TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#115

珍しいお客を乗せて仕事を受けているスフェーン。

一人は年齢詐欺男に、四人は孤児。

奇妙とも、一般的とも思えるその家族一家を乗せてスフェーンは目的地に向かう。

 

「スフェーン姉さん…」

「うんうん、怖かったわね〜。大丈夫よ〜」

 

軽く叩きながらスフェーンはヘレンとペギーの介抱をする。

昼間に一発やり合った時の慣れ無い射撃音や、ミサイルの爆発音を耳にした彼女達は怯えていた。

 

「スフェーン姉さんはいつもこんな仕事をしているんですか?」

「ん?いやぁ、基本的にこう言うのは偶によ」

 

スフェーンはそう言うと、近づいて離れないヘレンはスフェーンの腕を抱き抱えたままだった。

 

「そうなんですか…」

 

ペギーはそこで安堵した様子で息を吐くと、スフェーンは窓のカーテンを閉めながら言う。

 

「さて、そろそろ夜ご飯にしましょう」

「ご飯…」

 

ペギーはそこで時計の時間を見ると丁度夕食に最適の時間であり、それを自覚したペギーは腹がなってしまった。

 

「…//」

「お腹がすくのは良い兆候。さっさと作ってしまいましょう」

 

そう言い立ち上がったスフェーンは冷蔵庫を開けて材料を出し始める。

 

「ハヤブサ〜、ちょっと手伝って〜」

「あぁ、分かった」

 

ハヤブサは答えると、ヘレン達ほどベッタリではなかったが彼のそばを離れなかったショウキ達の間から立つと、そこでスフェーンはついでに言う。

 

「あとレコード、好きなのかけて」

「良いのか?」

「どうせ渋いのしかありませんよ」

「悪かったって…」

 

ハヤブサはスフェーンに言うと、本棚にあったレコードの一枚を古めかしいレコードプレーヤーに置いて針を静かに乗せるとレコードが回転して音楽が車内に響き始める。

 

『〜♪』

 

流れているのは『上を向いて歩こう』有名な歌謡曲である。

 

「オーソドックスな歌ね」

「こう言うのはシンプルが一番ってな」

 

彼はそう言うと、スフェーンの横に立って台所に並んだ具材を見て苦笑した。

 

「お前、何作るんだ?」

「ん?どうせなら美味しいものをと思ってね」

 

そう言って彼女は買ってきた刺身セットを置き、鍋をハヤブサに手渡す。

 

「これ火にかけて」

「はいよ…って重っ!」

「落として割ったら容赦しないよ」

 

スフェーンはハヤブサにそう言いつけると、彼は渡された鍋をコンロに置いて電源を付けた。

 

「中は何だ?」

「米。昨日下準備済ませてたの」

 

そう言うと、彼女はショウキ達の座っている部屋のテーブルに刺身や醤油皿を置く。

 

「米炊けたら言ってね」

「あぁ、何分かかる?」

「十分くらい」

 

そう言うと、線路を複線専用機関車が走り抜けており。二段積みされた巨大な貨物にショウキ達は興味を示していた。

 

「おっきいねぇ〜」

「ねぇ〜」

 

そんな事を言いながら並走している列車を見ていると、

 

「将来は列車の運転士にでもなってみる?」

「おいっ、まだ早いだろう」

 

ハヤブサが言うと、スフェーンは返す。

 

「あのねぇ、私はこの頃から屑鉄拾いしてたっちゅうねん」

「へいへい、随分大層な事でしてねぇ」

「適当に返すなや」

 

スフェーンは言うと、漫画を読んでいたヘレンが聞いた。

 

「何かお手伝いいたしましょうか?」

「あぁ、大丈夫」

 

スフェーンはそう返すと、台所に立つ灰色のつなぎ服のハヤブサを見る。

 

「あいつに手伝わせるから、みんなは好きにしておくのよ」

「わ、分かりました」

 

ヘレンはもどかしそうにしながらスフェーンの漫画に目を落としていた。

何気に珍しい紙媒体の本だ。ショウキ達は初めて触ったのだろうか、紙媒体の本に興味津々に読んでいた。

 

「炊けたらどうする?」

「お櫃突っ込んで冷蔵庫から寿司酢ね」

「あぁ…ん?寿司酢?」

「ほれ」

 

そこでスフェーンはハヤブサにうちわを投げた。

 

「こいつで冷やしながらかけるのよ〜」

「全部俺にやらせる気かよ?!」

「当たり前でしょ。男は黙って労働せい」

 

スフェーンが言うと、ルシエルが突っ込んだ。

 

『元男が何を言っているんですか…』

「(ダーマらっしゃい)」

 

スフェーンはそう返すと、米が炊け。蒸らし時間の合間にテキパキと準備を進めるスフェーン。

 

「何を作っているんですか?」

「ん?みんなで食べるようなご飯」

 

スフェーンはペギーにそう答えると、きゅうりを買ってツナマヨを取り出す。

 

「兄ちゃん、何作っているの?」

「ん?言うなら、簡単パーティー料理セットかな?」

 

ショウキもハヤブサに聞いてそう返されると、少し首を傾げていた。

 

 

 

「はい、出来たわよ〜」

 

その後、ハヤブサは苦労して炊き立て白米をお櫃に移して寿司酢をかけてうちわで仰いで酢飯を完成させると、疲れた表情で机に置いた。

 

「「「「おぉーっ!!」」」」

 

そして卓上に並んだ料理を前にショウキ達は待ちきれない表情に変わっていった。

 

「今日の夜は手巻き寿司よ」

「だから酢飯ですか」

「そぅ」

 

上から濡らした手拭いがかけられて乾燥防止をされたお櫃にヘレンが言うと、スフェーンは頷いた。

 

「食べて良いか!?」

「まぁ待て」

 

ヒエンをハヤブサが制すると全員が手を合わせた。

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

そして子供達は一斉に乾燥のりに手を出し、酢飯を乗せて各々好きな具材を乗せ始める。

 

「マグロもある!」

「おい!乗せすぎだろうが!!」

 

ショウキがヒエンの刺身盛り盛りの手巻き寿司を見て一言言うと、

 

「良いだろう、別に美味けりゃよ!」

「ヘレン達のことも考えろって言ってんの!!」

 

ショウキは言うと、スフェーンは少し笑った。

 

「一応、まだ切り身が置いてあるから。無くなってもあるわよ」

「だってよ」

 

言われて少しショウキを鼻で笑ったヒエンだが、

 

「巻いて食える分だけ取るんだな」

 

ハヤブサはそう言い、盛りすぎて巻けなくなっているヒエンの手巻き寿司を見た。

 

「うごごご…」

 

そして案の定、ヒエンは刺身を盛り過ぎて海苔を巻けなくなっていた。

 

「ほらほら、二つに分けなさいよ」

 

そう言ってスフェーンはヒエンに酢飯を乗せたもう一つの海苔を手渡すと渋々乗せた刺身を二つに分けてそれぞれ巻いて食べた。

 

「順番に食べるのよ」

「わかっへまふ」

 

ヘレンはオーソドックスな手巻き寿司を自分で食べながら答えると、ペギーは挽き割り納豆に卵を乗せて巻き寿司を作っていた。

 

「きゅうりなんで出したの?」

「気分、ツナマヨと合わせようかなって」

 

そう言いスフェーンもツナマヨを乗せた後に芽ねぎときゅうりを置いて巻いてそれを口に入れた。

 

「うわっ、美味そうだな」

「実際美味い」

 

そう言いスフェーンはその手巻き寿司を口に入れてきゅうりを齧った音が心地よく耳に届く。

 

「…」

 

そしてペギーはこれでもかと慎重にサーモンを醤油につけた後に大葉と共に巻いて上からいくらを乗せた。

 

「ペギー、それ何?」

「シャケの親子巻き」

「あら美味しそう」

 

ショウキが聞いてペギーが答えると、スフェーンが呟いた。

 

「うはっ、なんだそれw」

 

その横でハヤブサは吹き出してショウキの作る手巻き寿司を見る。

 

「きゅうりに納豆って…」

 

挽き割り納豆に芽ねぎでは無くきゅうりという組み合わせにショウキは

 

「試してみるの」

「まぁ…止めはしないが…」

 

そう言ってショウキはオリジナルの手巻き寿司を食べると、

 

「うっ…ベチャベチャ…」

「だろうな…ちゃんと全部食べろよ」

「そんなぁ…」

 

自作手巻き寿司に悲鳴を上げていた。

 

 

 

その後もショウキ達は手巻き寿司を楽しみながら食べ終え、片付けをした後に全員が寝巻きに着替えた。

 

「おっきいぬいぐるみ…」

 

パジャマに着替えたペギーがジンベイザメの抱き枕を見ながら呟くと、

 

「前に通販で買ったのよ」

「片付けて良いか?デカ過ぎんだろ…」

「ほいよ」

 

そう言いベッドの三分の一ほどを埋めていた巨大なぬいぐるみは傍に置かれ、部屋の照明が落とされた。

 

「んじゃ、好きなの見てね〜」

「「「はーい」」」

 

部屋のカーテンを下ろしてプロジェクター機能付きのタブレットを置いてスフェーンは言うと、ハヤブサを連れてガレージに向かう。

 

部屋の扉を閉め、ガレージの隅に座り込む二人は懐から煙草を取り出す。

 

「部屋の中で吸えないからなぁ…」

「流石に目の前で吸うのはな…」

 

そう言いながらスフェーンはライターを取り出して火をつけた。

二人とも灰色と薄水色の寝巻きに着替えており、スフェーンは灰色のナイトキャップまで被って煙草を吸い始めていた。

 

「良いライターだな」

「えぇ、良いものは長く使えるもの」

「金持ちのゴミが少ない理由だな」

 

そして高級ライターを使うスフェーンはそのままライターをハヤブサの方に向けた。

 

「悪いな」

 

ハヤブサはそのままスフェーンの出した火に煙草を近づけるとそのまま吸った。

 

「ふぅ…」

 

そして一息吐くとスフェーンが言う。

 

「明後日には到着するわね」

「そうか…」

 

煙草を吸い、二人は予定の確認を行う。

 

「引越し先が見つかるまでの間だっけ?」

「あぁ、引越しにはそれほど苦労しないからな」

「そう…」

 

そう返し、スフェーンはショウキ達が荷物に持ち込んでいた数を思い返す。

 

「本当に簡単な引越しね…」

「俺は幾分弱い立場だからな」

 

何回も引っ越したのだろう。今回のこともショウキ達は何も言わないので、慣れた光景になっているのだろう。

 

「悲惨ね…」

「あぁ、だからこそ伸び伸びとアイツらには生きて欲しい」

 

彼はそう言うと、スフェーンに聞いた。

 

「どのくらいこっちに居るつもりだ?」

「そうねぇ…」

 

聞かれたスフェーンは考える。

 

「永住は?」

「生憎とまだ考えていないわ。近々、海を渡るつもりだし」

「そうか…」

 

その意味を理解できないほどではなかった。

メイコーの巨大な港湾施設にはノーチラス海を渡ることのできるほど巨大な鉄道連絡船が停泊できる。

 

基本的に大陸を渡る方法は二つあり、一つは今の鉄道連絡船に乗ること。

もう一つは大陸北東部に存在する海峡横断大橋を通る必要がある。そちらはヒューゴー大陸と接続していた。

 

「寂しくなるな…」

「いやぁ、すぐ出るってわけじゃ無いし」

 

鉄道連絡船はメイコーに月一の運行頻度で着岸しており、途中に水上都市アクアブルーを経由してノーチラス海反対のヴェルヌ大陸に到着する。

 

「まだしばらく居るわよ」

「そうか…」

 

スフェーンが言うと、ハヤブサは何処か安堵したように、嬉しそうに息を吐いた。




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