メイコーには数多くの港湾設備があり、中にはコンテナに入る荷物を出し入れするためのコンテナフレートステーションと呼ばれる施設が多く存在する。
「ははははっ!!」
その中の一つで大勢の男女が入り混じって酒を飲み交わして高笑いしていた。
「さあ飲め飲め!」
「ボス、今日は羽振りが良いっすね」
そう言い、ボスと呼ばれた女は一人の重量級サイボーグの男に聞かれると、彼女は意気揚々と少し頷いた。
「金が入ったんだ。しかもバカみたいに金払いが良かったぞ!」
「ほぅ、何したんです?」
「ガキを殺すだけの仕事だった。コンテナハウスに押し入って一発さ」
「それだけで?俺たち人攫いっすよ?」
男は言うと、その女は言う。
「攫うよりも簡単に金が入ったぞ」
「ちょいちょい、転職とかは無いっすよね?」
一人が言うと、女は軽く首を横に振った。
「まぁアタシらも丁度殺しておきたかった奴で助かったさ」
上手い話だったと彼女は言った。
時刻は午前二時、幸いにも報酬はすぐに払われた為に直ぐに夜通しで飲み明かしていた。
「攫って逃げ出したあのガキだったが、丁度始末できて清々したさ」
「あぁ、例の逃げ出したアイツですか?」
「おかげで一人首がへし折れちまったよ…残念なことに」
そう言って彼女は実に残念そうに肩を落とした。
「アレは悲惨な事故でしたねー」
そう言い、彼は雑に返すと、それを分かっていたのか。彼女は喜びに溢れた様子で顔を上げる。
「まぁ、でもおかげで今日はこうして酒を飲めるわけだが!!」
そう言って彼女はテキーラをショットで飲む。
そこに悲壮感は一切無く、仲間を追悼する様子もなかった。
「さぁ飲め飲め!今日は好きなだけやれるぞ!」
彼女はそう言って薬物も持ち出して宴会をしていた。
すると一人がコンテナの一つを見ながら聞いた。
「ガキはどうしますか?」
「ほっとけほっとけ、明日にゃ出荷だ」
そう言い人攫いの彼らは取引商品である攫ってきた子供達をコンテナに押し入れたまま家畜の様に扱っていた。
「アタシらの知ったこっちゃねぇよ」
「クライアントに文句を言われたらどうするんです?」
「中で死んだらそいつが弱かったのが悪いんだよ」
そう言って彼女は腕にコカインを打ち込んだ。それは今日の報酬で得た金で購入した精製された良質なコカインであった。
「純正コカインかよ」
一人が軽く唾を吐きながら言うと、その後唾の混ざった酒を拭いて捨てた。
「混ぜ物無しだ。よく効くぞ」
「イキすぎでそのまま逝くか?」
「阿呆か」
「ボス、俺にも」
「ほらよ」
そして彼女はコカインを投げると、彼も腕に打ち込んでいた。
「しかし、ガキ一人の殺しでこんなに儲かるとはな」
「全くだぜ、依頼主は相当焦ったんだろうよ」
そう言って女は笑みが溢れてしまい、酒盛りをしている人攫いグループは依頼された子供の殺害の報酬で盛り上がっていた。
「ちっ、外まで聞こえてきやがる」
そんな光景を外で銃を片手に降ろして聞いていた二人のアンドロイドと男。
「今日は我慢しろ。中入ったら俺らが殺される」
二人は前の仕事に失敗した罰で見張り番をさせられていたのだ。
装備品は格好つけているので、一見するとただの倉庫の警備員にしか見えなかった。
倉庫の上には看板もあり、側から見れば小さな荷積み業者にしか見えなかった。
しかし、施設の外まで聞こえてくる笑い声と盛り上がりの終わりを知らないその様子を前に溜息を漏らしていた。
「これじゃやる気にもなれん」
そう言ってアンドロイドは地面に座り込んで上を見上げる。
「そりゃ五月蝿えわな」
それに賛同するように地面に座り込む男。
二人はそれぞれ機関銃と小銃を持ち、アンドロイドは凸型の防弾盾も装備していた。
「ガキを一人殺す依頼だったんだろう?なぜ五人殺した?」
アンドロイドが聞くと、男は知らない様子で返す。
「さぁな、ボスが言うには前に取り逃したガキが入ってたとからしいが…」
「なるほど…」
そう言っていると、施設の前に一台のバイクがライトをつけて入ってきた。
「あ?」
入って来たバイクには一人の女がヘルメットを被って乗っており、自分達から少し離れた場所でバイクを停めた。
「何だ?」
その女は胸しか覆えないくらい丈の短い茶色いレザーのムートンジャケットに黒いセーターに黒い革手袋、スキニージーンズに革靴を履いていた。
体型はくっきりと分かれており、男をたぎらせる体型をしていた。
「おい、誰か女呼んだか?」
「いや、聞いてねぇが?」
どう言う事だと警戒しながら銃を持って立ち上がると、その女はヘルメットを被ったままやや怒り調子で怒鳴った。
「あのさぁ、五月蝿いんだけど?」
「「は?」」
するとその女はヘルメットを被ったまま男に詰め寄った。
「お前らの馬鹿騒ぎを何とかしろよ!」
女は倉庫で馬鹿騒ぎをしている彼らにクレームを付けに来た様子だった。どうやら近くで働く同業者のようだ。
「えっ、えぇ…」
「しかし…」
詰め寄られた男達はどうしたものかと困った顔を浮かべる。
「近所迷惑なんだよ!」
その女は男にそう言うと、盾を持っていたアンドロイドが言う。
「すみませんね、今日は仕事が立て込んでいるんで」
するとその女は言い返す。
「知るかよ!こっちだって仕事だっつてんだ!責任者出せよ!?」
「あぁ、勝手に入られては困ります!」
そう言って二人に抑えられると、そのクレームをつけに来た女は言う。
「だったら貴様らの上をここに呼び出せ!!」
「…」
男は言われ、この馬鹿騒ぎをしている元凶に少し不満の意味を込めながら無線を手に取った。
「あぁリーダー」
『あっ?何だ』
無線をつなぐと、明らかに機嫌の悪い声で女の声が聞こえた。
『なんか用か?クズども』
「入り口にクレームが来ていますよ。馬鹿騒ぎを収めろって」
しかし彼女はそんな彼の言葉に言い返す。
『んなこと知るかよ。適当に殴って追い返せ』
「そんな…」
横暴な返答に確実に薬が決まっていると内心溜息を吐く。
『うっせぇんだよ!!切るぞクズども』
「あぁ、ちょっと…!」
しかし彼女はそのまま無線を切ってしまい、二人は繋ごうとするも返事がなかった。
「で?責任者は?」
「すみません、こちらの方で言っておきますので…」
「すぐに馬鹿騒ぎ辞めさせろつってんの。軍警呼んでもらうぞ?」
その女はそう言うと、二人は慌てた。
「そ、それは困ります…!!」
「私たちの方から言いますので…」
いつもなら問題ないのだが、今は酒盛りで盛り上がっており。おそらく善悪の判断が曖昧になっているので、ここで治安官が来たら本来の商売がばれる可能性があった。
「じゃあ何?あんたらでこの馬鹿騒ぎを何とかできんの?」
「それは…」
分からなかった。なにせ久しぶりの大金を前に全員が湯水の如く娯楽品を買い漁っていたので今までに類を見ない盛り上がりをしていた。
「もう良い。殴り込みに行ってやる」
「あぁ、ちょっと!!」
そう言って倉庫に入ろうとした彼女に二人が慌てて肩を掴んだ時、
クシュ
男の首に女の指が突き刺さって貫通していた。
その時、太陽が登って陽の光に晒された港湾地区には規制線が張り巡らされ。大量のパトカーや装甲車、さらにはNBC偵察車まで止まっていた。
前車が赤色灯を灯して止まっており、地区周辺には報道車も停車して物々しい雰囲気となっていた。
「こりゃヒデェな…」
無数の弾痕やあらゆる場所に飛び散った血痕や機械油を前に防護服を身に纏った軍警の治安官が呟く。
「港湾管理局の職員が銃痕と外にあった一人の遺体を見て通報したそうです」
そう言い防護服に表示される情報を読み上げる部下の治安官。
「事件の時間は?」
「推定ですが、二時から三時頃かと…」
周辺には同じ防護服を着た鑑識も証拠や無数の遺体を写真に収めていた。その中には中が汚れ、狭いケージが入ったコンテナの写真もあった。
「この荷積み業者は裏で人身売買を行なっていたようです。コンテナの中から二十名ほどの子供達を発見。うち五名は、捜索願が出されていました」
「なるほど、荷積みの裏で人攫いか…」
クズどもにはお似合いの死だな、とは口に出さなかったが彼は思った。
そしておそらくここにいるほとんど全員が同じ感情を抱いている事だろう。
「事件発生時に人は?」
「生憎、ここの地区は夜間に閉鎖されるので、今の所目撃証言はありません」
「この弾痕でか?」
「はい…」
淡々と纏められた報告を読み上げていく治安官。
「監視カメラは?」
「元々人通りも少ない地区ですので数も少なく、おそらく時間がかかるかと…」
少佐の問いに少々苦い表情で治安官は言う。
「衛星は?」
「その時間は丁度カメラの画角から外れてしまっています」
「とすると、衛星のカメラを知っている人間の犯行かもしれんな…」
そう言いながら地面に敷かれたマットを歩いて事件現場を見る。
「どのくらい死んだ?」
「推定ですが、確認された遺体の数は最低四四名。一部は原型をとどめておらず、また同時に何かに喰われたような痕跡があるとの事です」
「…」
二人は歩き、倉庫のあらゆる場所が血と油と弾痕で塗装されており、無事な場所はないのではないかと思わせるほどだった。
「少佐」
するとそこに一人の治安官が駆け寄った。
「何だ?」
「発見された遺体の回収、並びに検死が終わりました」
「そうか…アレの死因は?」
少佐の階級章をつけた刑事は聞くと、そのアンドロイドの治安官は答える。
「検死の結果、頭部損壊による死亡と推定されています」
「推定…ね」
仕方ないかと思いながら彼は天井から差し込む数発の銃痕を見る。恐らく跳ね返った弾頭が天井を貫いたのだろう。
「これほど凄惨な現場は見たことがないな…」
「えぇ人攫いのグループとは言え、少し同情してしまいそうです」
「あぁ、本当に人の仕業なのか疑いたくなるな」
そう言い足元に転がっている誰のか分からない鮮血の散るサイボーグの腕を見下ろす。
「少佐、有識者の方が到着しました」
「あぁ、すぐに行こう」
そう言い、彼は後ろで写真を撮って証拠を収める鑑識に現場を頼むとそのまま倉庫を出る。
「まるで虐殺現場ですね」
「にしては抵抗した痕跡がある。何かしら戦闘があったことは確かだ」
そう言い防護服を脱ぐと、彼らはそこで高級車から降りてくる一人の高級スーツに身を包んだ、数名の黒服の護衛に囲まれた一人の男を見た。
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