「くそっ、どこに消えやがった?!」
「探せ!外に出ていないはずだ!!」
その時、狭い車内で男達は慌てた様子であらゆる箇所を探し始める。
多様な場所を探し、椅子の下や果てには冷蔵庫の中までくまなく探したが、見つからない様子で数人の男達は一旦集合をかけた。
「何処にもいないぞ!?」
「畜生、何処に隠れやがった…」
そう言って考え始めた時、
コンッ
天井から音が聞こえ、まさかと思った男達は列車の天井に続くハッチを開けた。
「っ!!居たぞ!」
「こっちだ!」
そしてそこから顔を覗かせた時、そこに一人の子供が屋根にしがみついていた。
「嘘だろっ!?」
「巡航速度だぞ!正気かよ?!」
時速三〇〇キロで走る列車の屋根、子供がコンテナに捕まっている姿に男達は驚愕していると、一人がネットランチャーを取り出す。
「行くぞ」
「っ!!」
それを見ていた子供は後ろに気を取られた時、
「あっ…」
「「っ!?」」
うっかり握っていた手が離れてしまい、顔を出していた男達に吹っ飛ぶんだ。
「がっ…!!」
「どぉっ?!」
そしてそのまま全身で男とぶつかった後、子供は線路上に放り出された。
「うわっ…!!」
一面の砂丘に吹っ飛んだ子供は頭から突っ込むとそこで視界は真っ暗になった。
ッーー!!
「っ!?」
いきなり響いた音にビビって目が覚める。
何があったかと周囲を見回すと、そこではやかんから湯気が吹き出して音を出していた。
「…」
部屋は台所があり、自分はベットに寝かされていた。
「…?」
知らない場所で、窓の外が動いていて狭いのでここは列車の中だと直ぐに理解する。何故か服も着替えさせられており、いい洗剤の香りがした。
すると部屋の奥の方の扉が開いた。
「ん?よぅ、起きたか犬っ子」
「っ!?」
その時、入って来て話しかけて来たお兄ちゃんくらいの身長の紺色のナッパ服を着た女の子は話しかけて来て、自分は思わず背後に後退りしてしまった。
「どーどー、落ち着け落ち着け」
その女の子の背中には拳銃が置いてあり、銃弾もあった。
それを見て咄嗟に体が動くと、
「ほーら、駄目よ」
「あうっ」
手首を掴まれて僅かに届かない距離に引っ張られた。
「離してっ!!」
「子供が銃なんて危ないもの持とうとするからよ」
「お前だって子供だろうが!!」
「むっ…それもそうか」
思わず突っ込んだ内容にその子は納得するとそのまま自分に手錠をかけた。
「何をする!?」
「君が落ち着くまで、ちょっと悪いね〜」
「このっ!!」
縄でそのまま椅子に括り付けられると、その女の子は自分を置いて沸かしたやかんを傾ける。
「お前は…誰だよ!」
「私?」
聞くとその女の子は答えてくれた。
「砂漠に頭突っ込んで倒れていた君を助けたしがないただの運び屋」
少女はそう言い、犬の耳を持った少年を見た。
とある指名依頼を受けたスフェーンは荷物を積んで運んでいる途中、
『スフェーン、生体反応を確認しました』
「ほぇ?」
砂漠地帯のど真ん中でルシエルが探知した反応に首を傾げた。
「何処?」
『この先、約八〇〇mです』
「ほーん…」
どう言う事だと困惑しながら人としての人情で列車にブレーキをかけて待避線に入る。
「見える?」
『この先に居るはずです』
そう言い辺りを見回すも、生体反応を感じるようは影は見当たらない。
「…しょうがない」
他列車が通過していく中、スフェーンは列車からバイクに乗って砂漠に飛び出す。
基本的にルシエルの報告が間違っていたことはないので、近くに人がいるはずなのだ。
「よっと…おぉ〜」
列車から離れて慣れた手つきで砂丘を登る。
ここら辺は砂丘がほぼ永遠と続いており、デザートピンクと呼ばれる景色を見せてくれる有名な場所でもあった。
「何処らへん?」
『ここからですと、方位三〇くらいです』
「おっけー」
列車を止めるのに約五〇〇m掛かったので、近くにいると思われるのだが…。
「おりょ?」
そしてバイクを使って砂丘を登り降りすること数十分。
「アレか?」
砂丘の砂色に混ざって黒い小さな影が見えた。
バイクで近づくとその影はだんだんと大きくなり、見知った形になった。
「犬神家かよ…」
そう言い上半身が砂丘に突き刺さって見えている両足が開いている状態の、目の前の…足の大きさ的におそらく子供だろうその子を見て吹き出した。
「ブフッ、あぁ駄目だ。意識しちゃった」
するとルシエルは聞いた。
『助けますか?』
「まぁ、見た目子供だし。サイボーグっぽく無さそうだしね」
そう言いながら尻尾の形を見て犬の獣人かなと推測しながら周りの砂をバイクに下げていたシャベルで掘ると、砂が崩れる音と共にその子供は姿を現した。
「やっぱり…」
その子供は古着を着ているが、頭には立派な犬の垂れ耳が付いていた。
「よいしょっと…」
そしてその子供の服装や触診で男の子と判別すると、砂まみれの顔や服から砂をはたき落とす。
「あーあー、砂まみれだよ」
古着を見てそう呟くと、スフェーンはその子供の状態を確認する。
『脈は正常、血圧も安定していますね。ただ血糖値数が低いので、少々栄養不足の兆候が見られます』
「あと軽い脱水だねー。怪我もなさそうだし…」
そう言いながらスフェーンは子供を抱っこしてバイクの荷台に乗せてかるく縛った。
『大丈夫ですか?』
「ん?下砂だし、落っことしても大丈夫でしょ」
『まぁ、スフェーンが良いのであればアレですが…』
そう言いながら荷台に一人の乗客を乗せてスフェーンは来た道を戻った。
「んで、砂漠に頭突っ込んで気絶した君を助けたってわけだ」
そう言いながら彼女はフライパンで炒めた鳥もも肉と玉ねぎの上に出汁を混ぜた溶き卵を入れる。
部屋の中に出した卵の香りが充満し、椅子に縛られていた少年はその香りに少し顔が緩みそうになった。
「よっと」
冷蔵庫から三つ葉を取り出し、軽く刻んだ後に丼に白米とフライパンで作った奴を乗せ、そこに三つ葉を乗せた。
「ほい、親子丼ね」
そう言い、部屋の元々の座席に後から取り付けたテーブルに作った親子丼の丼を置く。
「っ…」
出来立ての親子丼からは湯気が立ち込め、少年の喉が軽く鳴る。
「騙されないぞ…」
「いや、アタシを犯罪者と勘違いすんなやダァホ」
「寧ろこの状況で信用できない」
「ヒッドイ子だねぇ、全く」
そう言い反対の席に座ったスフェーンはそのまま少年の前に木のスプーンを置く。
「頂きます」
そしてそのまま彼女は食べ始めると、警戒したままの少年は手錠で縛られており、生殺し状態だった。
「あぁ、すまんね」
それに気付いたスフェーンは少年を縛っていた縄と手錠を外すと、少年は少し呆然となりながら彼女を見ると、スフェーンは再び米を鶏肉とともに掬って口に入れていた。
「…」
何の条件もなしに手錠を外された少年はスフェーンを見ると、彼女は聞いた。
「腹減らないのか?」
「…」
直後、グゥと腹の底から鳴り、少年の顔は少し赤くなった。
「言わんこっちゃ無い。ほら、食べな?」
そう言い少し微笑んで少年を席に促すと、恐る恐る彼はスプーンを手に取った。
「い、頂きます…」
そして恐る恐る掬って一口を食べると、中で半熟の白身と出汁の少し甘い風味が広がった。
「美味しい?」
「…はい」
「ん、ならよし」
そう言い少し聞いた彼女は頷くとそのまま自分の分を食べ始める。
それを見て少年は何だこいつ、と訝しみつつも確かに美味しい親子丼を食べる。
「あの…」
食後、片付けを始めるその人に話しかけた。
「何だ犬っ子?」
「犬っ子言うな。僕にはショウキって名前があるんです」
ずっと犬っ子と言って来たその人にそう反論すると、彼女はそうかと言って視線を丼に戻した。
「何だ、」
「助けてくれてありがとうございます」
「…ほぉ〜」
言うとスフェーンは少し驚いた顔をした。
「やけに従順になったじゃん。えぇ?」
そう言い流しから丼を簡易食洗機にかけた。
「良い教育されてるねぇ〜」
そう言うとスフェーンは席に座った。
促され僕も席に座った。
「んで、ショウキだったか?」
「はい…」
そこで彼女は
「何で砂漠で犬神家してた?」
「犬神…?」
よく分からない言葉に首を傾げると、スフェーンは言う。
「まぁいいや。どうせ人攫いに遭って逃げ出したんだろ」
「…よく分かりますね」
「まぁそう言うのはよく見て来たし…」
彼女はそう言うとショウキに聞く。
「取り敢えず、何処の街から来たとか分かるか?」
「えっと…メイコーと言う場所…です」
「おぉ、マジか」
地名を聞き、スフェーンは少し驚いた。
「ちょうど向かう先だよ。運がいいねぇ、君」
「ほ、本当ですか!?」
そう聞きショウキは思わず乗り出してスフェーンを見ていた。
「ついでだし、送ってってあげよう」
「あ、有難うございます!」
何とびっくり、砂漠で助けた獣神の少年が誘拐された場所が今回の依頼の届け先とは。
ショウキも街まで送って行ってもらえることに喜んでいた。
「途中で下ろす必要がなくて助かったよ〜」
彼女はそう言うと、ショウキに言った。
「すまんが、向こうに着くまで取り敢えずこの部屋から出ないでくれよ〜」
「はい」
「まぁ明日の昼くらいには着くだろうから、宜しく〜」
「はい」
そう言うとスフェーンは部屋の奥のガレージに向かうと扉を閉めた。
『しかし予想外でしたね』
「全くだ、こんな偶然があるもんとはね…」
口で煙草を咥えながらバイクについた砂を落としているスフェーンはルシエルと話す。
「良い子だよ、前に載せたクソガキにアカを煎じて飲ませたいくらいだ」
『まぁ、あの時はまだ反抗的でしたからね…』
そう言い昔の思い出を語っていると、ルシエルは今の状況を例える。
『例えるならヒッチハイクで目的地に当たってしまったようなものでしょうか?』
「何だろう…似ているようで似ていないような…ってか狩野英考かよ」
そう言いながらブラシで砂を落とし終える。
「着いたらローン返済をしないとな…」
『ですね、今のローン金額は…』
「言わんくってええねん」
スフェーンはそう言うと、工具箱を片付けて彼女は溢した。
「やっぱオートマトン邪魔やったな」
『散々っぱら使い倒して来て何を言っているんですか?』
これには真顔でルシエルも反応せざるを得なかった。
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