝負。センスや効率の良さも勿論必要だが、培った経験と技量が誤魔化せないというのが中華料理の真髄だ。

 

 ……などと長々しく講釈を垂れたところで全員が頭の上に疑問符を浮かべる未来は目に見えていたため、本当に簡潔な説明だけをしてその場は終えた。

 

 

 

「(材料は何とかなりそうだし、調味料もある。何とかなるか?)」

 

 スラスラと、作るメニューにそれを作る材料、調理器具を手元のノートにメモしていく。

その手つきに澱みはなく、まるで一流の小説家が物語を書き上げていくかのような滑らかさなのだが、それを行っていたのは授業中だった。本来ならば、肝心の授業内容が疎かになって教師の言葉など右から左へと通り抜けていくはずなのだが……。

 

「えー、では七耀歴1190年。現在の大陸の導力機構の根幹となったある出来事がありました。分かる人はいますか~?」

 

 教壇に立っているのは帝国史を担当している、ビン底眼鏡を掛けた男性、トマス・ライサンダー教諭。

士官学院の教師としては些かノリが軽いという特徴があるが、栄えあるトールズの教師陣の一員というだけあって知識力は高く、指導方法も的確であったりする。

そんな彼は相変わらずの人を食ったような声でそう言った後教室を見渡し、指名をした。

 

「そうですね~。ではレイ君、分かりますか?」

 

 指名され、ピタリとノートの上で踊っていたペンの動きが止まる。隣に座っていたエマは心配そうな視線を向けて来たが、レイは何事もなかったかのように落ち着いた声色で答えた。

 

「……ZFC―――ツァイス中央工房とエプスタイン財団が共同で導力ネットワーク構想を発表した年ですね」

 

「おぉ、正解です。良く知っていましたね」

 

「導力ネットワーク関連の事は友人が詳しかったもので。知識は色々と叩き込まれました」

 

「なるほどなるほど。ではその出来事の具体的な内容について見てみましょう。まずは―――」

 

 と、話の内容がシフトした時を見計らってレイは再び視線をノートに落とした。

 そんな事を続けて数時間、空模様が黄昏て、授業はサラが担当するLHRを残すのみとなった。

 

「えー、と。特に何も話す事はないんだけどねー。ないんだけど……ホラ、そこのちっこいの」

 

「ちっこい言うな‼ んで、何だよ」

 

「アンタねぇ。言い出しっぺのアタシたちが言うのもなんだけどちゃんと聞きなさいよ」

 

「問題ない、脳を二分割してちゃんと聞いてた」

 

「いや、そういう問題じゃな―――」

 

「あ、そうだ。ちょっとお前ら、ちゅうもーく」

 

 サラが投げて来たチョークを右手の人差し指と中指で器用にキャッチしながらレイはクラス全員に向かって言った。

 

「悪い、思った以上に材料と時間が要るから今日の夕飯に出すのは無理そうだわ。明日は学院の授業も半ドンだし、明日でもいいか?」

 

「あぁ、全然構わない。というか、無茶を言ってるのはこっちだからな」

 

「うむ。何か我らにも手伝える事があったら遠慮なく言ってくれ」

 

 ラウラの言葉に、レイは苦笑した。

 

「はは。ありがとな。食材は何とか自力で確保できそうなんだが、エビはどうすっかなぁ」

 

 ポリポリとペンの尻で頭を掻きながらそう独り言のように呟くと、サラが手を叩いて注目を戻した。

 

「はいはい、楽しみにしてるのは分かるけど落ち着きなさい。まったくもう」

 

「サラ、それは涎垂らしながら言う事じゃないと思う」

 

「だまらっしゃい。アンタこそ涎垂らしてるじゃないのよ」

 

「餃子、エビチリ、小籠包、八宝菜……」

 

「そのビールが止まらなくなるようなメニューの羅列は止めなさい」

 

「レイ、チンジャオロースは?」

 

「あるぞー。むしろないと思ったか」

 

「……何故だかは分からないが、名前の響きだけで美味しそうだという事は分かる」

 

「同感だな」

 

 結局その日はグダグダのまま、LHRは終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、授業が午前中で終わった後、メモ用紙片手に亜音速にも匹敵(比喩)する速さで教室を飛び出したレイは、すぐさまトリスタの街に降り立った。

向かった先は、既にお得意様認定されているブランドン商店。その扉を開けると、見知った顔の同級生が既に店内にいた。

 

「俺より先に来てるとは……やるな、ベッキー」

 

「当たり前や。お得意先との取引やっちゅうのに客より遅く来る商人なんかおらんやろ」

 

 平民生徒である事を表す緑色の制服に、ボブカットの金髪、そして強い訛り口調。若干16にして既に商人としての気概が溢れているこの少女、ベッキーこそが、レイの取引相手。

尤も、彼が取引をしているのは彼女の父親とであり、ベッキーはその仲介役であるのだが。

 

「首尾はどうよ?」

 

「オトンの顔の広さをナメたらアカン。伊達に大市で長く店やってへんのや。クロスベルから食材仕入れるくらい朝飯前や」

 

 そう言ってベッキーが道を譲ると、商店のカウンターの上にレイが注文した食材が一つの誤りもなく並んでいた。

肉や野菜。不足分の調味料などが所狭しと並んでいる状況に、内心でガッツポーズをする。

 と言うのも、実はベッキーの父親というのは、レイが以前ケルデック実習の際に世話になった食材店の店長であるライモン氏であったのである。

その事を知った時は流石に少々驚いたが、食材確保のパイプが出来るというのはレイにとっても良い事であったので、以降食材購入の際には色々と世話になっていたりする。

彼女自身、将来は父と同じく商人の世界で生きる事を考えているため、実際に取引が経験できるこのやり取りには、彼女にもメリットがあった。

 

「しっかしけったいな食材を所望したもんやなぁ。いや、お客の買い物事情にケチつけるわけじゃないんやけど」

 

「郷に入っては郷に従えという諺もある。なるべくなら本場の食材を使った方がいい」

 

 そう言いながら、ベッキーに今回のお取り寄せの金額をその場で支払う。少し高くついた分はレイのポケットマネーで支払ったため、学生寮の食費を圧迫するような事もない。

 

「ふんふん……ちょうどやな、おおきに‼ これからもライモン商店をよろしゅうな‼」

 

「おう、贔屓にさせてもらうぜ」

 

 山のように積まれた食材を数個に分けた特大の袋に詰めて両腕に引っかける。

総重量は推して知るべしであり、どう考えても小柄なレイが一人で持てる量ではなかったのだが、それらを持ったまま、唖然とするベッキーに声を掛ける余裕まで見せて店を後にした。

 幸いにして店から寮まではそれ程距離が離れているわけではなく、一旦それらを厨房に置くために戻る。

 

「おや主、買い出しお疲れ様です」

 

 そこに近寄って来たのはぬいぐるみ憑依状態のシオン。

普段別に用がないときは昔からのお気に入りであるそのぬいぐるみに憑依して寮の中を漂っている事が多く、ふわふわと浮かんでいる姿は可愛らしくはあるのだが、夜に見ると意外と不気味だったりすることもある。

現に夜中、トイレに行こうとしていたエリオットが真っ暗闇の中で両目を赤く光らせたそれの姿を見て思わず悲鳴を上げてしまったという被害があったくらいだ。

 

「丁度いい。これ全部冷蔵庫の中に詰めといてくれ。またこれから出るから」

 

「? はぁ、お安い御用でございますが……」

 

 そう応えると、シオンはぬいぐるみから人型へと姿を変える。彼女がちらりと一瞥したのは、ケルデック実習から帰った後に新調した巨大な業務用冷蔵庫。日増しに暖かくなって来た今では生命線となりつつあるそれになら、今回買って来た食材も入りきるだろう。

 

「まだ調達するものがお有りで?」

 

「あぁ、うん。海鮮物はあまり仕入れられなくてな。流石にアワビとかは無理だったが、アレならまぁ、釣れば何とかなるだろ」

 

 そう言い、レイは厨房の横に立てかけていた愛用の釣竿を手に持った。

 

「楽しそうな顔をしておりますね」

 

「? そうか?」

 

「えぇ。 カグヤ様がご覧になったらさぞお喜びになられるかと」

 

 シオンのその言葉に、レイは乾いた笑みを見せる。

 

「確かに、師匠が見たら笑うかもしれないな。……その後怒られるかもしれんが」

 

「かもしれませんな。―――では、ご武運をお祈りしております」

 

「武運を祈られても困る。別に戦いに行くわけじゃない」

 

 そう言いながらもシオンに軽く手を挙げて感謝の意を示したレイは寮を飛び出す。

 トリスタ市内で釣りが出来る場所、というのは限られており、市内の中心部である駅前広場と、教会や士官学院がある区画とを分ける川でのみ行う事ができる。

東西トリスタ街道を繋ぎ、生活用水としても利用されるだけあって、透明度も水中の栄養分も豊富であり、釣り場としては中々に高評価な場所であったりする。

レイがそこへと足を運ぶと、いつものポイントには既に釣り糸を垂らした先客がいた。

 

「よぉケネス。調子はどうよ」

 

「ん? あぁ、レイ君か。まぁ、そこそこってところかな。本当はもう少し曇ってる方が食いつきはいいんだけど、今日みたいな良い天気にケチをつけたらバチが当たりそうだしね」

 

「全くだ。良い釣り日和だぜ」

 

 先客として居たのは伝統ある貴族生徒の白い制服の上着の袖を何の躊躇いもなく肘の辺りまで捲り上げた笑顔の似合う好青年。レイと同じ一年生にして『釣皇倶楽部』という部活の部長を務めているケネス・レイクロード。

 実家は男爵家という爵位を持つ貴族でありながらそれを鼻に掛けるどころか気にしているような素振りすらない。貴族の誇りも何もかも頭の片隅に押し寄せて悠々自適に釣り糸を垂らすという、ある意味変わった性格の持ち主である。

 だが、その釣りの腕前は確かであり、セミプロとしては申し分ない実力を持っている。本人からすれば”ただの趣味”なのだろうが、釣りをするだけの部活の看板を引っ下げるだけの力はあるのだ。

 

「今日も食材を釣るのかい? お目当ては?」

 

「ザリーガ……いや、ブリザリーガ辺りを引っかけたいところだな。今の時期ならまだいるだろ」

 

「そうだねぇ。もう少し熱くなるとアイゼンガルド連峰の方に引っこんじゃうけど、まだいると思うよ」

 

 そんな話をしている間にも、レイは手際よく釣り糸の準備や餌の装着などを済ませ、竿を振って水面を揺らす。

後はひたすら根気の勝負だ。時折釣り糸を揺らして誘う事もするが、警戒心の高い魚はそれすらも嫌う。なので、じっと待つだけの時間が数分ほど続いた。

 

「そう言えばこの前、リィン君が大きな魚影を引っかけてね。その時は糸を切られて逃がしてしまったみたいなんだけど、いやぁ、あれは大きかったなぁ」

 

「ほー。種類は?」

 

「食いついた瞬間にすごく暴れてね。水飛沫が凄かったから確認はできなかったな」

 

「そいつは残念だったな。糸から食い破るとか相当な大物だろうに」

 

「だねぇ」

 

 基本的に釣りは趣味ではなく食材確保のためにやっているレイではあるが、大物の確認情報などが耳に入るとどうにも気分が高揚してしまう。

こればっかりは少しでも釣りの世界に足を踏み入れてしまった人間の矜持と言うか(さが)というか、とにかくそのまま聞き流せるものではない。あわよくば自分が釣ってやろうと、そう思うのは仕方のない事だ。

 

「―――お、っと、かかったかかった」

 

 そんな事を思っている間に、ケネスの釣り糸が軽くしなった。反応からして大物ではないのだろうが、彼にとっては釣り上げる事にこそ意味がある。その後、大体はリリースしてしまうのだが。

リールを巻きながら徐々に糸を巻き上げていき、ものの十数秒で水面に獲物の姿が浮かび上がった。

 

「あ、これはブリザリーガだね。釣り上げたらレイ君にあげるよ」

 

「お、マジか。恩に着るぜ」

 

 声につられて水面を覗き込んでみると、確かにかかっていたのは宝石のような水色の甲殻を持った獲物。

慣れた手つきでケネスはそれを水中から引き上げる。その姿は太陽光を反射して、どこか神々しく見えた。

 そんな感じで、ケネスは勿論の事レイもそちらの方に視線を向けていたからだろう。

 

 釣り上げられたそれを餌と認識して猛スピードで迫ってくる巨大な魚影の接近に、二人揃って気付かなかった。

 

 

 

 ザパァッッ、という水面から勢いよく跳び上がる音。同時に立つ水飛沫。

 かつてリィンの釣竿の糸を食い千切ったというそれは、今度は大口を開けて釣り糸の先に引っかかったブリザリーガを一呑みにした。

 

「え? う、うわあああああああああっ⁉」

 

 水飛沫の合間から見えたのは、全長は3アージュに迫ろうかという巨大な姿。全身の鱗は金色に覆われており、それだけで種類の判別は辛うじてできた。

 

「ゴルドサモーナ⁉ いや、それにしてもデカ過ぎんだろ‼」

 

 レイも数回釣り上げた事があるその魚は、希少性こそ高いものの本来ならどんなに大きくても全長1メートルに届かないはずのものである。

しかし目の前に現れたそれは規格外と呼ぶに相応しい体躯だった。

 そんな規格外の力に予想外の状況で引っ張られたケネスは踏ん張る力も碌に出せず、大きく体勢を崩した。

 

「危ねぇっ‼」

 

 レイは自分の釣竿を放り投げるとケネスの左腕を掴んだが、水辺ギリギリという足場の悪さに加えて予想以上の相手の推進力に負け、二人揃って水中に引きずり込まれてしまった。

 

「プハッ‼ おいケネス‼ 早く釣竿を離せ‼ このままだと溺れるぞ‼」

 

「だ、駄目なんだ‼ さっき引きずり込まれた時に糸が指に絡まって……っ‼」

 

 水中で足が踏ん張れずに為す術なく流されているこの状況では、細かい作業を行う事はできない。巻き上げられた飛沫が視界を遮り、加えて川の流れと相俟って猛スピードで水中を引きずられているという状況下で冷静な判断力も失われてしまっている。

 だが、このままではいずれ水に阻まれて窒息してしまうだろう。レイは意識を失いかけているケネスを右腕に抱えて、左手で器用に腰に括り付けたポーチから投擲用のナイフを二本取り出した。

 

「(手元が何とかできないなら、大本を何とかするしかねぇか)」

 

 視界は悪く、揺れているため狙いすら定まらない。しかしそれで獲物を仕留めそこなう程、レイの技術もまだ鈍ってはいなかった。

 

「(ここだ‼)」

 

 一瞬体が浮き上がった時と水飛沫が晴れた瞬間を狙って手首の力だけでナイフを投擲する。それは一直線に対象に向かって飛んでいき、左側のエラの近くに刺さった。

 一見、あまり意味のない攻撃のようにも見えたが、その数十秒後、ゴルドサモーナの動きが目に見えて鈍くなり、引きずる力も格段に弱くなった。

 と言うのも、レイが放ったナイフの先に塗布されていたのは特殊な薬剤でなければ剥離させる事ができない即効性の麻痺毒であり、生命活動にこそ害は及ぼさないものの動きを止める事を目的とした対人・対魔獣武器。

それを以てしても”動きを弱める”程度にしかできないという事に改めてこの魚の規格外さを思い知らされたが、力の弱まった隙を狙ってレイは浅瀬側の水底に足を付けると、鍛え上げた脚力を使って踏ん張った。

 

「く……うおおおおおおおおっ‼」

 

 全身に力を込めてケネスの腕ごと釣竿を引っ張り上げる。

地に足がついており、力を踏ん張れる状況というアドバンテージがこちらに発生した以上、力勝負で負けるわけにはいかない。数分の格闘の末、どうにかゴルドサモーナを脇の砂利道に引っ張り上げる事に成功した。

 

「よしっ、と」

 

 そうして絡まっていたケネスの指の糸を解き、同級生と釣竿を抱えながらずぶ濡れになった制服の重みに耐えて陸へと上がる。

そうしてふと状況を鑑みた時に出た言葉が、「……どうしてこうなったし」という一言だったのだ。

 

 

 

 陸に揚げられて数分。エラ呼吸のはずのゴルドサモーナは未だビチビチと元気よく跳ねており、それを見ながら目を覚ましたケネスは苦笑した。

 

「あはは……まさか川釣りで魚に引き摺られるとはねぇ。良い経験が出来たというべきなのかな?」

 

「あれ魚なのか? 魔獣の類だと言われても納得できるぞ」

 

 濡れに濡れた制服を絞りながらそう言葉を交わしていると、一際強く跳ねたゴルドサモーナが再び川の中へと戻って行った。

 悔しいと思う気持ちはある。毒で弱らせた上での釣果などノーカウントだ。沸々と込み上げてくるリベンジへの思いに、レイは口角を釣り上げた。

 

「次かかった時は必ず釣り上げてフルコースの食材にしてやる」

 

「あはは、それはいいね。あ、それと、助けてくれてありがとう。君がいなかったらどうなってた事やら」

 

「気にすんなや。リィン(ツレ)が世話になってるみたいだしな」

 

 しかし、と改めて思う。

目当てにしていたブリザリーガは憎き巨大ゴルドサモーナの胃袋に消え、釣果はゼロ。時間的にもそろそろ寮に戻って仕込みを開始しなければならない。

エビチリ、天ぷら、あんかけにおこげ。それらのメニューを諦めなければならないのは心苦しいが、これ以上先延ばしにするわけにもいかない。

 溜息と共に乾かした制服を着て立ち上がると、土手の上の街道の方からエンジンを吹かす音が聞こえて来た。

 

 

「おーい、レイ。お前こんなとこで何してんだよ、探しちまっただろーが」

 

「あれ? どーしたんすか、バンダナ先輩」

 

 木の柵から身を乗り出してレイを呼んでいたのは、バンダナ先輩ことクロウ。その隣にはライダースーツを身に纏った長身の女性が腕を組んで佇んでいた。

 

「やぁレイ君。水浴びにはあと一か月ほど早いんじゃないかい?」

 

「アンゼリカ先輩も」

 

 怜悧な印象を与えるクロウの同級生にして悪友でもあるアンゼリカ・ログナーに対しても声を掛けると、クロウは目に見えて落胆したような仕草を見せた。

 

「お前なぁ、いつになったら俺を名前で呼ぶんだよ。バンダナバンダナって、俺の本体がこっちみたいな言い方すんなや」

 

「呼んで欲しかったらブレードで俺に勝ってから言って下さいっていつも言ってんでしょーが。―――それで、俺を探してるみたいでしたけど」

 

「あぁ、うん。とりあえずここで話すのもなんだ。一度トリスタに戻ろうじゃないか」

 

 アンゼリカにそう促され、一度街道に上がってから随分と離れてしまったトリスタへの帰路につく。

 街に戻った後、ケネスとはそこで別れ、レイは先輩二人と共に喫茶『キルシェ』のテラス席へと座った。

 

「さて、本題に入ろうか。クロウ、アレを」

 

「ほいきた」

 

 コーヒーを一杯飲み、落ち着いたところで、クロウが脇に置いてあったそれをテーブルの上に置いた。

とはいえ、それは別に特別なものではなく、白を基調とした色合いの大きめのサイズのクーラーボックスだった。蓋の隙間からはドライアイスの白い煙が僅かながら漏れており、中に冷蔵品が入っている事が窺える。

 

「これは?」

 

「まぁまぁ、とりあえず開けてみろや」

 

 クロウに言われて蓋のロックを外して開けてみると、そこには綺麗に並べられた冷蔵エビが大量に入っていた。

数にして三十は優にあるだろうか。更に一匹一匹が大きく、見る限り質も良い。

まさにそれは、今レイが求めている食材そのものだった。

 

「こ、これってどうして……」

 

「ハハ、んなもん当たり前だろ。後輩の考えてる事なんてお見とお―――」

 

「実はリィン君から相談を受けてね。食材の確保に心当たりがないかと。そこで可愛い後輩のために一肌脱いだという訳さ」

 

「―――ってオイコラ、ゼリカ‼ せめて最後まで言わせろ‼ 中途半端に終わるのが一番辛いだろうが‼」

 

 ギャーギャーと文句を言うクロウを横目に、レイは傷めないようにしながらボックスに手を添える。

 

 エビの確保はどうしようかと、そう思わず漏らしてしまったのは昨日のLHRの時だけだったはずだ。

最後まで自分だけでどうにかしようと思っていたのにも拘らず、最後の最後で助けられてしまった事に形容しがたい嬉しさが込み上げてくる。

助けた事を伝えず、あくまで手助けのみに徹しようとする心意気。心配りでリィンに先手を打たれていたという事実に、思わず口元が綻んだ。

 

「……ありがとう、ございます。どこで仕入れて来てくれたんですか?」

 

「なに、クロウのちょっとしたツテを頼ってね。帝都まで行って来たんだ。丁度完成したばかりの導力バイクの乗り心地も再確認しておきたかったから、私が足を提供したのさ」

 

 ポンポン、と愛おしそうにアンゼリカが撫でているのは、今はまだ世間には普及していない導力式の二輪自動車。排気量などのスペックこそ四輪自動車に劣るものの、機動力や整備の簡潔さなどの利点があり、現段階では正式生産が決定していないが、能力的には申し分ない代物である。

 クロウと初めて会った時からちょくちょく技術棟に顔を出していたレイは勿論これの存在については知っており、車体のペイントなどについて先輩たちに交じって意見を交わした事もあった。

 

「サイドカーも付いて二人乗りっすか」

 

「あぁ。本当はトワを乗せて華のあるツーリングと洒落込みたかったんだがね。如何せん予定が合わず妥協をしたんだ」

 

「何で俺がワガママ言ったみたいになってんだよ。……ま、美味いメシ作るんだろ。気になってたんだよ、お前の作るメシがどんなもんか」

 

 だから、と、クロウがクーラーボックスに手を添えて付け加えた。

 

「コイツの代金はいらねぇから、俺たちもお前のメシにありつかせてくれ。それが譲る条件って事でどうだ?」

 

「お安い御用です。何だったらトワ会長とジョルジュ先輩もどうっすか? この際多少増えても変わらないですから」

 

「それはありがたいね。好意に甘えさせてもらうとしよう」

 

 そう言えば以前、クロウと初めて会った時に彼が言っていた事を思い出す。

 機会があったら食わせてくれと、口約束ではあるが確かに言葉を交わした覚えがある。ならば恩を返すという意味合いでも、最上級の料理で以てもてなさなくてはならない。

 

「期待してるぜ、料理長(シェフ)

 

 クロウのその言葉に、レイは黙って不敵な笑みを返したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 厨房から蠱惑的な香りが漏れ出てくる。

 塩と胡椒を絶妙なタイミングで合わせ、油を敷いた鍋で調理をし、酸味のある餡を同時進行で作り上げる。

肉の焼ける匂い、魚の揚がる音、野菜から醸し出される濃厚な香りが、徐々に料理が完成へと近づいている事を伝えてくれていた。

 

 厨房兼食堂から扉一枚隔てた談話室に集まる食べ盛りの学生たちは、その香りに当てられて涎が出そうになるのをグッと堪えていた。

叶うのならばすぐさま扉を開けて食欲をそそってやまないこの匂いを直接嗅ぎたい衝動に駆られるが、それをしてしまえば今まさしく厨房と言う名の戦場で戦っているレイの邪魔をする事になる。それだけはできなかった。

 

 

「うぅ……クロウ君、私もうだめだよぉ。お昼ごはんも忙しくてあんまり食べられなかったからもう限界ぃ……」

 

「言うなトワ‼ 俺だってもうヤベェんだ。さっきから腹が鳴りっぱなしなんだよ……っ‼」

 

「ふ、ふふふ、お腹が空いてたまらないトワもまた一段と可愛くてステキだが―――今は私もあまり余裕がないな」

 

「ははは……ボクの場合はお腹が減るのはいつもの事だけど、今日は一段と魅力的な食事になりそうだねぇ」

 

 二年生勢は固まって互いに声を掛けながら凌いでいる。そんな中でも余裕を見せるあたり流石に士官学院で一年間を過ごした猛者たちと言うべきだが、後輩にあたる一年生勢は―――

 

 

「マズいマズいマズい。皆、意識をしっかり持て‼ 持っていかれるなよ‼」

 

「り、リィン、僕もう限界……何でもいいから口に入れる物……」

 

「気をしっかり持ちたまえ‼ ここで食べたら負けだぞ‼」

 

「………………」

 

「リィン、ユーシスがマズいぞ。さっきから俯いたままピクリともしない」

 

「あ、悪魔ぁ……ダイエットしようとした矢先にこれとか何の拷問よぉ……」

 

「アリサは充分痩せているではないか。私は今夜は思う存分食べるつもりだぞ。淑女の嗜み? そんなものは知らんな」

 

「委員長……も、私、ダメ。……ちょっと、落ちる、ね」

 

「寝ちゃだめですフィーちゃん‼ 私だってもう………………ハッ、今少し意識飛んでました‼」

 

 各々自制心を保つのに精一杯であった。

更に唯一の教師に至っては―――

 

 

「ビールビールビールビール、餃子、八宝菜、エビチリ、麻婆豆腐、チンジャオロース、炒飯、あんかけにおこげに油淋鶏……回鍋肉に小籠包……じゅるり」

 

 何というか、既に堕落しきっていた。

 

 そんなカオスな状況の中、全員の限界を見極めたかのように隔てていた扉が勢いよく開いた。

その先に居たのは、愛用のエプロンを油で汚したレイの姿。右手にはお玉を装備した彼は、全員を一瞥してからニヤリと笑った。

 

「待たせたな者共。宴の開演だ、好きな席に付きやがれ」

 

 その言葉に全員が過剰反応し、その五秒後にはまるで瞬間移動したかのごとく食堂の席に揃って着席していた。

彼らの目の前にあるのは山と積まれた中華料理の数々。その全てが白い湯気を立ち昇らせ、多種多様入り混じった芳醇な香りが鼻腔をくすぐった。

 

「料理の解説は無粋だからしない。後は各々の舌でどんなものかを感じ取りな。追加注文は幾らでも受け付ける。―――さぁ、全員揃って」

 

「「「「「「「「「「「「「「いただきますっ‼」」」」」」」」」」」」」」

 

 Ⅶ組の面々から第三学生寮式の食事作法を教わっていた二年生も含めて声を揃えてそう言うと、堰が切れたかのように各々が料理を食らい始めた。

 完全に暴食の様相を呈しているクロウとサラ、そこまではいかずとも年頃の男子らしく旺盛に食べていくリィン、エリオット、ガイウス、マキアス。貴族らしく節度を持ちながらもやはり食べるスピードはいつもの1.5倍くらいになっているユーシス、泣きながらもあれもこれもと料理に手を伸ばすアリサ、ラウラはアンゼリカと共に味の濃いものを中心に大皿を空にして行き、フィーはまるで手品師の如く小皿に分けた料理を消すように食べ、エマはそんなフィーの口元を拭いながらも、魚系の料理を口に含んでいく。トワはがっつくのを恥ずかしそうな仕草を見せながらも食欲には抗えずにパクパクと食べてその度に幸せそうな表情を浮かべ、ジョルジュは言うまでもなく満喫をしている様子だった。

 

 そんな賑やかな様子を横目で見ながらレイはひたすら中華鍋を振り、油に食材を通し、出来上がったものを次々と大皿に移していく。

それを器用に運んでいくのは人型状態のシオンだ。雰囲気も重要ですという本人たっての希望でいつもの着物ではなく、その妖艶な肢体を惜しげもなく浮かび上がらせるチャイナドレスを着て、ノリノリの様子で給仕をしている。

 いつもならその艶姿に目を奪われるであろう男子陣も今は流石に食欲が優先なようで、運ばれてきた新しい料理に瞬時に食いつき、瞬く間にその山を切り崩していく。

 

「ふふふ、若者は元気があって宜しいですなぁ。旺盛な食欲、暴飲暴食もまたこの時だけの特権です」

 

「全くだ。肉にたかるハイエナかと見間違うぞ」

 

「主は参加せずとも宜しいので?」

 

「馬鹿を言え。料理を放り出す料理人がどこにいる」

 

 そう言いながらレイは再び己の戦場と向き合った。

 

 

 

 

 状況が落ち着き始めたのは、宴が始まってから一時間が経とうとした頃。

 開始直後はあれだけ力強く食欲を満たしていた面々も今はそれぞれ落ち着き、食後用にと出した緑茶を啜って思い思いに寛いでいた。

皆一様に満足げな表情を浮かべるその様子。それを見れただけでも頑張った甲斐はあったなと、そう思いながらレイはレンゲで掬った炒飯を自分の口へと入れた。

 

「……ねぇ、レイ」

 

「ん?」

 

 そんな彼の横に座ったのは、シオンがデザートとして密かに作っていた胡麻団子を口に入れながら、いつもより緩んだ表情をしたフィーだった。

 

「ありがと。前食べた時より美味しくなってて、凄く楽しかった」

 

「そう言って貰えれば御の字だ。チャンホイさん―――俺の中華料理の師匠には及ばないけどな」

 

「そんな事はない。少なくとも、俺たちに言わせればな」

 

 反対方向の横の席に掛けたのは、同じくデザートとして出された杏仁豆腐の入った皿を持ったリィン。

 

「俺からもお礼を言わせてくれ。まさかこんな美味いものが学生寮で食べられるとは思わなかった。いつか絶対に、お返しをさせてもらうよ」

 

「別にかまわねぇよ。俺も作ってて楽しかったしな」

 

「まーまー、良いから素直に聞いとけって。いや、マジで、それだけの価値はあったっつーか、金取れるレベルだったぜ」

 

 そして背後からレイの髪の毛をわしゃわしゃと手で乱してくるクロウ。

三人からの屈託のない感謝の念を聞いて、レイは少しばかり安堵した。

 視線を移せば、その言葉に同意するかのように全員が頷いていた。嬉しい事は勿論なのだが、どうにもその視線が面映ゆく感じてしまい、ふと天井を見上げた。

 

「(……たまには悪くねーな、こういうのも)」

 

 気の迷いであったとしてもそう思ってしまう程に、その時間はレイにとって心地の良いものであった。

良い料理を作り、それを喜んで食べてもらう。そして礼を言ってもらうという、考えてみれば当たり前の事。

 

 そんな当たり前の事すらも今まで考える余裕がなかったのかと自虐的な笑みを浮かべ、レイは再び自作の料理を口に運んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


 メインストーリーより日常譚の方が文字数が多くなる法則に則って今回も14000文字以上となりました。まぁ、長くなるのは別にいいんですけどね。

さて、次回もメインに少し食い込む日常譚ですかねー。
”あの人”をそろそろ出さなきゃならん。あー、忙しい忙しい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。