俺がコイツでこいつがあれで   作:熱々の冷やし中華

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次回で第七話は終了。


侵入、BarForbidden! (犯罪じゃないよ)

 やめて!楠木さんからの命令で、先生が千束をDAへと連れ戻したら、ファーストリコリスありきで成り立っているリコリコまで燃え尽きちゃう!

 

 お願い、行かないで千束!

 

 あんたが今ここを離れたら、たきなやクルミの将来はどうなっちゃうの?

 切り札はまだ残っている。ここを耐えれば、リコリコを続けられるんだから!

 

 次回「喫茶リコリコ死す」デュエルスタンバイ!!

 

 という訳で、先生を除いたリコリコメンバーは従業員室にて千束から事情聴取を行っていた。

 千束容疑者によると、休憩中に目に入った先生のスマホの通知にて『明後日21時、BAR Forbiddenにて待つ。千束の今後について話したい』と書いてあったらしい。

 取り調べに対し、千束容疑者は『だって見えちゃったんだもん』と容疑を認めています。

 

 「人のスマホ覗き見すんじゃありません」

 

 ミズキからの叱責に口を尖らせる千束。

 千束の言ってる事も理解は出来るけど、この前俺のスマホの中身を見たのは完全にアウトだからな。未だに謝って貰ってないし。

 

 「目が良いと余計なもの見てしまうんですね」

 「パンツとかな」

 

 クルミが揶揄った瞬間、たきなからのお盆での鉄槌が下される。

 痛てっ、という発言と同時に頭をさすりながらクルミは千束へと質問した。

 

 「…楠木だと何で分かる?」

 「そうですよ。司令とは限らないでしょう?」

 「いーや、先生を垂らし込んで私をDAに連れ戻す計画じゃわ……」

 「自慢ですか。結構ですね必要とされてて」

 「あぁんそうじゃないよたきなぁ……!」

 

 事実上は左遷された側であるたきなは面白くなさそうな表情で千束を見る。『違う違う〜』と必死に抱きつきながら弁明している千束をよそに、クルミは俺とミズキに疑問を投げかけた。

 

 「それがなんで店の閉店と関係してくるんだよ」

 「小さいとはいえ、一応DAの支部だからねぇ。ファーストリコリスのコイツが居ないと存続できないのよ」

 「でも律は呼ばれている訳じゃないんだろ?」

 「俺はあくまで関係者って立ち位置だからわからん。楠木さんの許可が出たら続けれるとは思うけど」

 「じゃあ私が戻りますよ」

 「うえええぇぇえ、そんなさーびーしーいぃぃぃぃぃぃいいいい……」

 

 気負いなく言うたきなに対して、千束がまたもや頬を押し付けるように抱きつく。年下に年甲斐なく触れ続ける妹を冷めた目で見ていると、横から見ていたクルミがポツリと呟いた。

 

 「たきなはお呼びじゃないんだろぉ───うぇっ!……すまんすまん、失言だった……」

 

 今回は割と強めにお盆で叩かれたクルミが頭を抑えながらたきなへと謝り、その様子を傍から爆笑するミズキ。普段のリコリコと何ら変わらない二人を交互に見ながら、千束は焦った様子で口を開いた。

 

 「み、皆だってお店なくなったら困るでしょ!?」

 

 その一言に各々の顔が険しくなる。

 

 「まあ、私は養成所戻しですし」

 「ボクもまだここに潜伏していないと命が危ない……」

 「アタシも男との出会いの場が失くなる……!!」

 「俺も千束と一緒にDA送りの可能性が……」

 

 そうでしょう!という千束の一言に全員が力強く頷く。

 それぞれの利害が一致した五人に、もう言葉は要らなかった。

 

 

 

 さて、先生がForbiddenに俺も連れて行くって事、いつ皆に言うべきかな?

 

 

 5分後……

 

 「“BAR Forbidden”……検索エンジンには出ないな……おっ、あった」

 「会員制のバーか……」

 

 クルミのパソコンに映し出されたHPには、ペンダントライトで彩られた高級感の漂うバーの内装の宣材写真があった。えーと、入会金が二十万……俺ら庶民には無縁の場所っすね。

 何も知らずに目を輝かしているミズキくらいの純粋さを、今は見習うべきかもしれない。

 

 「入れるんですか?」

 「そこはコンピュータの人の出番でしょ〜」

 「偽造は何でもないが……」

 「おお〜!」

 「アンタも偶には働きなさいよ〜」

 

 千束の期待に応えるように、クルミはPCの画面を睨みつけながら黙々と作業を続けていく。

 

  ……なんか流れるようにやってるけどIDの偽造って普通に犯罪だよな?何で皆これにツッコまないんだよ。営業終了後にカジノ紛いの事してる俺らが今更言うのもおかしな話だけど。

 たきなが止めに入るだろうと思って黙っていたけど、彼女も普通にパソコン画面に貼り付けになっているし……ここには犯罪者しかいないのか?

 

 「でも、こんな場所で仕事の話なんかするか普通?……やっぱり逢引じゃないのか?」

 「店長と司令は愛人関係ということですか?」

 「いや、店長と楠木さんに限ってそんな事は___」

 

 えっ、愛人?愛人関係って言った?

 たきなの一言に対して、俺と千束とミズキが固まる。

 いつの間にそんな言葉を……たきなに変な単語教えたのは何処の誰だよ!?

 世間知らずだったたきなが成長している証拠ではあるけど、純粋な後輩が俗世間に染まっていくのは何か…くるものがありますなぁ。

 

 「でも、そういう事だろ?」

 「「ナイナイナイナイ」」

 「……何でだよ、あり得る話だろ??」

 「「ナイナイナイナイナイナイナイナイ」」

 

 千束とミズキが二人仲良く否定する。

 クルミがそういう発想に至るのは別におかしな事じゃない。大抵の人間は男女が密会を行うとなるとそういう考えが生まれるものだ。

 まあ、この二人がここまで否定的って事は、それなりの理由がある訳で………

 

 「二人が露骨に否定する理由って何です?

 「うお、びっくりした!!」

 

 耳に擽ったさを感じて振り返ると、口元を手で覆いながら耳元で囁くたきなの姿があった。

 これって直接的な表現を抑えて教えるべきだよな……これ以上変な知識(愛人関係 )を付けさせたくないし。

 俺はさっきの仕返しも含めて、手を添えてたきなの耳元で呟いた。

 

 「愛の形は様々なんだよ、たきな」

 

 

 ▼

 

 

 『現場付近には使用したと思われる銃器の弾丸が散らばっており___』

 「昼から物騒だな今日のニュース」

 「うっわ紋々スゲぇな、今どき珍し…」

 

 休憩中の俺達が見ていた小型テレビから、昼の喫茶店に似つかわしくない報道が流れていた。

 内容は、昨夜に警察署が暴力団によって襲撃されたという。にしても銃器が使われた傷害事件が報道……これリコリスの対応案件では?

 報道されてるって事は対応自体が遅れたって事なんだろうけど。

 ミズキと共にテレビ画面を眺めていると、後ろから入店を知らせる鐘の音が鳴る。

 視線を向けたその先には、俺達がよく知るDA関係者のフキとサクラの姿があった。

 

 「千束と律はいるか?」

 「そこの棚に無ければないですね」

 「……前回と違って元気そうだな」

 「逆にコイツが落ち込んでたの見たことあんの?」

 「…確かに、心配して損した」

 

 え、何?フキちゃんにしては珍しく俺の事を心配してくれてたのかなァ〜?

 ツンデレ系女子め、後で先生と話す時間を少しだけ長くしてやろう。

 

 「お〜!フキいらっしゃ〜い」

 「説明は不要だな、見せたい物がある――ん?」

 

 カウンターへと腰を降ろしたフキの動きが、ある一点を視界に入れてから止まる。

 視線の先には俺達が抱えている爆弾―――DAに絶賛狙われているウォールナットことクルミの姿があった。

 完全にコイツが爆弾案件な事忘れてたわ。

 

 「見ない顔だな?」

 「……d、d、d、DAの者です……!」

 

 うーん、これは名演技!流石のフキでもこれで納得する筈―――

 

 「ん?そうなのか?」

 「えっ?あっ、あ……うんうん、うちのコンピューターの人〜」

 「人見知りだから話しかけないであげてー」

 

 凄いな、ここまでフキから怪訝そうな視線を向けられたのは初めてかも。

 二人の俳優もビックリの演技によって若干まだ不審そうにしていたフキだったが、これ以上詮索する必要が無いと感じたのか、隣のクルミのタブレットを取り上げ、持参したUSBを挿入する。

 画面が切り替わると、そこには署内で銃を発砲しているツナギの男達の姿があった。

  

 「警察署内のカメラ映像だ」

 「紋々じゃねえじゃん!」

 「報道はカバーしてるに決まってるじゃないッスか!」

 「行動前に止めるのがアンタらの仕事でしょ」

 「そーだ、そーだ」

 「フンッ!!」

 

 ニュースで感じていた違和感通り、やっぱりリコリスが事前に対応出来ていなかったのか。

 相手側がDAの注意を上手く分散させた事で隙を突かれた―――こんな事出来るのはウォールナットだけでは?

 俺がクルミに対して視線を向けていると、それに気づいたクルミが顔をはち切れんばかりに横に振った。

 流石に二回もDAをハッキングするなんて事はしないか。

 

 「おや、珍しいお客さんだな」

 「あ、団子セット良いっスか?抹茶のヤツ!」

 「抹茶団子セットね。フキ、おまえは?」

 

 キッチンの奥から、映像とは見合わない呑気な声が聞こえてくる。

 顔を上げた先には、フキの想い人ことミカ先生の姿があった。

 その声を聞くや否や、フキの顔がみるみる赤く染まっていく。

 あら^~?

 

 「…………………………任務中なので」

 

 なんか…純愛っていいよね。人の恋愛って見ててキュンキュンするし。

 けどフキはどちらかと言うと負けヒロイン側だからな。もう少しで豊橋送りの運命なんだ。

 

 「律!どうだ、どいつだ!」

 「そんなに興奮しないで下さ……その画面、巻き戻せるか?」

 「ん?ああ」

 

 俺の発言に促され、フキはパソコンの防犯映像を一個前の物へと移す。

 そこには、銃を持った大柄な男を率いて何処かに向かう真島の姿があった。

 おそろしく速い移動…オレでなきゃ見逃しちゃうね。

 

 「コイツこいつ!ねえ、たきな!」

 「ですね」

 「これが…」

 

 フキの反応を見るに、今回リコリコまで来たのは襲撃犯が真島一味の物なのか確認する為だったようだ。

 実際、フキは確認が終わったと同時に撤退の準備を始めている。

 そして、千束とたきなが話あっている隙にサクラを引っ張って退店していった。

 

 

 「ねえ、これ私の絵の通りでしょ!」

 「色だけじゃないですか!」

 「いや、形とか顔とかそんな感じじゃん!」

 

 良いのか君達。どんぐりの背比べpart2をやってる間に友人が帰ってったけど。

 全く、ここは皆の律お兄さんが平和的に解決を……

 

 「「描いていない人は黙ってて(下さい)!!!!」

 「ボォッ!!」

 

 仲介に入ろうとしたら逆に攻撃を受けるなんて…とんでもねぇ何だこの子達!!

 しれっとたきなにまで言われたし……もう嫌だ、お家帰る!!

 ショックのあまりカウンターで寝込んでいると、傍にあったタブレットにクルミが手を伸ばす。

 

 「ったく……ん?」

 

 一人で映像を見てクルミが固まる。

 隣にいた俺はその画面を覗き込み、絶句する事になる。

 

 『勝負だ、リコリス!!』

 

 血文字で書かれた大胆な宣戦布告が、破壊された警察署長の部屋の壁にあった。

 

 

 

◯●◯●

 

 

 「ハラ減ッター」

 「おうどんでも湯がきます?」

 「いいね」「食べまーす!!」

 

 うーん、なんて迫真の演技なんだ。こんなの楠木さんなら一発でバレるだろうな。

 リコリスは絵以外にも演技も必修にすべきだと思う今日この頃だ。

 そんな事考えている間に、先生の方は準備が整ったようだ。さて、そろそろネタバラシの時間だ。

 

 「ああー悪いが、私と律は用事で外出する」

 「あら、そう―――えっ?」

 「「「はっ?」」」

 

 立ち上がって扉へと向かっていた俺に、四人からの視線が一気に集まる。

 いいねイイネその表情!鳩が豆鉄砲喰らった顔ってこの事を言うんだろうな!!

 あ〜コイツは傑作だ、最高だぜ!!

 

 「……先生ェ〜、ちょっと律を借りてもいい?」

 「何言ってるんだ千束、用事があるから無理に決まって――」

 「…分かった、車を出してる間に終わらしなさい」

 「ファッ!?」

 

 いやちょっと待ってくれ先生、それは流石にナシだろ!?

 見ろ、千束とたきなとミズキが凄い形相でこっち見てきてるんだよ?これで見捨てるとかアンタは鬼か!?

 唯一の希望であるクルミへと視線を向けるが、彼女は数秒間目を合わせた後に視線を外した。

 オワタ\(^o^)/

 

 

 三十分後

 

 顔を腫らした状態の俺は、先生と共にForbiddenのカウンターに座っていた。

 バーに未成年が入るのは普通は違法だが、先生の顔が効くのもあってすんなりと入れた。

 さて、誰に会う為に連れて来られたのかが未だに分からないのだが、俺は何をしとけば良いんだろうか…。

 いつもの和服と違って白スーツでビシッとキメてる先生に話しかけるのもなぁ。

 目の前に置かれたカクテル風の洒落たオレンジジュースを、周りに居る人を真似て香りを楽しむ。

 

 さて、千束たちは……いた。

 赤いドレスに見を包む千束と、黒を基調としたスーツにポニーテールで髪を結んだたきなの姿を目撃する。

 さて、リコリコでボコボコにされた時に聞いた作戦はこうだ。

 クルミによる偽造IDで先に店内に侵入し、ハッキングした防犯カメラの映像と俺に取り付けた盗聴器で会話相手と内容を同時に流す、というものだ。

 

 にしてもドレスって凄いな、いつも子供にしか見えない千束がここまで大人びて見えるなんて。

 兄としては背中丸見えのドレスは目のやり場に困るから辞めて欲しいかな。見るに耐えない。

 

 千束の方から視線を外すと、俺の方を見つめているたきなと目が合う。

 …たきなのポニーテールって何気に初めて見たかも。

 

 「律、来たぞ」

 「!」

 

 普段とは違う雰囲気の彼女に見惚れていると先生に声をかけられる。

 さて、わざわざ俺達に会いに来てくれる誰かさんとご対面と行こうじゃないか!!

 俺好みの美女が来てくれないかな―――

 

 「やあ、ミカ。――そして、錦木律くん」

 

 そこには、俺好みの金髪ツインテール美女とはかけ離れた存在である店の常連こと、吉松シンジが居た。

 うん、取り敢えず一言。

 

 やっぱりな♂




こういうのは息抜きに丁度良い

では今回高評価を入れて下さった
 
 ☆9評価 零夜 十六夜さん
 
 本当にありがとうございます!!
 いつも高評価お気に入り登録ここすきマジ感謝!!
 
 次回は文字数的に早めに投稿出来るかも。出来なかったら連続投稿します。

今作のタイトルの略、何が良い?

  • 俺コイ
  • 俺あれ
  • コイアレ
  • その他(案があったら感想欄に書いてね)
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