皆様、お元気でしょうか?
食堂で昼食をもらい生徒達と共に席に着く。
大きな机に椅子が並んでおり、昼食時の為混雑気味だ。
左隣にヘルマが腰を下ろす、肩が触れ合うぐらい近い為、少し距離をあける。
凛とした表情を崩す事なく彼女の尻尾が足に巻き付いてくる、離れるなと主張していた。
パンを千切りスープに付けて口へと運ぶ、コンソメと野菜の旨みがパンに染みて美味しい。
私が料理に手を付け始めると早速質問が始まる。
「ヘルマ教官とはどう言った関係なんですか?」
丸メガネの生徒が目を輝かせながら質問した。
見渡せば皆興味津々でこちらに目を向けている。
若い彼女達の年頃では色恋沙汰に興味深々なのだろう。
「あー、ヘルマとは…」
「撃墜された私を助けてくれたのが彼だったの」
言葉に詰まる私にヘルマが語り出す。
あの日の出会い、その後のリハビリや私のリハビリの事を語り出す。
普段お澄まし顔が多い彼女が楽しそうに喋っている。
生徒の皆は興味深く聞いていた。
なんだか自分の昔話で盛り上がる親戚の集まりみたいで少し恥ずかしさを覚えた。
気まずさを誤魔化すべく辺りを見渡す、窓際の席に二人、見慣れた顔が見える。
少し幼さの残った優しい顔は施設警備隊のヨハンだ、お相手に視線を向ける。
王国騎士団の制服に中性的な顔立ちに尖った耳、プラチナブロンドの短い髪が日光を受けて輝いて居た。
ミリーだった。
楽しそうに談笑する二人、楽しそうだ。
二人を眺めるのを程々にポテトサラダをスプーンで掬って食べる、ちょうど良い潰し加減で美味しい。
「フランツさんは交際してる女性とか居るんですか?」
唐突な女子生徒の質問に思わず私は咽せた。
ヘルマが心配そうに水を差し出してくる。
ありがたく頂戴して流し込む、なんとか落ち着いたようだった。
「居ないよ、ずっとリハビリや副業してたし」
私の回答に困惑する彼女に首を傾げているとヘルマが追加で水を持って来てくれた。
「ありがとう」
「気にしないで」
私の言葉にヘルマは微かに微笑むと再び定位置に戻った。
多分彼女はヘルマと私がそういう関係だと思って居たのだろう。
確かにヘルマと私の付き合いは長いし、親しいを通り越して親密である。
しかし、彼女の気持ちとしては好意だけではない気がしていた。
私と彼女は所属が違えど撃墜された仲間であり、再び操縦手として戻れるよう互いに支え合った仲でもある。
地獄を共に乗り切った戦友と呼べる。
だが同時に彼女からの好意も感じていた。
でなければ独り身の男の家に上がり込んで甲斐甲斐しく世話など焼くはずはない。
しかし、それはきっと綺麗な好意ではない。
無茶をした私に縋るように言う姿や私が彼女を頼る時に彼女の纏う粘性にも似た感情が物語っている。
依存と呼ばれるものに似ているのだろう。
まだまだ復帰するには不十分で守るべき大切な存在だと思われてるのかもしれない。
だが、彼女からの好意が嫌なわけではない。
他の女性より共に地獄を歩んだ彼女の方が理解してくれるだろうし、信頼できる。
だからこそ、現状の不純な関係を精算し然るべき枠に収まるべきなのは重々承知している。
しかし、このまま関係を進めてしまっても良いのだろうか?
「ねぇ?大丈夫?」
ヘルマが私を見上げていた。
澄んだ青色の瞳が私を射抜いている。
「いや、ちょっと考え事」
「そう」
私の言葉に彼女の興味が薄れたのか視線を生徒に向ける。
改めて彼女との関係を考え直さないといけないのかもしれない。
再び昼食に向き合った、じゃがいもとソーセージの炒めものを掬って口に運ぶ。
それと同時に今一度彼女と今後について話さなければならない、問題はどう切り出すか。
料理を咀嚼しながら思考を回す、料理は祖国風の味付けだった。
今夜もきっと彼女は夕飯を作りに来る。
「ここであなたと一緒に食べれば効率的でしょ?」
って彼女はお決まりのセリフを言う姿が頭に浮かぶ。
明日はちょうど良い事に私達の担当科目ではないため休みになっている。
私の副業は出勤しすぎて上司から休暇を言い渡されていて連絡あるまで出勤を停止させられていた。
今夜、切り出してみよう。
楽しそうに生徒たちと話すヘルマの姿を見て内心そう決意をした。
ヘルマvsフランツの戦いが始まる。
相手は白い湿度猫、彼に向いた矢印はクソデカです。
命救われて、辛い時に支えてくれて、復帰させてくれたらそら(好きになるし、)そう(なるに決まってる)よ。
彼の復帰の手伝いもして自信満々、知り尽くして最早私が居ないとダメなんだからと後方腕組みまでして、彼女通り越して妻面してるスーパーキャッツ。
多分、然るべき枠に収まってもジメジメしてそうだけど。
フランツ、ゴールインしちゃえよお前()