TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#13

この世の中には料理を行う上での調理法は主に七種類ある。

焼く・煮る・揚げる・炒める・和える・蒸す・茹でるの七種類である。

この世の中に存在する料理法の全てはこれでできると言っても過言ではない。

これ以上の調理法は調理術に分類される専門色が一気に濃くなる分野になるので今回は省こう。

 

 

 

そして今回、スフェーンはある問題を抱えていた。

 

「さて、どうしようか」

 

飯に困った。

端的に言ってしまうならそうなのだが、もっと詳しく言うなら……

 

「いい加減、缶詰飯以外で何か食べた方がいいよなぁ」

 

そう言いながら彼女は列車の荷物室に詰め込んだ缶詰を見ながらつぶやく。

今までずっと意識してこなかったが、列車での移動中。自分は毎日缶詰の料理を三食食べていた。ほぼ毎日、しかもたまにめんどくさくなって食べなくなることもあった。

 

傭兵時代はさらにまずいレーションばかりの生活だったので慣れきっているものだと思っていたが……。

 

カール・ポートや今まで巡った街々で食べてきたそれぞれの名物料理を食べて知ってしまったのだ。

温かい料理ほど美味いものはないと言う事に。

 

『私も、スフェーンの今の食生活には少し不安感を覚えます』

「正直、料理なんてまともにしたことがなかったからなぁ」

 

スフェーンが料理の楽しさに目覚めたことに喜びを感じつつも、終わってる今の食生活の解決策をルシエルは考える。

取り敢えず転がっている空き缶やカップ麺の残顔を回収しながらスフェーンは呟く。悲しい事に、この列車にはまともな調理器具なんて存在せず。せいぜいガスコンロしか置いていないのだ。

 

「調味料すらないのがな……」

 

キッチンもなければ調味料、生きていく上で必要な塩すらこの列車にはない。代わりにあるのは買い溜めした缶詰とインスタント食品。

 

「こりゃ、緊急で簡易キッチンを買った方が良いか?」

『オススメの簡易キッチンを検索しますか?』

「待て、その前に置く場所を決めよう」

 

そう言い、スフェーンは今いるオートマトン格納庫と運転席を繋いでいるこの空間を見る。

 

「改めて見ると殺風景すぎるな」

『列車を持ち出した時から変わったのは、格納庫の部分だけでしょうか?』

 

実際、収められているDB-99はシフォーフェンで購入した第三世代型軍用オートマトンのコンテナセットだ。

その前の第一世代のお古機体のコンテナセットは、今はスクラップ工場行きだろうか?あるいは物好きなコレクターの私物か。不明な部分ではあるが、今は興味なかった。

 

『調整用の小部屋と格納庫は壁がないようなものですが……』

「正直、色々とゴチャゴチャしているのよね」

 

地面に転がっている25mmのケースレス弾薬や分解作業中の自動小銃。

修理部品やこの前貰ったデイビー・クロケットⅡの為の制作途中の設備。

背中から搭乗するタイプのナンブ製オートマトンは仰向けに機体が固定されており。バックパックの整備もしやすかった。

結局、顔を隠す云々の話はパァになったが、それ以上の対価があったから良しとしていた。

 

『まずは格納庫の整理からしてはいかがでしょう?』

「整理するったってどうするよ?整理整頓する棚すらないぞ?」

『……』

 

思わずルシエルもこれには絶句していた。まぁ、勢いでここまで来ているから当たり前っちゃあ当たり前なのだが……。

 

『…次の駅で何か棚とかを買いましょう』

「いや、それより作ったほうが早くないか?」

 

床に置いていた工具を工具箱に仕舞いながらスフェーンは考える。

現在、運輸ギルドの公募で受けた仕事をこなして居るスフェーン。カール・ポートで受けた企業からの指名依頼でかなりの額を貰ったスフェーンの懐に温もりが戻った。

今回の依頼は時間的に余裕があるので途中の駅での寄り道も考えていると、ルシエルが言った。

 

『確かに、資材だけを購入して製作をするのは良いかも知れません』

「幸い、金属加工の知識はある訳だしな」

『現にデイビー・クロケットⅡの設備を開発していますしね』

 

変態研究者から実験の報酬として受け取った新たな武器、システムを調整したことで列車に搭載しても発射が可能なのでルシエルでも操作出来るのだ。

30mmガトリングが四門しか武装がない今の状況では過剰なまでに強力な武器だった。

 

「何と言うか……あれだな」

『?』

「序盤に最強格の武器を持つと『もう全部これでいいんじゃね?』って思っちまうな」

『それは……まぁ、否定する事はしませんが』

 

ルシエルもこれにはなんとも言えない様子で答えると、ルシエルが何かに気づいた。

 

『不明な反応を確認。数一、減速しますか?』

「一?野盗にしちゃあ少なすぎる」

 

今走って居るのは砂漠地帯、太陽が照り付ける砂と岩の大地が延々と広がる大地だった。そんな所に反応が一つだけと言うのも不思議な話だ。

 

『如何しますか?』

「映像で見てから判断する」

『分かりました。スフェーンに映像を回します』

 

そしてそこに映った砂漠の景色、その中にポツンと映る小さな黒い影。

 

「?」

 

その影はゆっくりと移動しており、スフェーンは少し気になった。

 

「ルシエル、止めてくれる?」

『分かりました』

 

スフェーンの指示でルシエルは列車の速度を落とすと、段々とその影の正体が分かった。

 

「ラクダだ」

『ラクダですね』

 

そこには四本足で歩く本物のラクダが一人の人物に縄で引かれて歩く姿があった。

緑の大半が失われ、本物の動物が生きて居るのが珍しい今のこの世界。一部の地域ではまだそう言う牧畜が発展して居る場所があると言うが。大半は工場で生産された機械動物が主体だ。

 

「すげっ、この砂漠を歩いて居るのか?」

『さぁ、一見しただけでは判断しかねますが……』

 

予想外の出会いにどう対応した物かと思っていると、そのラクダを引き連れた人はスフェーンに近づくと被っていたフードの裾を軽く触れながら聞いてきた。

 

「失礼、何方でしょうか?」

 

 

 

 

 

その人物はラーマヤと言う名の青年だった。

 

「初めまして、スフェーン。私はしがない行商人をしているラーマヤと言います」

 

独特な柄の服と装飾品を身に付けているラーマヤは挨拶をするとスフェーンは足を折って休憩しているラクダを見ながらラーマヤに聞いた。

 

「行商人?何か売っているの?」

「ええ、スフェーンは何を?」

「私はただの運び屋」

「ほほう、運び屋ですか……私と似ているのかな?」

 

行商人と運び屋と言う似ている職の二人にラーマヤは興味深そうにする。しかしスフェーンはそれよりもラクダの積んでいる荷物の方が気になっていた。

 

「ねぇ、どんなもの売っているの?」

「おや、私の品に興味がおありですか」

「ええ」

 

スフェーンが頷くとラーマヤはラクダに括り付けていた荷物を解くと中身を見せた。

 

「何これ?」

 

袋の中に入っていたのは何やら乾燥した茶色い丸い物体だった。

 

「デーツと言うナツメヤシの植物の実を乾燥させた食べ物です」

「植物……?」

「ええ、私の故郷ではまだ生きている植物が残っているのです」

「へぇ〜、凄いわね」

 

大災害の時、空に上がったエーテルが降り注いだ事で地表の植物の大半は失われた。しかしラーマヤの故郷では本物のラクダが居るくらいには植物が残っているのだろう。彼らの主食は草だと聞いている。

 

「他にもナツメグ、セイヨウスモモ、ブドウ、ザクロなどのドライフルーツを扱っているんです」

「ドライフルーツ……」

 

知識の山とすり合わせを行なってそれが食べ物であるという認識を持つ。

 

「私は、故郷の街で作った乾き物をいろいろな街を巡って売っているんです」

「へぇ……」

 

どれも合成されたものではなく、天然の物。しかも乾燥もこの照りつく太陽を使っての自然乾燥、完全なオーガニックだ。

 

「お試しで一つどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 

ラーマヤから干し葡萄の実を一つもらって口に含むと砂糖とも違う程よい甘味と酸味、それから少々硬めの食感があった。

 

「おお、美味しいです」

「それは良かった」

「これ、どのくらいで売っているの?」

 

懐はあったかいので軽く値段を聞くと、ラーマヤは答えた。

 

「大体これくらいですね」

「え?」

 

そこで提示された金額にスフェーンは軽く驚いた。

 

「そんな安くていいの?」

「ええ」

「これ、二倍の値段でも充分売れるよ?てかそれくらいじゃないと詐欺って思われるよ」

 

思わずそんなふうに驚いてしまうくらいに安かった。

 

「私の故郷の欲をかいてはいけない。と言う習慣に倣った値段で売っているのです」

「でもそれで生活できるの?」

「ええ、街の皆で協力すれば満足に暮らしていけます」

 

ラーマヤはそう話すと、スフェーンは少しラーマヤの故郷の風習に興味が湧いた。

 

「街のみんなで?」

「ええ、私達は砂漠の中にあるオアシスの周りで生きています。生き残った植物に感謝をしながら、人々が協力する事で大災害の後も暮らしています」

「凄いわね」

「いえいえ、この砂漠には他に似たような街が多いです」

 

ラーマヤの話を聞き、スフェーンは幾つか彼からドライフルーツを購入する。

 

「取り敢えずブドウとデーツ、それからセイヨウスモモを一袋ずつ貰える?」

「分かりました」

 

乾き物は保存食としてよく使われる。缶詰よりはよっぽど健康的な食品なので買っておくことに損はないだろう。

 

「支払いは電子でいける?」

「ええ、勿論です」

 

共通電子通貨が使えたのでスフェーンはラーマヤの支払いに二倍ほどの値段で支払った。

 

「これは……」

「面白い話を聞いたから、ちょっとオマケ」

 

スフェーンは色を付けて支払いをすると、ラーマヤは驚きつつも感謝を込めてスフェーンにある事を伝えた。

 

「この先にあるルマリテと言う街に向かうと、より大きなドライフルーツ市場があります。私も良くそこで商品を卸しています。品質は保証します」

「ありがとう、ちょうどこれから行く先だったから行ってみる」

 

ラーマヤに返しながら購入したドライフルーツを列車に積み込むと、仮の食糧庫にそれらを放り込んだ。

 

『ドライフルーツは湿気の管理に充分注意してください』

「はいよ」

 

健康になる為の食材第一弾を仕入れたと心の中で満足すると、スフェーンは戻って列車の扉を閉める。

 

「じゃあ、またいつか会えたら」

「ええ、今日はありがとうございました」

 

ラクダを連れて街まで歩くラーマヤはこれから旅立つスフェーンを見送る。

エーテル機関が始動し、列車はゆっくりとジョイント音を奏でながら鉄路の上で速度を上げる。そして見送った後、ラーマヤもラクダを連れて砂漠を再び歩き始めていた。




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