俺がコイツでこいつがあれで   作:熱々の冷やし中華

9 / 23
4月中に1話書けるかもって思って頑張ったが普通に5月に入ってしまったのはここだけの秘密。


第4話 Nothing seek, nothing find
学校の友人の私服姿の違和感は異常


 喫茶リコリコ。

 表向きには和風喫茶だが、店の地下にはある秘密がある。

 地下と聞くと徳川埋蔵金的な物を想像するだろうが現実にあるのは金銀財宝とは似ても似つかない物だ。

  射撃場である。

 我らが店長ことミカさんの「良い仕事には日頃の研鑽が必要」という考えの元、多額の防音費によって作られた代物だ。そしてここは二つのエリアに分かれている。

 一つは射撃場だ。千束が使用しているゴム弾はお世辞にも命中率が高いとは言えない。その為、遠距離でのゴム弾の命中率を上げる為にも必要だ。

 もう一つはトレーニングルームだ。衝撃吸収性が高い特殊マットが全体に敷かれており、サンドバッグなどの打撃練習器具が設置された広々としたスペースだ。

 そんなトレーニングルームはどのように使われているのかというと…

 

 「はっ‼︎」

 「スピードが足りてない、もっと正確に!」

 

 頭に向かって振り上げられた脚は片腕であっさりとガードされる。たきなは咄嗟に距離を取り体制を整えた。

 そう、模擬戦である。

 男女密室で2人きりなのにロマンチックも糞もない光景だが、これには理由がある。半月前にたきなからリクエストがあったのだ。

 

 『律、訓練を手伝って欲しいんですが…』

 

 そう切り出されて話を聞くと射撃以外の部分を伸ばしたいとの事だった。断る理由もなかったので二つ返事でOKを出した。

 訓練内容は

・基本俺は手を出さないが、ガードはOK

・制限時間内に俺の頭に攻撃を加える事

・制限時間は30分

である。この内容で仕事終わりに今の所毎日続けているのだ。今の所は無敗である。

 さて、話を現在に戻そう。

 開始から28分が経過し、たきなの動きも多少荒くなってきた。初日に比べたらかなり動き自体は洗練されているがこの状態で一本取られる事はないだろう。

 勝ったな、風呂入ってくる(フラグ)

 

 「っ、確認ですが、私は基本どう動いても良いんですよね?」

 「うん、銃使わなかったら何でもいいよ」

 「わかりました」

 

 そういうとたきなは俺に向かって何かを投げた。咄嗟に自分の目を腕で覆うが何も起こらない。

 急いで顔を上げるとたきなは視界に写っていなかった。綺麗にフェイントに引っ掛かった。

 そんな事をしていると上からの何かの気配に気づく。

多分たきなは勢いで壁をキックし、上からの奇襲を仕掛けるつもりだ。

それに気付き急いで上を見上げると予想通り人影があった。

よっし、今すぐ頭にガードを固めて…

 

 「はっ?」

 

 …ここで皆さんに考えて欲しい。基本空中にいる状態から攻撃を加える時、かかと落としは加速度が増すためかなり有利な技だ。

その為、たきなもかかと落としの状態でいる。

 ここからが大切なのだが、かかと落としとは片方の脚を振り上げてから行う物だ。そして彼女は今制服、つまり女性のデリケートゾーンが見えてしまうのである。つまりパンツが見えるという事だ。

 紳士諸君なら喜ぶ状態だろうが、職場仲間の物を見るなんて翌日からの関係性の悪化に繋がりかねない。だからこそ最適解は見えなかった風を装って直ぐに目を逸らす事だ。

 だが俺にはそれが出来ない程の衝撃が身体を走った。脳が止まるとはこの事を言うのだろう。

 

 彼女はトランクスを穿いていたのである。

 

 リコリスは基本女子だ。だからこそ女性+男物代表のトランクスによって俺の頭は情報過多になっている。女子高校生の間でトランクスが流行ってるなんて聞いた事は一度もない。だからといってたきなが男の娘の可能性は0%だ、多分。

 この多様性の時代、女性がトランクスを穿いている事は何ら可笑しな事ではない。だが、実際目にしてみると衝撃は大きな物である。脳が理解しても身体が理解しないとはこの事だろう。

 衝撃のあまり俺の身体は一瞬だが動かなくなっていた。そして俺の意識は大きな一撃で戻される事になる。

 

    バコン‼︎

 

 「っ、やった‼︎」

 

 たきなの踵落としは見事に俺の脳天にクリーンヒット。半月に渡る俺の無敗伝説はここで幕を閉じるのだった。

 

 「たきなさんや、少し威力が強すぎやしませんかね?」

 「すみません、嬉しくてつい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トランクス目撃事件から二日経ったある日。

 店の営業も終わりホールの清掃に入っている時に事件は起こった。神妙な面持ちで座っていた千束の一言だった。

 

 「クルミ、たきなのパンツって見た事ある?」

 

 普段だったら『何言ってるんだ』の一言で済まされる発言だが今に限っては話が違う。この会話に乗ればトランクスの謎が解明されるかもしれない。だが、兄妹とは言え異性に堂々とパンツについて語る方が問題だ。二人っきりならまだしも今はクルミも居る。ここは聞き耳を立てるだけに徹するのが得策だ。

 

 「ある訳ないだろ。ボクより律の方が何か知ってるんじゃないか?」

 

 何でこいつ話振ってくるんだよマジで‼︎

 

 「律が見た時は何穿いてた?」

 「なんで俺が見た前提で話してるんだよ」

 

 確かに見たけども。不毛な会話を続けていると押入れの片付けが終わったクルミが立ち上がって言った。

 

 「ノーパンでもない限り何穿いてようとたきなの自由だろ」

 「というかパンツの話しする暇があるなら掃除少しは手伝ってくれ。」

 

 雰囲気的にパンツの話題が終わりそうなので俺は適当な事を言って畳み掛ける。通常ならココで話は複雑化せずに終わる筈だった。

 思い耽るように座っていた千束が急に立ち上がり俺の横を通り過ぎる。肩で息を切らしながら千束はたきなのいる更衣室へと手を掛けた。

 

 「・・・これって後々巻き込まれたりしないかな?」

 「少なくとも面倒くさくなるのは確かじゃないか?」

 

 クルミからの返答と同時に千束から男性陣への招集がかけられた。下手な事でボロを出さない様に気を引き締めたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 「聞かせて貰いましょうか」

 

 千束がカウンターに勢いよく手を打ちつける。その目の前にはたきなにトランクスを薦めた張本人である店長とこミカさんがいた。

まさかこの人が原因だと思っていなかったよ。事実は小説よりも奇なりとはこの事だ。

 

 「"店の服は支給するから下着だけ持参してくれ"と」

 「どんな下着がいいか分からなかったので…」

 「だからって何故わざわざトランクスにしたんだよ?」

 「いや、店長が…」

 「好みを聞かれたからな」

 「「アホか‼︎」」

 

 何でこの人ドヤ顔で答えてるんだよ。

っていうか上司の下着の好みなんて聞きたくなかった。あと、少しは華の女子高生にトランクスを穿かせた事を反省して下さい。

 

 「これ穿いてみると結構開放的で」

 「たきな、ストップ。これ以上その話を聞くと色々良くない」

 「何故です?」

 「もう少し君は顔面偏差値が高い事に自覚を持ちなさい」

 

 女子高生から穿いているパンツの感想を聞くなんて字面だけ見たら駄目な感じしかしない。先生くらい歳が離れてるならまだしも、年頃の男子が聞くなんて事はもっと駄目だ。

 

 「律の言う通りだよ。もう〜たきな、明日12時駅に集合ね」

 「仕事です?」

 「ちゃうわ!、パ〜ン〜ツ買いに行くの!・・・あ、制服着てくんなよぉ?私服ね私服ー♪」

 

 それだけ言い残して、千束は店を出て行っーーー

 

 「あ、律は荷物持ちね。んじゃヨロシク〜♪」

 「ちょっと待って、俺は明日新作のゲームをやる予定が」

 

 俺が言い終わる前にドアは無慈悲にもバタン!という音を立てて千束への発言を遮った。

まぁ正直風邪引いたとか嘘つけばサボれるし、女子の下着選びに着いていくなんて常識的に無理に決まってーー

 

 「律、私からもお願いです。着いてきて下さい」

 

 駄目だこっちは断りにくい。てか何で選ぶ本人が乗り気なんだよ。

 

 「…因みに理由を聞いても?」

 「その、千束の意見だけじゃ何を買うべきか判断に迷うと思うので」

 「だからって女性の店に俺が着いていくのもおかしいだろ」

 「?律さんは意見を出すだけなので問題ないのでは?」

 

 何この娘コワイ。真顔でこんな事言ってくるとか狂ってる。

やっぱりリコリスって多少イカれてる奴しか居ないんじゃないか?

 

 「まぁ…明日はどうせ暇だしいいよ」

 「ありがとうございます。あとすみません店長、指定の私服はありますか?」

 

 真剣な眼差しでのこの問いに店長は眉間にシワを寄せた。これ以上たきなの頓珍漢な質問に付き合わない為に俺は静かに店を後にした。

 

 

 

 

 翌日。

 白く照り返すアスファルトの上を、ひっきりなしに人が行き交う。

 真昼の喧騒の中、俺は集合場所へと向かっていた。あの後、メールの方で私服で来るようにと口を酸っぱくして言われた為、一年前に千束に無理矢理買わされたコーデを装っている。

 服について詳しい訳ではないが、俺の妹は服のセンスに関しては光る所があるらしい。

 

 「おーい、律こっち!!」

 

 集合場所である駅が見えてきた所で千束が周りに響く声で俺を呼ぶ。腹から声が出るのはいい事だがTPOを弁えて欲しい。

 

 「昨日考えてたんだけどさ、何故下着を買うだけで俺が荷物持ちをやらないといけないのか理由を聞いてもいい?」

 「そんなの後でショッピングに行くからに決まってるじゃん」

 「え?」

 「え?」

 

 駄目だ、まるで日本語が通じない。

予想はしていたが、コイツたきなを口実にショッピングしたいだけだな。

 タイミングを見計らって逃げ出してやろうかな

 

 「ごめんって。私が律の分もコーデ考えてあげるから許して♪」

 「昼飯奢ってくれたら考えてやるよ(了承したとは言ってない)」

 

 そういえばコーデって単語で思い出したが、たきなは何を着て来るのだろうか。昨日の様子では私服という私服を持ってなさそうだったけど。

 

 「千束、たきなの私服姿ってまともだと思うか?」

 「何か言ってるの、たきなは可愛いから何着ても似合うー」

 「トランクス穿いてる子が変なもの着ない確証が持てないんだよ」

 「……ハハッ」

 

 少し思い当たる節あるのかよお前も。つくづく、兄妹考える事は似るもんだなと思う今日この頃である。心の中でそんな事を言っていると一つの影がこちらに近づいて来た。

 

 「お待たせしました」

 「お、お〜う」

 「…新鮮だな」

 

 水色のTシャツに黒の長ズボンという組み合わせは自分達が想像していた服装よりもかなり一般的な物だった。

 正直、変な物を着てこなかったという安心感半分とどこまで奇抜な物が出て来るのか期待半分だったのはここだけの秘密だ。

 

 「問題ないですか?」

 「いや、服装の方は問題ナシなんだが・・・」

 「・・・銃持って来たな?貴様」 

 「駄目でしたか?」

 

 何やってんだお前ェっ‼︎と言いたい気持ちを我慢しつつ抜かない様に注意を促す。制服を着ていない状態でも抜かりなく銃を持って来る仕事第一な姿勢は評価すべき所なんだろうか?

 

 「千束と律のその衣装は自分で?」

 「いや、これは千束が用意した衣装」

 「衣装じゃねえ」

 

 駄目だ、千束が思ったより怖い笑顔でこっち見て来る。女の子コワイ。

 

 

現在俺たちは目的とはかけ離れた場所にいる。ショッピングモール内のアパレルショップだ。

元の予定では女子2人組だけでラグジュアリーショップに行き、荷物持ちの俺は連絡が来るまで自由という形だった。

 その為、本来なら俺は今頃家電量販店で新作ゲームを物色していた筈なのである。だが…

 

 「どっちがいいー?」

 「・・・律はどっちが似合うと思いますか」

 「何故それを俺に聞くんだ」

 

 駄目だ、スカートなんか穿いた事ないから分かる訳ないだろ‼︎俺は千束が手に持つ二つのスカートを交互に見比べながらそう思った。

 

 「…たきなは素材が良いしどっちでも似合うと思うけど」

 「…素材が良いってどういう意味です?」

 「可愛いとか美人って意味」

 

 実際この娘はかなり可愛い。顔が整っている千束や残念美人であるが一応顔は良いミズキに囲まれて暮らしてきたからこそ耐性があるが、正直他の環境で生まれ育った状態でこの娘に会ったら一目惚れしててもおかしくない自信はある。

まあ、たきな自身は自分の容姿に興味がない様子なのであまり関係ないーーー

 

 「・・・私って可愛いんですか?」

 「えっ?」

 

 余りの出来事に思考停止する。この娘そんな自分の事に興味ないんじゃなかったけ?けど無茶苦茶真剣な眼差しでこっちを見て来るし…

仕方ない、少し恥ずかしいがちゃんと答えるとしよう。

 

 「…うん、可愛いと思う」

 「……そうですか、どうも」

 

 おい、何で自分から聞いといて顔逸らすんだよ。たきなは一言発した後、急かすように千束の後を追った。彼女の耳が赤く染まっていた様に見えたが気のせいだろう。

 

 「律〜こっち来て!今からたきなの服評価してよ〜‼︎」

 「俺素人だからあんまわからんぞ」

 「いいよ〜反応してくれるだけでも嬉しいし」

 

 そんな会話をしていると試着室のカーテンが開かれる

 そこには千束のコーデによってオシャレな服装に身を包んだたきなの姿があった。

 

 「おー‼︎可愛い!」

 「…ありがとうございます」

 「律も何か一言言ってよ‼︎」

 「改めて見るとたきなって本当に美人だな」

 「服装について何か言ってよ〜」

 

 「…私、他のに着替えますね」

 

 顔を赤らめたたきなが急にカーテンを閉め出した。成程な、ここまで来たらいくら鈍感な俺でも流石に分かる。

 

  たきなは怒ってるらしい。

 そりゃそうだ、軽々しく女子に可愛いって言うなんて適当に返しているようにに受け取られて当然だ。

 店長、俺は今やっと女心を理解しましたよ。

 

 「てかさー、律とたきなって仲良いよね」

 「急にどうした」

 「だってさー、私が知らない間に呼び捨てで呼び合ってるじゃん‼︎」

 「まぁそれは成り行きで」

 「しかもさっきから服の意見も毎回律に個別で聞いてるし‼︎」

 「別に多数に意見を聞くのは変じゃないだろ」

 「…私の方がたきなと仲良いし」

 「何を張り合ってんだお前」

 

 「出来ました」

 

 千束の謎の張り合いに巻き込まれているとたきなの試着が完了した。たきなの声と同時に試着室を遮るカーテンが開かれた。

 

 「おぉー良いね‼︎めっちゃ可愛い!律はどう思う⁉︎」

 「・・・・凄い似合ってる」

 「本当ですか?」

 「うん、俺の好みもあるけどこの服は本当に似合ってる」

 

 思っていたよりドストライクだった。自分の好みの服装を美人が着るとここまで破壊力が高くなるとは予想外だった。心なしか心臓の鼓動が早くなっているように感じる。

 

 「…千束、私これにします」

 「おっいいね!じゃあ、たきなとの初めての買い物記念に千束さんが買ってあげよう‼︎」

 「チャンスだたきな、今のうちに気になる服全部買い物カゴに入れよう」

 「ちょいちょいちょい待てー‼︎」

 

 下らない冗談を言いながら千束がレジへと商品を持って進んで行く。

 数分後、レジを通し終わった千束が手に下げている商品をたきなに渡しながら戻って来た。

 

 「やっぱりたきなは素材が良いわ〜、次はこっちの店に行こう」

 「お前はたきなを着せ替え人形みたいにして遊ぶんじゃない」

 

 千束と今後の予定について言い合っていると端で見ていたたきなから一言

 

 「・・・・・・あの、そろそろ本来の目的を・・・・・・」

 「「・・・・・・」」

 

 そういえば元の予定は下着買いに行く予定だったな。という事は今から俺は別行動って事か。

 

 「たきな、荷物邪魔なら持っといてあげようか?」

 「いえ、律さんに負担を掛けるわけには」

 「気遣い有難いけど、俺は既に持たされてるから誤差なんだよね」

 「あっ、なるほど」

 

 納得した様子のたきなはそれでも申し訳なさそうに服の入った袋を俺に手渡しして来た。千束、お前もこの姿を見習え‼︎

 荷物を受け取った俺は千束とたきなに背を向けて家電量販店へと足を向けた。

 スピードワゴンはクールに去るぜ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 




今更ながらショートムービー最高でしたね
まだこの幸せな時間が3週間続くと考えるとやる気がムンムン湧いてきます。執筆速度が上がる訳ではないですが…

では今回高評価を入れて下さった
☆7 ゴレムさん

ありがとうございます。
本当にモチベに直結するので感想も是非‼︎

展開は原作準拠のまま、敵キャラとしてオリキャラを出すのは賛成?(オリ敵は一人で、オリ主の過去に滅茶苦茶関わっているものとする)

  • 賛成
  • 反対
  • 結果だけ見る
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。