その後、ウニモグを運転して留置線に停車するとハヤブサ達を降ろした。
「じゃあちょっと返してくるわ」
「分かった」
ウニモグを使って数分の場所、つまり歩くとバカ時間がかかる場所なのでスフェーンも無料レンタルのこの車を借りていた。
運輸ギルドの会員証があれば基本的にヤードにある車やカートは事前予約制だが、操車場内に限って無料で使うことができた。
「お待たせ〜」
さっとウニモグを返却し、自分の列車の前で待たせていたハヤブサ達を見る。
「お前の列車は?」
「後ろのだよ、兄ちゃん」
「え?」
ハヤブサは振り返って見ると、そこにストロークリームと赤帯の列車を見て一言。
「…ダサくね?」
「おぅおぅ、シバかれたいか?」
ド直球に言い放ったハヤブサに少しカンシャク顔でスフェーンは荷物車の両開きドアを開けてスロープを降ろした。
「ほい、乗って」
「「「わーい!お邪魔しまーす!」」」
「…お邪魔します」
スロープを走って中に入ったショウキ達と、最後に礼儀正しく乗ったペギー。そして信じられないと言った表情で最後に乗り込むハヤブサ、ちょっと君あとでお話ししようか。
「靴はここで脱ぐ、土足厳禁ね」
「「「はーい」」」
荷物室の手前でショウキ達は靴を脱いで部屋に上がる。
「ここはガレージか?」
「そんな所」
駐輪しているバイクを見ながら聞くと、ハヤブサはそのまま部屋に入る。
散々言われたけどさ、君も遠慮が中々ないよ?
「邪魔するでー」
「邪魔するなら帰ってー」
「あいよー…何でやねん」
そんなテンプレを交わしながらスフェーン達は部屋に入ると、
「うーん、淡白」
「悪かったわね。面白味のない部屋で」
そう言いベッドを椅子代わりに座るショウキ達を見る。
「レコード持ってんのか」
「ええ、良い趣味でしょう?」
そう言い本棚に仕舞われたレコード盤を手に取る。
「…渋いな」
「あら、ここの主人は私なんですが?」
そう言い津軽海峡・冬景色のレコードを手に取る。
「どうせなら『川の流れのように』を置けば良いのに」
「アンタも大概渋いぞ。そこ普通『およげたいたきくん』とかじゃ無いのか?」
「子供かよ…俺はどっちかと言うと『だんご三兄弟』の方が好きなんだが」
スフェーンは突っ込むと、次に彼は本を手に取る。
「漫画にラノベ…あとは緑化連合の本か」
「…なんか冷蔵庫を漁られている気分ね」
スフェーンは本棚を漁るハヤブサに言うと、彼は言った。
「どうせなら舞姫とか蟹工船とか置けよ」
「話が重いわ阿呆!」
スフェーンは提案された本に突っ込むと、出発準備を始めた。
その後、運転台に乗ってスフェーンは電源を入れる。
エーテル機関特有のエンジン音が聞こえると、スフェーンは計画の確認を始める。
「手伝おうか?」
「じゃあちょっと後ろの受信機に電源入れて」
「これか?」
ハヤブサはそこでスフェーンの背後にある機器類のスイッチを入れる。
「おっけ〜、運行計画も承認されたわ」
タブレットを操作しながらスフェーンは制御運転の為に視界に反対の運転台の映像を見る。
「動くわよ」
「分かった」
ハヤブサは部屋にいるショウキ達に言うと、スフェーンはマスコンを動かした。
「おっと」
ガコンと車両全体に衝撃が走り、一瞬ハヤブサがよろめいた。
「すまんね、貨物だから揺れるよ」
「お、おぅ…」
強く揺れ、走り始めたスフェーンの列車は留置線からコンテナを積み込む為の積卸線に移動する。
「動いた〜」
「でも逆向きに動いてない?」
キャビンでショウキ達がそう言っている会話が聞こえると、
「今は制御運転で後ろ向きに動かしているのよ」
「すぐに戻るのか?」
「ええ、一回スイッチバックする必要があるからね」
ハヤブサにそう答えると、スフェーンは彼に言う。
「荷物を積む時、列車が揺れるからちょっと子供達を頼むわ」
「分かった」
ハヤブサは頷くと、通路を通ってキャビンに移動した。
その間スフェーンは反対の運転台の映像を見ながらマスコンを慎重に動かす。
今回は引っ越しをする間、新しい家が見つかるまでの期間にハヤブサ達はここを訪れていた。
『珍しくお客さんですね』
「今までで一番多い人数だよ」
五人の乗客を乗せて指名依頼をこなすスフェーン。
『今回の依頼は危険度Ⅲの路線を通ります。戦闘の可能性は四八%です』
「下手したら二回くらいやり合うかも知れないわね…」
『ですので、事前に警告をするべきかと』
ルシエルの忠告にスフェーンは少し考えた後にハヤブサを呼んでこの事を伝える。
「…そんな危険な路線を通るのか?」
「まぁ…そぅ」
コンテナ積卸線で待機中、スフェーンはハヤブサに言うと彼は少し難しい顔をした。
「より安全な路線にはできないのか?」
「時間的に難しいわね」
「…」
「今からでも下ろせるけど、どうする?」
スフェーンは聞くと、ハヤブサは少し考えた。
「…どうしたものか」
「下手すると二回くらいやり合うかも」
「…」
スフェーンの懸念にハヤブサは聞く。
「帰りは安全か?」
「えぇ、そこは保証するわ」
指名依頼は片道なので帰りは安全な路線を通って帰ることができる。
「楽しみにしていたから今更何ともできんな…」
「まじで乗せるの?」
「自衛用の装備はあるんだろう?」
「そりゃ、まぁ…」
武装は強力と言えるだろう。スフェーンは答えるとハヤブサは続行を選択した。
「アイツらには俺から言っておく。取り敢えずそれで進めよう」
「…分かった」
ショウキ達の保護者であるハヤブサの意見を尊重すると、スフェーンはトップリフターがやって来たのを見た。
今回積み込むコンテナをトップリフターが連結するとそのまま貨車に乗せていく。
「おお〜」
「ゆれてるよ」
重量物を積んだ時に列車全体が不思議な揺れかたをしており、ショウキ達はそれを楽しんでいるようだった。
ハヤブサは危険性を伝えると、ショウキ達はそれほど気にしていない様子だった。
「だって、スフェーン姉ちゃんが何とかしてくれるでしょ?」
ショウキのその一言で一気に責任がのしかかったが、乗せると言った手前責任は取る必要があった。
「取り敢えず、出発するわよ」
「「「はーい!」」」
ショウキ達は元気良く返すと、ヒエンが言った。
「また揺れるのか?」
「ええ、さっきよりも強く揺れるかもよ」
言うと彼は部屋の椅子に座った。どうしたのかと思うと、ヘレンが教えた。
「さっき揺れた時に転けたのよ」
「あぁ…」
納得した。おそらく調子に乗ってふざけていた所をいきなり揺れたものだから頭を打ったのだろう。
「痛かったね〜」
「慰めるな!」
哀れんだ目で見ると、彼は少し不満げに反論していた。
その後、積荷を積み終えた列車はゆっくりと加速を始める。
「うおっと」
ガクンと揺れ、先ほどよりも強い揺れが列車を襲うとそのまま出発線に移動する。
走行中の路線の待避線で停車するのは時間があれば可能だが、貨物ターミナル近辺の路線は時間に正確でないと出入りすることができない。
故に事前に運行計画表を鉄道運輸局に提出する必要があり、スフェーンは出発線に入った。
「出発の許可願う」
『了解、出発を許可します』
航空無線と似たようなやり取りを済ませると、スフェーンの列車は汽笛を鳴らして加速を始める。
貨物ターミナルを出るまでは手動運転の方が信頼できるので、スフェーンはいつもマスコンを動かして操縦をしていた。
「動いた動いた!!」
他に貨物列車が行き交っている中を走り出す光景にショウキ達は興奮気味に窓を見ていた。
ミラーガラスで外からは完全に見えなくなっているプライバシーバッチリの構造。子供達を乗せた列車はそのままいくつかの分岐点を通過して本線に進入する貨物線に入った。
「内線がないのが悔やまれる」
『あっても使わないでしょう』
「それ言っちゃダメだよ…」
スフェーンはルシエルにそう言うと、そのまま列車は貨物線から本線へと分岐点を通過していく。
そして制限速度区間を抜けると、そのまま加速を始める。
「…」
速度計を確認しながら巡航速度に達するとスフェーンは自動運転に切り替えてキャビンに戻る。
「終わったわ」
「おう、そうか」
そこでは既に持ち込んだゲーム機を起動して遊んでいるハヤブサ達がいた。
「くつろぐの早すぎンゴ」
「ネラーかよ」
彼はそう言うとスフェーンは部屋の冷蔵庫を開ける。
「飲み物いる人〜」
「「「はい!」」」
ショウキ達が手を挙げると、スフェーンは中に入っていたコーラやサイダーを取り出した。
「まさか永遠ジュースか?」
冷蔵庫から出て来たソフトドリンクの山にハヤブサはやや顔を引き攣らせながら聞くと、
「やぁねえ、お茶もあるわよ」
そう言い煮出した冷えたおばん茶を出すと、彼は少し安堵した様子でグラスを借りた。
「ちょっとした旅行だな…」
「だから言ったでしょう?運び屋は大した力仕事ないって」
スフェーンはそう言うと、ハヤブサも軽く頷きながらお茶を注いだグラスを傾ける。
「本当にそうだな…」
「転職する?」
「いや、運び屋になろうとは思わんな」
「あら、どうして」
スフェーンは聞くと、彼はスフェーンのキャビンの壁に貼られた紙を見る。
「あのローンの金額見てビビった」
「おいっ」
そりゃ値段だけ見ればビビるだろうな。でも仕事の報酬の金額も他のと比べると高いんやぞ。
「そりゃ高いかも知れないけどね…」
スフェーンはハヤブサに反論しようとした時、
ッー!ッー!
タブレットから警告音のような音が聞こえるとスフェーンは軽く舌打ちした。
「ちっ、こんな場所で当たったか…」
「マジかよ…」
軽く冷や汗を出すハヤブサにスフェーンは言った。
「全員頭下げて、手で耳を押さえて」
「あぁ…」
「耳に響くよ」
その直後、列車の武装のガトリング砲が発射され、列車全体に激しい振動が襲った。
「きゃあっ!」
「大丈夫だ、撃たれていない」
スフェーンは怯えるヘレンの背中に手を当てて言うと、直後にミサイルが発射された轟音が響いた。
ハヤブサはそこで窓の方を見ると、ミサイルが着弾したのか、遠くに爆炎を見た。
「ちょっとデカいのくるよ」
「へ?」
スフェーンの言ったことに首を傾げてハヤブサは彼女を見ると、背後の窓が白光って埋め尽くされた。
「っ!?」
「見るなっ!目が焼けるぞ!」
スフェーンが叫び、自分達の頭上から発射されたその光線はそのまま荒野に着弾すると激しく爆発した。
「…うし、多分大丈夫かな?」
飛ばしているドローンからの映像を確認してスフェーンは言うと少し疲れた様子でハヤブサは床に伏せていたショウキ達を宥め始めていた。
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