TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#107

「いやぁ、本当にありがとうございました」

 

そう言い頭を下げている一人の少年、半袖長ズボンの彼は自分と似た身長で、スフェーンに感謝していた。

 

「まぁこっちも偶々でしたし。見つかって良かったですよ」

 

そう返し、スフェーンは少年を見る。

彼の名はハヤブサ・コヤマと言い、このコンテナハウスの管理人をしていると言う。

 

「何とお礼を申し上げたら良いか…」

 

そう言いショウキの頭を軽く撫でると、彼は少し嬉しそうにしていた。

 

「兄ちゃん!」

「無事で良かったよ…」

 

そう言う彼の目は隈ができており、あまり満足に寝られていなかった様子が窺えた。

 

「怪我はないか?」

「うん!」

 

ショウキはそのまま他の数人の子供達と共にコンテナハウスの奥に消えていくと、彼は言う。

 

「如何ですか?少し休憩でも…」

「あぁ、態々有難うございます」

「いえいえ、これくらいの事はさせて欲しいです」

 

そう言い彼は簡単にドラム缶とパイプ椅子を置くとそこにやかんから直接麦茶を紙コップに注いだ。

 

「すみません、今はこれくらいしか出せるものがなくて」

「いや、全然有難いです」

 

そう言い注がれたよく冷えた麦茶を飲むと、

 

「スフェーン姉ちゃん」

 

そこでショウキが話しかけて来た。

 

「今晩空いてる?」

「え?ま、まぁそうね…」

 

スフェーンはそう返すと、彼は言った。

 

「じゃあさ、お礼がしたいから泊まって行ってくれない?」

「「え?」」

 

彼の提案にスフェーンとハヤブサは同時に驚いて声を出した。

 

「何を言っているの?」

「おいショウキ…」

 

二人は彼に言うと、ショウキは言う。

 

「だって、色々とお世話になっちゃったからさ…」

 

そう言い彼は食事やさっきの一件を言うと、ハヤブサは顔を青くしながら土下座をした。

 

「ほんっっっとうにうちの子がご迷惑をおかけしました」

「えぇ、いやぁ…そんな土下座までしなくても」

 

そう言うと、それほど気にしていないと言って彼を宥めていた。

 

 

 

その後、色々と相談した上で…と言っても、ほぼショウキが駄々を捏ねてそれに根負けしたハヤブサが首を縦にしたのだが。

 

「子供に甘すぎでしょ」

「いやぁ、幾分こちらの方で目を離したのが原因ですし…」

 

思わずそう突っ込みたくなる彼の対応にスフェーンは苦笑しながら、夜までお供する事になった。

 

「今日はお客さんよ!」

 

そう言い少女、名前をヘレンと言ったその子が言うと他の子供達はスフェーンを見た。

 

「だーれー?」

「知らない人〜」

「この人、ショウキを連れて来た人だよ!」

 

そんな話をしながら椅子に座るスフェーンは軽く挨拶をした。

 

「初めまして、スフェーン・シュエットと言うの。宜しく」

 

彼女は言うと、子供達も陽気な声で返す。

そしてコンテナハウスで暮らす彼等はスフェーンを見て親しげに話していた。

 

「お姉さん、ショウキを見つけて有難う」

「如何いたしまして」

 

そう言いスフェーンは話しかけて来た少女の頭を軽く撫でた。

すると着替えて出て来たショウキがスフェーンの腕をとった。

 

「スフェーン姉ちゃん」

「ん?如何した?」

 

聞くと、彼はスフェーンに言う。

 

「近くの案内してあげる」

「あらそう?」

 

そしてそのままショウキはスフェーンの腕を引っ張ると、彼女を案内し始める。

 

「此処は東浜埠頭って呼ばれているの」

「メイコー・トライデントもよく見えるよ」

「本当ね〜」

 

そう言い視界にさっきからよく見えている巨大な吊り橋を見る。

前の峡谷に掛かった橋とは違い、こっちは海の上に建造された完全自動車専用の橋であり、橋の上をコンテナを積んだトラックが小さく見えるほどの大きさで走っていた。

 

「大きいわね〜」

「私たちはもう見飽きていますけどね…」

「そりゃあなた達は地元民ですからね」

 

そう言い、ヘレンはメイコー・トライデントの一つを見上げる。

橋の下を多くの貨物船や飛行艇が通過しており、今日も今日とて大量の貨物が出入りしていた。

 

「普段お仕事はしているの?」

 

スフェーンは聞くと、ショウキは頷いた。

 

「僕達、たまにバイトをしているよ」

「バイト、へぇ〜良くやるわね」

 

そう言って関心していると、ヘレンは返す。

 

「むしろお兄ちゃんと同じくらいで一人で運び屋をしている方が凄いですよ」

「え?そう?」

「えぇ、子供一人で運び屋なんて普通やりませんよ」

 

ぶっちゃけ慣れている上に運び屋なんて言われた仕事をこなし、荷物を目的地まで運ぶだけだし。危なそうな仕事は前の経験からルシエルが省いてくれる。

 

「そんなものかなぁ…意外と一人で出来るものよ」

「お兄ちゃんみたいなこと言いますね」

「あらやだ」

 

スフェーンは先ほど出会ったハヤブサを思い返すと、二人はコンテナハウスでできた集合住宅を歩く。

 

「みんな此処に?」

「はい、私たちはお兄ちゃんに拾われた孤児達ですので」

 

ヘレンはそう話すと、スフェーンは軽く頷いた。

 

「なるほど、孤児ね…」

「あなたは?」

「私もそうさ、運び屋やり初めて五年くらいかな」

「わぁ、ちょうどお兄ちゃん達と出会ったのと同じくらいだ〜」

 

そう言い、スフェーンについて来た他の少女が言う。

 

「ハヤブサ・コヤマ君か、良い子だったなぁ…」

「お兄ちゃんと同い年くらいじゃなんですか?」

「なんか、おじさんくさいです」

「…」

 

しょうがないじゃん、こっち元々大人なんだし元おっさんだしさぁ。

そう内心思いながらスフェーンは子供達と共に家の近くを軽く散策した。

 

 

 

そしてその日の夜、

 

「では今日は!」

 

ヒエンと言う少年の音頭でダイニングに並べられた出前ピザや飲み物を並べたテーブルの一つに座る。

 

「ショウキの帰還を祝してカンパーイ!!」

「「「「カンパーイ!」」」」

 

それに合わせて子供達もカップを掲げた後、奇跡の帰還を果たしたショウキと、彼を連れてきたスフェーンに駆け寄っていた。

 

「ほらほら、先に食べておかないと…」

 

そんな中、スフェーンは一人黙々と食べているペギーを見て慌てた様子で席に戻る。

 

「ずるいぞ!」

「全部食べるなよ!」

 

そう言いながら子供達はパイナップルピザやチーズピザといったジャンクフードを自分たちの好きな分だけ食べ始める。

 

「…」

 

そしてその様子を見ながらスフェーンは少しだけ笑みを見せると席を立ってコンテナハウスを後にする。

 

 

 

そしてそのままコンテナハウスの外の岸壁に腰をかけて空を見上げる。

 

「…」

 

妙な事になったとスフェーンは思いながら一人微笑む。

懐かしい感覚とも言える。遥か昔や、孤児院に赴いた時に大量の孤児達に囲まれ、そこでせがまれるように土産話や出先での思い出話なんかを披露していた。

 

「はぁ…」

 

もう五年近く前の話だ。

もうすぐカレル島でブルーナイト赤砂傭兵団が呼集した会談が行われる。

アイリーンから独立した赤砂傭兵団だが、その影響は曲がりなりにも大きい。

 

今では企業連合と称されているアイリーンを中心とした都市連合はその勢力を今も拡大させていた。

 

『今まで全体主義で成功した国家や組織を、私は知らないのですが…』

「せいぜい社会主義国くらいじゃないのかい?」

『それも後に全て崩壊しているのですが…』

 

企業が全てのインフラや人民の管理統治を行う思想を持っている企業連合の在り方にルシエルとそんな話をする。

アイリーンから抜けた後、ブルーナイトの動向はどの情報機関も把握できていないようで、軍警に保護されていると言う噂もあった。

 

『兎も角、これから時代は荒れるのでしょうか?』

「まぁ、大災害以降も幾度となく戦闘は起こっているわけですしお寿司」

 

そう言いエーテルで未だ満ちる空を見上げる。

一部の人からすれば恐怖や厄介物の代名詞であるエーテル、今の都市があるような場所の殆どは上から降り注ぐエーテルの濃度が薄い場所を基本に作られていた。

 

「やぁ、ここにいましたか」

 

そして岸壁で休憩をしていると、ハヤブサが話しかけて来た。

 

「えぇ、あまり長居するわけには行かないでしょう?」

「煙草を吸うためではないのですか?」

 

そう言いスフェーンが片手に持っていた箱を見ながら聞くと、スフェーンは少し笑った。

 

「ははっ、あまり余人には見せたくなくてね…」

「そうですか…」

 

彼はそんなスフェーンに言う。

 

「子供が喫煙とはね…」

「あら、いけない事なのは自覚しているわよ」

 

そう言うと、ハヤブサは返す。

 

「未成年に煙草が買えるとでも?」

「それを禁止する法律もないでしょうに」

「法律ですか…随分知識が豊富みたいですね」

 

そう言うとハヤブサの表情は途端に変わり、声のトーンを落として聞いた。

 

「お前、本当は何歳なんだ?」

「…そう言う君こそ」

 

ハヤブサが聞くと、座っていたスフェーンはそのままホルスターから拳銃を抜いた。それと同時にハヤブサもクーナン.357を抜いた。

 

「ほぉ、珍しい拳銃じゃん」

「そう言う君もだ」

 

お互いに銃を向けあい、緊張した空気が広がる。

 

「銃降ろしてくんない?」

「まずは君が降ろべきじゃないか?」

「絶対撃つ気満々じゃん」

 

そう言いスフェーンはおろした瞬間に問答無用で撃たれそうな今の状況に軽く苦笑していた。

 

「「…」」

 

そしてお互いに緊張が最大になった時、

 

「駄目っ!!」

「「っ!?」」

 

二人に割って入るように一つの影が入って来た。

 

「ショウキ…」

「兄ちゃん駄目!!」

 

割り込んだ彼にハヤブサは言おうとした。

 

「そいつが何者か分からないんだぞ?」

「絶対撃っちゃダメだよ。兄ちゃん」

 

そのまま彼はハヤブサに近づきながら言う。

 

「しかし…」

「この人は関係ないよ」

「…」

 

そう叫ぶ彼の目を見てハヤブサは少し黙った後にだんだんと震えた。

 

「…本当なんだろうな?」

「うん、兄ちゃんの事。何も知らない」

 

彼はそう言うと、ハヤブサはそこで大きく息を吸った後にゆっくりと拳銃を降ろした。

 

「すまなかった」

 

そしてスフェーンに頭を下げると、彼女も安堵しながら拳銃をしまう。

 

「良いさ良いさ、似たもん同士仲良くしましょうよ」

「…」

 

ハヤブサは彼女の言葉に一瞬反応して、そしてフッと笑った。

 

「まぁ、そうだろうな…」

 

そしてスフェーンはハヤブサの顔を見ながら聞いた。

 

「君も実年齢と見た目が合わない人間なんでしょう?」

「…あぁ、その通りさ」

 

スフェーンの問いに彼は少し諦めながら頷いて返した。




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