「なあフキ、親しい間柄でもドッキリって建前で人の服駄目にする奴って頭おかしいよな」
「当たり前だろ」
「だよな。つまり楠木は頭おかしいって事だよな?」
「何故そうなるんよ。ってかお前その服どうした?錦糸の方ではそれが流行ってんのか?」
「今さっき撃たれた」
「「いやなんでだよ‼︎」」
本当は仲良いだろお前ら。
今、俺と千束とフキの3人は訓練室へと向かっている。たきなのフォローに回る為だが、フキの方は諦めを付けさせる為に動いている所があると思う。廊下を進んだ先に見える訓練室の前に見覚えのある2つの影が3人の瞳に映る。
その後ろ姿の一つに俺は声を掛けた。
「楠木さん、着替え下さい」
「避けきれなかったお前の責任だ。お前の失態をカバーする程私は寛容じゃない」
「換えの一着も用意出来ないレベルで貧乏な訳ないでしょJK」
『アハハハッ、まぁ安心して下さいよ。先輩が抜けた穴は後任の私がしっかり埋めますから』
入り口前で楠木と言い争っていると訓練室から乾いた笑い声が聞こえる。室内へと目を向けるとたきなともう1人のセカンドが言い争っている様子が伺えた。
同じく会話を聞いていた千束が躊躇せず室内に入って行く。双子ながら考えてる事は同じだなと心の中で呟きながら俺も足を踏み入れた。
「あんたの席はもうないっすよ」
「ちょっと」「うわっ」
セカンドの煽りに堪忍袋の緒が切れた千束がセカンドを止めに入る。
「黙れ小僧」
「お前にサンが救えるのか‼︎」
「・・・あんたら誰っすか」
モロ以外何があるんだよ言わせんな。
心の中で声を上げていると一足後に入ってきたフキが口を開いた。
「そいつらが千束と律だ」
「フキ先輩!あっ司令まで!
・・・これが電波塔の」
「これって言うな‼︎」
「「いや只のアホだ」」
「おいっ」
千束が成績表に目を通した親の様な顔でこちらを見てくる。そんな会話をしている俺らを無視し、たきなは楠木へと足早に向かった。
「司令、私は銃取引の新情報となる写真を入手しました!この成果では、まだDAには復帰できませんか!」
たきなの明瞭で力強い声が室内に響き渡る。
俺と千束が固唾を飲んで見守る中、無情にも否定の意を含んだ声色が楠木の口から発せられた。
「ーー復帰?」
「せ、成果を挙げれば私もDAに」
「そんな事を言った覚えはない」
冷たい声に動揺しつつも力強く答えた言葉を、楠木は極めて冷静に否定した。
流石のたきなも言葉に詰まり始める。
膠着状態の中で、空気を読まないセカンドが再び挑発を始めた。
「諦めろって言われてんのがまだわかんないっスか?」
「フキ、あの生意気なのは?」
「乙女サクラ。生意気な奴だが、実力は確かだ。今の私のパートナーだよ」
彼女がたきなの後任ってことか。
千束が喰いつくが煽り返してるのを見るに頭が切れる方なんだろう。無駄に口論をしてるのは精神年齢が幼い証拠でもあるけど。
「サクラ訓練の時間だ。ーー行くぞ」
フキがサクラを連れて射撃場を後にしようとしたその時、たきなが不意にフキの腕を掴んだ。
フキはそれを力強く振り払う。
「ぶん殴られたのでまだ理解していなかったのか?だったら言葉にしてやる」
「っ」
「お前はもうDAに必要ないんだよ」
「やめろ、フキ!!」
たきなへの罵倒に痺れを切らした千束がフキの胸ぐらを掴む。乱心している様子を見て不敵に笑いながらフキは口を開いた。
「ハッ、まだ理解出来ないか?だったら今から模擬戦でブチのめしてわからせてやんよ」
「おーおーおー、良いじゃん!たきな、やろう!」
「・・・俺と千束より弱いフキがそれ言うか?」
「何バカな事言ってるんスかあんた。フキ先輩がお前みたいなヒョロガリに負ける訳n」
「黙れサクラ。ソイツの言ってる事は間違ってない」
「何弱気になってるんスカ。この程度の奴なんて私1人でも一瞬で倒せますよ?」
「誰がこの程度だずんぐりむっくり」
「おぉー怖いっすね、女に強い言葉使える俺カッケーみたいな!?」
「ファーストに向かって大層な口叩く様な奴に言葉遣いをどうこう言われる義理は無いね」
「負け犬ほどよく吠えるとはこの事ッスね」
「サクラ!!!」
売り言葉に書い言葉で始まった口論がフキの一声で一旦止む。大人気なく口喧嘩してしまった。
年齢的には子供だけども。
俺たちが歪みあっている最中、たきなは顔を伏せながら射撃場を抜け出した。
走り出すたきなを止めようと千束が声を掛けるがたきなには届かない。千束は楠木へと一瞬目を向け、すぐ彼女を追って走り出した。
「お前も逃げんのか〜?」
「模擬戦は俺は参加しないって事でいい?」
「人数的にそうだな。てかお前は銃撃てないから勝負にならない」
「えっ、こいつ銃使えないんスか⁉︎」
「銃使っても俺に階級で負けてる癖に何だよ」
別に扱う事が出来ない訳ではないしな。銃を人に向けると口から胃の中のありとあらゆる物が出てくるだけで全然問題はないし(早口)。
「あの調子だったら2対1でアタシ達の勝ちっすね」
「そうだな。逃げ出す様な奴が勝てる訳がない。お前は突っ立って見てるだけだしな」
「・・・フキ、模擬戦が無理なら賭けで勝負しよう」
俺の提案にフキとサクラが目を見開く。
賭け事をするキャラじゃない自覚はあるが、こちとらソシャゲプレイヤーじゃ。賭け事は得意よ。
「たきなが参加してフキ達が勝ったら俺の勝ち。たきなが最後まで参加しなかったら俺の負けで。俺が勝ったら2人ともたきなに頭下げてね」
「・・・私が勝ったら先生を本部に返せ」
「オッケー成立ね。んじゃまた試合後に。あとそこの茶髪は後で覚えとけよ!」
「逃げてる奴が偉そうにすんじゃねーよ‼︎」
俺はフキとサクラにそう言い残して足早に射撃場を出る。途中、楠木からとんでもなく熱い視線を向けられていた気がするがそれを無視して俺は千束達の方へと急いだ。
※
『1400より状況演習を開始。リコリス各員は当該時間までにキルハウスブースに集合して下さい繰り返す、1400よりー』
模擬試験の開始を伝えるアナウンスが館内に響き渡る。リコリス達が会場へ向かうのを横目に、俺は噴水へと歩き進めていた。噴水の前に紺色の制服を身に付けている彼女が視界に入った。
「・・・行かないの?」
「・・・まだ迷ってます。私はーー」
「ーー俺さ、たきなの事を初めて会った時から尊敬してるんだよ」
「何故ですか。私があの時あんな行動をしていなければこんな事には…」
「君はあの時、仲間を救う為に躊躇いを持たなかった。他人の為に考える前に動けるのって俺は才能だと思ってる。少なくとも、俺にはそんな勇気はない」
「……律さんに限ってそんな事はーー」
「だからこそ、他の奴に君の進む道の文句なんて言わせない。君がどんな道を進もうとも俺は手伝うよ」
「…私が司令の座に着く道を選んでも?」
「志しが高いのはいい事だと思います(白目)」
「冗談です。頼りにしてますよ、
激励を含んだ会話を終えた彼女がベンチから立ち上がる。
顔を上げた彼女の瞳にはもう迷いはなかった。
※
モニターには身を隠しているフキとサクラの様子が写されている。
試合は千束が牽制している状態だ。フキとサクラに撃ち込まないのを見るに時間ギリギリまでたきなを待つつもりらしい。まるで将棋だな(適当)
授業内容を右から左に流している学生のように、頬杖を突きながら試合を観戦していると、1人の少女が目の前に姿を現した。
「あ、あの…」
ブラウンの髪色を持つショートボブのどこか見覚えのある彼女は、体を震わしながら俺に喋り始めた。
「私っ、前にお会いした蛇っ」
「ちょっとSTOP。前に一回会ったなら俺だって名前くらい覚えてるよ。えーと……首ノ根トミカさんだっけ?」
「…蛇ノ目エリカです」
「6文字間違いってギリセーフかな?」
「それって全部間違えたって言うんじゃ…」
返答が思ってたより真面目だった。普通こういうものだけども。
困惑した様子で答えてくれた蛇ノ目さんへの既視感の正体はすぐに判明する。
「私、銃取引の時に」
「人質だったリコリス?」
俺からの問いに彼女は黙って顎を引いた。
「でも俺は君には何もしてないけど?お礼を言うならたきなに…」
「そのっ、たきなの事で聞きたい事があるんです!」
ちょっとだけ告白を期待した僕が馬鹿でした。
冗談はさておき、セカンドの彼女は目を伏せながら話始めた。
「あの日の事がきっかけでたきなは異動になりました。私が全部悪いんです、私がヘマしなければたきなはッ」
「落ち着いて、そんなに慌てなくても時間はあるから」
「その、自己満足なのは分かってるんですが、たきなの事か心配なんです。この事で落ち込んでないか同じ部署の貴方に聞きたくて」
「…DA関係の話だと良い顔してなかったのは事実だね。俺が彼女の立場ならもっと引きずるだろうし」
「ッ、」
「けど、たきなは強い。少なくとも今の彼女はもうそんな事気にしていないと思うよ」
「…本当ですか?」
「少なくとも、未だに引きずってる様な人はあんな事出来ないと思うけど」
そう言いながら俺はある方向へと指を指す。
つられた彼女の視線の先にはフキへと1発お見舞いした、どこかスッキリとした顔をしたたきなの姿が写った。
たきなが手に取った銃は千束へと向けられる。しかし、彼女が狙っているのは千束が避けた先にある動きの取れていないフキであった。
バンバンバン!
相棒への信頼から成る発泡は見事に狙いへと命中する。
大勢のリコリスが見守る中、試合終了を告げるブザーが施設中に鳴り響いた。
所々から斜陽が差し込む日暮れ時、俺達の帰りの車が迎えに来た。あの後、エリカさんとの軽い会話を済ませ、2人と合流する為に向かっていると見覚えのある2人組に遭遇した。
「げっ!」
「人の顔を見るなり失礼だなお前」
「…アタシ達の負けだ、さっさと用件を言え」
一矢報いられたフキが歯痒そうに俺に言った。正直負けるつもりで勝負に挑んだ訳ではないが、いざ勝ってみると何をして欲しいとか特に思い浮かばないもんだな。
「その件だけどさ、あの後たきなと話たら俺の発言でそっちに行ったから賭け事として成立してないんだよね。だから引き分けにしない?」
「アタシも半分本気にしてた訳ではないし別にいい」
「あっ、半分は先生が帰ってくるの期待してたんd「黙れ」
「そろそろ帰る時間ですよ、律」
フキとの会話が終わるのと同時に帰宅の準備を終わらせたたきながやって来た。呼び捨てになった事に口角が上がりそうになるのを抑えているとフキはたきなに向かって喋り始めた。
「お前、模擬戦なんだぞ。後ろから撃てば良かったんだ。 それを後ろから突っ込んで来て殴るなんて馬鹿げてる」
「これでおあいこですね」
フキに対してたきなは穏やかな笑みを浮かべて答える。彼女の回答に軽くイラついたフキが人差し指を指しながら言った
「やっぱりお前使い物にならないリコリスだよ。命令違反に独断行動、二度と戻ってくるんじゃねぇ!」
捨て台詞を吐きフキとサクラが場を後にする。2人になった後顔を見合わせた俺達は2人で静かに微笑んだ。
千束と合流し黒塗りの車に揺られて駅へと到着した後、俺達は帰りの電車へと乗り夕日が沈み明るさを徐々に失っていく風景を横にして座っていた。
「おっ、おお〜見てみ」
千束の手にはボドゲ大会の参加についてのメッセージが表示されたスマホがあった。横から覗き込んでいたたきなと俺に向かって千束が尋ねる。
「どうする〜?」
「千束が行くなら。律はどうします?」
「今はアナログゲーの気分だから俺も参加で」
「ちょちょちょっと待って、いつの間に呼び捨てになったの!?」
「何か悪い?」
「いや、嬉しい事だけど何で私に言わなかったの〜?ねぇたきな、何で急に呼び捨てに?」
「それはーーーやっぱり秘密です」
「何でちょっと含み持たせたんだよ」
「律!たきなと何があったの⁉︎」
俺が千束に質問責めにあっている目の前でたきなは楽しそうに笑っていた。俺たちを乗せた電車はそんな事をお構いなしに次の駅へと進み出した。
次は5月までに投稿します。
今更ですが
Raven1210さん、
樽々宗須さん、Zoe_Boonさん
kimu kimuさん、ボルンガさん
高評価ありがとうございます!本当に感無量です。
感想も色々書いて貰えて嬉しいです。ログインしてなくても感想は書けるようになってるので気になったら是非。
展開は原作準拠のまま、敵キャラとしてオリキャラを出すのは賛成?(オリ敵は一人で、オリ主の過去に滅茶苦茶関わっているものとする)
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賛成
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反対
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