英雄伝説 天の軌跡 (完結済)   作:十三

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「頼むよ神様、こんな人生だったんだ。せめて一度くらい、幸せな夢を見させてよ……」
      by 佐倉杏子(魔法少女まどか☆マギカ)














夏空の悲壮感

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その人物が居る空間は、否が応にも荘厳になる。

 

 高邁にして鮮烈。武の心得を介している者であれば、誰であれその姿には畏敬の念を抱く事だろう。

 白金の鎧を身に纏い、その右手に携えるは巨大な馬上槍(ランス)。衒いも掛け値もなく、武人の頂点に君臨する絶対の”最強”。

 

 

「―――さて」

 

 その一言が夜の丘陵に響いただけで、その背後に仕える美麗な戦乙女たちは膝をつけて(こうべ)を垂れる。

 彼女らが意志と武器に込めるのは、他ならない主への敬意と忠道。その姿はまさに、女神(フレイヤ)の膝下に伏せる戦乙女(ヴァルキュリア)

 ただ一つ違うのは、仕える主が”最強”であるというだけ。

 

「デュバリィ、ルナフィリア。帝都での任務、ご苦労様でした。お蔭でこちらは恙なく準備を終えられそうです」

 

「も、勿体無いお言葉です‼」

 

「マスターのお役に立てたのでしたら、至上の喜びでございます」

 

 それぞれ人柄を表したかのような言葉を返す二人を眺めてから、その最高級の蒼耀石(サフィール)の輝きもかくやという程の双眸を、ただ一人膝をつかずにいた爍髪の女性に向ける。

 

「貴女もご苦労様でした、カグヤ。あの子は息災のようでしたか?」

 

「学び舎で良い学友に巡り合えたのでしょうな。歳相応の笑顔も見せていましたぞ。昔からあれは非情な世界しか知らなかった故、良い経験になっているでしょう」

 

「それは重畳。……ですが、時の流れはどこまでも残酷なもの。戦火はいずれ、再びあの子を巻き込むでしょう」

 

「―――僭越ながらマスター。発言を宜しいでしょうか?」

 

 会話に割って入ったのはルナフィリアだ。隣にいるデュバリィは急いでそれを窘めようとするが、それよりも先に言葉を向けられた主が「構いませんよ」と許可を出す。

 

「はい。恐れながら、彼は目の前で巻き起こる戦火の惨状から、決して目を背けたりはしないでしょう。一度は≪執行者≫として名を連ねていた身であるならば、今も燻る火種を見逃している筈もありません。

 ―――彼は、レイ・クレイドルはそういう男です。マスターも、それは既にご存知かと」

 

 諫言と言うには些かぶしつけな言葉ではあったが、女性はそれを咎める事無く、寧ろ嫋やかに微笑んで見せた。

 

「そうですね。あの子は目の前で無辜の民が害されているのを見過ごせる子ではありません。外面非情に振る舞っていても、その心は間違いなく優しき者のそれなのですから」

 

「師としてはそれがあやつの致命にならねばと思っておりますがな」

 

「善心をからかうものではありませんよ、カグヤ。その心を持ち続けていられれば、エルギュラ殿もソフィーヤも浮かばれましょう」

 

 そこまで言ってから、口を閉じたところで、雰囲気は更に張り詰めた。

 ザァッという一際強い風が、丘陵を駆け抜ける。視線を前方に戻すと、彼方に見えるのはクロスベル。その地での『計画』を成し遂げるために、行わなければならない事はまだ残っている。

 しかし、それも一時は取り止めだ。月末に控えた会議は≪使徒≫第七柱の管轄外。ここで一旦、彼女はこの地を離れる事になる。

 

「―――デュバリィ、アイネス、エンネア。私に着いて帝国まで共するように。カグヤとルナフィリアはクロスベルにて会議の結末を見届けなさい」

 

「「「「「仰せのままに。我が主(マイマスター)」」」」」

 

 一同が声を揃えてそう返した後、カグヤだけが肩を竦め、僅かばかりおどけたような声色で問いかけた。

 

「しかし意外ですな。主が御自ら帝国に赴くなど。一体どちらまで?」

 

 若い隊員たちが聞き辛かったであろう事を代弁するその姿に内心笑みを浮かべながらも、あくまで厳格な声でそれに答える。

 

「哀愁の念に駆られたわけではありませんが、帰郷するのも一興かと思いましてね。

それに、霊脈の流れが不穏になっている今、あそこは此の世ならざるモノが闊歩しているかもしれません」

 

 歴史の上から名を消した時、配下の騎士に預けた領土。その湖上に浮かぶ城こそが、かつて彼女が若き獅子へと助力する際に空け、そして終ぞ戻る事のなかった場所でもある。

 この時期は朝方に包み込む霧が美しかったと、そう瞼の裏にその風景を思い出し、鎧に包まれた足先を翻す。

 「その武芸、もはや人に非ず」と謳われ、幾度の戦場にして不敗。常勝の騎士にして、その高潔な生き方は嘗て轡を並べた若き獅子にも影響を与える事となった。

 

 結社《身喰らう蛇》使徒第七柱―――《鋼の聖女》アリアンロード。

 

 此度その足が向かうのは戦場に非ず。霧に包まれた静かな、湖畔の町であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? んん……」

 

「んー? どうしたのレイ」

 

「いや、何か悪寒が……ってミリアム、そこyの代入ミスってんぞ」

 

「ふぇ? あ、ホントだ」

 

「レイ。これでいい?」

 

「どれどれっと。ん、これ違うぞフィー。エレボニアで四州都全部が鉄道路線で結ばれたのは1175年だ。10年違う」

 

「む。やっぱり暗記はキライ」

 

「おら、もうちっと頑張れ。もう少ししたらシャロンがアイスココア持って来るからな」

 

「「頑張る」」

 

 第三学生寮、3階の談笑スペース。そこでレイはミリアムとフィーを相手に勉強を教えていた。

 本来であればそれはエマの担当である筈なのだが、彼女は今入浴中だ。その間、暇をしていたレイに白羽の矢が立ったというわけである。

 そういうレイ自身も実は数分前に入浴を終えたばかりであり、湿気を含んだ髪を掻きながら、二人のテキストに向かい合って根気よく教えていた。

 

 しかし、そんな時レイが感じた寒気は、単に湯冷めしたからというわけではない。今まで何度か味わって来た、自分の与り知らない所で嫌な動きがあった時のそれ。所謂、虫の知らせに近いものだった。

 とはいえ、その悪寒の原因を突き止めようとは思わない。その程度ならば、今対処しようがしまいが結局結果は同じだからだ。

 

「そう言えば、レイって結構頭良いんだよねー。意外かなー」

 

 鉛筆の持ち手の方の先を口に銜えながら、ミリアムがそう言う。

 因みに、彼女はレイの事を「お兄さん」というのは止めていた。というよりも、止めさせられていた。

所構わずそう言ってくる場面を見られると、他の学生の中で勘違いする人間が出てきて、一々その釈明に駆られる事が面倒臭くなったレイによって呼称を封印されたのである。

当初はぶーぶーと文句を言っていたのだが、流石に3日も経つと違和感がなくなり、名前で呼ぶことが定着した。

 

 そんな彼女からの「頭が特別良いようには見えない」という悪意ゼロの正直な疑問に、レイは頬杖を突きながら答える。

 

「ま、勉強は出来ておくに越したことはねぇからな。好きか嫌いかはともかくとして、それなりに知識を得ていて損する事はない」

 

「む、意外と真面目な答えが返って来ちゃったよ」

 

「一応これでも成績優秀者だからな。むしろお前の方が意外だよミリアム。自習勉強に逃げずに参加するタイプだとは思わなかった」

 

「えっと、ね。最初はちょっとそう思ったんだけど……委員長の笑顔が何だか怖くって」

 

「あー……」

 

 まぁ分からなくもない、という風に同意する。

 実際、Ⅶ組の中で本気で怒った時にある意味一番怖いのではないかとされているのがエマだ。普段本気で怒らない(というよりも本気で怒ったところは見た事がない)上に、あの穏やかで丁寧な性格である。

もし彼女を怒らせたときは炎属性のアーツでヴェリーウェルダンに焼かれる末路を辿るだろうという男子一同の見解は勿論本人には漏れていないが、それでも底知れない怖さのようなものは感じ取れてしまうのだ。

 まだ笑顔で怒っている時はマシな部類だろう。実際それを何度も目の当たりにしているフィーが未だ無事なのだから。

 

「まぁでも、委員長は教えるのが上手いぞ。マキアスはあれで教師というよりかは研究者気質寄りだし。―――あぁでも、ユーシスは意外と様になるんじゃないか?」

 

「えー? だってユーシスすぐ怒るじゃん。今日だってガミガミガミガミ言われたもん」

 

「あれはお前が校内で色々とやらかしたからだろうが」

 

 好奇心が旺盛なミリアムが放課後の学院内で、騒ぎとは言えないまでも色々と賑やかしていたのは多くの人間の知る所だった。

 ある時はグラウンドで馬術部のポーラの馬に相乗りしてグラウンド中を走り回り、ある時は技術棟でアンゼリカに可愛がられ、ある時はギムナジウムで二階からのプール高飛び込みに挑んだりと、3日前に体力の全てを使い果たして気絶したとは思えない快活さを見せていた。

 

「俺が用事でギムナジウムに行った時にプールの方から「部長ぉ‼ 空から女の子がぁ‼」とかいう声が聞こえた時は流石にどうしたのかと思ったわ」

 

「あはは♪ でも面白かったよ?」

 

「んで、その対価におもっくそ叱られたと」

 

「そーだよー。あんなにガチで怒る事ないじゃーん」

 

 頬を膨らませて怒るミリアムを見てからフィーと視線を合わせると、彼女の方は目を伏せてからポンポンとミリアムの肩を叩く。

 

「……私も入学した頃はよく色んな所で昼寝場所を探してたから、ユーシスによく怒られた。「勝手にウロチョロするんじゃない」って」

 

「あ、フィーもそうだったんだ」

 

「ん。―――でもユーシスもただ怒ってるわけじゃない。ちゃんと心配してくれてるし。

ただ怒ってる顔がデフォだからそう思えないだけで」

 

 仏頂面でいる事が普通の彼は、ただそれだけで他人に誤解を与える事も多いのだが、本質的には面倒見が良い青年である。

 大貴族の子弟でありながら蔑まれる視線を向けられるような半生を送って来たその生き方がそのキツめの容貌を作り出してしまったのだが、その分彼は本当の意味での貴族の義務(ノブレス・オブリージュ)を心得ている。

 というよりも、生来の性格のようなものだろう。もしくは、8歳まで彼を育てた母親の教育の賜物なのかもしれないが、ユーシスは年下の子供への面倒見が良い。

 レイも時々、学院から学生寮への帰路の途中にある教会の前で、日曜学校に通う近隣の子供に囲まれて嫌嫌そうな顔をしながらもちゃんと対応しているユーシスを見かけた事があった。

 

「まぁそれに、あいつが怒るって事は、言い換えてみれば相手が怒るに値する人間だって事だ。本当に自分にとって関係ないって思ったり、関わる事によって不利益を被りそうな相手に対しては、あいつは基本的に無視を決め込むからな」

 

 そしてそれも、数か月間同じ寮で寝食を共にする内に分かった事だった。

 ユーシスは、恐らく本人すらも無意識の内に対人関係を限定する癖がある。決してコミュニケーション能力が乏しいというわけではなく、その輪が狭い訳でもないのだが、嫌っていたり、関わる事に意味を見いだせない相手に対しては可能な限り距離を取ろうとする。

 それは父親が相手の時もそうであったり、身近な話で言えば学生会館の3階にある貴族生徒専用のサロンを利用しようとしないのもその癖の結果だ。家名と親の自慢、加えて爵位が上の貴族生徒への阿諛追従という名の交流に意味を見いだせないユーシスは、その場所を一度も訪れた事はない。

 

 逆に言えば、ミリアムに対しては関わる価値、怒る価値があると踏んだのだろう。

 彼女の所属、狙いに一番警戒心を抱いていたのは他でもない彼であったが、2日前の文字通り全力を尽くした戦いの内容に何か思う所があったのか、今ではそれ程固い接し方をしないようになっていた。

 

「むー、分かりにくい」

 

「そう言ってやるな。あれで結構頼りになる奴だ」

 

 口を曲げて唸るミリアムに、レイが苦笑しながら言う。

 実際、流れる血がそうさせるのか、本質的に他人を纏め上げるのが上手い。だからこそレイも、彼に中衛型の指揮官を任せているのだから。

 

「あら皆様、一片付けができたようですね」

 

 と、そんな話をしていると、階下から4つのグラスに注がれたアイスココアをトレイの上に乗せたシャロンが現れ、そう声を掛けて来る。

 ミリアムたちは渡されたアイスココアをストローを使って笑顔のまま飲み、レイも氷が躍るグラスの様子を眺めながら口を付けた。

 風呂上がりに加えてエアコンが配備されてない寮内では、こうした一時の贅沢が掛け替えのないものであったりする。体の芯まで冷たさが染み渡ったところで、レイが話題を変えた。

 

「そういや、明日は自由行動日か。お前らはどうするんだ?」

 

「んー、午前中はまた色んな所を回ってみるよ。午後からはリィンに旧校舎って所の探索に誘われたから、そっちに行く」

 

「あ、それ私も誘われた」

 

 自由行動日に恒例となった旧校舎の探索。

 本来それは生徒会長のトワを通して学校側から齎される以来の一環であるのだが、これについては既に自主的なものへと変わっていた。

 

「ミリアムにフィー。って事は、後は中衛にクロウと後衛組から二人か。アリサと……後は委員長かエリオットのどっちかだな」

 

「ま、そんなとこだろうね」

 

「レイはー? レイは行かないの?」

 

 ミリアムが尤もな疑問を投げかけたところで、レイも少し考えるような仕草を見せた。

 探索そのものはリィン達の練度を上げる役にも立っているのと、今まで運悪く用事が重なっていたために参加できなかったのだが、ふと思ってみれば幾つか個人的に調べたい事もあった。

 

「ん……そうだな。良い機会だし俺も少し見に行ってみるか」

 

「いーんじゃない? リィンなら反対なんてしないよー」

 

「レイと一緒に旧校舎に行くのってオリエンテーション以来だね。そう言えば」

 

 そう言えばそうかと、囁かな雑談を数分間続けていると、風呂から出て来たエマがしっとりと濡れた髪を梳かしながら3階に上がって来た。

 レイはシャロンが持って来たアイスココアの残りの一つをエマに渡すと、再びミリアムとフィーに向き直る。

 

「んじゃ、お喋りはここまでだ。こっからは委員長とのタッグで教えて行くぞ」

 

「基礎的な所の復習だけですから、そんなに辛くないと思いますよ」

 

「「いや、もう雰囲気が怖い」」

 

 背筋に一筋冷や汗が流れる二人を他所に、教師役の二人は意外とノリノリな様子でその後数時間にわたってみっちりと学習内容を二人に叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー、これが旧校舎かー」

 

 翌日、リィン達に連れられて旧校舎を訪れたミリアムは、静寂な雰囲気が漂うその場所を間近で見て、キラキラと目を輝かせた。

 それに続くようにして、リィン、レイ、クロウ、フィー、アリサ、エマというメンバーが舗装もされていない下り坂を下って辿り着く。

 

 結果として、旧校舎探索に付き合いたいというレイの要望は、リィンに二つ返事で了承された。

戦力的な意味合いでの増強という事も勿論あるが、様々な場所を見回って来たレイの見解から摩訶不思議な旧校舎の謎について意見が欲しいと言われ、逆にプレッシャーを掛けられたほどだった。

 

 そうして組まれた編成のままで、まずはリィンが預かっていた旧校舎の鍵で入り口を開け、中へと入って行く。そしてオリエンテーリングの時に集まった1階部分の小ホールを抜けると、そこには中心部分に機械仕掛けの昇降装置が鎮座した石造りの部屋があった。

 

「前にリィンを止めるために来た時はあんま見てなかったが……改めてみると随分と変わったモンだよなぁ」

 

「旧校舎の怪、か。確かに学院七不思議の一つにされちゃあいるが、まさかここまで本格的なヤツだったとはな」

 

 ゆっくりと周囲を見回すレイとクロウにペースを合わせるように、全員が昇降機のスペースへと入って行く。するとリィンが慣れた手つきで昇降機のボタンを操作していった。

 

「ほー、慣れたモンだな」

 

「まぁ、何度も来てるからこれくらいは、ね」

 

 以前レイが左目を使ってまで調べようとして、しかし失敗したそれは、ただの機械仕掛けの昇降機ではない。

 類似するものを挙げるとすれば、何度か潜った古代遺跡に設置されていた罠解除用のギミックだろうか。ともあれ、ヒトの手によって作られたかどうかも分からないという意味では酷似している。

 何せ、導力を利用して運動をする昇降機が発明されたのも僅か数十年前の話なのだ。それよりも遥かに古い歴史を持つこの場所で問題なく稼働しているコレが常識的な技術を用いて作られたモノではない事は一目瞭然である。

 

 そんな事を思いながら降下していくと、辿り着いたのは地下5階。

 此処で本来ならば、開いている扉を抜けて未知のフィールドが広がる地下迷宮に繰り出すのだが、しかし地下5階の扉は固く閉ざされていた。

 

「? 変だな。いつもなら自動的に開くんだけど……」

 

「そうよね。―――それに、何だか変な靄みたいなのが漏れ出てるし」

 

 アリサの指摘通り、地下迷宮に通じている筈の扉からは、紅色の靄のようなモノが漏れ出ていた。

 発生の原因も、そもそもの靄の正体も不明瞭の為、近寄れず距離を取っていると、不意にレイが足を踏み出して近寄った。

 

「お、おい、レイ‼」

 

「お前らそこで待ってろ。気は進まねぇが仕方ねぇ。ちっとばかし本気で”暴き”にかかるぞ」

 

 そう言うとレイは、左目の眼帯を乱暴気味に額の上まで押し上げる。解放と同時に頭痛を伴う翡翠色の義眼は相も変わらずこの旧校舎の一切の情報を映し出そうとはしなかったが、それは既に承知の上。

 正体不明の扉を睨み付けながらパチンと指を鳴らすと、その傍らに音もなく式神であるシオンが現界する。

 

「一時的に”接続”を強めるぞ。神力を流せ」

 

「畏まりました。……しかし、宜しいのですか?」

 

「一瞬だ、反動もねぇだろ。まぁ、気が進むか進まねぇかって言ったらクソ進まねぇんだけどさ。

 ―――それでも、こうでもしないと”覗け”ねぇんだ。ならやるしかないだろ」

 

 そうした短い会話を終わらせると、シオンは軽く頭を下げ、金色の尾の数を三本に増やす。

 そこから漏れ出した黄金色の炎をレイの体に纏わせると、≪慧神の翠眼(ミーミル・ジェード)≫がその輝きを一層強くした。

 思わず、レイは顔を顰める。傍から見れば異常がないように見えるかもしれないが、現在彼の身には、引き臼で磨り潰されるかのような断続的な激痛が頭の中だけではなく全身を駆け巡っていた。

 ヒト以外の万物を見通す古代遺物(アーティファクト)慧神の翠眼(ミーミル・ジェード)≫。その起源ともなった神を嫌うレイが抑え込んでいた本来の力の一端を解放すると共に、聴覚ではなく、その魂が幻聴にも似た声を捉えた。

 

 

『―――何用カ、虚ロナル神ノ残滓ヲ受ケ継グ定命ノ者ヨ』

 

 ズン、と擬音が漏れそうな程に体全体に圧が掛かる。

それでも、少し離れた場所で事を見守っている仲間には異常を悟られまいと、決して立派とは言えない体躯を支え、不敵な笑みを浮かべ続ける。

 

『―――ココヨリ先ニ進ム事、相ナラヌ。神意ヲ否定セシ者ハ、我ラニトッテ弑逆ノ使徒モ同然ナリ』

 

 好きで手にしたわけではない。手放せるというのならば未練も確執もなくどこにでも放り投げてみせるだろう。

 だが、”ソレ”らにとってそんな個人の事情など知った事ではないらしい。ともすれば神の力の一端を否定せずに受け入れているザナレイアならば、或いはこの扉を潜る事ができたのかもしれないと思うと、流石にやるせない感情が浮かんで来た。

 

『―――サレド、ソナタラノ絆ニ相違ハナシ。現時点ニ於イテハ(・・・・・・・・)認メラレヌガ、見事ソノ葛藤ニ打チ勝ッテ見セヨ』

 

 要するに、”ソレ”は神の意志を否定するレイが気に入らない。故に、”ソレ”に繋がる扉は開かない。

 だが、彼らⅦ組としての絆は認めている。だが、それも現時点では完全なものとは言い難い。―――当然だ。未だ全てを晒け出していない人物もいるのだから。

 それはエマであったり、ミリアムであったりと少なからずいるが、そのなかでもレイはその最たるモノだ。あの日、あの砂浜で打ち明けた彼の過去など、その一端に過ぎない。

 

 成程、確かに葛藤はある。そもあの地獄から助け出された時以降の彼が過ごした日々は、日常などとは程遠い。歳相応の顔と修羅の顔を使い分け、血の臭いが染みついた体を異常と思わない人間だったのだから。

 それを打ち明けるか否か。それを見抜かれたのであれば、レイとしても反論の余地はない。逆に言えば、それを決意しない限りは”ソレ”の最低限の許可も得られないという事なのだ。

 

 ―――そうして、圧迫感から解放された。同時に、声も一切聞こえなくなる。

 自身の神力を送っていたシオンは、今の段階ではこれ以上は危険だと判断し、強引にレイとの回路(パス)を断ち切った。その反動で一時的に現界が保てなくなり金色の粒子を残して消えて行った。

 

「っ、レイっ‼」

 

 その瞬間、僅かに上体を揺らしたレイの下にリィン達が駆けつける。そんな彼らに、心配は無用と言わんばかりに平静を装ったレイは落ち着いた手つきで再び眼帯を嵌め直した。

 

「……大丈夫だ。久しぶりにちっと無茶したけどな」

 

「おいおい、大丈夫には見えねぇぞ?」

 

「クロウ、こういう時のレイには何言っても無駄だよ」

 

 流石に長い付き合いのフィーにはやせ我慢だという事はバレており、そうでなくともリィン達も何となく察してはいるようだった。

 そんな彼らに一つだけ笑みを向けてから、レイは一人、再び昇降機の方へと向かって歩いて行く。

 

「? レイ、どうしたんだ?」

 

「いんや、此処にある”何か”はどうも俺の事が気に食わないらしい。俺がお前らといる限りは、その扉も開かねぇだろうよ」

 

「ちょっと、何よそれ」

 

 アリサが少しばかりムッとしたような表情を浮かべてそう言う。その他、程度の差こそあれどリィンやエマ、フィー達も同じ感情を抱いているようだった。

 その言葉が本当ならば、この迷宮はレイだけを露骨に弾いている。彼らにとって、それが心地よいものである筈がない。

 だがレイは、振り向かないままに右手だけをヒラヒラと振った。

 

「俺が旧校舎から出ても扉が開かなかったら、まぁその時は呼びに来てくれ。無事に開いたらそのまま探索を続けろよ? 変に気を遣わなくてもいいんだからな」

 

 ただそう言い残して、レイは昇降機を操作して1階へと戻る。それから僅かも躊躇う事無く扉を開けて旧校舎を出ると、その場で数分程待つ。

本当に少ない可能性。それこそレイが居なくなっても扉が開かず、原因不明という事で自分の事を呼びに来る事を心のどこかで期待しての事だったが、それも無駄足に終わる。

 それは決してリィン達が薄情だという事ではない。恐らく彼は扉が開いた後、レイを呼び戻さずに前に進む事が一番レイに対して誠実な対応だと判断したのだろう。実際、それは間違っていない。

 寧ろだからこそ、レイはその事実に引きずられる事のないままに悠々と学院内を歩き回っていた。

 時刻は午後2時。寮に戻ってシャロンの家事手伝いをしようにも中途半端な時間帯であり、他のメンバーもそれぞれ部活に精を出している為に、完全に暇になっている状態だ。

 気付けば、その足は屋上に向かっていた。

扉を開けて、地上で感じるそれとはまた違う風を感じた後に屋上に設けてあったベンチに腰掛けて、刀袋に入った愛刀をベンチの傍らに立てかけてから深い息をつく。

 

 何の気なしに左目の眼帯を手でなぞってみたが、既に痛みはほとんどなくなっていた。

 一時とはいえ、人理の外に値する力を解放した為に、旧校舎を離れる時くらいまでは鈍痛が絶え間なく続いていたのだが、本当に解放していたのが一瞬であった為に、自身に対する”揺り戻し”は最小限に留められた。

 これが数時間単位で解放状態になれば、左目が徐々に体そのものを侵食していき、果てはザナレイアのようにヒトとは違う存在になってしまう。それを、レイは殊更に嫌っていた。

 

 そも、≪慧神の翠眼(ミーミル・ジェード)≫という名は、≪結社≫時代に名付けられた俗称でしかない。

 ≪結社≫に属していた頃、その人の身に余り過ぎる強大な力がレイ自身の成長の阻害になると感じた師が、伝手を使って”外の理”の技術を使用して幾重もの封印を掛けたのが、今のこの左目である。

 それ以前の、それこそ≪教団≫に保管されていた頃のこの古代遺物(アーティファクト)の名は―――≪虚神の黎界(ヴァナヘイム)≫。

 ヒト以外の対象の”過去”を情報として認識する能力を下地に、≪虚ろなる神(デミウルゴス)≫本来の”力”の一端を担うという破格の能力を有するこの古代遺物(アーティファクト)は、その対価として所持者にとある”呪い”を付与させるモノだった。

 

 それが、”未来化の停滞”。過去を見通す基盤の力と対になるそれは、その名の通り所持者の肉体の未来化を停滞させてしまう。

 故に、レイの肉体年齢の進み方は非常に遅い。成長期である十代の中盤にあってほぼ皆無と言っていいほどの成長のなさを実感させてしまうのは、他でもなく、それが原因だった。

 結果的に、早熟した精神と子供のまま成長が極端に遅い肉体とが乖離してしまう事も昔は多かった。今でこそその”対価”は、レイが≪執行者≫となったあかつきに≪盟主≫より賜った愛刀に”穢れ”であると判断されて僅かずつながらも”浄化”されている為、肉体年齢の停滞は以前のそれよりはマシにはなった。

 ただそれでも、この古代遺物(アーティファクト)が齎しているのはメリットよりもデメリットの方が格段に大きい。大本の話として、もしこんなモノが此の世に存在していなかったら―――母親は、村の人間は殺されずに済んだのかもしれないのだから。

 もし、メリットを挙げるのだとしたら、それはシオンと出会えた事だろうか。

 準”至宝”レベルの奇跡を体現させる二つの古代遺物(アーティファクト)を監視する役目を持って目の前に現れた”聖獣”がいなければ、レイは何もかもに挫折して、ここまで辿り着く事すらもできなかっただろう。

 そう言う意味では、普段ふざけた態度を取る事もある彼女に対して、掛け値なしの信頼をしているとも言えた。

 

 

「あー……やっぱ嫌いだわ」

 

 こんなモノをこの世に遺して自壊した神が嫌い。

 得たくもない力を手にして、そうして今、仲間と共に歩もうとした道すらも拒絶されてしまい、それを理由にして現実から目を背けようとする自分も嫌い。

 そんな堂々巡りの負の感情に囚われようとしていた矢先に、不意に屋上の扉が開いた。

 

 

「ふー、疲れた疲れた……っと、おやレイ君じゃないですか。奇遇ですね~」

 

「あれ? トマス教官。どうしたんです、こんなところに」

 

「いやぁ、溜まっていた仕事が漸く一区切りつきましてねぇ。遅めの昼食がてら休憩しに来たんですよ」

 

「そいつぁお疲れ様です」

 

 ビン底眼鏡をかけたトールズ士官学院帝国史教師のトマス・ライサンダーは、いつも通りの如何にも無害そうな笑顔のままにレイの下へと駆け寄ってきて、少し離れたベンチの横に腰掛ける。そしてそのまま、購買で買って来たと思われるパンを取り出すと待ちに待ったと言わんばかりにそれを食べ始めた。

 自他共に認める重度の歴史オタクであり、彼と個人的に対話をしている人間の姿は見た事がない。

とはいえ、得てして専門家とはそういうものであり、迂闊に話しかければどういう事になるかくらいはレイも知っていた。

 

「そう言えば、レイ君は何故ここに? 私は雰囲気が好きで良く屋上に来るんですが、君の姿を見かけた事はなかったもので」

 

 とはいえ、話しかけられてそれを無視するほど人でなしではない。レイは苦笑してから肩を竦めた。

 

「本当は予定があったんですけどね。キャンセルせざるを得なくなって、こうしてここで暇を潰してたんですよ」

 

「おや、そうでしたか。……そう言えば先程旧校舎に入って行く姿を見かけましたが、もしかしてその関係で?」

 

「まぁ、そうですね。やっぱトマス教官も気になります?」

 

「それはもう‼ 一応考古学も齧ってますからね~。ああいうミステリーが詰まった存在には興味を持ってしまうものなんですよ。研究者の性のようなものですかねぇ」

 

「あっはっは。なるほどなるほど」

 

 言葉を交わしながらもトマスは食事を続けて行き、パンの最後の一口を飲み込んで、包み紙を傍らに設置してあったゴミ箱に投げ入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――瞬間、レイの腕が残像を残して動いたかと思うと、刀袋に入っていたはずの白刃が煌めき、トマスの首筋に吸い付くようにピタリと当てられていた。

 

 

 

 レイが動いてからその結果に辿り着くまで、実にコンマ数秒もかかっていない。そんな神業を目の前にして、ましてや自身にそれが向けられているというのに―――トマスは人の好さそうな笑顔を一切崩していなかった。

 その様子を見て、レイは忌々し気に眉を顰めてから、一つ舌打ちをする。

 

 

「覗き見とは良い趣味じゃねぇか≪匣使い≫。その言い分を見るに、テメェあの建物の中に何があるか知ってやがるな?」

 

「―――さて、どうでしょう。好奇心が駆り立てられるのは本当の事ですがね。

 ですが、流石は≪天剣≫。やはり私の正体にも気付いていましたか」

 

「ぬかせ。俺が昔どれだけ”お前ら”と喧嘩したと思ってる。≪紅耀石(カーネリア)≫が追手を差し向けなくなっても、まぁ封聖省の暇人共は凝りもせずに俺をつけ回してたからな。

 ……ま、流石に今回は違うんだろうが」

 

「えぇ。私は君が来る前からトールズに居ますからね。目的はお察しの通り、あの建物ですよ」

 

 トマスが視線を向ける先にあるのは、色褪せた屋根と鐘がついた旧校舎の建物。それに倣ってレイもそちらの方向を向いてから、刀を引いた。

 

「おや、いいんですか?」

 

「別に。どうせお前もここで何かやらかそうなんて考えてないだろ? 実力行使であの建物をどうにかしようとするんなら、お前より適任の奴らは幾らでもいそうだからな」

 

「はは、そうですね。私はこの通り武闘派とは言い難いですから。それこそバルクホルンさん辺りの方が適任かもしれませんね」

 

「あの爺さんいつまで現役続けるつもりなんだか。

 とはいえ、俺からしちゃあお前みたいな人間の方が相手にし辛いんだがね」

 

「おや、それはそれは。元武闘派≪執行者≫に言われるとは光栄ですよ。いえ、本当に」

 

 最初に取り決めた距離から近づかず、離れもせず、言葉を交わし続ける二人。

 

 

 片や、元≪結社≫の実働部隊である≪執行者≫。その中でも若くして達人の域に至った天才。

 片や、七耀教会の秘匿組織である封聖省の実働部隊≪星杯騎士団(グラールリッター)≫。その中でも統率者として名を連ねる≪守護騎士(ドミニオン)≫のNo.2。

 

 表向きは大きな問題を抱えていない士官学校で鉢合わせるには、余りにも物騒な顔ではあった。

 

 

「……一つ聞かせろ」

 

「何でしょう」

 

「お前は本当に”見定める”だけなんだな? もし封聖省の人間としてリィン達を力ずくでどうにかしようと企んでんなら―――物言わぬ肉塊になる覚悟くらいはしてもらわなきゃならん」

 

 レイにとって、大事なのはその一点のみだった。

 普遍的な正義の代弁者である七耀教会の人間とはいえ、≪星杯騎士団(グラールリッター)≫に所属する者達は、その目的を果たすためならば時に非人道的な行動すらも許容してみせる。

 その矛先が彼らに向くというのであれば、レイとしても容赦をする気など欠片もなかった。

 しかしトマスは、笑みを顰めて真剣な表情を作ると、ゆっくりと首を横に振った。

 

「誓ってどうもしません。私の目的はとある古代遺物(アーティファクト)の回収と情報集めです。そこに、彼らが敵として立ちはだかる事は万が一にもないでしょうし、あの旧校舎に眠る存在にも、直接的な関係はありません」

 

「旧校舎に眠る、ね。何だよ、男心をくすぐる言い方をしてくるじゃねぇか」

 

「それについては全面的に同意しましょう。私も仕事とは関係なく、こうした謎めいた存在を探るのは好きなクチでしてね」

 

「普段の歴史オタクぶりは結構素の性格だってことか」

 

 笑い声を漏らす両者。お互い”敵”として認識してない以上は、これ以上の敵対心を抱く理由もない。

 

「そんじゃ、あなたがどうもしない場合は俺も不干渉を貫くとしますよ。トマス教官」

 

「そうしてもらえればありがたいですねぇ、レイ君。……もしバレたら総長からキツいオシオキが来るので勘弁なんです」

 

「そりゃヤバいっすわ。―――あぁそうだ。教官の従騎士の方にも宜しく言っておいてくださいな」

 

「おや、そちらの方も気付かれていましたか」

 

「徹底的に隠しているとはいえ、やっぱり”裏”の臭いってのは消せないモンですから」

 

 同業者は誤魔化せないモンですよ、と、茶化すように言った言葉を聞いてから、トマスはベンチを立った。

 

「ではでは、私はこれで。休み明けの授業の支度をしなくてはならないので」

 

「了解です。あぁ、後、あんまりサラ―――教官を酔い潰さないで下さいよ? 介抱するのが大変なので」

 

「おや残念。サラ教官やナイトハルト教官と一緒に飲むのは楽しいんですがねぇ」

 

 そう言いながら悠々と屋上を去るその背を見送ってから、レイも愛刀を再び刀袋に収めた。

 一人でじっくりと考えようとしていたのに余計な邪魔が入ったものだと思いながらも、不思議と先程までの暗重とした気分はどこかに吹き飛ばされてしまっており、うだうだと考え込むには気晴らしが過ぎたと実感する。

 恐らく、リィン達が旧校舎の探索を終わらせるまでにはまだ時間が掛かるだろう。なら技術棟にでも行って暇つぶしをするかとベンチを立った瞬間、ポケットの中に入れていたARCUS(アークス)が振動した。

 

「? ―――はいはい。レイですけど」

 

 ARCUS(アークス)の着信番号を知っている者は、現時点ではかなり限られている。

だからこそ、電話を掛けてきた相手も自分の知り合いであるはずだと、そうした考えが浅はかであったという事を知る事になる。

 

 

 

『―――ふむ、君から警戒心のない声を向けられるのはこれが初めてではないかね、≪天剣≫。まぁ、ある意味では仕方のない事なのかもしれんが』

 

「―――オイオイ、何でテメェが俺のARCUS(アークス)の番号を知ってんだよ。教えた記憶はこれっぽっちもない筈なんだがな」

 

 通話口の向こうから聞こえてくるのは、レイが公然と嫌悪感を抱く人物と称して憚らない人物。

 よくよく考えてみれば、あれでも帝国の宰相である。直轄の部下である帝都都知事がⅦ組の設立に深く関わっている以上、この男がそれに通じていないはずがない。

 

『それについては語るまでもなかろう。それよりも、だ。君に折り入って依頼があるのだが』

 

「うわぁ、ヤな予感しかしねぇわ。丁重にお断りしまーす」

 

『―――その報酬が、必ずや君が求めるモノであったとしても、か?』

 

 重厚な声が、レイの声を封殺する。

 その報酬とやらの詳しい内容を今の段階では察せない以上、迂闊に声を出す事すらままならない。

 そもそも、準備ができていない段階でこの男と言葉を交わすこと自体が、今のレイにとっては後手に回らざるを得ない要因となっている。

 その不利な状況を充分に理解しているのか、ギリアス・オズボーンは獣王すらも跪かせそうな程の威厳の籠った声で続きを語る。

 

『何、今すぐに答えを出せとは言わん。とはいえ、急を要するのも確かなのでな。一両日中に折り返して電話を寄越してくれればいい』

 

「へぇ、一国の宰相サマが個人的な電話を拾う暇があんのか」

 

『フッ、煩わしいテロ組織の撲滅に割く時間すらあるのだ。その程度は朝飯前と言っておこうか』

 

 本音を言えば、感情に任せて罵倒の一つでも投げて回線を断絶させたい気分に駆られているのだが、それは悪手であると分かっている理性がそれをさせない。

 取って食られるわけではないという甘い考えで乗ればあっという間に呑み込まれる。とはいえ、最初から挑もうとしなければ何か得難いモノを得る事ができなくなってしまう。―――その境目を見極めるのが、今のレイの課題であるとも言えた。

 

「ま、聞くだけ聞いてやるよ。宰相サマ」

 

 雲一つない夏空の下で、しかし晴れ晴れしい気分が一切消え失せた声で、レイはそう答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






この間何の気なしにもらった聖晶石で一回だけガチャを引いてみたらなんとキャス狐が出ちゃった十三です。自宅で全力でガッツポーズして肘を全力で壁にぶつけました。数秒間声が出なかったです。


前日買ったGOD EATERリザレクションを進めているのですが、やっぱり画質が良いと何となく新鮮な気分になります。
後単純に、今となってはツンツンしてたソーマとアリサの反応が懐かしすぎる。凄いレアなモノを見た気がします。


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