TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#126

船の上の人となったスフェーン。

鉄道連絡船に乗って新しい大陸に移動する彼女は船内レストランでカツカレーを食べる。

 

「しっかしまぁ〜、ルシエルも可愛い部分あるじゃないの。えぇ?」

『いつまで擦るつもりなんですか…』

 

ルシエルは呆れた様子で言うと、スフェーンはその時を思い返す。

 

「いやぁさ、部屋の鍵をインキーしちゃってさ、大慌てでフロントに行ってタジタジな言葉になってさ、係員も生暖かい目だったねぇ〜」

『…』

 

ルシエルは少し頬を膨らまして不満げな表情を浮かべる。

出航準備中に部屋の鍵をインキーしてしまった彼女は部屋に入る為に大慌てで船のフロントに行って事情を説明して開けてもらおうとしたのだが、慣れない状況に半分錯乱状態で話しており、言葉の節々を聞いて事情を把握したアンドロイドの船員が温かい目をして部屋の鍵を開けてくれた。

 

「でも良かったじゃん。温かい目で」

『良くはないですよ?迷惑をかけましたから』

 

ルシエルはそう言いながらスフェーンはカレールーをカツにかけて一口。

ザックリと揚げられた豚カツにカレーの辛味が程よく脂身を引き締める。

 

「どうも」

「あっ、どうも〜」

 

すると自分の座っていた席の反対に座った一人のアンドロイドが挨拶をして来てスフェーンも軽く会釈する。

 

『親しいですね』

「(そりゃ一週間一緒ですからね)」

 

スフェーンはそう言い三週間の航海で人の出入りがない空間で過ごす他の乗客達を見る。

メイコーから乗って来た乗客達はほぼ全員が運び屋か運送業者である。

アンドロイドや獣人、サイボーグなど雑多な人々が狭い居住空間で過ごしていた。

 

 

 

「ふぅ…」

 

食事を終え、屋上に上がったスフェーンはそこでプールで遊んでいる家族連れなどを見ていた。

 

穏やかな海、海鳥も居ないくらい何もない水平線と入道雲を眺めながらスフェーンは煙草を取り出す。

 

キンッ

 

ライターで火を付け、ゆっくりと燃える紙巻き煙草。半袖半ズボンにサンダルと言うやる気の無い格好で彼女は船内を歩いていた。

 

「ねぇ、ルシエル」

『何でしょう?』

 

そして徐にスフェーンは聞く。

 

「どうして私達って生まれたと思う?」

『…難しい質問ですね』

 

ルシエルはその疑問に考える仕草を取る。

 

「まぁ、ゆっくり考えたほうが良いのかもしれないけど…」

 

そう言って彼女はルシエルを見た。

 

『よっと…』

 

スフェーンはそこでルシエルに身体を預け、彼女の瞳が再び虹色になる。

 

「またですか…」

『偶にはね〜、私も楽したいし』

「私はあまり戦闘に特化していませんよ?」

 

彼女はそう言うとスフェーンは突っ込んだ。

 

『そんな日常茶飯事で戦闘が起こりますかいな。ってか今は船の上だし』

 

そう言いスフェーンは突っ込むと、ネットニュースを流し見る。

 

『あぁ〜、やっぱ最近はずっとこのニュースかぁ〜』

 

そう言って彼女が見ているのはカレル島で行われる会議である。

 

「発起人はブルーナイト、会場を用意したのは第三者の企業の様ですね」

『いやはや、派手に打ち上げたもんだよ。世界中から記者が詰めかけてる』

 

会場となるホテルを丸々貸し切り、世界中の報道機関を呼び寄せて行われる会議。一部著名なライターも参加しており、昨今の情勢から今後の趨勢を左右するかもしれないとまで言われていた。

 

「緑化連合や企業連合の双方と全く関係ない企業が仲介を行った様ですね。いくつかの企業も参加している様です」

『と同時に有名な傭兵が一同に集まっているねぇ…』

 

感心した様にSNSに上がっている来訪者を見ながら呟く。

 

「貴方も元最強の傭兵ですよ?」

『ははっ、もうとっくの昔に死んでらぁ』

 

そう言いルシエルが煙草を吸い終わって灰皿にシケモクを入れた時、

 

パシャッ「うわっ」

 

ルシエルの顔面に水が掛かって上半身が濡れた。

 

「へへ〜ん!大当たり」

 

そう言い水鉄砲を片手に誇らしげにする一人のプールで泳いでいた子供。乗船後に顔見知り程度になった家族連れの一人だ。

水をかけられたルシエルは濡れた髪を手で分けると、

 

「やってくれましたね…」

 

徐にプールサイドにあった充電中の一丁の電動水鉄砲を手に取ると水タンクを挿して引き金を引いた。

 

「喧嘩を売ったからには容赦しませんよ」

「「「キャ〜ッ!!」」」

 

そこからルシエルはプールで遊んでいた子供達と銃撃戦を始めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

激しいエンジン音を轟かせながら洋上を一機のダッソー ファルコン 8Xが飛行する。

 

「ここまで付いてくるのか?」

 

その機内、要人輸送用の高級旅客キャビンでブルーナイトは同乗するロトを見る。

 

「ええ、」

 

彼は防弾防刃スーツを身に纏いながら頷く。

 

「今回の会議の発起人である貴方の暗殺を防ぐための措置です。どうかご了承を」

 

あの日以降、ブルーナイトは複数名の連名によって提出された要請により保護観察対象として軍警の手によって行方をくらましていた。

その責任者としてロトが選抜され、付きっきりで彼の世話をしていた。

 

「まさかこの年になってお前の飯を食う羽目になるとはな…」

「少なくとも子供の頃のカップケーキ事件よりはマシでしょう」

 

そう言いなぜか普通の材料を使ったはずなのにカップケーキが青紫色になった昔を思い出す。

数少ない孤児院での嫌な思い出だ。ロトにとっては食べたレッドサンを気絶させてしまった黒歴史だった。

 

「ああ、断然うまかったな…」

 

彼はそう言ってプライベートジェットがカレル島の空港の滑走路に着陸する様を眺めた。

 

「只今、軍警察のヘリコプターに乗って新たな会議参加者が到着した模様です!!」

 

メインキャラの登場に記者達は一斉にフラッシュを焚きながら着陸したプライベートジェットを映す。

 

「離れろ!」

「何をやっている!!ここは今の時間立ち入り禁止区域だぞ!?」

 

そう言って叫びながら軍警の治安官が突入してくると、記者達は蜘蛛の子を蹴散らす様に逃げていく。

 

「やれやれ、これは増員を呼んだほうが良さそうですね」

「私としては構わないのだがな…」

 

ブルーナイトは逃げて行き、一部捕縛された記者達を見ながら言うと、

 

「過去に記者に紛れて銃を持ち込んで暗殺された事案がありましたですね…」

「あぁ、分かったとも。君の言う通りにすれば良いんだろう?」

「そうです。貴方の身の安全は我々軍警察が保証いたします」

 

ブルーナイトに和かな顔を見せる彼に孤児院の時の雰囲気は消しとんだなと少々悲しむブルーナイトであった。

 

「准佐、準備が完了しました」

「分かった…では行きましょう、ブルーナイトさん」

「あぁ…」

 

スーツに身を包んだ彼はそのまま赤外線対策の施された傘を差されながらタラップを降りると、そのままホテルの中に入って行った。

会場のホテルの名前はホテル・イーピヨルス。既に招待した傭兵達の多くが来ていると聞いている。

 

「物々しいな…」

「えぇ、何せ記者方が貴方の姿を収めようと必死ですからね」

 

そう言いミラーガラスの向こうで軍警の装甲車によって塞がれた入り口に詰めかける報道陣を見る。

 

「記者会見の場を設けていると言うのに…」

 

呆れた様子でロトは溢すと、ブルーナイトを誘導する。

 

「安全の為、バルコニーは全て閉鎖しております」

「分かった」

「部屋に置いてある物品に関しても、我々の方で検品を行なっておりますので御安心を」

「すまないね」

 

二人はエレベーターに乗りながら言うと、そこで幾つかの注意点を言う。

 

「ホテルには我々治安官が常に配備されています。会議開催中は会議参加者の安全確保の為、部屋を出る際。部屋に人を呼ぶ際は常に待機する治安官にお伝えください」

 

ロトはそう言うと、エレベーターホールで拠点防衛用に黒一式の装備を身に纏った治安官が敬礼をする。

 

「どこまで着いてくるんだね?」

「我々は部屋の前までです」

 

そう言い静寂に包まれたホテルの廊下の一室の前で立ち止まる。

 

「こちらがあなたが滞在してもらう事となる一室です」

「ご苦労様です」

 

ブルーナイトはそう言って部屋に入る。

電子錠をかざして部屋に入ると、そこはベッドや浴室を完備した部屋だった。

ホテルの中では最も低いグレードなので、部屋が狭い上に窓の外も狙撃ができない様にシェードが下ろされていた。

 

「…」

 

何も荷物を持ってきていない彼だったが、生活に必要な物はすでに用意されていた。

会場の設置を第三者に依頼をしたが、その結果に大量の軍警が治安維持と暗殺防止の為に派遣されていた。

 

「ふぅ…」

 

ジャケットを脱ぎ、ハンガーにかけると彼は外にいる治安官に聞いた。

 

「失礼、外に電話をしてもいいかね?」

 

聞くと、扉の前で控えていた治安官は答える。

 

「ブルーナイト様、外部への通話は内線であれば可能です」

 

つまりサイボーグの通信は使うなと言う事だった。防諜のためでもあるのだろう。

なにせ自分が過去に行った行為に対し、企業連合の筆頭は極めて怒り心頭なのだから。

 

「ありがとう」

 

そう言って部屋に戻ったブルーナイトは内線電話で交換手が出た。

 

『ブルーナイト様、ご用件は?』

「あぁ、ーーーーに電話を繋いでくれ」

『畏まりました』

 

交換手は頷くと、電話で少しの間音楽が流れた後にアンジョラの声が聞こえてきた。

 

『もしもし?』

「あぁ、アンジョラか」

『あら、どうしたの?』

 

保護観察対象者に指定されてからは一度も連絡すらできなかったので彼は久しぶりに彼女に連絡を入れていた。

 

「あぁ、今ホテルに着いたからその事を言おうと思ってな」

『あら、珍しくマメな連絡ね』

「言うなよ」

 

そう言いながら部屋のテレビを付けると、そこではカレル島の別荘地の映像と共に記者がニュースを伝えていた。

 

『一週間後に開催されますこの国際会議に出席するため、世界中から傭兵団幹部が召集されつつあります』

『えー、現在会議が行われますホテル・イーピヨルス周辺は軍警察による厳戒態勢が敷かれており…』

『今回の会議の発起人となったブルーナイト氏は…』

『赤砂傭兵団の突然の方針転換には何か裏があるのではないかと…』

 

各報道機関はそんな報道合戦をしながら状況を読み上げていると、彼はベッドに座ってアンジョラと電話をしていた。




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