俺がコイツでこいつがあれで   作:熱々の冷やし中華

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 前回が嘘かの様な超平和日常回。


第6話 Opposites attract
お泊まり会は夜からが本番


 皆んな、夏と言えばどんな食べ物を思いつくだろうか?

 かき氷?冷やし中華?そうめん?

 違う違う、そんなちゃちい物じゃない。

 

 夏と言えばの食べ物、それは激辛料理だ。

 

 辛いものにはカプサイシンが含まれており、これが刺激され汗が出てくる。

 この汗が蒸発する時に体温が下がるのだ!!

 実質、設備ナシで家で出来るセルフサウナの完成だ。

 これは夏に食べるしかない(確信)

 あと俺は味覚がないから痛覚である辛味じゃないと食事があんまり楽しめない。

 

 そんな事を考えていると、ケトルからお湯が沸いた事を知らせるホイッスル音が鳴り響く。

 よっしゃ、後はこれをカップに入れて3分待つだけや!!

 いやーマジで楽しみ……

 

 プルルルルプルルルル、プルルルルプルルルル

 

 音の鳴る方へと目を向けると、俺のスマホの画面上には"非通知"の文字が浮かび上がっていた。

 時刻は午前6時30分、千束達が起きるには少々早すぎる時間である。

 

 …え、怖。

 もしかして幽霊とか?

 職業柄、変に死人に恨まれてたりしても納得できるから困る。

 俺ホラーとかマジ無理だからやめてよ!?

 ゾンビ映画とか怖くて観れない*1んだぞ!!

 

 震える手を抑えながら、俺は恐る恐る電話を手に取る。

 

 「はい、もしもし?」

 『久しぶりだな、律。早速だが…』

 「すみません、間違い電話の様です。きちんと番号を確認して掛け直して下さい。お礼はいいです、ではサヨウナラ」

 

 『真面目に聞け、お前にも関係のある話だ』

 

 幽霊とかより怖い電話が来るとは思わなかった。

 ちくしょう、何で電話バレてんだよ⁉︎

 この前の件*2があったからこちとらスマホごと変えたんだぞ⁉︎

 

 『手短に伝える。それとも何かこの時間に急用でもあるのか?』

 

 お湯を入れ始めてまだ1分弱だ。

 あと2分の猶予があるし、一応コレでも上司だ。話を聞かないのもアレだしな。

 

 「…手短にお願いしますよ」

 

 

 _____

 

 「え、リコリスが?」

 

 DA本部からの連絡に、俺は首を傾げていた。

 内容は至って単純、今月に入ってリコリスが4人も殺害されたのだ。

 

 それぞれ単独での任務中に襲われた様で、遺体なんかは酷い有様。

 内臓損傷、頭部外傷、銃創による失血が死因の様だ。

 臓器の破裂はともかく、銃創に関しては見せしめの意が強いというのが検死班の考えだそうだ。

 

 見せしめだとしても、子供相手に何発も撃ち込める奴らだ。

 相手側は容赦しないに違いない。

 

 「何か4人に共通点とかは?」

 『それぞれのチームの補充人材として行動した記録が複数見つかった』

 「それで何か分かったんです?」

 『今解析班が汗水垂らしてやっている』

 

 うへぇ、解析班の人可哀想。

 仕事とは言え、こんな重要案件任せられるとか腹が痛くなりそう。

 

 「まあ、狙いは大体検討がつきますね」

 『分かるか』

 「やっぱDAを狙ってるのでほぼ確っすね。リコリスが狙いならわざわざ銃創で何度も痛めつける必要がない。上層部の存在を認識した上での宣戦布告ですね」

 『犯人に心当たりは?』

 

 ある訳ねぇだろこのタコ。

 大体、お前のせいでカップ麺にお湯入れてから5分経ってるんだよ!!麺伸びすぎて蓋が膨らみ初めてるし。

 

 カップ麺の事は一旦置いといて、心当たりが無いと言えば嘘になる。

 千束は不殺を誓っている。

 これが原因で同じ相手からの再犯に追われることも珍しくはない。

 そいつら全員が容疑者だ。

 こんなの蝶ネクタイの眼鏡の少年でも無い限り当てられないだろう。

 

 後は__

 

 「この前の地下鉄犯の遺体って見つかってましたっけ?」

 『いいや。リコリスの攻撃の跡がある死体はいくつか見つかったが、お前の言っていた特徴と合致する物は発見されなかった。生きている、という風に考えるのが自然だろう』

 「テロリストの一人も見つけられないなんて、DAも堕ちたもんですね」

 『貴様も言うようになったじゃないか』

 「イヤークチガスベッチャッター。ホントハソンナコトオモッテナイデスヨー」

 『全く、文句はDAとしての成果を挙げてから言って欲しいものだな。千束にも注意を促しておきなさい』

 「へーい、ご苦労さまでーす」

 

 ガチャ、という音と共に通知音が切られる。

 通話時間七分、それは淹れたてのカップ麺がふやけるには充分過ぎる時間だった。

 

 にしても、リコリスを襲う集団か。

 この国は裏向きに見れば平和だった瞬間がないと言えど、近頃は群を抜いて酷い。

 犯人の目途が立っていないとは言え、さっさと本部に解決してもらいたい物だ。

 案外、俺達の内の誰かが襲撃されるかもしれないしな。

 

 「……意外と旨いな」

 

 俺はふやけた麺を啜りながら静かにそう呟いた。

 

 

 ○●○●

 

 

 「安かったからって仕入れ過ぎじゃない?」

 「俺に文句言うなよ、買おうって提案したの先生だし」

 「ジュースにすればいい、流行ってるんだよ」

 「あっ、そこのやつは羊羹と大福作るのに使うから置いといて」

 「注文が、注文が多い!」

 

 今、俺とミズキは仲良く買い過ぎたスイカの解体作業に勤しんでる。

 先生が悪いのだ、調子に乗って一つ余分に入れたのは俺だけど。

 さて、何だかんだ1.5個分は切り終わったし、先に時間が掛かる羊羹から作ろうかなっと__

 

 スイカが消えた。

 一瞬目を疑い、手で擦った後にもう一度見直す。

 うん、スイカが消えた。

 

 こういう摩訶不思議な事はリコリコでは定期的に起こる。

 面白い事に急に消えるのは食べ物限定であって、他の無機物には基本的に何も起こらないのだ。

 そして、キッチン担当の人間は大体目星が付いている。

 

 「「何してる、働け」」

 「・・・ボクは電脳戦専門だから」

 

 そこには、隠れて盗み取ったスイカを頬張ろうとしているクルミの姿があった。

 これまで何度も同じ事をされてきたミズキは険しい顔をして言い訳をするクルミを見つける。

 そして、クルミが持つスイカを取り返そうと手を伸ばしながら、彼女は言った。

 

 「あん?ゲームして遊んでるだけじゃない‼︎スイカ返せ!!」

 「そうだぞ、俺だってゲームプレイしたいのに!!」

 「アンタはたきなとイチャイチャしてないで仕事に専念しなさいよ!!」

 「普段からイチャつかれると作業に集中出来ないんだ、反省してくれ」

 

 え、何で俺が怒られる側になってんの?

 てか、そんなにたきなとイチャついたりした覚えがないんですが!?

 確かにこの前の一件以降よく話してくれる様になったし、指相撲とかやらされてるけどノーカンだろ。

 

 「…ちょっと何言ってるかわかんない」

 「何よ私に見せつけの様に休憩中してくる癖に〜‼︎」

 「独身の嫉妬が見苦し過ぎる」

 「クルミ!手伝って貰いたい事がある」

 

 先生が奥のドアから俺達の前へと姿を現す。

 ミズキとクルミの押し問答の結果、潰れて散乱したスイカたちを見て少し先生は顔を顰めたが、構わずクルミの方へと視線を向けた。

 

 「だからボクは…」

 「勿論、電脳戦だよ」

 

 ミカからの予想外の返答にクルミは口を紡ぐ。

 少し考え込んだ後、何か決心したかの様な瞳を見せつつ、彼女は持っていたスイカを頬張った。

 

 …また一から切り直しか。

 

 

 ◯●◯●

 

 「おはよう、労働者諸君!」

 「おはようございます」

 「聞いたよ〜エライ事になってんね〜」

 

 店内に看板娘達の元気な声が響き渡る。

 

 司令の連絡の後、千束がメッセージにすぐ目を通す筈がないと考えた俺は、たきなにリコリス襲撃班についての事を電話上で話した。

 事情を知ったたきなは、千束にこの事を伝えるのと安全性を考えて千束の家に泊まり込む事を決断。

 この事があってか、二人は同時にこの店に来たのだ。

 

 俺が冷蔵庫から固めた羊羹を取り出していると、たきながいつの間にか横へと来ていた。

 

 「律、じゃんけんしませんか?」

 「これまた唐突な…まあいいけど」

 「では、最初はグー、ジャンケン…」

 

 「「ポン!!」」

 

 合図と同時に俺はグー、たきなはパーをそれぞれ相手に向かって出す。

 うん、俺の負けだな。

 駄目だ、目的が全くわからん!!

 

 「えーと、じゃあたきなの勝ちという事で。これあげるね」

 「え、あっ、ありがとうございます」

 

 「りーつー、それ私にもちょーだい!!」

 「ホイジャンケンポン!」

 「えっ、ちょっと急…」

 「はい、お前の負け。何で負けたか、明日までに考えといて下さい」

 「えー、ちょっと私にだけ意地悪すぎじゃありませんかね〜」

 

 ジャンケンに負けた千束が不服そうに口を尖らせて言ってくる。

 ふっ、可愛げの無い妹より無邪気な後輩を優遇するのは世の理よ‼︎

 俺は顔を膨らませてこっちを睨んでくる千束をあしらい、キッチンへと戻ろうと立ち上がる。

 その時、目を疑う様な表情をしているたきながこちらを凝視しているのに気付いた。

 

 あれ、俺が気付いて無いだけで何か頭に付いてるのかな?

 

 「え、何で勝てたんですか?」

 「ん、勝てたって何の事?」

 「その、ジャンケンですよ」

 「?ジャンケンで勝つなんて普通じゃない?」

 「千束には勝てないんですよ…、同棲という事で家事の分担をジャンケンで決めたんですが一回も勝てなくて…」

 「あー(察)」

 「勝率は統計的にどの手も三割なのに…」

 

 そう、たきなの言う事は間違ってはいない。

 ジャンケンは勝率においては平等の代名詞でもあるものだ。

 だが、千束はジャンケン界隈で唯一反則技が使えるチーターなのだ。

 さて、どこからこのカラクリを説明したもんかな。

 

 「たきな、実はな___」

 

 俺は懇切丁寧に全てを暴露する事に決めた。

 錦糸町のコレ◯レに任せてなさい!!

 

 5分後…

 

 「えぇ…」

 

 全てを説明し終えた後、たきなは思いがけず眉を顰めていた。

 東京一優秀と持て囃されているリコリスが、自分の能力をこんな些細な事で大人気なく使っているのだ。

 寛大な心を持っている事で有名なたきなもコレにはドン引きであった。

 

 「ねえ律ー、ここに置いている大福餅味見しても……何?」

 

 何も知らず、呑気に着替えて来た千束に向かって、たきなと俺は軽蔑の念を含めた視線を彼女に送る。

 勘は悪いが無駄に目の良い千束は、バツが悪い雰囲気に耐えかねて俺たちに質問を送る。

 

 「えぇ、なになに?」

 「いいえ、何でもありません」

 

 ……たきなの機嫌が治るまで当分かかりそうだな。

*1
お前が言うな

*2
九話参照




 やっぱり日常回は良いですね。
 ある程度改変しても本編に支障がない所が特に良い。
 私は執筆経験の浅い学生なので、ポンポン二万字とかで毎話投稿している人は尊敬でしかない。

 では、前回高評価を入れて下さった

 ☆9評価
 ボルンガさん、ももちもちもちももちもちさん、ふくよかな体型さん
 本当にありがとうございます!!

 毎回高評価を頂いて何と感謝していいのやら…
 
 欲を言えば感想の方も書いて頂ければ幸いです。
 感想もモチベ維持にかなり繋がりますし、作品の意見とか聞きたいので何卒!!

 追記:前回答えて貰っていたのに申し訳ないですが、新しくアンケートを実施しました。
 こちらも今後の展開に関わるので是非。

展開は原作準拠のまま、敵キャラとしてオリキャラを出すのは賛成?(オリ敵は一人で、オリ主の過去に滅茶苦茶関わっているものとする)

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