灰色の長髪に茶緑色の瞳の女。
人攫いのリーダーの女はその顔に見覚えが無かった。
「ちっ…」
倉庫と言う狭い区域での銃撃戦。
誰かの報復に来たしては人数があまりにも少なかった。
「だれだ…アイツは?」
「女だったぞ?!」
倉庫の中で銃撃戦を展開しながら女は数人の部下と共に物陰に隠れる。
抜群とも言える素晴らしい体型で、一七〇半ばの身長で、年齢は恐らく二十代前半から十代後半。
「見た事がねぇ…」
「どこの組織の奴だ…?」
そう愚痴ると、
「組織じゃ無い。
「「っ!?」」
二人の間に知らない声が混ざり、咄嗟にその方に銃を向けて引き金を弾こうとした時、
グシャ
「…は?」
唐突に真横に居た仲間の胸から上に無数の巨大な結晶体が現れると、女の顔にアンドロイドの機械油が付着する。
そしてその影はそのまま仲間を上に掬うように持ち上げた後に
グシャグシャ
まるで咀嚼するように機械を何度も潰した後に虚空の中に消えた。
「何が…」
直後、悲鳴が上がった。
「うっ、うわぁぁああああっ?!」
銃を撃つ音が聞こえ、直後に悲鳴が上がる。
「ぎゃあっ!!」
「何だっ?!」
「貴様ぁっ!!」
何があったかと顔を覗かせると、自分が隠れていた場所に銃弾が掠めて咄嗟に頭を屈めると、そこでは
「うわぁあああっ!?」
「何でだよ!?」
まるで操られたように両手に銃を持って腰だめで撃つ二人。
「うわぁあっ!!」
「たっ、助けてくれ!!」
そしてその二人のサイボーグの腕の隙間からエーテルが吹き出し、無数の草花が伸びると、まるで侵食するように顔を覆った。
「あっ、あぁ…?!」
「たっ、助け…て」
すると最後に二人の鼻や耳から草花が突き出るように生えると二人は肩をがっかり落とした後に本当に人形の様な動きで銃を肩に構えて引き金を弾いた。
「撃て撃てっ!!」
一人の重量級サイボーグが叫んで機関銃を二人に撃たせる。
アレは最早仲間ではないと瞬時に悟った彼等は体が植物で覆われた二人に引き金を放つ。
「くそっ、アイツの仕業か…?!」
二人の変容に驚愕と恐怖しながら彼女は物陰から飛び出して先ほど女が消えた場所に向かって走り出す。
「ちっ…くそっ」
しかし先ほど打ったコカインのせいで視界が揺らいだ。なまじ慣れない純正のコカインを打った為に混ざり物ばかり打っていた彼女には強烈に体に効いたのだ。
「おやおや、薬が効いているのかい?」
「っ!!」
直後、女は引き金を弾くと後ろから一人の重量級サイボーグが機関銃を握った。
「ボス!!」
そして引き金を引こうとしたのだが、
「なっ!?」
突如暗闇から飛び出してきた彼女は右手が籠手のように虹色に反射する結晶体で覆われており、左手にはTRR8を手袋越しに引き金に手をかけていた。
「ぎゃっ…!!」
そして右手にはまるで熊の様な鋭い爪が生えており、横薙ぎで機関銃を持っていた者の顔を半分潰しながら引っ掻くと、抉られた顔から無数の草木が無造作に生え散らかす。
「っ!?」
女は目の前で起こった非常識に眼を見開いて固まってしまった。
籠手の様で明らかにそれとは違って生物的な物を感じる彼女の右手。
そして女が固まった瞬間、
「っ!?しまっ…」
目の前の女は自分に鳩尾を思い切り膝で蹴り上げ、そこで少し吐きながらも銃を構えて引き金を弾くと、
「っ…!!」
直前に彼女は仰け反りながら弾倉を足の甲で弾き落とし、そのままコッキングハンドルを押し込んで弾薬を強制的に弾き出した為に引き金はただ弾いてカチッと言う音を微かに出しただけで終わった。
「…」
そして仕留め損ねた彼女に女はそのまま持っていた銃を上に蹴り飛ばし、右手で握り拳を作ると、そのまま顔面に一発飛ばし、女はその反動で後ろに倒れると、背後にあった積み上がった荷物に頭をぶつけてそのまま意識を落とした。
「…うっ」
そこで軽く呻き声を上げながら女はゆっくりと眼を開けて視界が開ける。
「うぁあああっ!!」
「っ!!」
自動小銃の発砲音と悲鳴で女は意識がはっきりするが、
「くっ…あぁっ…!!」
自分の右脚に何かの虹色に反射する枝のような結晶体が突き刺さっており、それには返しが付いていた事でそれを抜くだけで悲鳴を漏らす程の苦痛が走った。
「くっ、来るなぁあああっ!!」
すると少し下の地面を銃を持って恐怖に駆られた表情で一人が斜め上に向かって射撃をするも、
ガシュッ
月光の差し込んだ光に反射で見えた刺さっていたものと同じ色の巨大な腕の様な結晶体に首から上を喰われると、そのまま体から引き離した。
残った体からは花瓶に花を挿したように派手に色とりどりの草木が生える。
「…」
その腕を辿ると、そこでは異様に変質して肥大化し、全体を結晶体で覆われていた両腕を持つ、自分を蹴飛ばした女が立っていた。
その顔は少し突き出た様に結晶体が皮膚を割って出ていた。
彼女は足元にあった首のない死体を掴むと、掌に当たる場所にあった巨大な口のような穴に入れて咀嚼音を倉庫に響かせた。
「っ…」
こんな状況下でそれを見た女は震えと吐き気が止まらなかった。
得体の知れない怪物が自分達を襲って来たのかと思った。まるで昔のパニック映画の一場面の様な光景に足が動かなかった。
「…」
その女は身につけていた装備品ごとアンドロイドや人も関係なく食事をしていると、
「うっ、動くなっ!!」
一人の勇気ある男が子供を連れて首元にナイフを突きつけていた。
「うっ、動いたら…こいつの命は無いぞ…!!」
その子供は震えており、近くには蓋の空いたコンテナがあり、その中には子供の入れられたケージが大量にあった。
「…はぁ」
それを前に女はやや呆れたため息をつくと、茶緑の目を男に向けた時、
「っ!?」
子供を掴んでいた男の腕のエーテルが突如漏れ出し、それがサワサワと音を立てて植物に変質していく。
「ひいっ!?うわぁっ!!」
それにその男は悲鳴を上げて慌てて子供を放り捨てて植物を剥ぎ取って視線を落とすと、
「もう少し考えてから人質を取るべきだったな」
「お、お慈悲を…!!」
彼の眉間に銃口が突きつけられると、そのまま女は引き金を弾いた。
脳幹を破壊されて、そのまま頽れたその男の足元で女を見て震えていた子供にその女は肥大化していた手が収縮して普通の手袋の付いた手に戻ると、その子供の髪の毛を軽く触った。
「これは夢だ、ゆっくり眠っていると良い。悪夢は必ず醒める運命にある」
彼女はそう言うと攫われた他の子供達も見た瞬間に、魔法に掛けられたように一斉に彼等は倒れてしまった。
「…」
その光景を見ていると、その女は倉庫を練り歩く様にゆっくりと一歩ずつ歩く。
静寂が包む倉庫の中、そこに先ほどの喧騒は消え去っていた。
カツン…カツン…
そして階段を登って人に化けた怪物は見下ろす。
「まだ生きていたか…」
「チッ…」
這いずり回って逃げようとした女は悔しげに舌打ちをする。
「お前には聞きたい事がある」
「はっ、答えると思うか?」
直後、女は頭を蹴飛ばされ、地面に顔をぶつけると血を流す。
「今の私をあまり怒らせない方が良いぞ?」
「うぅっ…」
そう言い頭を掴んで壁に叩きつける。
「貴様らの依頼主は誰だ?」
「あ?」
「昼に殺しの依頼をこなしただろう?」
それを聞き、驚いた顔を浮かべる。
「あっ、あんた…うがっ!?」
その時、再び顔を蹴られる。顎の骨が折れ、血が流れる。
「生憎、今は余計なおしゃべりはよしてくれ…」
彼女はそう言い、歯が数本吹っ飛んだ女は内心冷や汗をかいた。
目の前の女は依頼を受けて殺した子供の関係者だったのかと。
確かに一人まだ見つかっていない奴がいたが、そいつの報復だったか…!!
「キラ・ハイレンツ」
「っ!!」
自分の本名を知っていた事実に彼女は驚くと、尋問する彼女は懐からMP-412を取り出してそこから目の前で銃弾を一発ずつ装填していく。
「貴様の依頼主は誰だ?」
装填を終え、そう言いながら銃口を突きつけると、キラは震えた声で言った。
「しっ、知らないっ!!私は、言われた仕事をしただけだ!!」
「…」
「仕事中に顔を隠した男が金を積んできたから…それで…!!」
怯えた彼女は言うと、銃を向けていた女はそんな必死の形相の彼女を見て銃をしまった。
「へ…?」
その行動に彼女は首を傾げると、その女は出口を指差した。
「行けって」
「?」
「ほら」
「…」
彼女はそう言って煙草の箱とライターを取り出した。
その意味を理解した彼女は足を引きずりながら顔面が恐怖に駆られた形相で倉庫を出て行く。
「はぁ…っ!はぁ…っ!」
息を切らして倉庫を出て歩くと、出入り口に見張り番の二人の遺体はなかった。多分、人に化けたあの女に喰われたに違いない。
「ヴッ…!?」
しかし突如、倉庫の外に出たキラの心臓に激しい痛みが走った。
「ヴッ…あぁァァ嗚呼っ!?」
そして激しい痛みから金切り声のような悲鳴が上がると、直後に声が掠れて出なくなる。
そこで倉庫の中で煙草に火を付けた彼女は言う。
「いつ私が貴様の命を見逃すと言った?」
彼女はそう言い煙を吐く。その間もキラは体が蠢く。
「貴様らは墓石があっても誰かから泣いて拝まれるような立場か?驕るな。貴様のような人間はこの世界に呆れるほどいる」
倉庫を出て震えるキラからは首から巨大な花弁が生える。
「あっ…がっ…」
そして無理やり口が開いてしまうほど舌は肥大化し、口を貫く。
「おがががっ…」
顎の骨が外れるほど肥大化した舌は草色に変色し、どんどん固くなっていく。
「命の価値は平等だが、立場に平等はあり得ない」
そしてキラは目が白くなり、その奥やまつ毛から無数の雌しべが突き出る様に生えると、そのまま前傾になって彼女は地面に倒れた。
雄しべはへし折れ、手先も緑色に変質し始めていた。
「私に目をつけられた時点で貴様らに命があると思うか?笑わせるな」
彼女はそう言うと、血と油と弾痕で染め上げられた倉庫を歩いて海辺に出る。
「…」
紫煙を登らせ、一本吸い終えてシケモクを海に捨てると、彼女は海に飛び込んだ。
シューッ!!
すると彼女が飛び込んだ海から湯気が立つほど激しく沸騰し、それが暫く続いて湯気が収まった後、岸壁に一般の細い腕が現れた。
「よいしょっと…」
そしてそこからナッパ服姿のスフェーンが現れると、そのまま岸壁に上がった。
「ふぅ…流石に疲れるわね」
彼女の服は不思議なことに一切濡れておらず、帽子を被り直す。
『スフェーン、モード・マハザエル使用時と体型変容時の身体負荷を数値化しました』
すると計測していたルシエルが言い、スフェーンにデータを見せる。
「…うーん、分からんから良いわ」
『分かりました。…まぁあなたの場合は経験の方が分かりやすいですか』
「おうよ」
彼女はそう言い惨劇と化した倉庫を縦断する。
そしてスフェーンは自分の胸に手を触れながら溢す。
「どうせならあのままの姿を維持したい…」
『それは経験を積む他ないのでは無いでしょうか?』
「でもめっちゃ疲れるねんな…あれ」
そう言い彼女は足元のサイボーグの残骸を蹴飛ばす。
『まだ慣れていないからですよ、これからは日常的に訓練をするべきでしょうね』
「まあ身長は高い方が良いしね〜」
一人で人攫いグループを全滅させた彼女はそのまま倉庫を出ると、そこで地面に転がっていた機関銃を肩から下げる。
「重っ」
『今の貴方ではそれは重いお荷物になりますよ』
「…仕方無いか。勿体無いけど」
そう言いながらスフェーンは武器を捨てて乗ってきたバイクに跨る。
『遺体の処理はしなくてよろしいのですか?』
「良いでしょ、むしろその方が役立ててくれる」
そう言い彼女はエンジンをかけるとそのまま港湾地区を走り出していった。
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