メイコーから移動しているスフェーン達は車内で映画鑑賞をしていた。
「「「「「「…」」」」」」
ヒエンが持ち込んだポテトチップスを片手に見ているのはとある怪獣映画である。
サブスクに入っていたスフェーンがタブレットのプロジェクター機能を使って壁に投影していた。
「…」
映画を見ていたヘレンが無意識にスフェーンの腕を掴んでおり、スフェーンもそれに気づいて上からそっと手を置こうとした時。
「(え?)」
反対の腕もペギーによって抱かれてしまった。
「(ったく、ハヤブサの方が絵になるっちゅうのにさ…)」
そう思いながら反対で画面を食い入るように見ているヒエン達を見ながらスフェーンは静かに画面を見る。
「終わった〜」
エンドロールが流れ、スフェーン達は部屋の明かりをつけて休憩を挟む。
「トイレ〜」
そしてショウキが駆け込むように部屋を出て前方の便所に入り、その間にスフェーンは言う。
「さぁ、そろそろ寝るわよ」
「「「えぇ〜」」」
「えー、じゃねえよ。時間見なさい」
ハヤブサがゴネ始めるヘレン達に言うと、彼女達は部屋の時計を見た。
「良いじゃんかよ〜」
「駄目だ、これ以上は明日に響くぞ」
「ちぇっ」
ハヤブサにヒエンは残念そうにしながら寝る準備を始める。
今回は人数がアレなので、女子二人はスフェーンのベッド、男二人は床で寝ることになる。
「大丈夫?兄ちゃん達?」
「あぁ」
「元々はスフェーンさんの列車なのに…」
「良いよ良いよ、私は列車の管理をしなきゃならんしね」
ショウキとヘレンが少し申し訳なさそうにしながら二人を見ると、彼女達はそう言って運転室の方に移動する。
「んじゃ、おやすみ〜」
「おやすみなさい」
「おやすみ〜」
そう言いハヤブサが部屋の扉を閉めると、二人は運転室に移動する。
「…」
「…」
そして運転台にスフェーンが座ると、ハヤブサは言う。
「寝ないのか?」
「当たり前よ。私は列車運行を管理する必要があるの」
そう答えると、スフェーンは足元からあるものを取り出した。
「暇なら、一杯どう?」
「おっ、マジか」
スフェーンが片手に下げていたのはスコッチウイスキーの瓶だった。
「かなり昔に買ったんだけど開けてなくてね〜」
「そんな良いもの持ってたのかよ」
グラスを前に置き、横に氷とアイスピックを置く。
「飲める?」
少年のハヤブサに聞くと、彼は言う。
「あまり多くは無理だな。何せアルコールの分解能力は見た目相応だからな」
「そう…」
「だが酒は好きだ」
「おーおー、怒られっぞ〜」
そう言いながらスフェーンはアイスピックを使って氷を砕いてグラスに合わせて入れると上からウイスキーを注いだ。
「何を見る?」
本物の子供達を寝かしつけて二人は深夜鑑賞を再開する。
先ほどまでは子供がいたので満足に好きな映画を見ることができなかったので、お互い好きな映画を所望した。
「無難に戦争映画かなぁ…」
「じゃあ『ハンバーガー・ヒル』でも見る?」
「またなんちゅう映画を…」
しかし満更でもない様子の彼にスフェーンも少し微笑みながらタブレットを動かしてイヤホンを二人は耳に付けると、音を出さないように映画の鑑賞を始める。
「ハヤブサ」
「ん?」
スフェーンはハヤブサにウイスキーを注いだグラスを見せると、彼は少し微笑んでグラスを手に持つ。
溶けた氷が透き通る黄金色の舞台で踊ると、二人は軽くグラスを鳴らした。
『〜♪』
朝、部屋でレコードが鳴り。それが目覚ましでショウキ達は目を覚ます。
「んっ、んん〜」
かけられた音楽は『キャラバンの到着』部屋中に良く響くその音楽と香る香ばしい香りでショウキ達は目を覚ます。
「おはよう」
「おはよう…ございます…」
外の景色は相変わらずの荒野で、岩石や砂丘が一面に広がっていた。
「よく寝ていたな」
二人はすでに紺と灰のナッパ服を着ており、台所からは香ばしく香るアメリカンクラブハウスサンドの焼けた麦の香り。
「美味しそう…」
「良い匂い…」
そしてペギーやヒエンも起き上がると、最後にヘレンだけがまだ眠っていた。
「ほら、起きなさい」
スフェーンはそう言ってヘレンを軽くさすると、彼女は軽く唸るだけで起きる様子はなかった。
「またか…」
「寝起き悪いのね」
「バイトの日以外はな…」
彼は言うと、最後のサンドイッチを作り終えた後にヘレンの耳元で囁いた。
「仕事遅刻すr」
「嘘っ!?今日仕事だった?!」
ここまで〇.二秒、凄まじく強力な目覚ましだ。
「嘘だよ嘘」
「…あぁ、何だ」
知って彼女は再び寝つこうとしたので、スフェーンが言った。
「朝ごはん消えるわよ〜」
「…それは、困ります」
朝食を前にヘレンはそのままのっそりと起き上がると、テーブルに並べられた朝食を四人は食べる。
「「「「いただきまーす」」」」
そうして朝食を摂り始める四人の横で、スフェーンとハヤブサはこの前の残りの白米を使っておかか醤油おにぎりを食べていた。
「意外といけるな」
「でしょ?」
煎り胡麻を軽くかけて二人は食べながらスフェーンは移動する。
「ちょっと後頼んだ」
「あぁ、まかせろ」
「昼前には着くと思うから」
「了解だ」
ハヤブサは頷くと、スフェーンはおにぎり片手に運転台に消えて行った。
その後、野盗の襲撃も無く無事に目的地に到着したスフェーン達はその街の貨物ターミナルに降り立ち、そのままハヤブサ達はそこで訪れた街にそのまま向かう。
「じゃあ取り敢えず今日の十九時までにここのカフェ集合ね」
「分かった」
保護者として子供二人を預かることになったスフェーンはそこでハヤブサと別行動を取ることになった。
「済まんな、頼んだ」
「まあ良いけどね」
そう言いスフェーンは横に立つヘレンとペギーを見た。
「姦しいなぁ…」
「何言っているんです?」
「いや、独り言よ…」
スフェーンの呟きにヘレンが首を傾げるも、ハヤブサはショウキとヒエンを連れて運輸ギルドを出て行った。
「うるさいのが消えましたね」
「うるさい…まあそうかもしれないけど…」
ヘレンの容赦ない言い振りにスフェーンは少し苦笑すると、ペギーが聞いた。
「これから、どうしますか?」
「どうするって言ったってねぇ」
指名依頼を終えたスフェーンだが、ローン返済や今回消耗した弾薬の購入、排水処理諸々と仕事があった。
「悪いんだけど、私もやることがあるからそっちを優先してもいい?」
「大丈夫ですよ」
「おーけー」
二人は頷くと、スフェーンは二人をギルドの中を歩く。
「運び屋は仕事が多いんですね」
「言うて君たちも働いとるやん」
そう言いスフェーンは彼女達の仕事を思い返すと、
「私たちは週一ですので…」
「時間はかかるけど、働いている時間は少ない」
「あぁ…そう…」
回収したソノブイ一本で三食分の食事。五人で一週間とすると三五本集める必要があったが、
「あれ?四五本集めてなかった?」
「えぇ、少し余分に資金を貯めて毎年祭りに使うんです」
「祭り?」
スフェーンが首を傾げると、ペギーが腕を握って指を差した。
「あれ」
「?」
彼女が指を差した先にはメイコーで行われる花火大会の広告があり、派手に打ち上げられた花火の広告が映っていた。
「…なるほど」
そこで全てを察したスフェーンはヘレンを見た。
「毎年の楽しみなのね」
「そうです!」
ヘレンは頷くと、ペギーは祭りの屋台が好きだと言う。
「楽しみ。屋台とか」
「浴衣とか甚平にみんな着替えるんです」
「そうなの〜」
スフェーンは開催日時を見ていると、ヘレンは思い付いたように提案した。
「そうだ、今年はスフェーン姉さんも一緒に来ませんか?」
「え?でもなぁ…」
開催日時は大陸を渡る鉄道連絡船が出た直後である。
大陸を出ようと考えていたスフェーンはどうしたものかと少し考えたが…
「スフェーン姉さんの浴衣姿…見てみたい、かも」
『むっ』
「(げっ)」
まずい奴が反応しちまった。しかしもう遅かった。
「良いわね、花火。私も行ってみようかしら」
『おいっ』
君、しれっと化けるのが上手くなったな。と感心しながらも、勝手に予定変更をかますルシエルにスフェーンが突っ込んだ。
「本当ですかっ!」
そしてスフェーンの返答に嬉しそうにするヘレン。
「浴衣…」
「ヒエンにデザイン頼んでおばちゃんに作ってもらおうよ」
「え?ヒエンに…?」
スフェーンは驚くと、ペギーは言う。
「ああ見えても、ヒエンは絵が上手い」
「手先が器用なんですよ。コンクールで金賞取ったくらいですし」
「…まじか」
予想外の才能を見た気分になりながらスフェーンはATMでローンの支払いを完了させた。
その後、携帯でヘレンがハヤブサにスフェーンが花火大会に行くことを連絡すると彼はメッセージで鉄道連絡船の日程を聞いてきたが、この際仕方ないので次回に諦める事にした。
『悪いな』
「良いわよ、祭りなら文句も無いし」
そう言うと、彼は言った。
『じゃあ、午前中は水族館だな』
「え?なんで?」
『浴衣姿で行くと割引になるんだよ』
「あぁ、そう言うね〜」
事情を把握したスフェーンは納得すると、ヘレンは言った。
「ヒエン、聞こえてる?」
『…あぁ、何だよ』
映像では街の駄菓子屋にいる様子の男衆、そのそばでヒエンが少し雑に返す。
「スフェーン姉さんの浴衣の絵柄描いて!」
『えぇ〜…』
少々面倒くさがる様子の彼にヘレンは言う。
「描かないと後でナマコ食わすよ」
『ぐっ、勘弁してくれ…』
「えっぐ…」
独特な嫌がらせに何とも言えない表情になるスフェーンとペギー。
「いつもながら、酷いヘレン…」
「拷問官向いているよ、君…」
身内であってもこの容赦の無さに彼女の将来に少し不安を覚えていた。
そしてその後、諸々の諸作業を終えた女衆は運輸ギルドに併設されていた足湯に浸かっていた。
「「「ほあぁ〜…」」」
靴を脱ぎ、暖かい湯に足を付けた三人は思わずそんな声を漏らす。
「疲れた足に効くねぇ」
「本当…あっ」
「ん?どうした?」
何かに気づいた様子のペギーにスフェーンは見ると、彼女の視線を辿った。
「…あぁ」
「なるほど、そう言うことね」
それを見て微笑ましくスフェーンとヘレンはペギーを見ると、彼女は少し恥ずかしげにていた。
「買ってこようか?」
「あっ、ありがとう、ございます…」
ペギーはそう言うと、スフェーンは足湯を一旦出て屋台で売られていた蒸し立ての酒饅頭を三つ買って戻ってきた。
お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。
新たな依頼をピックアップ致しました。
-
難民に揺れる街
-
機械の人
-
ホーンテッド・マンション
-
行楽の温泉街
-
学園都市