TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#120

ハヤブサ達はそこで花火大会の関係者達のおばちゃん達と交流をしていた。

 

「いやぁ、久しいねハヤブサくん」

「お久しぶりです会長」

 

礼儀正しく正座して敷かれた畳の上でハヤブサは数名の初老の男達と親しげに話していた。

 

「いやぁ、今年も来てくれて嬉しいよ」

「いえいえ、会長のお誘いとあらば…」

 

そう言うと、彼はスフェーン達のいる方を見ながら言った。

 

「おまけにあんなに綺麗な子まで連れてきてねぇ」

「いえ、彼女は…」

「あぁ、ウトさんから聞いてる。彼女も君と同じだと言う事はね」

「いえ、そっちでは無く…」

 

ハヤブサはやけにニヤついている会長を前に言うも、

 

「いやぁまだ若いだろうに」

「中身は大人だ、良い子を引っ掛けたもんじゃないか」

 

そう言って一升瓶を置いて猪口に彼らは酒を注ぎ始める。

 

「ちょっと…」

「では!ハヤブサくんの今後を祝って!」

「「「「「乾杯!」」」」

「何しれっと俺とあいつが付き合ってるみたいになってんだよ!?」

 

そんな関係者の面々にハヤブサは突っ込むと、そこでラーメン屋の親父が座った。

 

「あんな別嬪だ。釣り逃すなよ」

「アホかあんたはっ!!」

 

ウインク混じりに言うと、彼の頭をハヤブサは叩いていた。

 

 

 

「まぁ、何て別嬪さん」

「アイドルにするにしちゃあもったいないね」

 

この頃、スフェーンはおばちゃん達にヘレン達と共に囲まれていた。

 

「あ、有難うございます…」

「んもぅ、照れちゃってねぇ」

 

顔を俯けたスフェーンにおばちゃん達は言うが、これでも昔は男だったんです。

最近はゴリゴリと男としての尊厳が消えて行っているけど元男なんです…。

 

申し訳なさが全面に出てしまっているスフェーンだが、それでもベビーカステラの入った袋を手放さないあたりに彼女の今の性格が滲み出ていると言える。

 

「あら?」

 

すると一人のおばちゃんがスフェーンの持っていた手荷物を見た。

 

「それ、うちの旦那の店のやつじゃないか」

「あ、そうなんですか?」

 

おばちゃんの視線の先にあったのはあのベビカスくんとか言うベビーカステラに顔を付けて手足を生やしたバケモンみたいなぬいぐるみだった。

 

「これがあるって事はあのチャレンジサイズを食べ切ったのね?」

「あぁはい、そうですね」

 

するとおばちゃんは言う。

 

「旦那が言ってたのよ、一人でチャレンジサイズ食べ切った女の子が出たって」

「あっ、それ多分私だと思います…」

 

そう言い、自分が持っていたベビーカステラの袋を見せた。

 

「旦那さん、その後にその女の子が同じのを買って行ったって言ってませんでした?」

 

スフェーンがそう言うと、そのおばちゃんは驚愕した顔を見せていた。

 

 

 

「スフェーン姉さん」

「ん?」

 

その後、食べ切ったベビーカステラの一見でおばちゃん達から色々と追求やら話で盛り上がっていると、助け舟のように手を触れてきたのがヘレンであった。

 

「ここじゃ人多いですし、そろそろ時間ですから少し離れた場所で見ませんか?」

「えぇ…そうね。すみません、皆さん」

 

スフェーンはそこで立って移動しようとすると、

 

「お待ち」

 

おばちゃんが二人を呼び止める、スフェーンに缶ビールのパックを渡した。

 

「ハヤブサくんを呼んで二人で飲みな」

「良いんですか?」

 

スフェーンはとてもよく冷えたビールを受け取りながら聞き返すと、おばちゃん達は気前よく返す。

 

「良いさ良いさ、あんたの事情は旦那達から聞いているよ」

「見た目は子供でも中身は大人だ。今日くらい好きに飲むと良い」

「倒れたらアタシらが介抱してやるさ」

 

おばちゃんたちはサムズアップをしながら言うと、スフェーンはその好意をありがたく受け取った。

 

「ありがとうございます」

 

そう言って頭を下げたスフェーンはそのままヘレン達と共に海辺の岸壁に移動すると、それを見たおばちゃんは一言。

 

「こりゃダメね」

「「うんうん」」

 

少々残念そうにしながらスフェーンを見送ったおばちゃん達はハヤブサに言った。

 

「ハヤブサくん!」

「みんな先に行っちゃったわよ」

「あっはい!わかりました!!」

 

ハヤブサはそう返し、少し慌てながら下駄を履いてスフェーン達の元に走った。

 

 

 

 

 

「んで、おばちゃん達から貰ったわけか」

「良い人たちじゃないの」

 

岸壁にスフェーン達は座り込んでおばちゃん達から受け取ったソフトドリンクなどを飲んで一興しているショウキ達。

 

「嵌められたの間違いだろ」

「え?」

 

スフェーンが首を傾げると、ハヤブサは缶ビールを開ける。

 

「あの人たち、多分俺たちを勝手にカップルと思い込んでいるからな…親父のせいで」

「ぶふっ」

 

スフェーンは飲んでいたビールを少し吹きそうになりながらもその一言で全てを理解した気がした。

 

「アタシと?無い無い」

「ああ、無いな。あり得ない」

 

ハヤブサも同じように否定している。

 

「俺たちの関係って…なんだろうな」

「まあ友人が妥当じゃない?」

「友人とも違うくないか?」

「だからって家族って言われると疑問が残るしね〜。友人で良いわよ」

「或いは同じ境遇の知り合いかな?」

 

傍にぬいぐるみを詰めまくった土産袋を置いて二人は海面近くの岸壁に腰を下ろしていた。

 

「いつからあの人達と知り合いなの?」

「俺がアイツらを引き取ったくらいからだ。苦労してたら、立ち寄ったあの店の親父さんが手伝ってくれて…その時からだ」

 

懐かしむように彼はビールを傾けると、スフェーンも納得した。

 

「まぁ良い人たちではあるさ。こんな俺たちを養子に引き取ってくれると提案してくれたくらいだからな」

「なんで養子にならなかったの?」

 

スフェーンは一本目を飲み切って地面に置いたハヤブサに聞くと、彼は答える。

 

「それまで散々世話になっちまったからな。これ以上迷惑をかけるわけにもいかないって思っちまったのさ」

「あら、子供は親のすねを齧ってこそじゃないの?」

「あぁ、アイツらはな…」

 

そう言いハヤブサはソフトドリンクの封を切って花火が始まるまではしゃいでいるショウキ達を見る。

 

「俺が散々説得をしているんだが、聞いてくれないんだ」

「養子縁組は子供の同意なしでも、親権者同士でできるものでしょう?」

「あぁ、実際ヘレンの時はそうした」

 

しかしスフェーンにはその後の展開が予想できた。

 

「ただホームシックになっちゃったと…」

「あぁ、まともに食事すらできなくなってしまったから…仕方なく籍だけ残してもらったよ」

 

彼女の書類上の戸籍は彼女がバイトで行っていると言っていたあの美容院だった。

 

「迷惑をかけていたと今でも思っているよ」

「でも、みんなから愛されているのは良い事よ」

 

スフェーンはそう言い暗い海面を見つめながら言う。

 

「誰にも覚えられなくて死んで行く…これほど惨めな人生もないわよ」

 

そう言いスフェーンは初めての死の時を思い返す。

 

「…」

 

そんな彼女の口から溢れた言葉と、それに纏わり付くように出た形容し難い雰囲気にハヤブサも思わず彼女を見ていた。

 

「お前…」

「まぁ、それももう昔の事。そんなに気にする必要も無いわ」

 

彼女はそう言って締めくくると、ハヤブサに聞いた。

 

「ところでハヤブサ、これを見て」

「ん?なんだそれ?」

 

それは例のベビカスくんであった。

 

「これを見てどう思う?」

「すごく…良いと思う」

「え?マジ?」

 

予想外の返答にスフェーンは驚くと、彼はベビカスくんを手に取って見つめる。

 

「なんと言うか…言いしれぬ可愛さがあっていいな」

「そ、そう?」

「ほら、爬虫類を愛でたくなる時のような…」

「うーん…?」

 

スフェーンはハヤブサの例えに首を傾げていると、

 

「兄ちゃん達〜」

「そろそろ始まりますって!」

 

ヒエンとヘレンが呼びに来て二人は残ったビール缶と荷物を持った。

 

「あぁ」

「分かった、すぐ行くわ」

 

そして関係者専用の、花火がよく見える位置まで歩いた。

 

 

 

ドンッ…ヒュ〜♪

 

打ち上げられた花火玉の残光が尾を引いて笛を鳴らしながら空に上がると、

 

 

ドンッ

 

 

次の瞬間、黒の画用紙に色が映った。

 

『『『『おぉ〜っ』』』』

 

別の一般席で見ていた観光客達が最初に打ち上がった花火を見て歓声をあげると、次にまた花火が打ち上がる。

 

「綺麗ね…」

「あぁ、ここの花火は最高だ」

 

ビール片手に花火を見上げ、子供達は岸壁に座り。スフェーン達大人組は立って見上げる。

 

「た〜まや〜」

 

打ち上げ花火を見ながらスフェーンは叫ぶと、それに呼応するようにハヤブサも叫んだ。

 

「か〜ぎや〜」

 

するとそれを聞いていたショウキ達が首を傾げて聞いた。

 

「何それ?」

「古い花火をする時の掛け声よ」

「どちらも、昔の花火屋の店の名前らしいがな」

「へぇ〜」

 

一つ豆知識を覚えた彼女達はそのまま無造作に叫び始める。

 

「たぁ〜まやぁ〜!!」

「かぁ〜ぎやぁ〜!!」

 

夜空に打ち上げられる無数の炎の花は一瞬にして枯れ散ると、上がるたびに人々から熱狂的に歓迎される。

 

「…」

 

その景色をスフェーン達は焼き付けるように見ていた。

いつもの年とはちょっと違って、新しい仲間を連れての打ち上げ花火。

この花火が終われば、スフェーンは新しい大陸に向かうための手続きを始める事になる。

 

来月の鉄道連絡船に乗船して、大陸を離れるスフェーンと次に会えるのはいつだろうかと子供達は思っていた。

 

「花火って、やっぱり綺麗ね…」

「何だよ、いきなり…」

 

ハヤブサはスフェーンに聞くと、彼女は懐かしむように花火を見上げる。

 

「いや、ちょっと昔を思い出してね…」

 

目の前で花火が爆発するので、その衝撃波がスフェーン達の耳を強く揺さぶる。

その衝撃と華やかさに混ざってスフェーンは涙を流した。

 

その時、彼女の瞼には孤児院の庭先でロケット花火を打ち上げていた昔の光景が映っていた。

 

「大丈夫か?」

「え?…あぁ、大丈夫」

 

不意に涙を流していたスフェーンは慌てて拭うと、再び花火を見上げる。

 

「悲しんでいるようではないな…」

「えぇ、それだったら直ぐにショウキが気づくでしょう?」

「…そうだな」

 

ハヤブサは軽くため息を吐きながら再び空を見上げると、そこでは満天の光で塗装された夜空が広がっていた。

 

 

 

 

 

帰り際、スフェーンはハヤブサ達に言った。

 

「ちょっとごめん、コイツ交換してくるわ」

 

そう言い彼女は空になったチャレンジサイズのベビーカステラの袋を手に持った。

 

「お前、やっぱバケモンみたいな腹してんな…」

「あら、あとでベビカスくんあげるわよ?」

「…」

 

そう言う意味じゃ無いと、ハヤブサは内心突っ込んでいた。




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