仕事が忙しく隙を見て書いています。
気長に待ってくれると嬉しいです。
フランツ・ベッカー伍長
元連邦軍外地進駐軍重装甲擲弾兵団第34装甲駆逐中隊所属の操縦者。
SPzG基礎訓練課程修了後、惑星「デア・ドゥンケ・バルト」の同中隊にてSnDに従事。
その後、私たちの住む惑星「ランド・デア・リッター」に転属。
2年前の王国急進派が起こした暗い八月事件に対応した。
進駐軍脱出部隊の殿を務め、シュターゲンフューゲル市街地防衛戦やその後の宇宙港防衛戦を戦う。
停戦後の生存者捜索作戦にてミリーに撃墜され左足を失う。
現在は予備役として進駐軍予備戦闘大隊に所属し王立騎士団戦闘教練隊として業務に務めている。
私は広く感じる部屋で彼の経歴書を思い出す。
履歴書には書かれていない事も私は全て知っている。
当たり前だ彼との付き合いは2年、ほぼ衣食住を共にしていた。
コーヒーに口をつけ、今朝の彼を思い出す。
私の圧に押されながらも断固として譲らなかった。
リハビリの時を思い出す。
足を無くしても、操縦席に戻る事を諦めなかった人だ。
視線を下げればマグカップが視界に入る。
暖炉に目を向ければ火は消え燃え残った炭が呼吸をするように赤く輝く。
彼の居ない家は酷く寒く感じた。
私のした事が間違っていたのだろうか?
戦傷で四肢のどれかを失った操縦者の生存率は五体満足の操縦者より大きく下回る。
筋電導義手の普及で日常生活への負担は減っても操縦となると別だ。
人体と違いどうしてもタイムラグが発生する。
コンマ数秒ですら命取りになり得る戦場では致命的だ。
その解決策として神経と直接続する試みもあるのだが…神経接続義手もそうだが着用者への負担が重すぎる。
それになんだか彼が機体の部品として組み込まれ最期にはなくなってしまうのではないか?と私は感じてしまった。
私の同期達のように撃墜され、SPzGの残骸だけ…あの鉄の鎧でできた棺に入った骸だけが帰ってくる事になるのではないだろうか。
そんな予感がしてしまうのだ。
別れは何度経験しても辛い。
もう沢山だった。
だから私は彼を縛り付けた。
そうでもしないとあの時の目はあの時の彼はフッと消えてしまいそうだったから。
しかし、彼は違ったみたいだ。
確かに恋人でもない男女が一つ屋根の下で寝食を共にするのは良くはない。
でも、それぐらい彼の事が心配だった。
同僚を殺した私を助け、敵である私の仲間達の捜索救助を手伝ってくれた。
トラウマを抱えた私が再度操縦手として戻る為のリハビリを手伝い、支えてくれた。
失くしたものは私の方が軽いのに…彼の方が多く失くした筈なのに。
だから私はずっと彼のそばに居た。
撃墜され機体の操縦席から出られなかったあの時、私はあの日一番死に近づいたのだ。
いや、死んでいたんだ。
だからこそ彼が救った命、彼から貰った命を彼の為に生きたかった。
彼は足枷になりたくないとも言っていたが足枷になるように、その足枷を喜んで着けたのは他ならぬ私なのだ。
彼だけは手の届くところに、亡くさぬように、箱庭に入れたのだ。
そんな彼は離れようとしてる。
それだけは嫌だ、許せない。
私から離れ、蝋でできた翼で太陽に堕とされるぐらいなら私が落とそう。
きっと太陽の側まで離れてしまえばきっと助けられないから。
私の側で堕とすのだ。
私の手の届く距離で私が守れる範囲で。
やるしかない、今度の演習でもう一度。
彼を苦しめるだろうが戦場よりかは実戦よりかはいい筈だ。
許して、貴方がここで生きられるよう、幸せになれるよう願ったから。
珈琲の水面には真っ黒な私が映っていた。