TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#121

花火大会を終えた数日後。

 

「畏まりました。スフェーン・シュエット様」

 

スフェーンの姿はメイコーの港湾管理局にいた。

貨物の取り扱いの予約などを一斉に行う港湾局でスフェーンは鉄道連絡船の予約を入れていた。

 

「運輸ギルドの証明を確認しました。こちらが車両証明書と駐車証明書となります」

 

そう言い二枚の厚紙を係員が手渡す。

二枚にはそれぞれ列車番号とサイン、印鑑が押され。同時に鉄道連絡船に乗るための駐車証明書には列車の車両数と重量が記されていた。

荷物を乗せるわけではないので、車両重量は軽い方だった。

 

「こちらは鉄道連絡船に乗船する際に必要となりますので、失くされないようご注意ください」

「分かりました」

「また鉄道連絡船にご乗船される際はあらかじめ手荷物をお持ちになってください。航行中は貨物室に入る事は出来ません」

「分かりました」

 

諸注意を記した紙を持ちながらスフェーンは港湾局を後にする。

 

『これで一先ずは終わりですね』

「えぇ、そうね」

 

乗船チケットを見ながらスフェーンはそれをファイルに挟んでバイクに跨る。

 

「まさか大陸に移動することになるとはね…」

『半分は放浪の旅です。新天地に向かって新しい場所を見に行くのも良いものかと…』

「それもそうだねぇ〜」

 

スフェーンはそんな事を言いながらエンジンを掛けて街を走る。

 

『取り敢えず鉄道連絡船への予約は完了しました。あとは期日までに列車を待機線に移動させましょう』

「乗れなくなるのは出航一日前なのよね」

 

鉄道連絡船は航行中の天候によって到着日時がズレる事がままあり、三週間の航海を経てヴェルヌ大陸の港湾都市に到着する。

 

『はい、鉄道連絡船の荷卸しと列車を安全に乗せるための時間を確保するためです』

「いやそれは予想できるけどさ…」

 

赤信号でバイクを止めて変わるまでの間、スフェーンは言う。

 

「意外と安くて驚いたわ」

『運輸ギルドの会員であれば割引が適用されているようですね』

 

鉄道連絡船の運営を行っているのは鉄道管理局傘下の鉄路郵船。

運輸ギルドと提携を行なっている為、運輸ギルドの会員証があれば運送業者よりも安く車両航送が可能だった。

 

運送業者は運輸ギルドに出入りできても、会員証を持っているわけではないので仕事は受けられても、その他運輸ギルドから提供されるサービスは受けられないのだ。

運び屋はその点楽ではあるが、そのほか全てをやらなければならないので苦労する。

 

「さて、これから如何しようかな〜…」

『ハヤブサさん達は今日は仕事でしたね』

「えぇ、夜にスフレチーズケーキ作って持って行くつもりなのよね」

 

そして高速に入り、スフェーンはメイコー・トライデントを走って行く。

 

「ほぉ〜」

 

その吊り橋の高さは圧巻の一言。片側三車線の三つの橋は足元を貨物船が余裕を持って通過できるように非常に高く設計されており、横をコンテナを積んだトラックが通過して行った。

 

「何で港湾管理局と貨物ターミナルがこんなに離れているのよ」

『元々メインが船の都市ですしね、如何しても一番大きな埠頭に場所を構えてしまうでしょう』

「だったら出張所でも作って欲しいものだわ」

 

スフェーンはそう言い、運輸ギルドで車両航送の申請をしようとして港の港湾管理局に回された時のことを思い出す。

 

「普通おかしいでしょう。鉄道管理局傘下の会社なのに何で運輸ギルドで出来ないのよ」

『月一でしか連絡船が来ないような場所ですからね…』

 

そう言いルシエルはカール・ポートでの毎日何本もの鉄道連絡船が発着している様を思い返す。

 

『メイコーはあくまでも貨物取引量が最大というだけで、鉄道連絡船が多く発着しているわけではありませんよ』

「しまったなぁ…これならカール・ポートで予約しておけばよかったわ〜」

 

そう言い橋を通過してインターチェンジを降りるスフェーン。

 

『しかしそれではハヤブサさん達に出会うことも、この前の花火大会もありませんでしたよ』

「むっ…それもそうだけど…」

 

スフェーンは納得をしていると、ルシエルは言う。

 

『まぁ私はスフェーンの浴衣がよくお似合いだったと思います』

「いくらかかったと思ってんねん…」

 

スフェーンはそう言ってどんどん増えて行く装飾品を思い返す。

 

『私としては、サラさんから貰ったネックレスを出さなかったのが意外でしたね』

「あんなの付けたら絶対面倒なのに狙われるって…」

『実際死ぬほど勧誘されましたからね…よく分からない事務所から』

 

そう言ってルシエルは名刺を渡して来た胡散臭い格好の者達を思い返す。

 

「いやぁ、ヘレン達には感謝しかないよ」

『途中から銃で脅していましたけどね』

 

そう言いルシエルはスフェーンがいい加減腹が立って鞄からMP-412を取り出して脅していたのを思い返す。

 

「流石にね〜、無許可でオッサンが体触ったら許さんよ」

『いえ、てっきり撃つのかと思っていました』

「子供にスプラッタ映像見せられんでしょうが」

 

スフェーンはそう言うと、メイコーの貨物ターミナルに降りる。

 

「身分証明書を」

「ほい」

 

ゲートでスフェーンは警備員のアンドロイドに運輸ギルドの会員証を見せると、そのままゲートが開いた。

 

「お疲れ様で〜す」

 

そう言って彼女はバイクを走らせると自分の列車の前で停車する。

 

『鉄道連絡船の発着場はこの先にありますね』

「コピー機印刷すればよかった…」

 

そう言いスフェーンはネットで予約をしておけばよかったと後悔していた。

予約の際、てっきり運輸ギルドに鉄路郵船の受付があると思っていたスフェーンは証明書を印刷ではなく直接取りに行くのを選んでしまっていたのだ。

 

ガレージにバイクを止め、スフェーンはヘルメットを外すと付けていた穴あき手袋を取る。

 

「さて、夜食を作りましょうかね」

『スフレチーズケーキのレシピはどれにいたしますか?』

「一番美味いの」

『それですと、りくろーおじさん風などがお勧めでしょう』

 

ルシエルはそう提案しながらスフェーンもそれに沿って材料を取り出し始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、公営住宅の一室でハヤブサ達は今日の夕食を作っていた。

 

「今日はスフェーン姉さんが来るんでしょ?」

 

部屋でヘレンが聞くと、ハヤブサは答えた。

 

「あぁ、夜にだがな」

「そっか〜」

 

それでも彼女は嬉しそうにしながらスフェーンが取ってくれたと言うゲームで遊んでいた。

 

「あいつが来る前に片付けておけよ」

「はーい」

 

今日はこれから鉄道連絡船に乗って次の場所に移動するスフェーンの為の軽いパーティーを計画していた。

 

「すっかり人気者だな…」

「兄さんも、スフェーン姉さんのお土産持ってる」

「あぁ、そうだな…」

 

そこでハヤブサはスフェーンから貰った二つ目のベビカスくんのぬいぐるみを見る。

ベビーカステラのチャレンジサイズ二つにプラスで複数の屋台飯を食べたスフェーンの胃袋には少々疑問が残ったが、要らないと言われたことでありがたくもう一つのぬいぐるみを貰っていた。

 

「可愛いの?」

「ブサカワって、知ってるか?」

 

彼は八つ墓村を読みながら言うと、そこでヒエンが言った。

 

「眠たくなってきたなぁ…」

「ちょっと昼寝するか?」

「うん…」

 

すると他の子供達も眠気を感じたのか、ゾロゾロとその場で横になって上から毛布を被る。

 

「確かにちょっと眠たくなってきたな…」

 

食後故のアレかと思いながらハヤブサもそのまま本を閉じてショウキ達と共に横になった。

 

「ZZZ…」

 

既に寝ているショウキ達に自分も眠気が襲って来たのでそのまま目を閉じようとした時、

 

カチャッ

 

部屋の扉の鍵が開いた音が聞こえ、すぐにハヤブサはその異変に勘づいて体を動かそうとしたが、

 

「誰だっ!?うぐっ」

 

そこから入ってきた数人の大人達はハヤブサの顔を掴んで床に叩きつけた。

 

「っー!っー!」

 

意識が酩酊する中、抵抗をするが直後に彼の首元に高圧注射器が打ち込まれた。

 

「(スフェーン…すまん…)」

 

ハヤブサは自分の口元を押さえ込む大男を最後にスフェーンを思いながら目を閉じた。

 

 

 

 

 

その後、ハヤブサ達の部屋の扉が開いた。

 

「…」

 

そして鍵のかかっていなかった部屋に一人の少女が入る。

 

「…ハヤブサ」

 

スフェーンはそこで玄関近くでうつ伏せに倒れていたハヤブサを見る。

体を起こして仰向けにさせると、彼は口元から涎を吹いて眼を閉じていた。

 

『空気成分中に通常の三倍の非ベンゾジアゼピン系薬物の反応を確認』

「睡眠薬…か」

 

スフェーンはそのまま部屋の奥に進む。

 

『体内に侵入した薬物の変換を開始。安全に活動可能です』

「…」

 

部屋の中で漂っていた睡眠薬を呼吸毎に体内で即座にエーテルに変換されながら部屋の中に入ると、そこでは

 

「みんな…」

 

四人の見知った子供達が横一列に寝ていた。その顔は静かに眠ったままだった。

彼女達の首元には赤い痕があり、それをルシエルは判別する。

 

『注射痕は圧力注射器と98%同一しています』

「…」

 

スフェーンは四人の脈を計ると、数値は予想通りだった。

 

「…ルシエル」

『はい』

「…近くの監視カメラの映像って残っていると思う?」

 

スフェーンは聞くと、ルシエルは言う。

 

『映像はありませんが、ハッキングされたログは残っています』

「…場所って、特定できる?」

『勿論です。今の現在位置も把握しています』

 

ルシエルは言うと、彼女は玄関で倒れたままのハヤブサを抱えて子供達の寝ている場所のソファに寝かせると、上から落としていた毛布を上からかけた。

 

「はぁ…」

 

そしてスフェーンはそこで大きくため息を吐いて溢す。

 

「まさかこんなに早く来てしまうとは…ね」

『どうされますか?』

 

ルシエルは聞くと、スフェーンが聞き返す。

 

「仇討ちをして、この子達は喜ぶと思う?」

 

その問いにルシエルは少し間を開けて答えた。

 

『…私は、命の価値は平等であるべきと考えます』

「…」

 

ルシエルが言うと、スフェーンはペギーの首元から少し垂れていた透明の液体を軽く舐めた。

 

『アルカロイド系化合物と認識、アコニチンと推定できます』

「トリカブトの毒か…」

 

即効性のある強力な毒物だった。それを五人全員がおそらく打ち込まれた。

 

「…ごめん」

 

スフェーンはそこで静かに部屋を後にし、扉を開けたまま公営住宅を後にする。

 

「ちょっと、行ってくるわ」

 

スフェーンは部屋の奥で寝ている五人を見つめた後にそのまま歩いて去っていった。

 

「すまないけど、勝手に仇取らせてもらうよ」




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