英雄伝説 天の軌跡 (完結済)   作:十三

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「なら…あなたが私を一生守ってよ‼ 何も知らないくせに‼ 何も出来ないくせにっ…‼勝手なこと言わないで…」
「コレは私の、私だけの戦いなのよ‼ たとえ負けて…死んでも…誰にも‼ 私を責める権利なんかない…‼」
「それとも…あなたが一緒に背負ってくれるの? この…このっ…ひ、人殺しの手を…あなたが握ってくれるの⁉」
   by シノン(ソードアートオンライン ファントムバレッド)








仮初の思惑  -in クロスベルー

 

 

 

 

 

 ―――この世界を訪れるのは何時ぶりだろうかと、ふとそう思う。

 

 夢の中とは少し違う場所。此処は、レイ・クレイドルの精神の深奥部分。

 彼が歩んできた半生、その生き方と抱え込んだモノを表しているその場所は、本来彼以外が訪れる事は叶わない場所だ。

 しかし今まで、本人以外でこの場所に足を踏み入れた者が数人いる。そのいずれもが”ヒト”の枠から外れた超人的な存在である為に、もはや”数人”とカウントして良いものかどうかも不透明なのだが。

 

 

 天も地も、視界に入る全てが純粋な”白”でしかない世界。

 本来それは、間違いなくレイの在り方そのものを表すはずだった。どのような縛りも存在しない無限の可能性を示し、どこまでも、どんな所にも繋がっていくはずだったのだ。

 

 しかしその世界には、今は”在るべきでない”モノが存在してしまっている。

 世界を食い破るようにして生えている、無数の黒茨。触れるもの全てを引き裂き、斬り刻み、殺しつくしてしまうのではないかと思わせる程に醜悪で禍々しいモノ。

 それが、ジャングルの木々のように鬱蒼と世界を覆っている。精神世界の中央に近づけば近づくほどにその密度は増し、白の世界を塗り潰している。

 

 そこから感じるのは、明確な拒絶の意思。

 自己の起源とも言える存在が鎮座する場所に行かせまいと、それらは万物を阻み続ける。

 それが、例え本人であったとしても、だ。

 

 

 

「…………」

 

 相変わらず気が利かない場所だと思いながら、レイは茨の森の前で立ったままため息を吐いた。

 これが夢であることは理解しているし、此処が自分の心象風景である事も当然理解している。

 以前、いつだったか同じような場所に立って同じような夢を見た事があったなと、思い出す。自分がしている事がただの馴れ合いで、お節介にすぎないのだと、”昔の自分”に嘲弄された事があった。

 だが、それとは違う。此処にはレイを愚弄する者も嘲弄する者もいない代わりに、もっと明確なモノが彼の前進を否定する。

 

 世界を蝕む黒茨の正体は、レイ・クレイドルが抱いてきた”後悔”の具現化(・・・・・・・・)

 二度と自分の目の前で理不尽な生き方を、死に方を強要される人間を生み出させないという幼き時の誓いに反して、現世に溢れる闇の深さを目の当たりにしてしまった時に、彼が心に抱いた後悔。

 ”自分がもっと強ければ””自分がもう少し早く動いていれば”―――そんな、傍から見れば傲慢とも取られかねない想いが積もり積もった結果である。

 

 冷静に、客観的に見てみれば、その後悔は大半が筋違いだ。

 泣き叫び、嬲られて死んでいく者達の全ての声に応える事など、それこそ神でもない限り不可能である。他者の死に対して責任を感じる義務も権利も”他者”にはない。

 それはレイにも分かっていた。今の彼は勿論の事、恐らく剣を握ったばかりであった頃の自分であっても、それが筋違いであるという事は理解していたのだろう。

 だが、それでも忘れる事はできなかった。

 武者修行と称して師に連れてこられた戦場で感じた無慈悲の蹂躙。剣と銃と砲撃の暴力に晒されて花の露よりも儚く散っていくヒトの命。敗北の憂き目に遭い、凌辱と強奪の脅威に晒される姿は思わず目を背けたくなるものであったが、それでも師は、カグヤは冷酷に告げた。

 

『よう見ておけ。これが、ぬしが足を踏み入れようとしている世界の、ほんの一端の悲劇じゃ。強き者が蹂躙し、弱き者が辱められる。ヒトの醜さ、弱さは何時(いつ)であろうと何処(どこ)であろうと変わらぬ。

 レイよ、闘争の本質をよく覚えておけ。強大な力が引き起こす有様を、その眼窩の奥に刻み込め。ぬしが幾ら強くなろうとも、こうした悲劇は覆らぬ。

 ぬしが味わった絶望は、この世界ではよくある事(・・・・・)よ。弱肉強食、その摂理に従ってこの世は動く故な。これでも今はマシになった方じゃ』

 

 その、どうしようもない事実を告げた後に、しかしカグヤは声色を変えないままに続けたのだ。

 

『故に忘れるな。ぬしは決して”正義の代行者”にはなれぬ。悲劇を目の当たりにして悲嘆に暮れるのは良いじゃろう。怨嗟の慟哭に胸を痛めるのも良いじゃろう。

 だが、それを決して”後悔”と捉えるでないぞ。前に歩む事を阻害する楔にする事だけは相ならぬ。それは必ず、ぬしの可能性の芽を摘むことになるからのぅ』

 

 結果として、レイは師のその言葉を守る事はできなかった。

 外道の所業で命を奪われた者の亡骸を前にすれば人知れず涙を流して”後悔”した。

 憔悴の限界まで至り、もはや死ぬ事が救いでしかない者の首に刀を突き立てた時は拳を握りしめ、歯ぎしりをしながら”後悔”した。

 漸く小さい命を救う事ができても、その命を再び戦場に駆り出す事しかできなかった自身に”後悔”した。

 心根が優しすぎる(・・・・・)彼は、それら全てを「他人事」と捉える事が出来なかった。そうした”後悔”を重ねる度に、この精神世界を侵食する黒茨が一本ずつ増えていった。

 気付いてみれば、世界を塗り潰さんとするほどに増殖していた。それは決して消えるような気配を見せず、ただただ馬鹿の一つ覚えのように増えていくだけ。

 それに対して二度目の溜息を吐くと、不意にレイの隣に”彼女”が現れた。

 

「ふぅん、此処にキミが来るのは珍しいね。何かあったのかい?」

 

「……機嫌が悪いのは分かったから、分かってる事を聞くなや」

 

 まるで幽霊であるかのように突然虚空から現れたその少女は、苦虫を噛み潰したかのようなレイの表情を見てクスクスと笑う。

 常に地面から浮いている為に目線こそレイと合っているが、身長そのものはフィーよりも低い。外見年齢も10代前半程ながら、存在そのものから醸し出される神秘の雰囲気がその感覚を曖昧にしていた。

 足首まである白髪と虹色の瞳。丈の短い白の着物に身の丈の倍程もあるマフラーを身に纏っている。

 浮かべている無邪気そうな微笑も、彼女が浮かべればどこか含むような雰囲気を感じさせた。

 

「ん、謝りはしないよ? 何せ未覚醒とはいえ”零の至宝”に自ら近づいたのはキミなんだからね。その影響で活発的になった≪虚神の黎界(ヴァナヘイム)≫の”呪い”をボクが必至で抑え込む羽目になったんだ。……正直に言うと少し辛かったよ?」

 

 ふわりと髪を揺らしながら、彼女は一切悪びれた様子もなくそう言う。

 実際、レイは彼女に対して怒りの感情は全く見せていない。そも、彼女が存在していなければレイは未だに”未来化の停滞”の呪いを一身に受けていたのだから。

 

「わーってるよ。お前に負担を掛ける事も分かってた。……でも、そうしないと絶対後悔してたよ、俺は」

 

「まぁ、それも知っていたよ。一応キミとも長い付き合いだしね。とはいえ、自ら寿命を縮めるような真似は慎んだ方がいいんじゃないのかい? ボクでも”呪い”を抑え込むには限度があるんだ」

 

「反省はしてるって。だから機嫌くらいは直してくれよ―――≪天津凬≫」

 

 傍から見れば不機嫌そうには見えない微笑を変わらず浮かべながら、愛刀の意識体は言葉を返さない。

 ”外の理”を以て≪結社≫の≪十三工房≫の一つで筆頭鍛冶師≪鐵鍛王(トバルカイン)≫によって鍛え上げられた兵装の一振りである、霊刀≪布都天津凬≫。

 ≪執行者≫と一部の≪使徒≫クラスに≪盟主≫から賜与される至高の武器の中でも、この霊刀は唯一”自我”を有している兵装である。

 『浄化』の能力を内包したこの刀は、刀そのものの”自我”がその能力を発動させるか否かを決める。ある意味で一番使用者を選ぶ兵装なのだ。

 そしてその少女こそが、≪布都天津凬≫の意識体であり、本体でもある。普段日課である刀研ぎをしている際に”対話”する事はままあるのだが、こうして姿を見る機会は久しくなかった。

 それでも彼が相棒の姿を見間違える事など有り得ないのだが。

 

「……ふぅ。まぁ、キミに無茶をするなと言っても栓無き事か。ボクは今まで通りキミの刀として従事するよ」

 

「見るからに不満が溜まってそうだぞ、お前」

 

「キミが抱える”呪い”を『浄化』すると決めたのはボクの意思だ。不満を感じるのはお門違いだよ。それでも神格級の”呪い”は弱体化させるだけで精一杯だけれどね。

だから、魔女殿の呪いの方は引き続きキミの方で何とかしてもらいたい」

 

「安心しろ、元よりそのつもりだ」

 

「それは重畳。―――おっと、そろそろ覚める頃合いかな?」

 

 気付けば、世界の輪郭が曖昧になっていた。それがこの場所から去る予兆である事は知っていた為、大人しく黒茨に背を向ける。

 すると、≪天津風≫が独り言を呟くかのように口を開く。

 

「試練の時は近いよ、レイ。遠からずキミは、再び戦渦に巻き込まれるだろうね」

 

「…………」

 

「まぁボクには関係ないか。キミの愛刀として、今まで通り見守っていてあげるから―――」

 

 せいぜい、”後悔”のない選択をするんだよ、と。小さい唇がそう紡いだ直後に、レイの視界は真っ白に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 キーコキーコとゼンマイが回る音が廊下に響く。明かりも最低限しか用意されていないそこは、傍から見れば幽霊屋敷のそれにも見えるだろう。

 そんな場所を機械仕掛けの音を出しながら進むのはレイの膝元くらいまでしかない人形だ。誰に動かしてもらっているわけでもなく、ただ導力を駆動力として動いているそれは、この屋敷の案内役としてレイが知っている頃から稼働している。

 正直なところ、この案内役の人形がなくとも目的の場所まで間違えずに行く事はできるのだが、それでも屋敷の流儀には従うのが客人としての役目だと割り切って黙ってついて行く。

 網の目状に広がる廊下を何度も何度も曲がり、思わず欠伸が出てしまう程の距離を歩いた末に、屋敷の最奥へと辿り着く。

 

 先導する人形に次いで自動開閉式の扉のロックを解除すると、その先は黒と灰色が大半を占める部屋がある。

 その部屋の隅、作業場の一角にただ一人鎮座する老人こそがこの屋敷の主であり、この工房の責任者。勝手知ったる足取りで床を踏み歩いて行き、声を掛ける。

 

「やっほー、ヨルグ爺さん。久し振り」

 

「ふん、たった8ヶ月を久し振りとは呼ばんわい。生憎、今帰ってきても面白いモノなどありゃせんぞ」

 

「別に目的があって来たわけじゃねーよ? ただ、レンもリベールに行っちまって爺さん寂しがってるんじゃねーかなって思って」

 

「余計なお世話じゃい」

 

「否定はしないのな。……ま、爺さんにとって孫娘みたいなもんだもんなぁ、レンは」

 

 レイのその言葉は間違っていない。実際、ヨルグ・ローゼンベルクにとって、レンという少女は孫娘も同然だった。

 《結社》の《十三工房》の中でも直接的な結びつきが一番薄いこの《ローゼンベルク工房》は、結社に所属していた時期からちょくちょくサボる為の隠れ蓑として訪れていた場所でもある。

 加え、レンが所有するパテル=マテルの修理改善がこの場所でしかできないという事もあり、レイにとっては第二の家と言っても過言ではない場所だった。

 

「フン、儂からすればおぬしも手のかかる孫のようなものじゃ。連絡もなしに突然顔を出しおってからに」

 

「いやだって此処って郵便物とか基本的に届かないじゃん。メンド臭いんだよね」

 

「ならば式でも寄越せばよかろう。根本的に面倒を嫌うその性根は学生になっても変わっておらんようじゃの」

 

「陛下とマクバーン譲りだからどうにもならんねぇ」

 

 わざとらしく肩を竦めるレイに向かって、ヨルグは深いため息を吐いた。

 

「仮にも《執行者》のNo.ⅠとNo.Ⅲが揃って問題児とはの」

 

「問題児しか集まんないから《執行者》なんだよ。爺さんだってよーく知ってるだろ? なんせ、俺とレンが入り浸ってたんだから」

 

 性格的な面で一癖も二癖もある代わりに、《結社》の実働要因として申し分ない実力を兼ね備える集団。それこそが《執行者》と称される者達である。

 それを鑑みてみれば、レイ・クレイドルとレン・ヘイワースの二人はその中でもまともな部類に入るだろう。度を超えた戦闘狂というわけでなく、他者を嬲る事を心の底から悦ぶ性格でもない。

 多少面倒臭がり屋で、多少我儘である事くらい、本来であれば充分許容できる範囲内なのだ。

 だが、《結社》から身を引き、”表”の世界に身を委ねるというのなら話は別だ。

 

「学院では上手くやっておるのじゃろうな?」

 

「おー。これでも一応成績優秀者だぜ? ……それに、面白い奴らと出会えたからな」

 

 そう言ったレイの表情は、ヨルグが思わず瞠目してしまう程に爽やかに晴れていた。

 以前、数年前に≪結社≫を去る際にレンを宜しく頼むと懇願して来た時の彼とは雲泥の差。能面に張り付けた笑みのようなそれではなく、心の底から嬉しそうな感情が籠ったものだった。

 

「……どうやら、留学は間違っておらなかったようじゃな」

 

「へ?」

 

「≪漆黒の牙≫の小僧以外に、友と呼べる存在が出来たのだろう? レンもそうじゃが、おぬしらは自ずと世間を狭める悪癖がある。世間を達観してみるには若すぎるわい」

 

 ヨルグは大陸でも有数の人形技師として有名だが、それと同じくらい、気難しい性格の老人という事で名が知れている。

 職人気質と称するのが一番合っているだろう。他者に対して深い興味を抱く事なく、厭世家として技術を磨き、それを提供して来たのである。それは、恐らく≪結社≫に関わろうと関わるまいと変わらなかっただろう。

 だが、それでも人間そのものを疎ましく思っているわけではない。自己の技術の邁進を邪魔するような存在を徹底的に避けて来ただけで、狂気的な思想などは一切持ち合わせていなかった。

 だからだろう。レイやレンという、傍から見れば毎日遊んで笑みを見せるような子供達が血生臭い世界を日常としている事に、やり場のない怒りを覚えたのだ。

 

 誰しもが当たり前に持つはずの幸福感を、彼らは深い絶望で上塗りされてしまった。そのせいでどこか壊れてしまった人格を抱き続けながら、一生を生きて行かなくてはならない。

そんな不幸を背負わされた子らに憐憫の目を向けるのはむしろ失礼であるという事をヨルグは長い経験則から知っているが、それでも何も思わないわけではなかった。

 身も心も凌辱された少女の傷を少しでも癒すため、”兄”として振る舞い、世話を焼き、愛情を注いでいた少年。―――それが”偽物”である事を知りながら、誰よりも彼女の味方であろうとした。

 だが、そんな自分が≪結社≫を去る事になり、レンの事を頼むと言って来た彼の心情は、筆舌にし難いものであっただろう。仮初の幸福を与えておいて、彼女が最も望んでいた”家族”というカタチを与えられずに去らなければならなかったという悔しさが、ずっと渦巻いていたに違いない。

 

 誰よりも普通に生きたかった少年が、しかし誰よりも後悔と贖罪を背負って生きねばならなかったその有様は、控えめに言っても惨たらしいものであったとヨルグは思う。

 何も知らない人間が見れば歳相応の笑顔にも見えたであろうそれも、彼が自身の精神を正常に保つために張り付けた薄っぺらいものでしかなかった。心配を掛けまい、干渉をさせまいとした末のその在り様に、黙っていられるほど人でなしではなかったというだけの事なのだ。

 

 だが、そんな問題児も漸く本当の笑顔を見せるようになった。

 この老骨の身に至るまで独り身であったヨルグは、レンと―――そして何よりレイを本当の孫のように想っていた。

 そんな少年が一歩を踏み出せたとあっては、嬉しく思わないはずがない。

 

 

「ははっ、お陰様でな。……尤も、本当の意味での”友人”にはまだ遠いんだが」

 

「≪魔女の誓約(ヘクセ・ゲッシュ)≫か。第二柱殿も中々悪辣な術を掛けたものじゃの」

 

「シオンに協力してもらってもまだ二割も解呪できてねぇんだよなぁ。ホント、アイツ呪いとかの類の術を行使させたら天才どころの騒ぎじゃねぇっての。性格歪み過ぎだろ」

 

 ≪結社≫にまつわる情報を、その情報を知り得ていない存在に伝える事ができない呪い。

 正確には禁則の約条と、それを破った際の魔力爆散(マジック・バースト)という死の罰で以て対象を縛り続ける魔女の眷属(ヘクセン・ブリード)に伝わる隷属術式を指す魔法であり、近代以前は奴隷に対して主に行使されていたモノだ。

 それを長き魔女の歴史の中でも屈指の才覚を持った女性が必要以上に(・・・・・)力を入れ過ぎて行使した結果、呪術に一家言あるレイと神獣であるシオンが二人がかりで頭を捻ってもなお、解呪が非常に難しい代物と成り果ててしまっている。呪術師の血を色濃く受け継ぐレイの非常に高い対魔力がなければ、今頃は体内に埋まった膨大な量の魔力に精神まで蹂躙され尽くされて廃人となっていたことだろう。

 

 ともあれ、これが体に刻まれている以上は、レイはⅦ組の友人達に全てを話す事が叶わない。

それは彼らに対する不義理であり、そして裏切りでもある。如何な理由があれど、”知っていて話さない”事に変わりはないのだから。

 

「まぁ、これについてはコッチで何とかするさ。―――それより爺さん、この工房にも来たんじゃないか?」

 

「……何の話だ?」

 

「言い渋らなくてもいいじゃんよ。……来たんだろ? ≪結社≫の人間が」

 

 その言葉が出た瞬間、ヨルグの顔が見るからに不機嫌に歪む。その反応を見ただけで、レイは誰が訪問して来たかという事に大体の当たりをつけられた。

 

「あー……その反応だと博士辺り? また厄介な……」

 

「カンパネルラもおったわい。恐らく、それだけではないと思うがの」

 

「師匠とルナが帝国に来るっぽいから、こっちにはアリアンロード鄕が顔を出す可能性がある。―――あの人が無益な争いを許容するとは到底思えないけど、敵として立ちはだかったら武闘派の≪守護騎士(ドミニオン)≫を揃えない限り傷一つ付けられないぞ」

 

「おぬしでも不可能か?」

 

「あー、ムリムリ。せいぜい数十分程度の足止めが精一杯だよ。死ぬ気でかかってあの人の兜を砕ければ御の字かね。ましてや膝をつかせられるのは達人級の中でもほんの一握りだ」

 

「相も変わらずのようじゃの、≪鋼の聖女≫殿は」

 

「当たり前だよ。―――あの人はずっと”最強”なんだ。俺達武人が目指す頂点で在り続ける女性(ひと)。そうじゃなきゃいけない」

 

 250年もの月日を経て常勝不敗。未だ”敗北”を識らない絶対強者。

 騎士の頂点であり、武人の粋を極め、その果てにすら至った最強の人類。―――それこそが≪使徒≫第七柱、≪鋼の聖女≫アリアンロードであると、少なくともレイはそう信じて疑っていない。

 彼女と一度でも刃を交えた事のある人間ならば否が応にも理解する。この武人と渡り合い、尚且つ勝利するには、常人の域に居るままでは到底成し得ない所業であるのだと。

 

「クロスベル方面は試練の連続だな。ま、帝国方面も人の事は言えないけど」

 

「それでも見捨てはしないのじゃろう?」

 

「とーぜん。乗り掛かった舟を見捨てる程馬鹿じゃないし。……それに、守らなきゃいけない奴らもいる」

 

 拳を握ってそう言うレイの顔には、混じり気のない覚悟が宿っていた。

 それを確認し、ヨルグは視線を作業場へと戻した。

 

「おぬしはおぬしの戦いをせい。クロスベルは、おぬしに守られるほど脆弱な土地ではないわ」

 

「そうさせて貰うよ、爺さん。……あぁ、そうだ。一つ頼み事を聞いて貰っていい?」

 

「なんじゃい、改まって」

 

「もしクロスベルで騒動が起きて、誰かが爺さんの力を借りたいって本気で頼み込んできた時には、力を貸してやって欲しいんだ。

レンも俺もこの街は気に入ってるし、爺さんが入れ込んでる劇場だってある。≪結社≫の玩具箱にするには、ちっと勿体無いと思わないか?」

 

「……考えておこう」

 

 その言葉を聞いた後は、レイも作業の邪魔になるだろうと判断してそのまま部屋を去った。最後に、「帰る前にまた来る」という言葉だけを残して。

 ≪アルカンシェル≫に提供する舞台装置を弄りながら、ヨルグはふと思い出して作業台の引き出しの一つを開ける。そこには、一枚の封筒が入っていた。

 

「まぁ、渡すのは後日でいいじゃろ」

 

 そうして再び引き出しの中に仕舞われた封筒。そこには差出人の名前がくっきりと書かれていた。

 

 

 ―――『親愛なるお兄様へ  レンより』―――と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クロスベル訪問2日目。

 梅雨前線という言葉が掠りもしないほどに良く晴れた空の下、レイは個人的に楽しむだけでなく、護衛職の一人としての職務も全うしていた。

 この日の10時頃からは、前日も訪れたIBC本社ビルの応接室で、ディーター・クロイス市長を含め、午前一番の便で到着した帝国政府の武官数名を交えてのオルキスタワーのセキュリティチェックが行われていた。

宰相に腕を買われて護衛の列に加わったとはいえ、所詮はいち士官学院生に過ぎないレイは、身の程を弁えて末席に当たる部分で立っていたのだが、その判断は結果的に当たりだった。

 武官にもプライドというものがある。立つ瀬というものがある。

自分達よりも先んじて護衛職としてクロスベルに入ったレイの事を、当初は気に入らないという雰囲気をひしひしと感じたのだが、あくまでも末席の一人であるという姿勢を貫いた結果、そういった視線は次第に薄れていった。

 煩わしかったのは確かだが、プライドのみで動く領邦軍と比べればまだ好感は持てる。

 

 それらの仕事を終えて溜息交じりに本社ビルのロビーから外へと出ると、今まさにビルに入ろうとする人物と鉢合わせになった。

 

 

「……誰かと思えばお前か、クレイドル」

 

 炎天下の下であるというのに隙なく着詰められた紫紺のスーツ。その上からでも分かる頑健な肉体と、それでいて頭脳派でもある事を印象付ける容貌。

 重々しい口調も、眉を顰めた不機嫌そうな表情も、それは彼の平時の姿に過ぎない。それでも、レイを視界に入れて眉の間の皺が更に寄った事は否定できない。

 だがレイは、そんな人物を前にして物怖じる事無く苦笑した。

 

「っと、お久しぶりっすダドリーさん。相変わらず血管切れそうな表情してますけど高血圧とか大丈夫ですか?」

 

「貴様も相変わらず人の神経を逆撫でする事に掛けては天才的だな」

 

「いやぁ、それ程でも」

 

「今の言葉のどこに褒めている要素があると思った‼」

 

 言ってしまえば絶望的なまでにレイとの相性が宜しくないこの男性こそ、クロスベル警察『捜査一課』主任捜査官、アレックス・ダドリー。

 政治と経済の両面で混沌とした様相を呈するクロスベルでの対テロ、防諜の現場指揮権を一手に担う、頭脳・体力の両面で優秀な人物であり、クロスベルが綱渡りの状態であっても表向き平和を保っている現状を作り上げている立役者の一人だ。

 そしてその性質上、遊撃士協会とは犬猿の仲であり、実際休職前にはレイも何度かこの人物と衝突をしていた事があった。

 要人警護やマフィアへの対処、他国のスパイを発見した際の受け渡し。果てはジオフロントの管理からイベント時の警備の縄張り争いまで、挙げてしまえばキリがない。

 だが、立場抜きで評価を下すなら、レイはダドリーという捜査官の事を高く評価しているのも確かである。

 警察官であっても汚職が当たり前となっている現状で、それでも普遍的な”正義”を貫き続ける人物で、心の底からクロスベルの安寧を願い、職務に矜持と責任を持っている。

そんな真っ直ぐな人物を憎めるはずなどなく、実際クロスベル支部の人間も、彼個人に対して悪く言う事はない。喧嘩腰に来た時はこちらも喧嘩腰で応えるというのが暗黙の了解になっている為、今まで腹を割って話し合った事など一度たりとてないのだが。

 

「冗談っすよ、冗談。ダドリーさんはこれから市長と話し合いですか?」

 

「……あぁ。全く、帝国からの護衛のリストに貴様の名前が載っているのを見た時は頭痛がしたぞ」

 

「大丈夫っすよ、迷惑は掛けませんって。今の俺は借りてきた猫も同然ですし」

 

「あぁ、確かに予想もつかない事態を引き起こすという観点からすれば貴様は猫のようなものだな。何度一課を引っ掻き回したと思っている‼」

 

 公になれば政治的に厄介な事件を解決した後に後始末を捜査一課に押し付けたりと、クロスベル支部の中でもレイが捜査一課に掛けた迷惑は群を抜いている。

 だが、迷惑を掛けた分スパイやテロリストの確保の功績を全てクロスベル警察に丸投げしたりと、読めない行動を取る事で有名だった。

 レイからすれば面倒臭い後始末をする事をただ避け続けていただけなのだが、警察上層部からも「厄介者」「時限爆弾」と揶揄されている事もまた事実である。

 

「まぁまぁ、今回は安心しといてください。流石に客員みたいな感じで護衛の末席に立たせて貰ってる立場で無茶な事はしませんよー。……多分、恐らく、メイビー」

 

「貴様がそんな物分かりの良い性格だったら私達も苦労は……おい待て、最後の不吉な言葉の羅列は何だ」

 

「深く考え過ぎると胃に穴が開きますよー。もう遅いかもだけど」

 

「……一周周って一課にスカウトしたいくらいだな。尋問員としてさぞや有能な人間になるだろうよ」

 

 そんな彼からしてみれば、真面目一直線のダドリーは弄る人員としては最上級の逸材であるとも言える。

 勿論職務を忠実にこなしている時は話しかける事もないのだが、街でバッタリと会った時などはこうしてからかうのが半ば習慣のようなものになってしまっている。

 

 そこまで話してから、そろそろ頃合いかとレイが話を切り上げる。

 この時間が楽しいのは確かだが、刑事の職務を過度に邪魔するわけにはいかない。そのまますれ違って別れようとして、その直前に小さな、しかし真剣さを孕んだ声でダドリーに”本題”を伝える。

 

「……真面目な話、通商会議の警備は腕利きを揃えた方が良いですよ。帝国ではテロリストが暗躍し始めたし、共和国方面も不穏な種火がチラついてる様なので」

 

「承知している。此方もそれを考慮に入れて万全の警備態勢を敷くつもりだ」

 

「国際会議の場だ。念には念を入れておいてし過ぎる事もないでしょう。……どーにも嫌な予感しかしないんですよね」

 

「……貴様の口車に乗るつもりはないが、その勘にだけは同感だ。杞憂で済めばそれに越した事はないんだがな」

 

「恐らく―――無理でしょうね」

 

 そしてそれは、薄々ダドリーも勘付いている事だろう。

 エレボニアとカルバードで抵抗組織が動き始めている中、その両国の最重要人物が揃って参加する国際会議。加え、リベール王国の王女にレミフェリア公国の大公まで出席するというビッグイベントである。

 その場でテロを引き起こして大惨事にでもなれば、両国の政権は荒れに荒れるだろう。当然デメリットも大きいが、メリットも大きい。

 

「私は、私が出来る限りの事をするだけだ。それは変わらん」

 

「同感っす。今度は警察署に呼び出し食らうような類の迷惑は掛けませんよ」

 

「そうあって欲しいものだ。貴様にまで気を配っている暇などないからな」

 

 そう言い切ると、ダドリーは鼻を鳴らして本社ビルの中へと消えて行った。

 レイはその背を見送ると、途端に自分の腹が小さな音を立てた事に気付く。腕時計を覗いてみると、時刻は午後1時に迫ろうとしていた。

 

「(さて、と。メシだメシ。とりあえず『龍老飯店』にでも行くかね)」

 

 遊撃士時代に恐らく一番高い頻度で通っていた料理屋を目的地と定め、湾岸区へと繋がる坂をひたすら下って行く。

 そのまま南へと歩いて行く事十数分、懐かしい東通りの空気を感じながら『龍老飯店』へと繋がる道を歩いていると、その道中で何やら言い合っている男女の姿を発見した。

 

「ヒック、だからよぉ、ちょっと俺達と遊ぼうぜって言ってるだけじゃねぇかよぉ」

 

「いいんじゃんよぉ、別に。減るモンじゃねぇし」

 

「寝言は寝て言うアル‼ お前らについて行ったらロクな事にならないネ。特にリーシャは連れて行かせるわけには行かないアル‼」

 

「さ、サンサン。私は大丈夫だから、ね。そんな刺激しない方が……」

 

「お~、良い度胸じゃねぇか姉ちゃんよぉ。いいねぇ、ソッチの方が燃えるってモンだ」

 

 二人の女性を囲むようにしているのは、揃いの服装をした四人の男。

 その内女性の方は、レイの知り合いでもあったが、男の方は見た事のない顔ばかりであった。とはいえ、彼らが属するグループは知っているのだが。

 

「(『サーベルバイパー』の連中には間違いねぇだろうが……新人か。それも酔ってやがるな)」

 

 何度も彼らの抗争の立ち会いを務めたレイだからこそ分かるが、『サーベルバイパー』と『テスタメンツ』の両グループのメンバーは、基本的に旧市街地以外の場所で騒動を引き起こすのは稀だ。

 その理由としては彼らのリーダーが荒くれ者達を纏め上げ、抑え込んでいられるカリスマ性があったからなのだが、無論、それ以外の理由もある。ほぼ治外法権状態になっている旧市街地から一歩でも出て騒動を起こせば、途端にクロスベル警察か遊撃士が飛んでくるからだ。

 特に、東地区での騒動は御法度になっている。少しでも騒ぎになれば鬼よりも怖いクロスベル支部所属の遊撃士が飛んできて一分と経たずに制圧されるからだ。

 それを弁えていないという事と、レイが顔を覚えていないメンバーという観点を合わせれば、そう言った結論が導き出せる。

 加え、絡んだ相手が悪過ぎた。『龍老飯店』の看板娘であるサンサンと、今や≪アルカンシェル≫で注目を浴びる≪月姫≫リーシャ・マオ。彼女らが被害を被ったと知られれば、今まで以上にキツい制裁が下される事は目に見えている。

 面倒臭いと思いながらも、レイは階段を下って騒ぎの渦中へと入って行く。サンサンはともかく、リーシャの方は万が一にも彼らに後れを取る事はないのだろうが、それでも見ない事にして立ち去るという選択肢はなかった。

 

「あー、はいはい。昼間っからサカってんじゃねぇよ不良諸君。そら、早く旧市街の方へ戻れ。じゃないと鬼より怖い遊撃士が飛んでくるぞー」

 

「あァ? 何オマエ。今俺達はこの娘達と遊ぼうとしてんの。分かる?」

 

「ギャハハ‼ ナイト気取りかよ、こんなガキが‼」

 

「チビの癖に粋がってんじゃねぇぞ、あぁん?」

 

 まぁ予想通りと言えば完全に予想通りの反応を返され、辟易とした溜息を吐く。

 チビと言われた事に関しては内心で「ぶっ殺したろかコイツら」という怒りが湧き上がったが、それは抑え込んだ。

元々遊撃士として活動していた時もその言葉は相変わらず禁句であり、抗争の立ち会いの際も興奮のあまりそうなじって来た不良を顔面タコ殴りにした事で旧市街でも禁句に指定されていたほどだった。

 これが見知ったメンバーだったらどんなに酔っていてもレイに対してこの言葉は吐かなかっただろうし、そもそも彼が止めに来た時点で退散していたのは確実だ。

 だからこそレイは、1年ほど前まで良く使っていた手で不良たちを黙らせる方向にシフトした。

 

「―――聞こえなかったか?(・・・・・・・・・) とっとと失せろっつったんだよ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「「「「ッ⁉」」」」

 

 放出した僅かな殺気。それこそ、リィン達と模擬戦をする際にデフォルトで出している程度のモノだったが、それでも一介の不良程度が浴びるには些か過剰な気迫であった。

 不良としての矮小なプライドをすり抜け、生物としての本能に脅しをかける。四人はまるで蛇に睨まれた蛙のような表情を晒してから、全員が酔っていた事も忘れたように顔面を蒼白させて一目散に旧市街の方へと逃げて行った。

 

「ったく、根性ねぇなぁ。この程度でビビってんじゃねぇっての」

 

 少しばかり力を手に入れただけの不良にそれを求めるのは酷な事だと分かっていながらも、レイは再び深い溜息を吐く。

 そんな彼の肩をポンと叩いて、行きつけの店の看板娘ははにかんだ笑顔を見せた。

 

「やっほー、レイ‼ 久し振りアルネ‼ 相変わらずカッコ良かったヨ‼」

 

「久し振りだな、サンサン。お前の方も相変わらず元気そうで何よりだ」

 

「そりゃもう、ネ。ホラ、リーシャもお礼言った方がイイヨ」

 

「あ、はい。そうですね」

 

 そうサンサンに促されたリーシャは、レイに向かって軽く頭を下げた。

 

「お久し振りですレイさん。ありがとうございました」

 

「いいってーの。それより有名になったモンだよなぁ。≪銀の月姫≫さん」

 

「ありゃ? 二人って知り合いアルか?」

 

 サンサンのその問いかけに、レイは「ま、関係上な」と返す。

 とはいえ、”リーシャ・マオ”としての彼女との付き合いはそう長い訳でも、ましてや深い訳でもない。≪アルカンシェル≫関係の依頼をこなしていく間に時々会って喋る事があったというだけで、それ以上でも以下でもなかった。

 ましてや、レイがクロスベルに居た頃は、彼女はまだ舞台の上で日の目を見るような存在ではなく、≪炎の舞姫≫イリア・プラティエの指導を受けながら黙々と演技の練習を積んでいただけだったのだから、それ以上の関係などある筈もないのだが。

 そんな事をしみじみと思っていると、再びレイの腹が小さく鳴る。それを恥ずかしがる様子も見せずに、ハハ、と苦笑した。

 

「そういや、腹減ってたんだった。『龍老飯店』のメシが俺を待ってるぜー」

 

「あぁ、じゃあ一緒に行くアル。助けてもらったお礼に一品タダにしてあげるヨ」

 

「よっしゃ。―――あ、リーシャはどうするんだ? お前も昼飯食いに来たんじゃないの?」

 

「あぁ、いえ。私はちょっと人と待ち合わせしてて……もう少ししたら来るかと―――」

 

 リーシャがそこまで言いかけたところで、レイは見知った気配が近づいてくるのを察知した。

 人通りが少ない路地とはいえ、それでもちらほらと通行人の姿は見える。本来なら、ここで特定の人物の揺蕩う気配を察する事は難しい。

 だが、それでも分かった。気配を敢えて隠していない(・・・・・・・・・・・・)からだろうが、それでもこの雰囲気を忘れられるはずがない。

 

 

「よォ。知った気配が流れて来るかと思えば、やっぱお前だったか、レイ」

 

 やや口調こそ乱暴ながらも、そこに敵意の類は一切感じられず、むしろ好意すら感じる明朗闊達な声。それが自身の背後から聞こえる。

 声の主を視認したリーシャが表情を綻ばせる様子を見てから後ろを振り向くと、予想した通りの人物がそこにはいた。

 

「……コッチの方は流石に久し振りどころの騒ぎじゃねーなぁ」

 

「まぁそうだな。とはいえ、俺はこうして義弟(おとうと)の無事な姿を見れて嬉しく思うぜ」

 

「そういうソッチはいつの間にか彼女なんか作ってたんだよ、義兄(あにき)

 

 レイが良く知っている女性の、それよりは濃い紫色の癖の強い髪。

 ≪結社≫を抜けてからはとんと音沙汰がなかったその人物が今、カラカラと笑ってレイの前に立っていた。

 本当に、暗殺者(・・・)らしくないなと嘆息混じりに思いながら、それでもその姿を見ると安心してしまう。

 

 かつて義兄弟の契りを交わした男―――アスラ・クルーガーは、最後に会った時と変わらない表情のまま、義弟との再会を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





今回の提供オリキャラ:

 ■アスラ・クルーガー(提供者:漫才C-様)

  ―――ありがとうございました‼


 後一話くらい書いたらリィン君達の話も書きますね。

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