TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#128

「接岸用意!」

「宜候!」

 

艦橋で船長と船員が確認をし合いながら甲板では船員が走り回る。

穏やかな海を超えた先に見える巨大な影を前に船はゆっくりと接岸準備に入る。

 

『こちらアクアブルー港湾管理局。接岸を許可する』

「了解」

 

船はそのまま巨大な柱の足元に建造された岸壁に接岸すると、甲板からもやい縄が投げられた。

そして接岸するとタグボートが接近して船体を後ろに押し込むと、そこで可動式の鉄道桟橋に接岸する。

 

接岸した後、迫り出してきた可動式鉄道桟橋は船の車両貨物室と連結されると、入換用の08型機関車がロッドを動かしながら中に仕舞われていたアクアブルー行きの貨車を降ろす。

二階建ての車両区画は上にアクアブルー行き、下にハンベルク行きを載せる事で効率化しており、ここからもハンベルク行きの車両を載せていた。

六本の線路に積載されていた列車は次々と入換機関車によってアクアブルーの線路に引き込まれて行く。

 

「結構揺れるのね〜」

 

その間、先に船舶を降りたスフェーンは列車を下ろす毎にバラストの注排水を行っている船舶を見ながら呟く。

 

『スフェーン、そろそろ向かった方が宜しいかと』

「おけ」

 

頷くと、スフェーンは水上都市の岸壁から都市に入る為の金属ゲートを見る。

 

「うおっ」

 

そのゲートでは厳格に荷物検査なども行われていた。

 

「事前情報の通りやな…」

 

そう言って軽く苦笑するスフェーンは列に並ぶ。

 

アクアブルーはノーチラス海の大陸棚の上に浮かぶ洋上都市の一つ。

海底深くまで突き刺された巨大な円筒によって支えられた人工の大地の上で約六万の人々が暮らしている。

 

『アクアブルーは都市内に娯楽施設やレジャー施設を備えた年で、主な名産品は真珠の養殖と海産物です』

「だろうね、こんな海の上じゃそれぐらいしか出来ないでしょうよ」

 

スフェーンは全ての武器を船内に置いて来ており、都市規則に従って煙草の利用申請書も事前に準備していた。

 

『そんなに煙草が吸いたいのですか?』

「そりゃあね、煙草は半分生き甲斐よね」

 

アクアブルーでは吸い殻のポイ捨ては捕縛対象である。

大災害以前より存在するこの都市は景観と清潔さを重視しており、最も都市規則が厳しいと言われている場所の一つである。

 

安全の為、銃火器などの武器と判別させられる物の持ち込みは一切禁止。港からの出入り口でこの様に厳しい検査を受けていた。

基本的に爆発物はどの都市でも持ち込み禁止であるので、初めから外している。

 

「すげぇな、サイボーグの中まで見るのか…」

 

そう言い、武器が持ち込まれていないかをサイボーグのカバーを取らせて確認している様を見ながらスフェーンは持ち込んだ荷物をレーンに置く。

まるで出港前の乗船を彷彿とさせるが、ソレとは違って銃火器の持ち込みが禁止だった。

 

「煙草の申請書です」

「分かりました」

 

煙草の利用申請書を受付で提出すると、受付の猫の獣人が少々訝しむ目を向けながらも仕事通りに申請書を確認して彼女に携帯灰皿を手渡す。

金属製の小さな灰皿を受け取り、そのままスフェーンは街に入った。

 

「おぉ〜」

 

そこはガラスや白を基調とした緑もあしらわれたとても透明感溢れる都市だった。

 

アクアブルーは環境面でも規制が行われており、自動車は貨物とタクシー事業を除いてほぼ全ての自家用車の所有が禁じられている。

理由は水上都市のため、都市のエーテル補給に制約が掛かる為。エーテル資源は全て発電に回されており、電気の力でしか動かせない電車や電気自動車が主に走っていた。

なので停留所にはモ510形電車が二両編成で停車しており、アクアブルーでは常に市電や近郊電車が走り回っていた。

 

『鉄道連絡船乗船者にはアクアブルーの契約されたホテルへの宿泊券が付いています』

「まずは其処に行きますか…」

 

鉄道連絡船の停泊期間は五日、その間半強制的に船を追い出される乗船客達はアクアブルーの中に鉄路郵船が契約するホテルへの宿泊が自動的に行われている。

乗客は航行中は貨物室への立ち入りが一切禁止されており、スフェーンもハンベルクに到着するまで一切列車に近づくことはできない。

そしてアクアブルーはエーテル機関を搭載した乗り物の持ち込みは禁止であるため、泣く泣くスフェーンはバイクを列車に置いて来ていた。

 

路面電車に乗り込み、スフェーンは『海が見える街』を流す。

 

『状況的には海の上にある街ですね』

「実際めちゃ見えるじゃん。海」

 

そう言いながらスフェーンは街の外周道路を走る市電の窓から見える景色を見る。

走っている車は見えている範囲ではほとんどタクシー業車の物で、反対の路線にはコンテナを積んだカーゴトラムが走っていた。

 

ウーッ!

 

その中、この都市唯一の武装機関である軍警のパトカーが赤色灯を灯らせて走って行く。

 

「…」

 

そのパトカーはエーテル機関を搭載した数少ない車両であり、軍警が全て保有していた。

 

『軍警は相変わらずですね』

「そりゃあね、世界最大の武装組織ですからね」

 

何せ軍警の顧客は都市だ。一般の顧客相手の要請はほぼ相手にしない。

 

「アタシら一般人には関係のない話だね〜」

 

スフェーンは言うと、ルシエルも納得した上で停留所に停車した所で途中下車をした。

 

停留所は都市外縁の公園。ホームレスや浮浪者が屯する場所もあるが、この場所は清潔感が保たれていた。

 

「さてと…」

 

そこで彼女は電動自転車を借りると、バイクのヘルメットを被ってそのまま公園内の通路を漕ぎ出す。

水上の爽やかな潮風と太陽の陽の光を浴びて序でに植えられた木々に住むリスや野猫などの小動物を見る。

 

「うほー、良い景色〜」

 

スフェーンは海沿いの公園から一望出来る大海原を眺める。

 

『アクアブルーは海流もない穏やかな大陸棚の上に建造された水上都市…大災害の以前の開拓後期から存在する水の上の都市ですね』

「ここにある海中庭園にも行ってみたいと思っているんだよね〜」

 

自転車を止め、そこで海を一望する彼女はルシエルに再び託す。

 

『ほら』

「…風は感じていますよ。スフェーン」

『筋トレ筋トレ、体動かして体力つけましょうや』

 

彼女はそう言うと、ルシエルは言う。

 

「この体は臨界エーテルによって新たにゼロから構成された肉体です。十分なエーテルがあれば簡単に改造出来ますよ」

『君は筋トレで成熟する肉体の方が美しいとは思わんのか…』

「さぁ、私はそうは思いませんね。元々この姿で肉体は固定されているので筋トレした所で体力は増えませんよ」

『マジレスすんなよ…途端に悲しくなるじゃん』

「でしたら、長い時間かけてこの肉体の解明をした方がよっぽどタメになりますよ」

 

呆れたように返すスフェーンにルシエルはそう答えると、彼女は電動バイクを再び漕ぎ始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ホテル・イーピヨルスはカレル島に存在する唯一のリゾートホテルである。

ここに招待された傭兵団は戦場でその名を轟かせている有力な傭兵団であり、その団長達が一斉に集っていた。

 

「最近の赤砂をどう思う?」

 

そう聞く屈強な体に左目に巨大な傷跡を残す男が反対に座る女に聞く。

 

「さぁ?私に聞かれても」

 

そう言って女は滅多に飲む事のない高級シャンパンを傾ける。

 

彼らはヒューゴー大陸を活動圏に置く傭兵団であるドラゴニカ騎士団とパラティス傭兵集団の団長であるフンメル・アラドとラフリー・ルクレールであった。

時には味方、時には敵として真っ当な傭兵家業を行いながら部下を取り仕切っている二人も招待を受けていた。

 

「所詮は海の向こうの話よ。私達に直接関係してくる話じゃないわ」

「しかし、今回の会議の発起人はあの赤砂の代理人だ」

 

赤砂傭兵団が企業連合を離脱した直後に行うと宣言した会議。世界中から招集された人数は千に近い人数が招集された。

 

「一千人で会議なんてできると思う?」

「故に代表者会議となるだろう。あとは顔合わせと言った所だろうな」

 

ラフリーの意見にフンメルも賛同しながら軽く頷く。

 

「恐らく、今夜のパーティーで代表者を選抜するつもりなのだろう」

 

そう言い彼は懐から招待状に書かれていた予定表の一つに立食パーティーが含まれていた。

 

「ずいぶん金を掛けている事で…」

 

そう言いながらラフリーはその予定表を見る。

 

「まるで今まで貯めた資産を使い切る様な勢いだ」

 

フンメルは言うと、そのパーティーに記された注意事項も読んでいた。

 

 

 

その時、ブルーナイトは一人でホテルの庭園を歩いていた。

剪定された草木や流れている人工の川を眺めながら敷き詰められた砂利を踏みつけて歩く。

そこでは等間隔に銃を持った治安官が待機しており、庭園ですらも緊張した雰囲気があった。

 

「…」

 

空を見上げると、其処では陽の光が差し込む落ち着いた空間が広がっており。木々の呼吸によって出来た程よく涼しい空間がその場所にはあった。

赤い和傘が立てられ、その下に長椅子が置かれていたその場所に彼は徐に座るとゆっくりと目を閉じた。

 

そして耳にするのは鳥の囀り。

風によって木の葉が擦れる音。

水路を流れる水の音。

 

自然の音を心身に感じ、ホテルの庭園にある森の中で彼は一人森林浴をしていると、

 

「珍しい先客がいる様で」

 

其処に一人の人が現れる。

桜色の着物に白い帯を纏うその女性はそのままブルーナイトの隣に背中合わせになるように座った。

 

「…ここで出会う事になるとは。卜者」

 

桜花武士団を取り仕切るサクラ・ハマダに彼は言うと、元傭兵の彼女は少し笑った。

彼女の行う卜占はよく当たると言われており。実際、多くの夢見る起業家や投資家が彼女に金を積んで依頼していた。

 

「いえ、ここで出会えたのは必然とも言えるでしょう」

「…」

 

彼女の情報はよく出ていない。理由は彼女の卜占が当たる理由を解明しようとする者達から自分を守る為だ。

 

「今日、未の刻。ここで貴方と出会うと」

「そうか…」

 

彼女の占いがなぜ当たるのか、真相は分からない…まるでレッドサンの様に掴めない人物だった。

 

「流石だな。卜者」

 

彼は彼女のあだ名を言って水路に流れる水を見る。

太陽の光を吸収するように反射して流れる水を映すその様にブルーナイトは一言。

 

「何の用事だ?」

 

彼はサクラに聞くと、彼女は薄く微笑んだ後に聞き返す。

 

「いえ、何故企業の力を借りて組織を急拡大した貴方がいきなりこのような事を始めたのか…」

「…」

「この際ですし、お互い腹を割って話してみるのはどうかと…」

「卜者の秘密でも明かしてくれるのか?」

 

彼は聞くと、彼女は言う。

 

「貴方に話す勇気があれば」




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