スフェーンがハヤブサ達の仕事を手伝ってから約二週間、スフェーンはバイクに乗って海沿いの道を走っていた。
『ふひひひひw』
そしてインカム越しでひたすらに笑っているハヤブサにスフェーンは少々鬱陶しい様子で返した。
「いつまでわろてんねん」
『いやw、だってさ…ひひひひっw』
「キモいんで、やめてもらって良いですかね?」
スフェーンはいよいよ怒り調子でインカムに向かって言うと、車の無線でヘレンが言った。
『いやぁ、スフェーンさん。あれは笑いますよ〜』
『にしては兄ちゃん笑いすぎだよ』
ヒエンはひたすらに笑っているハヤブサに少々嫌気がさした様子でぼやいていた。
事の発端は数十分前、メイコー近辺の海沿いの道路をスフェーンは休暇も兼ねてツーリングをしようとしたのだが、そこで同じく暇を持て余していたハヤブサ達もついてくると言い出したのだ。
「ついでに美味い店を紹介してやろうか?」
「おぉ、是非頼むわ」
この一言でスフェーン達はドライブをする事になり、くじでスフェーンが先導する事になった。
「バイザーに目的地が出る。それに沿って移動しろ」
スフェーンのヘルメットを確認してそこに目的地のデータを入れたハヤブサはバイクに跨っていたスフェーンに地図を入れたヘルメットを返した。
「バイザー付きで助かった」
「あら、顔も隠せる万能ヘルメットよ?」
そう言いながら頭にヘルメットを被ると、バイザーを降ろして完全に顔が隠れたヘルメットを見た。
「犯罪者御用達ではないのか?」
「大丈夫よ、大半の都市規則じゃあ違法品に入っていない」
そう言い彼女はバイザーに映る赤い線を見る。
「んじゃ、早速行きますか?」
「あぁ、行こうか」
スフェーンはハンターカブに乗り込んでエンジンをかけると、足でクラッチを動かして走り出した。
『道を間違えるなよ』
「阿呆、高速のインターチェンジでもなきゃ間違えんよ」
『…道を間違えた事あるんですか?』
インカムでヘレンが聞くと、スフェーンは沈黙した。
『何、誰だってミスるもんだ。特に人生経験が増えれば増えるほどな』
フォローするようにハヤブサは言うと、先導するスフェーンを後ろから見ていた。
すると唐突にハヤブサは思いついたようにスフェーンに言った。
『そうだ、今度お前の仕事も手伝わせてくれよ』
「はい?」
いきなり何を言い出すかと思うと、彼は言った。
『いやぁ、この前スフェーンに仕事を手伝わした手前、どう清算しようか考えていたんだ』
「えぇ〜…うちそんな広くないんですけど」
スフェーンの暮らすキャビンはせいぜい客車程度の広さ。おまけに半分はガレージと作業台の置いてある元荷物室なので、そこに五人の少年少女が暮らせる余裕があるかと聞かれると、少々不安が残った。
『何、実際に乗ってみれば分かるだろう』
『多分、お兄ちゃん達が来ても十分暮らせると思うけど…』
実際にスフェーンのキャビンで街一日過ごしたショウキが言うと、ハヤブサはそうかそうかと少し嬉しそうにしていた。
『空いている日は無いのか?』
「あるけどさぁ…君たちがするような仕事ってあまりないよ?」
少なくともこんな子供一人で仕事ができるくらいなので、たいして人数を必要としないのだ。
それに、そんな力仕事はコンテナに積み込む時点で終了している。
『ぶっちゃけ兄さんは軍警以外の列車に乗りたいだけでしょう』
『おいっ』
「ほほぉ〜」
それは良い事を聞いた。以外に見た目相応な部分もあるではないか、ハヤブサ君よ。
『言っておくが、お前さんほど自由人でも無いからな?』
「何だって?」
聞き捨てならないと思いながらスフェーンは信号で待って横に止まったヤリスクロスを見る。
「おぉ怖いよ」
窓を開けてハヤブサはスフェーンから感じる圧を笑っていなす。
「誰が自由人だって?」
スフェーンはバイザーの下でそれはイイ笑みを浮かべて聞くと、信号が切り替わったのでスフェーンは仕方なく追求を諦めて走り出す。
海沿いの道を走り、スフェーンはインカムで聞く。
『しかしイイ景色ね〜』
「あぁ、ほぼコイツらは興味無いらしいがな」
そう言いハヤブサは暇すぎてゲームをしているショウキ達を見ていた。
「いい景色ですなぁ」
『いい景色ですなぁ』
太陽の反射する海を見ながら二人は言うと、スフェーンは聞いた。
『向こうに到着するのってどのくらいなの?』
「え?バイザーに到着予想時間映っているだろう」
『あっ、そうか』
スフェーンは言うと、ハヤブサはそんな彼女に少し呆れて言う。
「もう少し確認してから聞けよ」
『おぅおぅ、なんだ?私への当てつけか?』
「聞くかどうか一旦確認すれば良いだけの話だろう?」
『ほぅ、そうかい。そりゃ悪かったよ』
軽い喧嘩をしながら言うと、スフェーン達は片側一車線の交互通行の道路の前で止まった。
片側が道路工事中であり、そこにはタイマーをつけた信号機が置かれていた。
二分ほどの長めの信号、そこでスフェーン達は少し休憩していた。
『しかしあれね、場所が郊外だから信号が少なくて疲れるわね』
「それは仕方がないさ」
着実に進む信号の秒数、暇なのでスフェーンはハヤブサと雑談を交えていた。
『よっしゃ』
タイマーが刻々と迫り、スフェーンはアクセルに手をかける。
「そろそろだぞ〜」
『OK〜、分かっているわよ』
スフェーンはそう返し、タイマーを見上げる。
『5…4…3…2…1…0…』
そしてタイマーがゼロになってスフェーンは意気揚々と言った。
『ゴーッ!!』
ブォンッ!!
そしてアクセルをフルスロットルで回した時、スフェーンのハンターカブはなぜか前に進まなかった。
「ん?あれっ?」
それに少し慌てたスフェーンはクラッチを押すと、
ガコンッ!
一旦車体全体が揺れると、その直後に
「「っ!?」」
後ろで見ていたハヤブサとヘレンは驚愕した。
「危ねぇっ!!」
スフェーンのバイクはそのまま勢いよく暴れ馬の如く前輪が浮き上がり、それを御そうと慌ててハンドルを握るも、そのままバイクは目の前の『安全第一』の看板に突撃した。
「ちょっと待ってwちょっと待ってwちょっと待ってw」
「…ぶふっ、ふはははww」
それを見ていたハヤブサ達は軽く手を振りながら崩れると、少し進んで止まったヤリスクロスの前でスフェーンはバイクを手動で後退させていた。
「大丈夫かw?スフェーンw?」
「くっ、くふふふっww」
それを直で見ていたヘレンも思わず笑ってしまっていると、
『?』
スフェーンは何事も無かったかのような雰囲気で首を傾げていた。
「スフェーンww」
「大丈夫ですかw?」
二人していきなり笑い出したので、後ろでゲームをしていたショウキ達三人は首を傾げていた。
『え?何がですか?』
「「いやいやいやw」」
シラを切ろうとするスフェーンに二人は手を横に振りながら無理があると言って笑う。
「スフェーン姉さん、大丈夫ですかw?」
『何が大丈夫だって?』
笑いを堪えている様子のハヤブサ達にスフェーンは言うと、
「いやいやw、こっから見てたらえらい勢いでw前輪が上がってたんだがw!?」
『え?いや、突っ込んでなんかないけど?』
「ロデ…ロデオみたいでしたよwww」
ヘレンは爆笑していると、ハヤブサは言う。
「『安全第一』って書かれている所にw、なんかw突っ込んでましたけどw」
爆笑しているハヤブサ達にスフェーンは軽くため息を吐いて諦めた。
『…大丈夫じゃないわよ!!』
スフェーンはそこで叫んだ。
『なまら怖かったわ!!』
バイクを止め、ずらした看板を元に戻しながら言う。
『死ぬかと思ったよぉ』
「あはははっw」
「何があったの?」
困惑するショウキが聞くと、スフェーンは答えた。
『いやぁね、いつの間にかニュートラル入れてたのよ。んでセカンドだと思ってエンジン吹かして、動かないからアレッ?と思ってギアいじったっけ。そしたらロー入っちゃって、もうウィリーさ』
「?」
スフェーンの解説に首を傾げていると、再び長めの信号を待つ彼等。
「大丈夫なんですか?」
『いやぁ、私はなんで怪我をしなかったのか不思議でならないよ。あんなウィリーしてさ』
スフェーンはそう言うと、ルシエルが言う。
『本当に運が良かったですね』
「(いやぁ、本当よ。バイザー割れていないのが奇跡だわ)」
それにはスフェーンも賛同していると、信号が切り替わってスフェーンはそろ〜りとゆっくりと走り出す。
『ふはははっww』
後ろではひたすらにハヤブサが爆笑しており、スフェーンは少し鬱陶しい気分だった。
その後、目的地である店に到着する。
その間、ドラレコに映った一通りのウィリーを見てショウキ達も一頻り大笑いしてスフェーンは無事だった自分のハンターカブを確認しながら目的地のラーメン屋に到着した。
「親父〜」
暖簾をくぐり、店に入るとハヤブサは中で待っていた鉢巻を巻いた禿頭の親父を見た。
「おぉ、お前さんか」
「いつものを頼んだ」
「あいよ」
すると後ろからショウキ達もゾロゾロと入ってくる。
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい…お?」
するとその店主は最後に入って来たスフェーンを見てやや驚いた表情をみせた。
「…」
するとその親父は次にハヤブサを見ると、彼の首に腕を回してキッチンに彼を連れ込んで問い正し始める。
「おい、お前いつから彼女連れて来たんだよ」
「は?彼女じゃねえよ」
「嘘つけ、お前みたいな男が女を連れ回すなんてしないだろうが」
そう言って店の店主と言い合っている中、やや冷ややかな目でスフェーンはショウキ達をカウンター席に座らせると、聞いた。
「すみませーん、注文いいっすかー?」
厨房に聞くと、そこでは店主の親父が振り返ると、上機嫌でスフェーンに聞いた。
「おうっ、嬢ちゃん注文は?」
「豚骨ラーメンにチャーハン」
「セットかい?」
「単品大盛りで」
スフェーンはそう返すと、店主は少し驚きながら聞き返した。
「食えるのかい?」
「えぇ、これでも食事に関しては自信がありますので」
スフェーンは言うと、親父は軽く頷いた。
「分かった、嬢ちゃんが食い倒れるまで作ってやるぞ!」
そう言うと、彼は意気揚々と厨房に入っていくとハヤブサが耳で聞いた。
「大丈夫なのか?親父、まぁまぁな量出すぞ」
「大丈夫よ。これでも出されたものは食べ切るのよ?」
スフェーンは自信ありな様子で返した。
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