これからはなろうも千人を目指して頑張るZOI!
それからと言うもの、私達は働いた。
ハヤブサ達の引っ越しを完了させ、新しい家はメイコーが提供している別の地区のコンテナハウスであった。
数多くある公営住宅の一つ、コンテナ二つを使った部屋で少年少女五人が暮らしている。
夏の花火大会に参加する為に絵が得意だというヒエンが浴衣のデザインを担当し、それをショウキを連れ帰った日に出会ったあのおばちゃんの経営している服飾店にデザインを送って浴衣を製作してもらっていた。
無論、そこでかかった費用は自分が責任を持って払わせてもらっていた。
「スフェーン姉さんの髪は柔らかいですねぇ〜」
スフェーンの灰色の髪を触りながらヘレンが言う。
「そう?」
「えぇ、ペギーよりも髪が編みやすいです」
しれっと酷いことを言いながら彼女は座り込んだスフェーンの髪を結って最後に二本の簪を刺した。
「はい、出来ました〜」
「おぉ〜」
手鏡で自分のヘアスタイルを見てスフェーンは感心した声を上げた。
「上手ね〜、これでも食べていけそうじゃない?」
「偶に近所の美容師さんに呼ばれたりするんですよ?」
「流石ねぇ〜」
綺麗に編み上げられ、纏められた髪に刺されたヨーヨー風船をイメージした簪と、花火をイメージした簪を刺していた。
耳からは名前の元となったスフェーンの使われたイヤリングを下げていた。
「スフェーン姉さん、とても綺麗…」
「ふふっ、ありがと」
簪を付け、珍しく化粧を施したスフェーンを見て浴衣姿のペギーが思わず溢した。
今日は花火大会当日、午前中は水族館に行くと言う事で朝早くから準備していたのだ。
『出来たか?』
「もうちょっと待って〜!」
部屋の外に追い出されたハヤブサ達は待ちぼうけをしていると、ヘレンが返した。
「絶対開けちゃダメだからね!」
『分かったよ』
『早くしろよ〜』
「待ちなさいって!」
「上がらない上がらない」
次第に怒号に変わりつつあるヘレンを宥めると、ヘレンは最後にスフェーンに団扇を手渡す。
「はい、これで完成!」
「色々とありがとうね」
スフェーンは朝早くから準備を手伝ってくれたヘレンに感謝すると、彼女は言う。
「いやいや、この姿見たら兄さん達、下手したらひっくり返るんじゃ無いんですかね?」
「え?そんなまさか」
片手に篭バッグを持ってスフェーンは素足で下駄を履くと部屋のドアノブに触れた。
「悪いわね、遅くなったわ」
扉を開けて外に出ると、
「「「…」」」
男どもがやや呆然とスフェーンを見ていた。
「?」
スフェーンは少し首を傾げると、ハヤブサは眉間に指を当てて軽く揉んだ後に再びスフェーンを見て聞いた。
「お前、本当にスフェーンか?」
普段、サングラスをかけていることが多かったが故にスフェーンの初めて見た化粧顔に唖然となっていた。
「失礼なやつね」
「あだっ」
スフェーンは団扇の持ち手で軽くハヤブサを小突くと、ショウキが言った。
「凄く…綺麗です」
「あら、ありがとう」
そう言って彼女は素直に言ったショウキを見ると、彼は少し顔を赤くしていた。
「ヒエンも、浴衣ありがとうね」
「あっ、あぁ…」
鯉の滝登りの浮世絵をイメージして足元の錦鯉や滝は色鮮やかな染め方をされ、赤と灰の帯を巻いたスフェーンにヒエンは唖然となりながら頷いた。
「たっ、大した事はしてねぇぞ…!!」
彼は照れ隠すように言うと、顔を背けた。
「ほらっ、みんな行くよ!」
そんな彼らをヘレンが扇動するように言うと、彼女はスフェーンの手を取った。
その後、六人は街の大通りに繰り出して歩行者天国となったその場所を歩く。
「…」
そしてスフェーンを見た大人達からはほぼ必ずと言って良いほど二度見をされ、少々鬱陶しく思っていた。
「刺されるなよ」
「んな事されますかいな」
そう言いながら先程購入したぶどう飴を齧る。
「普通にうまそうだな」
「実際美味い」
パリッと割れる薄く塗られた飴の食感の後に、ぶどうの果汁が溢れてくる事で果物の甘さと飴特有の甘さが混ざり合っていた。
「たませんあったら食べたいわね〜」
「うまそうだな」
「焼きそばっ!!」
「牛串一本!!」
祭りの日なので足元ではショウキ達もはしゃいでいる様子で近くの屋台に走っては商品を購入していた。
「買いすぎるなよ〜」
「水族館に入れなくなるわよ」
水族館は飲食物の持ち込みが禁止されているのでスフェーン達は軽く注意すると、彼等は買った屋台飯を直ぐに食べ始める。
「焼きそばを食べ歩くの…」
「?」
ペギーは買った焼きそばを食べ歩いており、あまりそう言うイメージのなかったスフェーンはやや引いていた。
「取り敢えず、水族館に着いたらチケットね」
「そうだな」
スフェーンとハヤブサは確認すると、六人はそのまま水族館に向かった。
『はい、六名様ですね』
「お願いします」
『畏まりました』
六人分のチケットを購入し、その際に一瞬販売員の女性が軽く呆然となりながら手配していた。
「女たらしめ…」
「おい、語弊があるんじゃないか?」
チケットを渡す際にハヤブサと軽く口論になりながらゲートを通過する。
ビーッ!
その際、入り口の金属ゲートが鳴るとスフェーンは係員に言われた。
「お客様、大変申し訳ありませんが、当館は銃器の持ち込みは禁止となっております」
「あっ、そうなんですか…」
「ロッカーは彼方にございます」
「わっかりました〜」
スフェーンは言うと銃器を預けるためのロッカーに持ち込んだMP-412を弾薬と共にしまって鍵をかけた。
「銃持ち込んでたのかよ…」
「だって、これから治安悪くなりそうだし」
「阿保か、治安官で一杯だよ」
「マジか…あそっか」
今日の花火大会は比較的大きな祭り、なのでメイコーの市議会から軍警に要請を出しているに違いない。
「銃持ってきたら職質されっぞ」
「大丈夫でしょ」
スフェーンはそう返しながら水族館の独特な青い水の光が差し込んだアクリル製の水槽の前に立った。
「思っていたより人は少ないのね」
「メインは夜だからな」
聞けばいつもこんな感じだと言う。
「みんな屋台に盛り上がってるって事か」
「そうだな」
先ほど人でごった返していたあの大通りを思い出しながらスフェーンは目の前を近づいてくるシャチを見た。
ここはシャチとイルカが展示されており、飼い慣らされた海の哺乳類が優雅に泳いでいた。
「来たーっ!」
「おっきぃ〜」
ショウキ達とは違う子供が現れたシャチに嬉しそうに手を振っていた。
「…」
そんなシャチをスフェーンは眺めていると、視線に気がついたようにシャチは顔を動かしてしばらく止まった後、そのまま離れるように泳いで行った。
「姉ちゃ〜ん」
そしてシャチがいなくなった後もスフェーンは水槽を見ていると、ヒエンに声をかけられた。
「そろそろ次行くって〜」
「えぇ、分かったわ」
彼女は頷くとショウキ達の後を最後尾からついて行く。
「イルカショーまではまだ時間があるな」
「ここのメインなんだっけ?」
「あぁ、大陸最大のイルカショーと銘打っているな」
彼はそう答えると、スフェーンはエスカレーターを登って次にシロイルカ…ベルーガとも言われる生物を見に行く。
「昔は海のカナリアとも言われた生物のようね」
「エコーロケーションで周期の環境を把握できるイルカのような生体機能があるらしいな」
「メロンって言われる頭がなんとも…」
水槽を前にスフェーンはハヤブサとそんな話をしていた。
「人魚のモデルってなんだっけ?」
「それは確かジュゴンだな…ここにはいなかった気がするが…」
ハヤブサはスフェーンの質問に答えると、ちょうど水槽の目の前を泳いで子供達から黄色い声が上がるベルーガを見ながら一言、
「ジュゴンよりこっちの方がよっぽど人魚っぽくない?こっちの方が可愛いし」
「ジュゴンも言うて似てないか?人魚に見えるかは別として」
「うーん…?」
答えの無い話をしていると、ベルーガは目の前で立ち泳ぎのように止まると口を動かして泡を円環のように吐き出した。
「「「「おぉーっ!!」」」」
それを見て歓声を上げる観光客達、一部は浴衣や甚平を羽織っており、夜の花火大会の準備も整えていた。
「可愛い…」
「子供かよ…」
「人は動物の愛嬌で日々の疲れを癒すのよ。普段から海に出てる海男にはわからんかもしれんがね」
呆れるようにスフェーンは言うと、ハヤブサは溜め息混じりに返す。
「俺は漁師かよ…」
「ソノブイ獲っているじゃ無いの」
「取るの漢字間違えているぞ」
ハヤブサはそう突っ込むとスフェーンは言った。
「そう言えば反対に砕氷船が居たわね」
「あぁ、極地観測船の事か」
水族館の反対に係留されていたオレンジ色の塗装の船体を思い返す。
「中は博物館で蝋人形でいっぱいだぞ」
「今度行ってみようかなぁ…」
そんな事を話しながら次のマイワシなどを展示する巨大な水槽に移動する。
「うわっ」
「いつ見てもやはりすごいな…」
そこでは銀色のカーテンが動いており、マイワシの群れがユラユラと動いていた。
「これで大きく見せるんだっけ?」
「生存競争に勝つ為の知恵だな」
「でっかーい」
ショウキが見上げながら言うと、その横でペギーは呟く。
「マイワシ…」
「流石に食べれないわよ」
少し苦笑しながらスフェーンは言うと、ペギーはわかっていると言って軽く頷いて返した。
次にスフェーン達は深海生物のいる場所を訪れる。
「タカアシガニだって」
「おっきなカニさん…」
「食べれるのかな?」
水槽の中でゆっくりと動く巨大な蟹を前にヘレンが溢すと、
「あまり大味で美味しく無いって聞いたことがあるけどね…」
「へぇ…」
「なんだ、美味くないのかよ」
少し残念そうにヒエンもタカアシガニを見ると、次のブースに移動する。
「うほー」
「大きいでしょ?」
先ほどの深海の暗い雰囲気と打って変わって非常に眩しい光が差し込んで扇形のアクリル板の上を南方の魚達が優雅に泳いでいた。
「赤道近くの海を模しているそうですよ?」
「ほぇ〜」
そこでエイを見上げながらスフェーンはヘレンに返すと、スフェーンはそこの椅子に座って少し水槽を眺めていた。
「スフェーン姉さんは水族館が好きなんですか?」
「えぇ、そうね…」
部屋にあったジンベイザメのぬいぐるみと言い、水族館が好きなスフェーンはヘレンに少し頷いて返した。
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