私は暗い操縦席に座っている。
計器の明りでほのかに照らされた機内は圧迫感で狭く感じた。
渡河してシャトル発射場に撤退していった進駐軍を追撃するべく前進した私は重度の損傷を受け行動不能になってしまった。
頭部損壊によりヘッドカメラの信号途絶、自走は不可、背部通信機は損傷し状況は不明。
しかし、音響センサーは生きていた。
見えない外部、絶え間なく聞こえる戦闘音。
武装の発射音と駆動音が接近する。
私は息を殺し祈った、お願いだから気付かないで。
数は2、距離はおおよそ30m、武装は何があった?
震える手でコントロールキーを操作しモニターに情報を表示する。
右腕の50㎜のライフルと右肩部の40㎜自動擲弾発射器(GMW)、左腕には装甲散弾銃(PzSf)が装備されている。
火器管制システムは右腕の応答が停止していることを警告していた。
左腕は?
見えているのにわからない、頭に情報が入って来ない。
なんとか左腕の状態を確認する。
残弾5、敵を怯ませられる程度だろう。
肩部の40㎜GMWは残弾6、装甲は抜けるか怪しい。
脚部駆動系は関節に被弾したため移動は不可、倉庫の外壁に背を預け座り込んだ状態だ。
いっそのこと機体を捨て逃げる?
機体から降りたところで戦闘の真っ只中。
SPzGは強いが私は強くない、一瞬で殺されてしまうだろう。
しかし、このまま留まっても流れ弾がいつ直撃してもおかしくはない。
堂々巡りになる思考、動けなくなってしまった。
火器管制システムは切っておく、敵機に赤外線誘導装置が検知されたら一巻の終わりだ。
GMWのガンカメラを起動し周囲を探る。
敵機の機体は暗い緑色に塗装され進駐軍の紋章に青色線が引かれていた。
青リボン、施設警備隊の機体。
進駐軍施設の警備を担当しており、私たちと同じA6V型の機体だ。
こちらには目もくれず整備区画へ前進していく、そのあとに主力戦車が5両追従している。
タイガー4主力戦車、わが国でも採用した主力戦車。
機体を捨て逃げたところで機関銃にやられてしまうだろう。
このまま閉じこもり、やり過ごせばきっと友軍が助けに来てくれる。
そんな希望は時間と共に消えていく。
増える敵機が前線の後退を示し、刻一刻と状況が悪化していく。
機体の前を敵機が通りがかった、ヘッドカメラと目が合った。
心臓が跳ね上がった、気付かれた?
敵機がゆっくり接近する。
全身から血の気が引いていく、夏なのにとても寒い。
腕部には50㎜ライフルの銃口はこちらを捉えている。
私は、ここで死ぬ?
刹那、世界に光が満ちた。
敵機はゆっくりと振り返ると空を見上げた。
轟音と共に星の船が空へと飛び立って行く。
その壮大な情景に思わずガンカメラを操作し追いかけるが仰角が足りず見失った。
連絡船の発着を離れた場所からしか見たことない私は圧倒された。
発射炎の明りが消え辺りは暗くなり、少しずつ見えなくなった。
先ほどの敵部隊はどこかへと消え行った、その光景はまるで仕事帰りのよう。
あれほどうるさかった砲声も止み駆動音も聞こえない、自分の心音がうるさかった。
SPzGの残骸と戦車の残骸が残り火で辺りを照らしていた。
まるで世界に私一人だけになったような、このまま忘れられてしまうのではないか、そんな不安感がした。
しかし同時に心地よさも感じていた。
今ならよく眠れるかもしれない、押し寄せる疲労感に私は瞼を閉じ意識を手放していた。
どれくらいたっただろう、ほんの数分のようにも、永遠のようにも感じた。
眩しい光と喋り声、私は目を開けた。
連邦軍の軍服を着た男、手にはランタンが握られていた。
「やあ、大丈夫かい」
始めて生身の敵と対峙する、しかし私は不思議なことに安心を抱いていた。
独り流れ弾に怯え暗い操縦席に身を潜めて居たせいだろう。
「見つけてくれて、ありがとう」
私は殺しあった仲である彼に感謝を述べていた。
「敵だよ、私」
彼は困った顔で笑うと手を差し伸べた。
彼の手を取ると久方ぶりのぬくもりを感じた。
「ええっと、君を何て呼べばいいかな」
搭乗口から脱出し、彼と並び立つ。
外は照明弾で昼間のように明るかった。
彼の機体がすぐ近くに待機している、赤リボンだ。
「ヘルマ、ヘルマ・クライン、あなたは」
彼の顔を見る、自分より高い背に優しそうな目をしていた。
「フランツ、フランツ・ベッカー」
彼から差し出された水筒を受け取り、口をつけた。
水分が体に行きわたる感覚に生を実感した。
これが彼との出会いだった。
ちなみに彼女の乗るSPzGは第二世代型です。
名称を日本風に書くと
重装甲擲弾兵1式A6型改良機(SPzG1A6V)
第二世代の最新型式はA7V型が最新モデルです。
現地人部隊に最新機渡すわけないよね(露並感)
タイガー4主力戦車は豹の名前が付く戦車です。
ちなみにタイガー5主力戦車は豹2。
機体大きさは7~8mの想定なので戦車相手でも油断したら死にます。
また、上からの攻撃と歩兵の肉薄攻撃にも弱いです。
機動力があるので当たらなければ問題ないよね(某彗星)
なので市街地戦は戦車よりマシ程度。
TFで歩兵にボコられるあんな感じ。
脚部駆動系は命(人型兵器の宿命)
ここでは脚部特殊緩衝材は存在しない、頑張ってね(無慈悲)
でも対人兵器にS地雷あるよ、よかったね(鬼畜)