TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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アンケート結果に現在困惑中也。


#104

ニューサセボより出航した航空母艦天城は観艦式の軍警元帥座上艦として、今回の主役として洋上を進む。

船内には招待客や一般人含め大勢の民間人を乗せている。

 

『本艦の建造は、西ノーチラス海における安全な航行と海賊への抑止力となり…』

 

格納庫では観艦式に参加する民間人が治安官の説明を受けており、軍警の必要性を唱えていた。

最近では徐々に人手不足になりつつあるという噂の軍警だが、この様子ではかなり危惧しているのかもしれない。

 

『また、この天城は第三航空艦隊旗艦としての指揮通信機能も備わっており…』

 

全長四〇〇m超えの巨大な船体には巨大なエーテル機関と、エーテル機関から放出される熱を冷却する放熱水中翼が備えられている。

 

「くあぁ…」

 

船内見学は航行中は禁止という理由で格納庫のパイプ椅子に座り込んで話を聞いていた。

 

『暇ですね』

「まだ甲板に上がらないのがなんともね…」

 

船内は機密に当たる場所があると言う理由で通行が許可された場所少なく、広い格納庫には一般客数百名と招待客、軍警幹部が座っており。その時を待っていた。

 

『なお、観艦式の最中。海中転落防止の為、皆様には第五エレベーターを使用していただきます』

 

格納庫から甲板の真ん中に出る緊急時用のエレベーターを使って登ると言われ、スフェーン達は話を聞き終えると治安官はグループ毎に乗船客を移動させ始める。

サイボーグやアンドロイド、獣人などが入り混じってマスゲームの如く移動すると、緊急時のみ動かすエレベーターが一般客達を乗せて上に上昇する。

 

スフェーンも列に並んでエレベーターに乗ると、即席安全柵を治安官達が張って安全の確認をするとそのまま警報を鳴らしながらエレベーターが上がる。

一部はスマホを持ってその様を撮影しており、やや興奮していた。

 

「「おぉ〜…」」

 

そして甲板に上がると、そこではどこかの校庭のように広い甲板や聳え立つ巨大な艦橋、近接防御用のCIWSなどが剥き出しで控えていた。

 

「では皆様、お手持ちの地図の禁止エリアへの侵入は規則違反となり、拘束の対象となりますのでご注意ください」

 

治安官が周囲すると、一般客達は渡された地図を参考に観艦式に参列する艦艇達を見る為に移動する。

今回の観艦式に参加する艦艇は計四四隻、空中艦六隻である。

 

『CIWSがまるでおもちゃのような大きさです』

「普段、私達が目にしているのとほぼ同じ型のCIWSでっせ」

 

そう言い艦橋下部にある見覚えある複合型CIWSを見ると、スフェーンは甲板を歩く。

 

「お嬢さん、ひょっとして迷子かい?」

 

そして甲板を歩いていると、一人の男性治安官に話しかけられた。

どうやらこの身なりと見た目、そして甲板をふらふら歩いていた事から迷子と勘違いされたらしい。

 

「あぁいえ、迷子じゃないです」

「あっ、そうかい。悪かったね」

「いえ、よく間違われるので…」

 

少々疲れた表情でスフェーンは返すと、治安官は色々と察してくれた様子で返した。

 

「一人で偉いよ。何かあったら近くの治安官さんに声をかけるんだよ」

「…はい」

 

分かってはいたが、子供扱いされる事に少々悲しさを覚えながらスフェーンは甲板を歩いて目的の軍艦をよく見える位置に移動する。

 

『スフェーンの見たい艦艇はあそこですね』

「おぉ〜、あれだね〜」

 

そして甲板の安全区域でスフェーンは海の上を天城と並走して航行する一隻の艦艇を見る。

 

『高雄型巡洋艦、ですね』

「見たかったんだよ〜」

 

視線の先には無骨な主砲塔を背負い式に二基装備し、垂直発射機や対空砲にCIWS、大きな艦橋を備えた軍艦が佇む。

 

『あれは三番艦の摩耶ですね』

「今回の観艦式に参加するって聞いてたのよね」

 

高雄型巡洋艦は全長約三〇〇m、全幅三五m。

主砲は356mm三連装電磁加速砲二基、三連装エーテル・カノン二基。その他兵装は203mm単装電磁加速砲十基、複合型CIWS六基、垂直発射器、五連装魚雷発射管二基を装備している。

 

軍警の中で最強の火力を誇る最強の軍艦。一部では巡洋戦艦と呼ばれているように圧倒的な武装搭載量を誇り、海上警戒任務に出動している。

同型艦は三二隻。空母と同じ数が建造され、いずれも海賊対処や船団護衛任務などの多様な任務に合わせていた。

そして摩耶はニューサセボ所属の第七打撃艦隊旗艦も同時に務めていた。

 

「これでも企業の艦艇より小さいからなぁ…」

 

基本的に軍警は物量ですり潰す戦法が一般的であり、小型艦を大量に運用する事で真価を発揮する。

 

『企業の保有する艦艇は一隻が大きいですからね』

「会社の規模にもよるしのぉ」

 

企業のPMCの艦艇が次々に通過していくが、いずれも人は乗っておらず。逆に摩耶には一般客が乗っている姿が見受けられた。

 

『摩耶に乗船しなかったのはなぜですか?』

 

摩耶は人気艦艇であり、あれだけ特別で切符が販売されるほどだった。

そんな艦艇に乗らなかった理由を聞くと、

 

「いやぁ、ああ言うのって遠くから艦影を見るので十分よ」

 

丸二日も並びたく無いし、と本音が溢れるとルシエルは少し苦笑してスフェーンを見ていた。

 

 

 

 

 

『えー、本日は観艦式に参加いただきーー』

 

壇上に立つ一人の軍人、階級章は海軍元帥。紺色の軍服に袖を通しており、観艦式の責任者であった。

 

『彼は間も無く予備役に入る方ですね』

「ホーン、それでこの仕事ですか…」

 

予備役間近の上級治安官に観艦式という安全な仕事を与えて円満退職といったところだろうかと想像しながらスフェーンは目の前を通過していくアウグスフェルト級戦艦を見る。

 

PMCの保有する艦艇の方が大きく、装備もこれでもかと乗せている。

量を補えない分、質で勝負しているPMCの艦艇は必然的に大型化していた。

 

『次はヒグマ海運警備より、ローグワイアットです』

 

そう言い、一隻の艦艇が天城の右舷を通過していく。

その艦艇は後部に艦橋とヘリポートを備えた艦艇であり、前方に武装はほぼ見え無かった。

 

『ヘルメス級アーセナルシップですね』

「企業の武装貨物船じゃないのか?」

 

アーセナルシップは、とにかくミサイルを積めるだけ多種多様に積み込んだ打撃力お化けな艦艇である。

ただドローン兵器などの無人兵器の発達により今はミサイルよりも無人機母艦としての用途として甲板先端に無人機発射用のカタパルトを装備していた。

 

『いえ、細かい部分を見ますとあれはアーセナルシップですね』

 

ルシエルは数多の画像検索機能を見た報告をしながらスフェーンに言うと、それほど詳しくない彼女は頷くだけで艦艇を見ていた。

 

 

 

その後も参加している艦艇は天城を通過して映像に収められていく。

観艦式の様子はライブ中継されており、動画配信サイトで大勢の視聴者が見ていた。

 

「あらあら、」

 

そして評判の悪い企業の艦艇が通るとコメ欄が荒れているのを見る。

 

『バツハン警備はサービスの質が低い事で有名な会社ですね』

「だから荒れるんやなー」

 

人々の評価というのは実に分かりやすいし、匿名性の高いライブ中継のコメント欄なんて皆が好き勝手言い合っていた。

そして次に通る艦艇のアナウンスが入る。

 

『続きまして、アイリーン・マリーンズよりボスボラスです』

 

アイリーンの傘下に入ったある企業の艦艇が通過していく。

フリゲート艦であるが赤いリノリウムや斜めに設置された対艦ミサイル発射筒が特徴的な無骨な艦影である。

 

『アイリーンの艦艇とは珍しいですね』

「ねっ、普段はあまり戦力を見せていないのに…」

 

ルシエルはアイリーンの艦艇が表に出てくるのが珍しいと零していると、スフェーンも頷いていた。

そしてフリーゲート艦が天城を通過すると、アナウンスが入った。

 

『続きまして、グリーンバード海上警備よりフルシノヴァです』

 

そう言い、今度は緑化連合傘下の駆逐艦が現れた。

 

「なんだろう…この、」

『どことなく悪意を感じないでも無いですね』

 

対立しているアイリーンと緑化連合所属の艦艇を続けて並ばせた軍警に少し意図を勘繰ってしまう二人は通過していく艦艇を見送る。

 

すると最後に上空の方から数機の空軍仕様のYa-41が通過すると、続いて対潜哨戒機型のP-248Mが編隊を組んで通過すると、少し離れた位置から巨大な影が現れる。

 

『あれは…』

「軍警の空中艦隊だ」

 

空を飛ぶ巨大な鯨の如く飛行する空軍の空中艦隊。

 

『彩雲級飛行航空母艦と、護衛の浜風型飛行駆逐艦ですね』

 

五隻の小型船に守られながら飛ぶ一隻の空中空母は二段の飛行甲板を備える多段式航空母艦である。

空軍が保有する航空機の空中プラットホームであり、下半分は装甲化された硬式飛行船である。

 

エーテルによって空が制限されている今、唯一宇宙空間まで人を打ち上げられる宇宙戦艦や宇宙強襲揚陸艦を保有している空軍ではあるが、前者はあくまでも上級将校の連絡船としての扱いであり、あまり表立って使われることは少なかった。

 

ただどちらも大災害以前の技術で作られているとも噂されていた。

 

『陸軍も確か同様の装備を保有していますよね?』

「あぁ、陸上戦艦?そう言えば今回は来ていなかったね」

 

陸上戦艦は高雄型と同じ三連装エーテル・カノンを装備した陸の皇帝、一度出動すれば敵うものは無いと言わしめている陸上最強の戦闘機械だ。

 

「珍しいね」

『あの兵器は巨大ですから、単に置く場所がなかったのでは?』

「あるかもね」

 

そんな軽口を言いながら二人は上を横切る艦艇を見ていた。

 

 

 

 

 

その後、ほぼ夜頃になって天城はニューサセボに帰港する。

母港には無数の軍艦が停泊しており、観艦式に参加した艦艇達も錨を降ろしていた。

 

「飯なしかよ…」

 

軽く不満げにスフェーンは呟くと、接岸される天城を見る。

ここまでの時間、あらかじめそういう予定とは言え、飯が無いまま帰港するという、食事を愛する者としては半分拷問のような所業に不満を募らせていた。

 

『まだ露天はあります。まだ回っていない地区を見てみると言うのはいかがでしょうか?』

「当たり前よ。子供は一食抜くと餓死するんだよ」

『でも残金があることに注意するんですよ』

「分かってらぁ」

 

スフェーンはルシエルの小言に適当に返すと、接岸した直後に船を降りると街に飛ぶように消えていった。




巡洋艦で全長300mとはこれ如何に…。



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