洋上でソノブイの回収を行っているスフェーン達。
蟹工船の要領でゴムボートを中心にショウキ達が電動サーフボードで海域を巡ってソノブイを回収し、ゴムボートにある程度乗せたところでハヤブサ達の待つUS-2に戻ってくる。
「私もウェット借りればよかった」
「次回来るなら、是非ともそうして欲しいものだね」
ゴムボートに乗り込んでソノブイを両腕に抱えてそれを機内に滑り込ませるスフェーン。
そして機内に押し込まれたソノブイをそのまま機内のラックに置いていくハヤブサはそう返すと、小型のゴムボートに積んでいたソノブイは簡単に機内に押し込まれた。
「わぁ、いつもより楽ですね」
「スフェーンお姉さんがいると、楽」
ゴムボートにはヘレンとぺギーが乗っており、少し離れた海ではショウキとヒエンが電動サーフボードを乗り回してソノブイのビーコンを頼りにボードに引っ提げていた。
「そりゃどうも」
ゴムボートから機内に戻ったスフェーンはそんな二人に返すと、ゴムボートは再び海の向こうに向かう。
「でも楽なのは確かだな」
そう言い彼はソノブイを収めるラックを見る。
「手伝ってくれ」
「はいはい」
そして二人は床に転がっているソノブイを持ち上げて上のラックに収めると、アイドリング状態の機体の位置情報の確認を軽く行う。
「流されないようにね」
「無論だ。ただここら辺に海流は無いけど」
彼はそう言いながらスフェーンと共に二本目のソノブイをラックに仕舞う。
「波はたってるからどうせ流されるわよ」
「時化なきゃいいが…」
そう言いながら二人は次のボートを待つ。
海域には無数のビーコンが等間隔で配置され、防潜網のように港を警戒している。
「これでどれくらい儲かるの?」
「一本で俺達の三食分くらいだ」
「おう、中々に高給取りじゃん」
そう言いラックに収められたソノブイを見ながら呟く。
「その分誰もやりたがらないってことさ」
「…陸の屑鉄拾いみたいね」
「実際同じだろ」
戦場跡などで死体となったサイボーグや破壊された戦闘機械から金属スクラップを回収して金にする屑鉄拾い。薄給だが、安全なのでやるのは金に困って何でもやる孤児などだ。ただ陸の方が数も需要も多いのでソノブイ回収よりは儲からない。
「運び屋はどうなんだ?」
「ん〜、まじでまちまち。儲かる時と儲からん時で差が出る」
「不定給と言うわけか…」
ハヤブサはそう言い次の二陣のボートに乗り込んでソノブイを機内に入れる。
「怖いわよ〜、特にローン持ちになるとね」
「気持ちは分かる」
ローン持ちかよと軽く苦笑しているハヤブサを他所にスフェーンはソノブイを肩に二本担いでラックに押し込む。
体力が無いとはいえコツさえ掴めばこう言う事だってできるんやで。
「わぁ〜、スフェーン姉ちゃん凄い!」
「ゴリラかよ…」
「おぅハヤブサ、ちょっとこっち来いや」
「やだよ」
ソノブイ二本を担いだスフェーンは言うとハヤブサは機内に戻りながら返す。
「んで、何本積むの?」
「取り敢えず、今日はこのラックが埋まるまでだな」
「まじかぁ…」
前方にショウキ達の座る座席があり、その後ろに電動サーフボードを乗せる場所があり、その後ろにラックがある。
「これでも早く終わりそうだぞ?今日はソノブイが流されていないからな」
「Oh…それは悲惨ね」
流されたソノブイを探すだけで一苦労しそうだと溢すと、ハヤブサは言う。
「時化たときはまともに飛ぶ事もできんしな」
「分かる。私も台風来て線路封鎖されたらキツイもの」
そう言い今まで指名依頼を受けた時に台風にぶち当たって苦労した事を思い出す。
「世の中、簡単に稼げる仕事は詐欺と強盗以外ないって事だ」
「何方も軍警にしょっ引かれるやつじゃないですかやだー」
スフェーンはそう言うとハヤブサは無線で聞く。
「どうだ?そっちの様子は?」
すると海の上を走っていたヘレンが答えた。
『大丈夫、あと二個で回収終わるよ』
「分かった。戻ったら次の海域に飛ぶぞ」
『了解』
今回のソノブイ回収はいつか海域を巡って行う。その為まだまだ仕事は残っていた。
「いくつ回る?」
「言われたのは二つだ。海に浮かんでいるソノブイを蟹工船の要領で回収する」
もはや自ら蟹工船方式といったハヤブサにやや苦笑した。
「おら地獄さ行くだ、だっけ?」
「行ぐんだで、な?吉幾三かよ…」
そう返されながらスフェーンは機内でヘレン達が帰ってくるのを待っていた。
その後、ソノブイ回収の為に機内に大量のソノブイがラックに乗せられる。その数は四五本。
「だいぶ乗せるのね」
「あぁ、最悪飛ばなくても沈まない程度まで乗せられるしな」
コックピットの副操縦席に座りながらスフェーンは言うと、機長席でハヤブサは言う。
後ろの座席ではショウキ達が疲れた様子で席に座っており、今にも寝そうであった。
「行ける?」
「あぁ、いつでも」
ヘルメットを被り、バイザーを下ろして二人は確認すると、
「離水しろ」
「了解」
スロットルを倒してプロペラを回すと、US-2は持ち前の技術を駆使して五秒ほどで機体を水面から離してしまった。
「うほ〜、流石の離陸性能」
「でなければ長年使われないさ」
離水した後、スフェーンはハヤブサとそんな事を言い合う。
「腕は確かなようだな」
彼はそう言い、離水時にスフェーンが見せた操縦桿の握り方を軽く褒めた。
「だから言ったでしょうに。これでも経験しているの」
「でも飛行艇は初めてだろう?」
「知識はあるの」
「知識と経験はまるっきり違う物だろうが…」
スフェーンの返答に少し苦笑しながらハヤブサは操縦桿を動かしていた。
その後、ハヤブサ達を乗せたUS-2は空港に向かって着陸体制に入る。
『管制塔からUS9943、C滑走路への着陸を許可します』
「了解、US9943。C滑走路に着陸する」
後ろで一仕事を終えて寝ているショウキ達のために長めに滑走を付けてゆっくりと着陸するハヤブサ。
海を走ってソノブイを回収していたショウキ達は疲れて椅子に座って爆睡しており、着陸時の衝撃で目を覚ます様子もなかった。
「優しいわね」
「何、いつもの事だよ」
そう言い、彼はエンジンの回転数を落として速度を落とすとそのまま誘導路に進入する。
「着いたわよ〜」
「…んにゅ?」
スフェーンの呼び声にショウキが反応して軽く目を擦らせながら目を開けた。
「んっ、んん〜っ!」
そして軽く腕を伸ばして伸びの姿勢を作ると、その後窓の外を見た。
「着いたって〜」
そしてショウキは目を開けると、他の孤児達を軽く揺さぶりながら起こす。
そしてヘレン達も起きてシートベルトを外すと、スフェーンが言った。
「あぁ、ちょっとみんな〜」
「?」
声をかけられ、軽く首をかしげたショウキ達にスフェーンはクーラーボックスの中から缶ジュースを取り出した。
「ほい、好きなの一人一本ね」
「…」
スフェーンの取り出した飲み物を前にショウキ達は目を軽く丸くした後に少し輝かせながら聞いた。
「いいの?貰って」
「良いよ良いよ、疲れた時には甘いものってね〜」
そう言うと、ショウキ達はスフェーンの持って来たクーラーボックスに近づいて缶ジュースを手に取った。
「おいおい、ジュースを飲ませるなよ…」
「むしろアンタが甘味に厳しすぎるのよ。戦時下かよ」
そう言いながら缶を開けて嬉しげに飲むショウキ達を見る。
彼らの家の冷蔵庫にはジュース系の飲み物が一切無く、おそらくハヤブサが虫歯になるからと飲ませていなかったのだろう。
「んな事してたら嫌われるわよ?」
「虫歯になったりどうするんだよ」
「乳歯だからもう一回生えてきますって」
「ふさげるなっちゅうねん」
スフェーンの暴論にハヤブサは軽く反論する。
「癖になってバカ飲みし始めたらどうするんだよ」
「薬でも一回やっただけで依存症になるかよ。おぉ?」
二人はそんな事を言っていると、足元ではクーラーボックスに詰め込まれた缶ジュースにショウキ達はとても喜んでいた。
「まぁとりあえず、回収したソノブイの分の報酬を貰ってくるわ」
「おう、行ってら〜」
そう言い、格納庫を出て行くハヤブサを見送ると、足元でペギーが聞いた。
「もう一本…いい?」
彼女の手には空になったペプシコーラの缶が握られていた。
それを見てスフェーンは少し笑って答えた。
「…ふふっ、良いわよ」
「っ!!ありがとう…」
いつもは物静かな彼女は嬉しそうに二本目のメロンソーダの入った缶を手に取った。
「スフェーン姉ちゃん〜」
「ん?なぁに、ヒエンくん」
「これは?」
そう言い彼は一本のペットボトルを見せた。
「梅よろし、少し酸っぱいけど甘くて美味しいのよ?」
「へぇ〜、飲んでみよ」
そう言って彼は蓋を開けて一口飲むと、
「…?」
良く分からない表情を浮かべた。
「甘い…?酸っぱい…?」
飲んで口の中が混乱しているヒエンにショウキが聞いた。
「美味しいの?」
「うーん…よく分かんね」
ヒエンが言うと、ショウキはそのペットボトルを取って一口飲んだ。
「うわっ、間接キスじゃん。きったね」
「うるさいなぁ、いつもの事じゃんかよ」
そう言ってわちゃつき始める二人に呆れた表情でスフェーンはつぶやいた。
「間接キスって…子供かよ」
「子供ですが?」
「…そうだった」
前提が覆る話にスフェーンは軽く眉間に指を当てた。
「私たちはあなた達みたいに年齢詐欺していないんで」
「グホッ」
ヘレンの手痛い言葉のボディーブローが急所に命中しながらスフェーンはそのまま地面に倒れた。
「痛たたた…」
「大丈夫?」
ペギーが話しかけると、スフェーンは少し顔を青くしながら立ち上がった。
「大丈夫、君のお姉さんに精神攻撃をくらっただけだから…」
「…」
片手に空になったメロンソーダの缶を持ってペギーは大丈夫そうなスフェーンに安堵していた。君、飲むの早すぎない?
「だって滅多に飲めないから」
「…あぁそう」
心を読んだように言った彼女に相変わらず感情が顔に出るのかよと自分に毒吐きながら機体に背中を置いた。
「おーい」
すると、ちょうどその時ハヤブサが軽く手を振りながらタブレットを片手に戻ってきた。
「終わったぞぉ…って」
戻って来た彼は、機体の横で数多のジュース缶を空けて昼酌をしていたスフェーン達を見て目元を暗くした。
「「「「「あっ…」」」」」
途端、全員が同じ事を思うと、ズカズカとハヤブサは近づいてスフェーンの頭を思い切り叩いていた。
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