TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#11

スクラップの山に響く銃声。

古い火薬式の小銃を撃つ数名の戦闘員。

 

「くそっ、コイツら誰だよ」

 

そしてスクラップの影に隠れて様子を伺うスフェーン。

 

「恐らく、私が元いた研究所の奴らだ」

 

その横で冷静に銃を撃ってくる奴等の予測を立てるネクィラム。一人は撃って命中したが、その直後に数人の戦闘員が飛び出して撃って来たのだ。

 

「あの箱を狙っているのだろう。そして私と、目撃者の君を消すつもりだ」

「くそったれ!なんでそんなに危ねぇんだよ!!」

「それだけ連中にとっては大事だったと言うことだ。私を締め出してから、あの企業は右肩下がりだったしな」

「チッ…起死回生の一手って事かよ」

 

ネクィラムの嫌がらせがこんな事態を引き起こすとは、コイツ疫病神か何かか?

 

「元傭兵なのだろう?何とかしないか!」

「無茶言うな!この状態じゃすぐに蜂の巣だわ!」

 

少し顔を出すだけですぐに銃弾が飛んでくる。時間は夜の冷え込む時間、こんな状態で正確に撃てるのは……

 

「暗視装置付きのサーモグラフィー装備か……」

「ほぅ、エーテルで出来た君に体温という概念が存在するのか」

「アンタはなんでそんな冷静なんだよ」

「命の危機くらい何度もあった」

 

あっさり言ったネクィラムにスフェーンは呆れてしまうと、彼は続けた。

 

「怪我した事はないのか?」

「生憎とこの身体になって今までこんな状況になった事がないんでね」

 

そう言うと銃撃の隙間を縫って引き金を引くと一人排除する。

 

「このままだと箱を奪われてしまう。スフェーン君、敵の排除を頼む」

「依頼か?お断りだ、今傭兵業はしてねぇんだ」

「逃げたところでどの道奴らは君を消しにかかるぞ」

「……チッ」

 

軽く舌打ちをするとスフェーンはネクィラムを見ながら言った。

 

「囮はできるか?」

「無論、敵を引きつけるのは得意分野だ」

 

軽く確認をするとスフェーンはスクラップの山の影に滑り落ちていき。ネクィラムは慣れた手つきで彼は持っていた信号拳銃の引き金を引くと、眩い照明弾がスクラップ置き場に輝いた。

 

「うわっ!?」

 

閃光と照明弾の熱源で視界をやられた戦闘員の一人は思わず目を閉じてしまうと、その瞬間。

 

「グハッ!?」

 

背中から至近距離で弾丸を撃ち込まれ、サイボーグの生命維持装置が自動的にスリープ状態に移行して倒れる。

 

「っ!ったくよ、どんな代物だ?」

 

こんな経営ギリギリの企業が血眼になって探していた物とは。

 

「精々期待させて貰うぜ。変態研究者」

 

そこで奪った自動小銃を手に取ると他に隠れていた戦闘員に向けて照準を合わせていた。

 

 

 

 

 

「くそっ、何処に消えた?」

 

スクラップ置き場の中、一人の戦闘員は愚痴った。

今回の目的はかつて自分の企業の研究所を退社したある技術者が持ち去ったとある武器を回収する事だった。

 

彼の居場所を見つけ、彼の周囲を囲んで何年も待ったその成果はあった。

企業の勢力図を一変させると噂の兵器の奪還は、業績が傾いて倒産しかけの我が社に於いては必要不可欠な商品だった。

 

しかし、試作品を発見し。開発者の男を始末しようとした矢先、我々は劣勢に立たされていた。

 

「隊長」

「二人一組で行動しろ。私は箱を回収する」

 

自動小銃を両手に装甲服を着て居る残った五人は先ほどから通信が途絶える仲間を見て警戒心を上げていた。

 

「最悪、例の箱を回収したら撤退しても構わん」

「はっ、了解しま」

 

その瞬間、その隊員は頭部に手を当てられ。一瞬発光をすると強制的にスリープ状態に移行されて倒れる。

 

「!?」

 

一瞬の出来事に驚いて居るとその小さな影は持っていた拳銃を片手に引き金を引いて隊長の頭部にヒビが入るほどの硬さの超硬ワックス弾を撃ち込んだ。

 

「くそっ!」

 

その小さな影に向かって対応した一人の隊員が自動小銃を撃つと小さな影は巧みに身体を曲げて銃弾の軌道を避けると、片手で地面を軽く突いて脚を隊員の首元に絡ませた。

 

「ぐあっ!!」

 

そして締める力を強め、もう一人を落とす。そして奪った自動小銃の引き金を引いて近くに居た一人の肩を上から撃ち込むと、彼は完全なサイボーグでは無かったようで若干の血が出て悲鳴を上げた。

 

「あぁぁあっ!?!?」

 

そして残った一人の隊員は突然襲って来た目の前の小さい影の戦闘力にすっかり戦意を喪失していた。

 

「ひっ!?」

「悪いわね」

 

しかし怯える兵士相手に小さな影は容赦なく胸部にワックス弾を撃ち込んでいた。

 

 

 

 

 

そして戦闘を終えると、そこでスフェーンはネクィラムに色々と追求される。

 

「凄まじい戦闘力だ。それもエーテルのお陰か?」

「元からだ」

「激しい活性化エーテルのあれは?」

「この体になったからだ」

「エーテルを操れるのか?」

「かもな」

 

全員倒し、九人いた戦闘員達を引っ張って一箇所に集めた後にネクィラムが言った。

 

「しかし、なぜ一箇所に集めさせた?」

「彼等は皆スリープ状態、記憶情報が残って居ると色々と困るだろう?」

 

そう言うと、彼は一人のサイボーグの手に触れると一瞬光って戦闘員の体が一瞬痙攣すると、その後は再び気絶状態に戻っていた。

 

「何をして居る?」

「君なら分かるだろう。記憶データの消去だ」

「…記憶をハックできるのか?」

「昔、エーテルの研究をした時に見つけた副産物だ」

 

色々と役に立って居ると言い、彼は一人ずつ記憶の改竄を行なっていた。

記憶が情報化されるサイボーグとはいえ、人の記憶機能を改竄するのは至難の業だ。下手すると双方の人格が壊れる。

それを簡単にやってのけるネクィラムは生きる技についても事欠かないらしい。まぁ、でなければ企業に喧嘩売ってここまで生きられないか。

 

「君もできるんじゃないのか?」

「人の記憶に介入するのは好かないんだ」

「ほうほう、面白い奴だな」

 

『容赦なく簡単に人の記憶を改竄するお前が一番怖い』と思わず口に出かかったが、されてもらって居る側なので突っ込まない事にした。

そして目を逸らしたかったので話題を切り替えた。

 

「どうしてコイツらはあの箱を壊さなかったんだ?」

「恐らく、試作品が一つしかない上に設計図も無かったからだろう」

 

戦闘を終え、記憶の改竄をして。改めて箱を回収に来た二人はスクラップの山から箱を引っこ抜く。

 

「何が何でも壊したくない代物ってことね」

 

引っこ抜いた箱を見てスフェーンはその堅牢さに少し驚く。

 

「箱は頑丈に出来て居る。引っ張っても問題ない」

「私に運ばせるか?」

「無理なのか?」

「帰るのに一ヶ月かかるだろうよ」

 

スフェーンは体力は見た目相応だ。戦闘員を倒せたのは経験あってのこと。既に一戦やってクタクタだった。

 

「仕方ない、ここに置いてあるオートマトンを借りよう」

 

そんな私を見て気遣ってくれたのか、ネクィラムはスクラップ場に放置してあったオートマトンを動かした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、カール・ポートの貨物ターミナルに停車して居るスフェーンの列車にネクィラムの姿はあった。

 

「ふむ、君はこれで旅をして居るのか」

「ああ、運輸ギルドから仕事を受けて居る」

 

あの後、報酬の装備品が大き過ぎてネクィラムの部屋に置いとけないと言うことで仕方なくスフェーンは自分の列車に荷物を運ばせていた。

拝借したオートマトンで移動するのもあれということでスフェーンが列車に戻って自分のオートマトンを出したりした影響で一日が明けてしまった。

 

「さて、無駄話はこれくらいにして早速調整を済ませよう」

 

そして彼は運んだ金属の箱に手を当てると、生体認証をしてロックが解除され、金属の箱が開いた。

その中には大きめの装備品が確かに入っていた。

 

「おぉ……」

 

その装備品の見た目にスフェーンも少し感嘆の声を上げた。

 

「XM3388、試作名称デイビー・クロケットⅡ……かつて私が開発した戦術E兵器だ」

「E兵器だと?しかも戦術?」

 

言われて想像するのは鉱山地区や大規模都市に存在して居る巨大な砲身と砲塔だ。

しかし目の前にあるのは半分に折り畳まれた砲身とその機関部の、本当にオートマトンの肩に載せられる程の大きさの兵器だった。

するとネクィラムは短く頷きながらこれが出来た事情を話す。

 

「エーテル研究の代わりにと言われて私が作った。試作品だが、完成直後に持ち出したから実践でも十分使える。レーザー何かよりも破格の威力を発揮できるだろう」

「ちょっと待て、あんたなんでE兵器が作れる?」

 

E兵器は大災害の後、製造技術は失われ。残って居るのは大災害を生き残った物ばかり。今は修理をしてなんとか誤魔化して稼働して居るものしか存在していなかった。

それを目の前の男は、大災害の後に作ったかのような口ぶりで話していた。

 

「かつて、私のエーテル研究を師事した人がE兵器の開発に携わっていた。その系譜で私も知ったまでだ」

 

哀愁を漂かながらネクィラムは答えると、スフェーンはそれ以上言うことは無かった。

 

「さて、すぐに研究を再開したい。何か要望はあるか?」

 

まるで厄物を押し付けるように聞いてくるネクィラムにスフェーンは少し考えた後に言った。

 

「この車両の砲塔に搭載できるようにしてくれ」

「分かった。要望はそれだけか?」

「ああ」

 

そしてネクィラムは要望に応えるために内蔵されていたコードを自分のオートマトンと繋ぐと半自動的に適合が行われた。ものの数十秒でオートマトンとの調整が完了し、次に列車との適合も行われ。すぐにそれも終わった。

 

案外あっさりだと思って居ると、ネクィラムが察したように言った。

 

「目が見えないんだ。簡単に仕事を終わらせられるようにするしか無いだろう?」

「……」

 

そして仕事を終えると、スフェーンは約束通りネクィラムの研究室に戻った。

同期した武器に関しては少し待ってからで良いだろう。

 

「さて、私は何をすればいい?」

「ああ、まず幾つか質問をさせて貰う。その後、軽く血液採取を行う」

「それだけか?」

「ああ、やることはそれで十分だ」

 

後はエーテルが教えてくれると言い彼は簡単な採血キットを取り出す。市販の簡易薬物検査なんかで使われる採血キットだった。

 

一週間の検査期間という約束でスフェーンはネクィラムの研究に協力する。報酬があんなとんでもない武器だったのは予想外だったが、人の価値はそれぞれなのでスフェーンは甘んじて受け取っていた。




武器解説
コレッタM92
大手銃器メーカーのコレッタ社が開発した拳銃型コイルガン、一般的なコイルガンで有り。高貫通な5.7mm拳銃ケースレス弾を使うメジャーな拳銃。至る場所で使われており、信頼性の高さが売りの商品である。
スフェーンは無意味な殺傷を防ぐために基本的には低致死性の超硬ワックス弾を使用している。


M44カービン
スフェーン達を襲った戦闘員達の持っていた自動小銃。軍警がかつて主力の装備品としていた6.8mm口径のケースレス弾を使用するカービン銃である。コイルガンとの複合銃ではなく、完全な火薬式の火器であった。
旧式の銃であり、今ではほとんど見られない。



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