TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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今回は十話超えるシリーズです。


#108

ハヤブサ・コヤマの情報はすでにルシエルの手によって粗方調べられていた。

彼はとある研究施設で薬物投与の結果、少年の見た目として作られた孤児であると言う。

軍警に保護された後はこの場所で孤児を引き取って軍警のバイトを行っていた。

 

「しかし孤児で苗字有りとはね…」

『言っても、貴方も苗字付きではありませんか』

 

孤児であるかそうでないかの見分け方は苗字の有無でわかる。

基本的に苗字のない人物には孤児が多く、たまに勝手に名乗っている場合もあるが、大体はインプラントチップを埋め込む際に企業側から名前を聞かれてつけられることが多い。

 

「私は勝手に名乗っているだけだし…」

『いえいえ、その前も貴方は苗字付きではありませんか』

「…」

 

帰りの最終便近い市電、自分以外に数人しか乗っておらず。アンドロイドが立って運転しており、深夜のメイコーを進む。

車通りも極端に減っており、人通りもないので代わりに軍警のパトカーが走っていた。

 

「明日はバイクかなぁ〜」

『序でに冷たい飲み物も持って行くのはどうですか?』

「おっ、それもありですなぁ〜」

 

散弾銃を片手に握る彼女はそうして軽く頷いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

銃を一時的に向けあった仲となった二人だったが、間に入ってくれたショウキのおかげで事無きを得た。

 

「スフェーン、だったか?」

「スフェーン・シュエットよ」

 

ショウキを部屋に送り返し、話があると言ってリリーと共に他の孤児達の面倒を任せて二人は岸壁に座り込んだ。

 

「改めてハヤブサ・コヤマだ」

「よろしくハヤブサくん」

「くん呼びとはな…」

「あら、いけなかった?」

「いや、大して気にしちゃあいない」

 

散弾銃を抱えて座り込むスフェーンとハヤブサは互いに顔を見合う。

 

「まさか同郷の人間がいるとは予想外だったが…」

「君の名前は知らないから関係ないだろうけどね」

「そうだな…俺も君の名前を聞いた事がない」

 

二人とも年齢詐欺を行っている者同士、と言う認識でハヤブサはスフェーンに一応の信頼を置いた。

 

「普段は運び屋をしていると言っていたな?」

「えぇ、ショウキ君を見つけたのも線路近くの砂漠の中だったわよ」

 

そう言いスフェーンは電子グローブから映像を見せた。

それはショウキが砂丘に突き刺さって犬神家をしている画像を見せると、

 

「ぶふっ、何だこれ…」

「発見当時のショウキくんでございます」

「ふっ、ふはははっ!」

 

おそらく元ネタを知っていたのだろう、ツボにハマってハヤブサは笑い転げていた。

 

「何だこれ、おひひひ…!!」

 

爆笑するハヤブサにスフェーンも笑いを堪えた様子で答えた。

 

「砂漠で生体反応があるからって探したら…ね。多分人攫いに遭って逃げ出したんだろうね」

「ひひひひっ、あはははっ!!」

 

ツボにハマった彼はひとしきり笑い終えた後に笑い涙を拭きながら言う。

 

「いやぁ、こぉれは面白い」

 

そう言ってその画像をハヤブサに送信すると、彼はスマホを取り出した。

 

「あー、ダメだ笑っちまう」

「いやぁ、私もね…同じこと思ったよ」

 

そう言いスフェーンも少し堪えるように話すと、少し息を吐いてハヤブサは煙草を取り出した。

 

「おや、君も吸っているのかい?」

「ああ、そりゃあな。これでも中身は成人だ」

 

そう言いピースを取り出して火を着けるハヤブサに、スフェーンもラッキーストライクを取り出して火を着ける。

 

「「ふぅ…」」

 

二人は一服をして同じ空を見上げる。

 

「しかし、人間同じことを考えるものだな…」

「所詮はそんなものでしょ」

 

そう言いお互いの境遇に親近感を感じているハヤブサ。

 

「貴方も追われているの?」

「そうだな…今は軍警の保護観察対象だ」

「なるほどね…」

 

軍警が身の安全に不安を覚えている人間を一時的に匿う制度であるが、その制度を利用するためには確実な証拠が必要となる。

 

「よっぽど悪どい事をされたのね」

「それは君も同じじゃないか」

「ははっ、言えてる」

 

かく言う自分もかつての仲間から一応命の危険に晒されている。明確な敵がはっきりと分かっていない以上、ハヤブサより危ないかもしれない。

 

「君は軍警に保護されなかったのか?」

「証拠がないんで無理ですね」

「あぁ…なるほど」

 

そこで全てを理解したハヤブサは少し哀れんだ目線を向けた。

 

「でも問題ないわよ。自活出来ているし」

「凄いな…軍警から補助も無いのにか?」

「まぁね、運が良かっただけよ」

 

そう言い自分の列車との会合を思い返す。思えば数奇な運命に出会ったものだ。

 

「貴方は補助を受けたの?」

「あぁ、数人の孤児を引き取る代わりにな。明日も軍警のバイトだ」

「おぉ、マジか」

 

ちょっと気になる、と口には出さなかったがスフェーンはハヤブサを見ると、彼は察したのだろう。スフェーンに聞いた。

 

「付いてくるかい?」

「もちのろん」

「…遠慮ねぇな」

 

ハヤブサは即答したスフェーンに苦笑しながら明日に再び会う約束を取り付ける。

 

「まさかアイツらが懐くとは思わなかったが…」

「あら、そうなの?」

 

聞くとハヤブサは答えた。

 

「ショウキは特にある理由で滅多に懐かないんだ」

「ある理由で…」

 

スフェーンは呟くと、ハヤブサは頷いた。

 

「あぁ、アイツは先天的な心疾患を持っていたんだが、エーテル肺炎に罹患してからな…」

 

煙草を吸い、話すハヤブサにスフェーンは聞くように言った。

 

「代わりに心疾患は治った…そうでしょ?」

 

スフェーンが言うとハヤブサは心底驚いた表情を見せた。

 

「…なぜ知っている?」

「私も似たようなもの持っているから」

「あぁ…そうか…」

 

そう言うとハヤブサは納得した。

 

「まるで異能よね」

「全くだ…」

 

ハヤブサは軽く頷きながら一服する。

 

「なんだ、てっきり排除するのかと思ったわ」

「戯け、家族を簡単に捨てるかよ」

 

彼はそう返すと、再び紫煙を曇らせながら吸う。

 

「…もし悩んでいるのなら、少しは相談に乗ってあげられるわよ」

「ははっ、そいつはありがたいね…」

 

そう言い、彼は一本吸い終えると吸い殻を海に捨ててスフェーンに聞いた。

 

「如何すれば良い?」

「その前に今の彼がどの状態か診てからね」

「そうか…」

 

家族を案じるハヤブサはそのままショウキ達の居るコンテナハウスを見上げた。

 

 

 

「はい、大きく息を吸って〜」

 

スフェーンは言うと、ショウキは言われた通りに息を吸う。

 

「すぅ〜」

「吐いて〜」

「はぁ〜」

 

スフェーンの言う通りにショウキは深呼吸をする。

 

「私の目をよく見て」

「うんっ」

「他は何も考えない〜」

「うん」

 

ショウキとスフェーンのやり取りを他の子供達やハヤブサが眺める。

 

「もう一回息を吸って〜」

「すぅ〜」

「吐く〜」

「はぁ〜」

 

そしてスフェーンの目を見ながらショウキはもう一度深呼吸をすると、スフェーンは彼の両目を覆った。

 

「もう一回」

「すぅ〜…はぁ〜…」

 

そして三回目の深呼吸を済ませると、スフェーンはショウキの顔から手を取って聞いた。

 

「如何?」

「…」

 

視界が開け、数回瞬きをしたショウキはハヤブサ達を見回す。

 

「おっ…」

 

それを見てショウキは段々と目を輝かせた。

 

「おぉ…!!」

 

そして彼は嬉しそうにはしゃぐ。

 

「凄い凄い!うるさくないよ!」

「本当!?」

 

ヘレンが聞くと、ショウキは頷く。

 

「うんっ!有難うスフェーン姉ちゃん!」

「ふふっ、どういたしまして」

 

嬉しそうにするショウキにスフェーンは微笑むと、驚いた様子でハヤブサが呟いた。

 

「どう言う手品だ?」

「簡単よ、一旦息を整えて心を落ち着かせるの」

「心?」

 

首を傾げるハヤブサにスフェーンは軽く頷く。

 

「そうよ、こう言う類は科学の力ではどうしようも無いところもあるから」

「そうなのか…」

 

ハヤブサはオカルティックな話を前に軽く唖然となっていると、スフェーンは座り込んでショウキに聞く。

 

「どう?耳鳴りとかは」

「全然しないよ!」

 

するとヘレンが聞いた。

 

「もしかしてスフェーン姉さんも、ショウキと同じで心が読めるんですか?」

 

その問いにスフェーンは頷いた。

 

「ええ、よく聞こえているわよ。貴方達が驚きながら喜んでいる声とかね」

「「…」」

 

スフェーンは言うとハヤブサ達は驚きつつも納得した様子だった。

 

 

 

ショウキやヘレン、ヒエンやピギーと言ったハヤブサの引き取った孤児達はまだ幼いのでスフェーンとハヤブサ以外は夜になって激しい眠気が襲って来ていた。

 

「スフェーン姉ちゃん」

「ん?どうした?」

 

コンテナハウスの二段ベッドでいつも寝ていると言うショウキ達。

さっきまでショウキの異能とも呼べる不思議な力を御したスフェーンに驚きや感謝をしてスフェーンの信用は一日で非常に高いものになっていた。

 

「なんか歌ってよ」

「何そのカミングアウト」

 

いきなりのリクエストに少し苦笑するスフェーン。

 

「あんまり上手いと言えないわよ?」

「いいよいいよ、どうせすぐ寝ちゃうし」

 

そう言われ、少し考えた後に選曲をする。

 

「When you wish upon a star」

 

軽くベッドで眠るショウキ達にスフェーンは透き通った声で軽く子守唄を歌う。

 

「Makes no difference who you are」

 

一般的な歌だが、軽くショウキを布団の上からポンポンと叩きながら歌うと、それを聞いていた子供達の顔は次第に緩んでいき、そのまま静かに寝息を立て始めた。

 

「…って、もう寝たか」

 

ベッドで寝ている子供達を見ながらスフェーンは音を立てないように部屋を出ると、外ではハヤブサがスフェーンに苦笑していた。

 

「何でもできるのな」

「まぁ、子育て経験一応ありますしお寿司」

 

そう言いながら二人は階段を降りる。

 

「だから子供の扱いが上手いのか?」

「慣れてる、とだけ言っておくわ」

 

そしてそのまま夜の海沿いを歩き、スフェーン達は市電の停車場まで歩く。

 

「しかし、意外と遅くなっちゃったわね」

「大丈夫…だな、その様子では」

「ええ、」

 

ハヤブサに言われた彼女は散弾銃を見せながら答えた。

 

「慣れてますから」

 

スフェーンの返答にハヤブサは軽く鼻で笑いながら聞いた。

 

「…殺しか?」

「いやいや、余分な殺生はしない主義なの」

 

そう答え、停車場の時刻表を確認する。

辺りは人影も少なく、夜の時間なので車も少なかった。

 

「帰るのか?」

「ええ、一旦装備揃えて出直すつもり」

「なるほど…そう言う事か」

 

ハヤブサはスフェーンを見ながら納得すると遠くから市電がやってくる音が聞こえた。

 

「明日の集合場所とかはある?」

「いや、特に無いぞ」

「おっけ〜、じゃあとりあえずまた明日」

「あぁ、遅刻するなよ」

「んな事しますかいな」

 

市電が停車場に停まり、扉が開いてスフェーンは乗り込むとそのままハヤブサの見送りを受けながらスフェーンは帰路についた。




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