「やぁ、ご足労おかけします」
この事件を担当する事になった少佐はある一人の男を出迎える。
「うむ、君がワイアット少佐かね?」
「この事件の担当となるルージュ・ワイアット少佐であります。マックス・ブレトー博士」
そう言い彼はエーテル研究の第一人者である人物に手を差し出そうとしたが、
「あぁ、挨拶は結構。先に例の遺体とやらを見せてもらおうか?」
「は、はぁ…」
「生憎、私は時間がないものでね」
そう言い彼は少々不満げに、そして軍警相手にやや見下すような視線で言うと、ワイアットは和かに彼を止めていたトラックの荷台に乗せた。
「こちらが今回博士に見てもらいたいものでして…」
「ふむ…」
そう言ってワイアットはブレトーにカプセルに入れられた一人の遺体を見せた。
「これは…」
「えぇ、博士をお呼びしたのはこれにありまして…」
その遺体を見て驚愕した彼にワイアットは軽く頷いた。
遺体は首から上がエリザベスカラーように枯れた植物の花弁に覆われ、舌は口から飛び出して雄しべの様に変質しており、眼球からは無数の雌しべが突き出していた。
「?!」
「遺体は見て分かる通り女性のものです。ただ顔がこのように大きく変質しておりまして…」
ワイアットは明らかに異常な見た目をしている遺体を前に言うと、ブレトーはその遺体を前に顔を青くしていた。
「こんなものは…神への冒涜だ」
「えぇ、無論これが故意によるものであれば…」
言い掛けた所でブレトーは叫んだ。
「こんな遺体はすぐに処分しろ!!気色が悪い!」
「え?」
首を傾げるワイアットにブレトーはトラックを降りながら言う。
「これ以上は時間の無駄だ。私は帰らせてもらう」
「あっ、ちょっと…!!」
「よくも私の貴重な時間を割かせてくれたな?!後で貴様らに苦情を入れてやる!!」
そう言い残すと彼はそそくさと車に乗って走り去ってしまった。
「…なんだあのクソジジイ?!」
走り去っていった高級車を見送った後、ワイアットはこれでもかと文句をぶちまけた。
「気持ち悪いから遺体を処理しろだと?テメェの方がよっぽど神への冒涜しとるわ!!ド阿呆っ!!」
帽子を地面に投げつけ、腹が立って仕方がない彼に一人の鑑識が話しかけた。
「あちゃー、何でよりにもよってあの人呼んだんですか…」
「はぁ?エーテル研究の第一人者じゃないのか?」
そう言った鑑識の前歴を知っていたワイアットは聞くと、彼は首を横に振った。
「だってあの人、策略と謀略で上にのしあがった人間ですからね。下手したらろくに論文も書いた事ないんじゃないっすかw?」
貶す口調でいうアンドロイドにワイアットは驚愕した。
「嘘だろ?研究者なのにか?」
しかし鑑識のは首を縦に振る。
「いやぁ、マジっすよ。あのバカ男のせいでエーテル研究は予算の無駄遣いって認識できちゃったんすから…」
「マジかよ無能かよ…」
ワイアットは落胆すると、鑑識はさらに追撃をする。
「頭いいバカって奴っすね」
「うわぁ、最悪だ…」
目を覆うしかない状況にワイアットは肩をガックリと落とすと、
「そりゃ一つの研究所潰すくらいですからね。あぁ〜、もちろん良い人もいるんっすよ?」
「マジ…?」
ワイアットは鑑識を見ると、彼は自信ありげに返す。
「えぇ、私もその人の補助やってた事ありましたからね」
「誰だ?今すぐ連れて来れるか?」
ワイアットは事件解決と、この不審な遺体の解明に興味が湧いており。思わずアンドロイドの肩を掴んで聞くも、
「いやぁ、それはちょっと大変っすよ?」
アンドロイドは少々苦い顔浮かべた。
「なぜだ?」
「だって、その人はブレトーのバカに早々に研究所を追放された人間ですからね。ブレトーが気色が悪いって目の前で悪口言ってましたし」
なまじ研究者として余りにも優秀すぎた為にブレトーの政敵として追放されたのだと言う。
「名前は?捜索して探してやるぞ!」
ワイアットはやや興奮気味に言うと、アンドロイドは言った。
「ネクィラム・キヨシ・オカダ…今どこにいるかは分からないっすけど、マジの天才エーテル研究者っすよ」
クシュ
倉庫の見張りをしていた男の喉を女の指が貫通し、突き出た鮮血はトウゴマに変質した。
「なっ…?!」
そんな喉を貫通した男を見て、アンドロイドは咄嗟に銃を構えようとしたが、女の足刀によって頭部が砕け、アブラナが壊れた頭部や体から飛び出た。
「見張りご苦労さん」
「こほっ…」
喉を貫かれ、微かに反応しただけで死に絶えた男に突き刺さった手を抜くと、不思議な事に女の手袋には血の一つもついて居らず、そして抜き取った首からはヤマブドウの葉が生えた。
そして地面に二人を横にすると、その女はヘルメットを脱いで中から長髪の灰色の髪を降ろし、茶緑色の瞳を灯らせていた。
彼女はこの時間だと言うのに濃いサングラスをかけ、ジャケット下のMP-412とTRR8を確認する。
「さてと…」
そして身長は一七〇半ばはあるであろうその女は下で倒れる二人の見張りを見ながら呟く。
「ほ〜う…」
そこで男が持っていたスリング付きのIMI ネゲヴ SFを見た。
そして彼女はその機関銃を肩にかけて腰に降ろすと、装填されていた弾帯を装填口に置いてコッキングレバーを引いた。
ガシャンッ
しかし倉庫の中では人攫い達はご覧の通り馬鹿騒ぎをしており、コッキングをしたにも関わらず音は聞けて居ない様子だった。
「さぁ、本物のパーティーをしようか」
彼女は片方の口角が上がると、持って居た機関銃の引き金を引いた。
その時、倉庫の中で宴会をしていた時。
「ん?」
薄い倉庫のシャッターに微かに聞こえたその音に近くにいた一人のアンドロイドがそれに首を傾げた時、
ッッッッッッッッッッッ!!
無数の銃弾が倉庫の薄いシャッターを貫通して中にいた人攫いグループに多数命中した。
「ぎゃあっ?!」
「うわっ…!?」
「っ?!?!」
座ったりして視線が低かったこともあって、発射された弾丸は中にいた者達の上半身や頭に命中する。
発射された5.56mm小銃弾は至近距離であるため、本来であれば貫通するだけで終わるはずのサイボーグやアンドロイドも四散して吹き飛ぶ。
そして過貫通して弾道がずれた弾頭だが、威力があったのでそのまま後ろにいたもう一人の胸に命中した。
「あぁ…っ!!」
そして鮮血を派手に散らしながらその男は地面に倒れて絶命する。
倉庫に銃弾の射撃音が響き渡り、跳ね返った弾丸が腕や足に命中して怪我をし、貫通力のあるフルメタルジャケット弾は上に吊り下がっていた照明を割って倉庫の中は暗闇に包まれる。
「くそっ…!!」
銃撃の最中、咄嗟に物陰に隠れた女は慌てて小銃を片手に持って銃を装填する。
「うあっ!」
「がぁあっ?!」
その間も、逃げ遅れた仲間が下手に立ち上がって機関銃の餌になって体が蜂の巣になって倒れる。
「誰の襲撃だ…?!」
「分からん…」
すると横一列に穴の空いた倉庫のシャッターの向こうで銃撃が収まると、周囲に静寂が走った。
「…」
その状況に息を殺して生き残った人攫いの一人が顔を覗かせた時、
ッッッッッッッッッ!!
再び銃弾が発射され、うっかり顔を覗かせてしまった数名が犠牲になった。
「くそっ」
すると今度の銃弾の雨は最初に比べて短く終わり、再び静寂が支配する。
天井には数発の跳ね返った弾丸が穴を開けて月光が差し込んでおり、人攫い達は銃を持って暗視装置を起動した。
「…」
視界が緑と黒ではっきりと映され、彼らは息を殺して足音を三回鳴らした。
すると数箇所から同じ回数の足音が聞こえ、生存確認をすると女は足音を殺して物陰から飛び出した。
そしてハンドサインで生存者達を集めると、全員が銃を持って移動する。
『聞こえているか?』
『はい、問題なく』
そして通信をすると、声を出さずに彼女は言う。
『残ったのは?』
『わかりません』
『チッ、使えないわね…』
そう言いながら倉庫の出入り口の扉まで移動すると、そこで他に生き残った二十名程の仲間に待機させた。
『一人行って』
『俺が行く』
そう言い大型の重量級サイボーグの男が扉の前に向かって片手に機関銃を握ってドアノブを握った瞬間。
ドゴンッ
開けようとしたドアが根本からへし折れてドアを握っていた男はそのままドアに顔をぶつけると、そのまま歯や骨が圧壊して血や循環液を噴出させながら後ろに倒れると、そのままドアと地面のサンドイッチに合って鮮血と循環液を派手に散らした。
「「「「「っ?!」」」」」
それに全員が驚き、少し離れていた三人が銃を構えたが…
「っ…!!」
突入してきた人物の持って居た凸型防弾盾にガムテープで括り付けられていたソレに目を見開いた。
「MON-200…っ!!」
旧式の大型指向性対人地雷に慌てて降りようとしたが、
ッ!
突入した時に発射され、少し防弾盾を持った人物が後ろに下がる勢いで足がずれると、発射された無数の小粒鉄球が散弾と化して控えていた六人をズタズタにした。
「「ぎゃぁあっ!!」」
鉄球で穴だらけになった数人に女は驚愕しながらも突撃してきた人物に発砲した。
「撃て撃てっ!!」
発射された銃弾は防弾盾に数発命中するが、突入してきた人物は凸型の盾の段差部分からTRR8を取り出すと、引き金を引いた。
ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!
そして八発の.357マグナム弾が発射され、地雷を使い切った防弾盾を持ったままポイントマンの様に走って前進してきた。
「っ…!!」
女は突撃して先ほどと同じように踏み潰そうとしてくるその人物に咄嗟にA-545の銃全体で受け止めると、防弾盾を蹴り飛ばした。
「なっ…?!」
蹴り上げた防弾盾の後ろから現れたのは一人の女だった。
胸しか覆えないくらい丈の短い茶色いレザーのムートンジャケットに、黒いセーターに黒い革手袋、スキニージーンズと革靴を履いており、その女はこんな時間にサングラスをつけて居て、その下から茶緑色の瞳を見た。
夜目に慣れ、満月という事もあって月明かりから灰色の長髪も確認すると、その女は首を狙ってきた。
「くっ…!!」
腕でカバーをして女の攻撃を抑えるも、何かが割れる音が聞こえた。
「あの女だっ!」
一七〇半ばのやや高めの身長を持った彼女に一斉に銃弾が撃たれるも、彼女は再び暗闇の中に消えていった。
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