TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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わーい百話。
正直こんな続くとは予想外でした。

今まで多くのコメントや誤字報告をしてくださってありがとうございます。作者は大変助かっております。

一応大まかなお話として、この章で折り返し地点となる予定です。

これからも読んでくだされば幸いです。


#100

ウリヤナバートルで再び大改造を施してもらっているスフェーンは引越し作業を進めていた。

 

「んで、前の家はどのくらいで売れた?」

「ほぼスクラップ扱いでしたよ。トホホ…」

 

肩を落として項垂れているスフェーンに、マルシュは少し同情する。

 

「あとで焼きおにぎり定食奢ってやろうか?」

「いえ、この後すぐ出なきゃいけないんで大丈夫っす」

「マジかぁ」

 

引越し作業を終え、点検も終えて列車は準備できた。

 

「それに大事な仕事なんで遅刻できないんです」

 

スフェーンは少し表情が固くなり、それを見たマルシュは同じ運び屋として感じたその重要性に納得を示した。

 

「そうか…そんなに大事な仕事とはねぇ」

 

そう呟いた後にマルシュはスフェーンの肩を軽く叩いて少し柔らかい声で言った。

 

「あまり気張りすぎるなよ」

「えぇ、分かっていますよ」

 

スフェーンはそんなマルシュの気遣いに気づきながら頷くと、彼女は荷物室を通って列車から降りる。

列車も車両が一両増えて八両編成になり、ノルにいつの間にか買わされていた。

 

『見事にしてやられましたね』

「五月蝿いやい」

 

ルシエルにスフェーンは軽く言い返すと、少々スフェーンは苦笑しながら荷物車の方に出る。

 

「…はぁ」

 

そして荷物車に積まれたちゃぶ台やかつての衣装ボックス。

今は箪笥を使っているので正直使わない。

 

「早く荷物車に乗せたいんだがな…」

 

そして今、荷物車に放置したものは恐らく要らない。

 

『この際処分しましょう』

「ですな」

 

運んでもらって悪いが、この中身は処分する事にした。

 

「おーい、ノルー!」

 

荷物車から出て工場長を呼びつけると、スフェーンは荷物車の不要物を差しながら言った。

 

「これ全部あげる」

「そんな事だろうとは思ったよ」

 

やや呆れながらノルは近くに居た数名の従業員を呼ぶと、好きな物を持って行かせた。

要らないものとはいえ、使えるものが多かったので全部持っていってくれた。

 

「…じゃあ、ちょっとだけ支払いをまけよう」

「おっ、どうもどうも」

 

ノルは全部持っていった従業員を見てやや呆れながらスフェーンに申し出ると、ローンを組んでスフェーンに伝える。

 

「銀行はこの口座ね」

「おけ」

 

ローン支払いの口座とローン金額を受け取り、スフェーンは確認すると荷物車に折りたたみ式携帯スロープを敷いた。

 

「んで、金利は全期間固定型ね」

「うい」

「ローンは払える時に払ってくれれば良いよ」

「ういっ」

 

ノルは自分を信頼してくれているようで、定額を払うタイプじゃない方にしてくれた。ありがたや〜。

 

「じゃあ、僕は次の仕事があるから失礼するよ」

 

そう言い彼はマルシュの機関車の方に向かい、スフェーンはローンを見た後に軽くため息を吐いた。

 

「ついにローン持ちかぁ…」

『真面目に仕事をしましょう』

「そりゃそうだ」

 

ローン金額の書類を壁に貼り付けながらスフェーンは下に降りると、そこで止まっていた一台のバイクを見る。

 

『CT125 ハンターカブですね』

「赤があったのはありがたいよ」

 

グローイングレッドのフレームのバイクに跨ってエンジンを掛けると、簡単にスフェーンの新車は坂を登って荷物車に入った。

そしてスロープを片付けると、荷物車の扉を閉めて鍵を閉めると気密ロックが掛かる。

いつ出ても良いと言われていたのでスフェーンはそのまま運転室の方に移動するとそこでそのままハンドルを操作してゆっくりと車両工場を出て行く。

 

ほぼ無許可に設営されたこの車両基地の線路だが、貨物ターミナルと接続されており。そのまま本線に進入ができる。

 

「一応仕事探すか」

『次の目的地までのですか?』

「だって、ローン返済しないといけないし」

『…ですね、小さな仕事でも目的地までの仕事を並べましょう』

 

ルシエルは頷くと、早速スフェーンの視界にいくつか細々とした仕事の依頼を表示し、スフェーンは全て選んでいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数日後、スフェーンは細々とした依頼を受けてローン返済の資金繰りに苦労し始めている中、目的地に到着した。

 

「…」

 

煙草を吸い、ナッパ服のまま空を見上げるスフェーン。

相変わらずのエーテルで満たされた夜空は大層なもので、スフェーンはその景色に親近感を感じ取っていると、

 

「全く、わたくしをここまでこき使う人間は貴方くらいですわ」

 

そこに黒い麦わら帽子にサングラス、黒いシャツにジーンズとお忍びモード前回のサラが片手にアルミ製のアタッシュケースを持って現れた。

場所はベガスシティの貨物ターミナルの一角、滅多に人の来ない、スラム街にもならない様な場所で二人は顔を合わせていた。

 

「にしてはそのニヤニヤ顔は何なんですか?」

 

スフェーンはやや呆れ顔でサラのニヤついた表情をみる。

 

「ってか無理にお嬢様言葉だと逆に気色悪いっす」

「あらなんて言い方」

 

常日頃から仕事の愚痴を聞かされ続けている身からすると、正直素のサラ・アンデルセン以外の顔をほぼ知らんのだ。

 

「ならこのお話は無しにしようかしら?」

「…勘弁してつかーさい」

 

煙草を捨て、靴で潰すとスフェーンはサラに軽い土下座をする。

 

「ふふっ、大丈夫よ」

 

そんなスフェーンに軽く笑いながらサラは持って来たアタッシュケースを地面に置く。

 

「取り敢えずスフェーンが欲しいって言っていた金塊ね」

「…ありがとうございます」

 

中身の特徴的な輝きのインゴットを前にサラは軽くため息を吐く。

 

「全く、こんな量の金塊を所望するなんて…何を企んでいるの?」

「いやぁ、そんな悪い事じゃないよ」

「足の付かない金塊を求めている時点で説得力皆無なんですが」

 

サラはマジレスしながらスフェーンと同じく地べたに座ると、端末を取り出す。

 

「一応、貴方に言われた通りの口座を作っておいたけど…」

「その方が安全だと思いますよ」

「…どこからその資金出すのよ」

「秘密でオナシャス」

 

スフェーンはこの為に作って貰ったサラの足の付きにくい銀行口座の端末を受け取ると、そこでネクィラムから受け取ったデータと併用して送金を開始した。

 

 

 

 

 

同時刻、とある銀行口座から送金が始まり。すぐにその異変に気が付いたとある銀行員は言われた通りに連絡を取った。

 

『どこに送金されているか分かりますか?』

 

一コールもしない内に電話に出た彼から聞かれた銀行員は、目の前のみるみる減って行く預金額に冷や汗をかきながら答える。

 

「い、いえ…送金された現金は…その…」

『どうかしたか?』

 

聞かれた銀行員は送金先のデータやその他諸々の情報を前に顔を青くしていた。

 

「ひゃ、百社以上の仮想通貨に交換され…追跡不能です…」

『…』

 

銀行員の報告に通話相手は軽く絶句した様子で何も聞いてこない。

 

「凍結口座は正規の手順で解除されており、只今支店に問い合わせを行なっておりますが…」

 

その支店からの返事はまだ来ない状況だと言う。

 

『…そうですか』

 

ある程度の額の仮想通貨であれば仮想通貨を発行している会社に問い合わせを行えば追跡は行えるが、コレほどの資産に分割されると追跡は不可能に近い。

 

『いくら落とされましたか?』

「全額です。今のレッドサン様の口座にご預金はございません」

『…』

 

通話相手のブルーナイトはそれを聞き、再び間を開ける。

そしていきなり動いた彼の銀行口座にしばらく考えた後に通話で伝える。

 

『連絡、ありがとうございました』

「あっ、ブルーさん…」

 

直後、電話を切られ。銀行員はツーツーと鳴る電話の音を聞き、しばらく呆然となった後にゆっくりと受話器を机に置いてそのまま椅子に深く座り直すと、そこで大きく息を吐いた。

 

「…終わった…のか」

 

そして目の前の無数に分割された預金を見ながらどこか安堵も覚えると、その直後に彼は日々の過労とストレスがドッと溢れた事で仕事中に気絶してしまい、救急搬送されるのだった。

 

 

 

 

 

「ほい、支払い終わり」

 

みるみる増えて行った口座への預金額にそれを見ていたサラは軽く絶句する。

 

「どこからそんなお金出てくるのよ…」

「いやぁ、昔の仕事で得た金ですよ」

 

スフェーンはそう言いながらサラの持って来てくれた金塊…恐らく借金で首が回らなくなった連中から巻き上げたであろう財産を見る。

 

「でもコレじゃあちょっと余るくらいよ?」

「それは色を付けたつもりなんで、しばらく放置しておいてくれません?」

「どの位?」

「短くて半年…長くて三年くらいですかね」

 

スフェーンは言うと、この量の金塊を購入したスフェーンにサラは言う。

 

「分かったわ…よっぽど悪どいことをして手に入れたお金ってことね?」

「ハハハ…」

 

まぁこのお嬢さんに隠せるわけないわな。こんな運び屋みたいな貧乏人がこんな大金をポンと出しゃあ。

 

「まぁ、こっちも巻き上げた出所不明の金塊の処分に困ってたから良いけど」

 

巻き上げた出所不明の金塊という普段聞かない矛盾しているような発言を前にスフェーンは違和感と共に苦笑するが、コレは突っ込んだら負けと言う奴だ。

 

「溶かせば良かったのに」

「それやると軍警に通報する馬鹿が居るのよ」

「あぁ…なるほど」

 

ベガスシティの王者に君臨している一家の内情を知るためにどこにでも敵の目が潜んでいるというわけだ。

 

「一応全部純金なのは確認済み。コレは貴方の物になったわ」

「どうも、ありがとうございます」

 

アタッシュケースを受け取り、スフェーンは頭を下げると、彼女は言った。

 

「じゃあ、代わりに今度会ったらメイド服着て出てきてね」

「え”っ?!」

 

突然のカミングアウトに絶句するスフェーン。嫌ぞ、あんな服をもう一度着るのは。

 

『良いじゃありませんか。お似合いですよ?捨て無いくらいお気に入りじゃないですか』

「(それは捨てようとしたらあんたが全力で阻止するからでしょうが!!)」

 

しかし金を用意してもらった手前、断ろうにも出来ない。

渋々ではあるが、スフェーンはその約束を取り付けると、彼女は最後に。

 

「今日の一件、貴方が大きくならないのと関連しているのでしょう?」

「…」

 

鋭いな、と内心思いながら深入りして来ない彼女にスフェーンは安堵していた。

 

「まっ、私はスフェーンが好きだから」

「…百合は勘弁ですよ?」

「いやぁ、貴方相手には無理よ」

「私以外じゃあできるんかい」

「ふふっ、それはどうかしらね?」

 

サラはやや拗らせ始めている性癖に不安を抱きながらも見送ってくれると言った。

 

「やだーっ」

 

そして新しく塗装し直した列車を前にサラは言う。

 

「ちょっと見覚えある塗装じゃないのよ。某迷鉄の間違いなんじゃないの?」

「それ半分悪口に聞こえるんですが?!」

 

そう言いながらもストロークリームに赤帯と言う、どこか既視感のある塗装に絶句しているサラに反論しつつも、ルシエルは頷いていた。

 

『やっぱりダメですよ。この塗装は』

「(良いじゃん。好きな色合いだし)」

 

そんな一悶着がありつつもスフェーンが運転台に乗り込むと、列車の横でサラは軽くサムズアップして言った。

 

「Good luck、スフェーン」

「…うまくやってみせますよ」

 

そんな彼女に薄く笑みを見せたスフェーンは運行計画が認可されると、列車をゆっくりと前進させた。




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