生存者   作:ORC機関

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やっほー?元気にしてた?(気さくな挨拶)
研修の合間や休みの内にちまちまと書いてやっと完成しました。
とりあえず、私は生きています。


高度0m

私は雪道を走っている。

絶えず雪はゆっくりと空から舞い降りて、吐く息は白い。

彼の演習が終わりを迎えたと共に私は管制室を飛び出した。

頭部を吹き飛ばされた彼の元へ向かわなければならない。

誘爆しないだろうか、ケガはしていないだろうか。

頭を絶えず不安が埋め尽くしていた。

視線を上げれば演習用の市街地が向こうに見える。

そこまでの距離はないのにとても遠くに感じた。

「ヘルマちゃん!」

後ろから叫ぶような呼び声が聞こえた。

足を止めて振り返れば軍用の四駆自動車を運転するミリーの姿が見えた。

「乗って!」

私は彼女が乗っている車の速度に合わせ跳躍する。

助手席に着地しシートベルトを締めた。

「ミリー!飛ばして!早く!」

乗車のために速度を落としていた彼女をまくしたて加速させる。

彼は装甲の棺に囚われている、あの暗くて狭く怖い場所に。

加速した自動車は路地を抜け、曲がり角を横滑りしながら突破する。

中央広場の真ん中に彼の機体が倒れていた。

推進剤タンクの破損による漏洩は起きていない。

機体に炎は見えない、煙の無いため発火の危険はなし。

減速する自動車が止まるのを私は待てなかった。

シートベルトを外し飛び出した。

前転受け身で衝撃を殺し駆け出す。

「ヘルマちゃん!待ってよ!」

ミリーに構ってる暇はない。

機体は幸運にも仰向けに倒れていたが搭乗ハッチは着弾の衝撃で歪み、変形していた。

腕をよじ登り、機体胸部の小さな作業ハッチを開ける。

中には誤作動防止の透明な樹脂で蓋をされた緊急開放ボタンが中に収められていた。

私は迷いなく樹脂製の蓋を拳でたたき割る。

手に鋭い痛みが走り、生温い液体が手を伝っていくがそんなのはどうでもいい。

彼はあの場所で、私が味わったような地獄に身を置いているんだ。

一切の猶予はない、私は緊急開放ボタンを強く押し込んだ。

ハッチ周囲の小型爆薬が炸裂し固定具を破壊し扉を吹き飛ばす。

私は腕を辿り肩を足場に搭乗口へ飛び掛かる。

破損した頭部の接合部に足をかけハッチを覗き込む。

安らかに目を閉じた彼が操縦席に居た。

まるで棺桶の中に収まっている様な光景に不快感と恐怖心が湧く。

やっと追いついた背後のミリーはギョッとした様な表情を見せる。

「車を寄せるからすぐ医務室へ」

ミリーの言葉に返事を返すのも忘れて私は彼の肩を掴み揺すった。

「ねぇ!しっかりして!」

強めに揺さぶられた彼は目を開けると状況を理解したのか手で顔を覆って小さく呟いた。

「ごめん、ヘルマ」

「君の言う通り、ダメだったね」

シートベルトを外し操縦席から這い出た彼の背は小さく見えた。

操縦席から飛び降りると彼は地面に倒れ込む。

「大丈夫?」

ハッチから素早く飛び降り、体を確認する。

幸い怪我はないようだ。

「ここは寒いね」

彼はポツリと呟くとゆっくりと立ち上がった。

頭部の破損した機体が仰向けに横たわっている。

彼はヘッドセットを外して首紐を指にかけた。

しかし、するりと指抜け雪でくぐもった音を立てて地面に落下する。

彼は気にしてない様だ。

「ねぇ、他にも道はあると思うの」

そんな彼の背に私は言葉を投げかけた。

「軍用の免許が有れば民間でも働けるじゃない」

「別にこれだけが全てじゃないと思うの、知らないだけで道はあるはずよ」

ゆっくりと彼に近づく、その背中はあの日よりとても小さく見えた。

「ねぇ、少し時間をかけて他の可能性を考えてみてもいいんじゃない?」

優しく背中をさする、彼の肩には雪が積もり始めていた。

「…んな」

「え?」

「ふざけんな!!」

悲鳴とも怒りとも取れる様な声色で彼は叫び、振り返る。

目に涙が浮かんでいた。

「他の道、冗談じゃない!」

「私はまだ生きてる!まだ戦えるはずだ!」

彼の口から白い息が立ち上る。

私はただ、黙ることしかできなかった。

「これが私の人生の全てだったんだよ!だからそんな簡単に他の道とか言わないでくれよ!」

「無駄だったみたいにいわないでくれよ…」

彼は顔を手で覆うと膝から崩れ落ちた。

とても小さくなってしまった彼を私は抱きしめた。

そうだ、私はまだ何も失ってなかった。

だから本当に失った彼の心を私は真に理解できない。

彼の痛みもその感情も彼の物。

でもやっぱり、ここまで辛そうな彼を見ていると諦めて欲しい。

私では彼の痛みを和らげることはできないのだろうか。

私は自身の無力を恨んだ。




最近、音信不通となっていた友人と連絡が取れてめちゃんこ喜びました。
喜びのあまり両手に火のついた煙草を持って小踊りしながら吸いました。
流石に冗談ですが、それぐらい嬉しかったんです。
そして機関発足のきっかけをくれた彼に投稿を始めた事を伝えました。
早くも機関発足の企みから3年、あれから遠くまで来た感じです。
とりあえず、こんな作品を気に入ってくれたのなら嬉しいです。
がんばって作りますんで、気長に待ってくれると幸いです。
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