俺がコイツでこいつがあれで   作:熱々の冷やし中華

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リアルが忙C


男女が部屋で二人っきりはもうそういう事

 律が寝た、私の膝の上で。

 

 最初は抵抗していたけど、睡魔と強引な引きには勝てなかった様だ。

 眼前には、何処か気持ち良さそうな顔付きで寝ている彼の顔がある。

 何度か指で頬を突いてみるが、余程疲れていたのか起きる様子が微塵も感じられなかった。

 

 「………」

 

 寝顔なのもあるけれど、彼の顔は普段より少し幼く見える。

 それが何か新鮮なのもあってか、私は彼に少し魅入っていた。

 

 「…普段は頼もしいけど、寝顔は年相応に可愛いものですね」

 

 ……自分でもこんな事をした理由が未だに分かってはいない。

 彼が寝ようとしなかったのは布団を用意するのが面倒だったのであって、私が用意するだけで解決した話だ。

 

 けど、それだけで終わらすのは何か嫌だった。

 

 私はいつも彼に頼ってばかりだ。リコリコの経営だって彼のワンオペありきで成り立っているし、任務だって私のサポートを担ってくれている。

 

 けれど、私は律に返せる物が何もない。

 彼は優しいから、私が何か返そうとしても断るだろう。だから、これは多分せめてもの思いでの行為だ。

 

 

 

 『私もされてみたいな〜』

 

 以前、千束の家で映画を観た時に彼女が放った言葉。

 映画の途中で、ヒロインが主人公に膝枕をされるシーンでの事だった。

 

 『………ベットで寝た方が合理的では?』

 『分かってないなぁ〜』

 『何がです?』

 『眠気という生理現象を理由に、好きな人の至近距離に居れる………燃えるでしょ⁉︎』

 『燃えませんね』

 『えぇ……………』

 

 何が良いと言うのだろうか。

 私がそう疑問に思っていた時、彼女は自身の膝を軽く叩きながら私に目配せして言った。

 

 『ほら、ここに頭置いて』

 『…………………………………』

 『……な〜んちゃって!流石にたきなにこの冗談は―――』

 

 千束が言い終わる前に、私は彼女の膝へ頭を預けていた。

 別に本気にしたのではない。ただ、からかってくる彼女に一泡吹かそうと思っただけだ。

 

 ショートパンツによって大きく露呈している膝は、握った手のような温もりと安心感を感じた。時間が遅いのもあるが、あと少しこの状態でいたら睡魔に勝てなかった自信がある。

 これで千束も懲りただろう、と考え彼女の顔を見ると、普段の余裕のある表情と違って呆然としており、白い肌は赤みを増していた。

 

 『……これが()()()という事ですか?』

 『……知るか!』

 『説明になって無いです。少しは感想を―――』

 

 

 

 あの時、口には出さなかったけど私は何か幸福感を得られたのは確かだ。

 だからこうしたんだ、決して他意があった訳では――――――

 

 「…………………………………」

 

 

 私には経験がないから、恋心というものは分からない。

 

 「……律、」

 

 けれど、彼に向ける感情へと名前を付けるなら、ただの友人以上のものなのは確かだ。

 

 「時間です」

 

 

 

 ────

 

 

 夢だ。

 

 意識がハッキリとした瞬間に分かった。

 これは夢、いつも見る夢だ。

 いつも見て、忘れる事の出来ない夢。

 

 無機質な部屋だ。年配の、傷だらけの男が目の前で佇んでいる。

 

 「肉食動物はな、獲物が背を向けると本能で襲いかかる

 …だから何だよ

 「敵に背中を見せるのは、負けを認めたって事と同義だ

 ……うるさい

 「お前は熊だ。殺す判断を本能レベルで頭に刷り込め

 ………それ以上口を開くな

 「躊躇は毒だ。背中を確認したら思考を切り離せ

 …………煩い

 「考えるより先に手を動かせ

 ……………黙れ

 「誰が相手でも、躊躇うな

 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙────────

 

 

 ふと周りを見渡すと、風景がいつの間にか変わっていた。

 

 病院の廊下だ、何の変哲も無い。

 動こうとすると、何か重たい物が足に引っ掛かる。

 何があるのか、見なくても分かる。この夢はもう何回も見た。

 死体だ、大量のリリベルの。

 

 「全部キミがやったんだよ

 

 後ろから声をかけられる。

 振り返るとそこには、何処か見覚えのある七歳くらいの男の子が立っていた。

 普通の男の子だ、()()()()()()()()() ()こと以外は。

 

 「ここまでの事をして幸せになれると思ってる?

 

 そんな事、百も承知だ。

 

 「何言ってるんだよ

 

 そうだ、思い出した。この子は―――

 

「ボクを殺したのは、キミじゃないか」

 

 

 

 ────

 

 

 「……んっ、んぁ……?」

 「…おはようございます」

 「え、あ?」

 

 目が覚めたら目の前にたきなが居た。

 …うん、どういう事?

 寝起きでボーっとしている頭を無理やり働かせてみよう。

 確か、たきなに膝の上で寝るよう直々に命令されて……あれ、膝枕された状態って事か?

 

 「この状態で何分眠ってたんだ…?

 「よく眠れたように見えましたけど、どうでした?」

 「え、あっ、うん。トテモ快眠デシタ」

 

 そう言いながら俺はさっさと頭をどけて座り直す。

 JKの膝で爆睡する男とか字面も絵面もヤバいからね。何か色んな意味で目も覚めたわ。

 

 「えーっと……俺って何分くらい寝てた?」

 「十四分ですね」

 「……ミズキ大丈夫かな」

 

 あの激務をワンオペって、考えただけでも吐きそう。

 冷静さを取り戻すと同時に、忘れていた膝枕の感触が脳裏に鮮明と浮かび上がってくる。

 何と言うか、非常に心臓のよろしく無い経験をしたと言いますか…。

 

 この調子だったら、何か言ったら駄目な事言っちゃいそうだな。

 一旦この事は忘れて仕事に戻ろ────────

 

 「その……どうでした?」

 「何が?」

 「その………膝枕の感想は……?」

 「………………ふぇっ!?」

 

 急に何を言い出すんだこの娘は!!!!

 百歩譲って感想を聞くのは良い……だけど今このタイミングは駄目だよ!!下手したらセクハラ発言しちゃうよ!!

 

 「……早く教えて下さい」

 「急かすな、無茶苦茶慎重に言葉を選んでいるから」

 「そう言って千束は逃げました。だから早く言って下さい」

 「千束にもこれ(膝枕)したの!?」

 

 ヤバい、感想って何を言えば良いんだ?

 落ち着いて考えろ錦木律、余計な事を言わない様に考えるんだ。

 長文で感想を述べるのは……ナシだな、うん。想像しただけでキモい。

 

 よし、一言にしよう。

 変な事は一切言わずに、簡潔に、ありのままに思った事を言うんだ。

 

 「………あ」

 「あ…?」

 

 落ち着いて、変な事は口走らず…

 

 「温かっ…た…」

 「………………………」

 

 あっ、死のう。

 これは完全に引かれた。俺はもう生きていけない。

 たきなが顔を伏せて黙り込んでいるのを見てそう決意していると、休憩室の扉が開かれる。

 見るとそこには何処か困った様な顔をした千束の姿があった。

 

 「律〜、山岸先生が定期検診に来いって電話が……どうしたこの空気」

 「千束」

 「ん?」

 「お前を殺して、俺も死ぬ」

 「待って、早まらないで」

 

 ゆっくりと首へと伸ばした手を、無慈悲にも千束は払いのける。

 『くっ、殺せ!』というセリフをここまで言いたくなったのは初めてだよ。

 

 「今から日本語教室と幼稚園の手伝いに行くけど、律も来ない?」

 「俺が行ったらミズキが過労死するから辞めとく」

 「あっ、『これ以上は任務にも影響が出るから帰りなさい』って先生が言ってたけど」

 

 R.I.Pミズキ、いい奴だったよ。

 あんまり疲れてる訳じゃないけど、ここはお言葉に甘えて帰らせて貰いますか。

 

 「じゃあ、二人ともまた明日」

 

 

 ──────────

 

 

 

 「よお、アランのリリベル」

 

 銃口を此方に向けた状態の男が玄関に居た。

 緑髪のパーマにアロハ服、その上に羽織った黒のコート………

 彼が何者なのかを悟ると同時に、マンションには似合わない大きな発砲音が部屋中に響いた。

 

 バン!

 

 銃弾が横顔を掠るのと同時に、律は体制を大きく崩しながらも脚を大きく真島へと振りかざす。

 真島の身体から鈍い音が出た次の瞬間、彼は廊下を飛び越しリビングの方へと吹き飛ばされた。

 

 (何でセーフティーハウスがバレてんだよ!?)

 

 若干ながら動揺しつつも、律は冷静にリビングへと続く廊下を走り抜ける。

 急いで辺りを見渡すが、衝撃を受けて半壊した家具と破片が散乱しているだけで真島の姿が見当たらない。

 見落とした所が無いかと律が振り返った次の瞬間、彼の視界は此方へと向かってくる握り拳に視線が奪われていた。

 

 ドゴッ!!

 

 真島の殴打によって律の身体は後ろの方へと蹌踉めく。その隙を逃がすまいと、真島の強力な蹴撃が律の身体を襲った。

 大きく後ろへと飛ばされた律は、キッチンの最奥の壁に叩きつけられる。

 だが、身体の感覚が殆ど無い律は、身体へのダメージを気にせずに冷静に状況を判断していた。

 

 (撃つ瞬間は何回もあったのに銃を使ってこない……さっき落としたな)

 

 考えている間もお構いなしに、真島は拳を握り締めて律へと向かう。

 真島の腕が振り切られる刹那、律は冷静に隣にあった冷蔵庫の戸を開いて打撃をガードした。

 

 バキィン!

 

 「痛ってェ!!」

 

 真島が反射的にそう叫ぶと同時に、律は彼の腹部に向かって強烈な蹴りを入れる。

 勢いよく真島が後方へと飛ぶと同時に、律は彼の方へと走りながら、扉の裏に隠れていたリボルバーを拾い上げる。

 床へと強く打ち付けられ仰向けとなっている真島に対し、律は馬乗りになった状態で片手で彼の両腕を抑えながら、真島の口にリボルバーの銃口を突っ込んで言った。

 

 「色々と聞きたい事はあるけど、一つだけ言わせてもらうよ」

 「………………」

 「ここ、賃貸なんだけど?」

 「………………………………」

 

 壊したのは殆どお前だろ、と真島は心の中で静かに突っ込んだ。

 

 

 ─────

 

 

 「ブ◯ワイにモ◯ハン、◯ルソナにダンガ◯ロンパにH◯LO……お前って何個CS機持ってんの?」

 「PCゲーは数が多過ぎるから今はCSゲーだけプレイする様にしてるんだよ」

 「おっ、バ◯オあんじゃん」

 「やった事あんの?」

 「いや、映画しか知らねえ」

 

 話が合うかもって期待して損した。

 さて、漢の殴り合いを先程までしていた俺達だが、今は休戦協定を結んで優雅にティータイムだ。

 本人曰く、何か話したい事があるとの事だが………

 

 「何でゲームソフト吟味してんだよ」

 「見たことあるゲームが全てあるんだぞ?興奮はするだろ」

 「んじゃ、部屋の修理代についてだけど」

 「お、マ◯カワールドあんじゃん。S◯itch2も持ってんのかよ?」

 「話聞けよ」

 

 コイツDAに追われている身だよね?呑気にDA関係者の家でSwi◯ch2セッティングしてるけど?

 真島の破天荒っぷりに頭を抱えていると、彼が俺の分のコントローラーを黙って差し出す。

 渋々受け取ると、キャラ選択画面を開きながら彼は俺に向かって言った。

 

 「ゆっくり話そうぜ、()()()返しに来たついでに」

 

 真島の手には、律があの時彼に奪われた梟のネックレスが輝きを放っていた。 




異性の友人との膝枕なんか気不味くならない訳がないだろ、いい加減にしろ!!

今作のタイトルの略、何が良い?

  • 俺コイ
  • 俺あれ
  • コイアレ
  • その他(案があったら感想欄に書いてね)
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