TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#130

招待された傭兵や報道機関などは用意された島内のホテルやコテージで過ごしている。

 

「畜生…」

 

しかし世の中全てのものにヒエラルキーが存在しており、それは傭兵や報道機関も然りであった。

 

「結局俺達は呼ばれただけかよ」

 

そう愚痴を溢すのは今回呼ばれたとある小規模傭兵団の団長。

人数の少ない弱小傭兵団の一つであり、団長のみが招集された先ほどの立食パーティーに不満を溢していた。

 

「会議は代表者のみだと?くそっ…」

 

それは先ほどの立食パーティーで発表された会議の内容と、会議に出席できるメンバーであった。

 

「仕方ないだろ。お前も見ただろう、あの人数を」

 

そう言い同室になった別の傭兵団の団長が言う。

立食形式のパーティーには千人近い人数が参加しており、その中にはかつて戦場で争いあった同業者の姿もあり、一部では喧嘩が勃発しそうであったが、その瞬間に双方ともに軍警の重量級サイボーグ治安官に引き摺り出されており、その瞬間に全員の気が引き締まったのを思い返す。

 

「元よりある程度名が売れている傭兵でないと呼ばれていないんだ」

「呼ばれただけでもありがたく思えってか?」

 

軽く舌打ちを打ちながら彼は言う。

女性傭兵とは別棟に隔離されており、たとえそれが結婚したもの同士でも隔離されていたので容赦がなかった。

廊下の曲がり角や小道ごとに治安官が配備されており、厳重警戒が敷かれていた。

 

「女も居ねぇとはな」

「酒で補えよ」

 

そんな事を話していると、部屋の扉がノックされた。

二人はホテルのコテージを割り当てられており、同室には他に四名の招待された人がいた。

 

「誰だ?」

 

ノックした扉を開けながらその人物は言うと、部屋の前には一人の小汚い帽子を被った男が立っていた。

 

「貴方は傭兵ですか?」

「あ?」

「失礼、私はフリーの記者でして…」

「記者が何の用だ」

 

彼は聞くと、そのフリーの記者は一つのインスタントカメラを取り出しながら行ってくる。

 

「申し訳ありませんが、これで一枚会場内の写真を収めてくれませんか?できれば今回の発起人であるブルーナイトさんの姿を」

「は?なんで俺がそんなことを…」

 

するとその記者はその男に言う。

 

「報酬はお渡しします。どうでしょうか?」

「…金額にもよるぞ。俺はそうそう発起人に会えるような立場じゃねえからな」

「ええ勿論。撮影後に色をつけてお支払いいたしますよ」

 

記者は言うと、その傭兵も少し考える。

フリーの記者というのだから、おそらくこれで撮った写真を他の報道機関に高値で売りつけるのだろう。

こんな厳戒態勢で報道機関はガチガチに監視されている。とすると中の映像は小遣い稼ぎくらいには儲かるだろう。

この後、代表者と合流して意見交換をする際にブルーナイトが訪れる事になっている。その際に写真を撮ることができるだろう。

 

「…分かった。ただし弾ませろよ」

「勿論です」

 

その記者は大いに頷くと、男は渡されたインスタントカメラを持ったまま部屋に戻った。

 

「誰だ?」

「治安官だ、不審者に気をつけろってよ」

「そうか…」

 

部屋に置かれていたコニャックを注いで嗜んでいた一人が聞くと、彼はそうはぐらかしてコニャックを取って自分のグラスに入れる。

 

「忍び込んで映像を撮ろうとする記者がいるらしいからな。何人か捕まったそうだ」

「モラルがなってねぇな」

 

言うと、その男は言う。

 

「俺たちが言える立場かよ」

「はっ、ちげぇねぇ」

 

それに納得すると、他の傭兵達共に時間が来るまで各々時間を潰していた。

 

 

 

その後、代表者を決める会議に向かう招待客達。

会議の内容は傭兵支援組織創設の可否、並びに創設時の各傭兵団からの資産提供の割合や創設時に必要な施設の提供、ギルドに必要な規則の立案と言った多様な内容である。

それらは事前に渡された資料をもとに代表者会議で決められる。

 

赤砂は勿論、ドラゴニカや桜花と言った古参で巨大な傭兵団は勿論の事、五獣と言った新米だが規模の大きい傭兵団は既に代表者会議に参加が決まっており、事前に話し合いをしなければならないのは中小規模の傭兵団であった。

 

「…」

 

そんな中、インスタントカメラを渡されたその傭兵は遠目で案内と、軽い挨拶をするブルーナイトの姿を見た。

 

「いたいた…」

 

それを確認したその傭兵はカメラの電源を入れ、簡単にレンズを合わせて片手でカメラのシャッターを押した時。

 

ダンッ

 

「…は?」

 

シャッターを切った直後、カメラのレンズの奥から自分達がよく耳にする火薬の爆発する音が聞こえると、自分の前にいた数人の傭兵達が一斉に倒れた。

 

「ひっ…」

 

それを横で見ていた一人の女性傭兵が悲鳴を上げた。

 

「きゃああぁぁあっ!!」

「銃声だ!」

「逃げろ!!」

 

それを見てすぐさま男は両脇を取り押さえられた後に地面に叩きつけられた。

他の傭兵達も一斉に外に逃げ出し始め、その場は騒然となる。

 

「貴様っ!」

「捕縛しろ!」

「ぐあっ」

 

倒れる直前、ブルーナイトは控えていた治安官によって体全体を覆われながら近くの部屋に押し込まれる様を見ていた。

 

 

 

 

 

その後、一旦会議は中断され。会場にいた傭兵達はそのまま会議室に押し込まれたまま、治安官によって全員が荷物検査と武器の所持の確認を行っていた。

 

「男はフリーを名乗った記者から散弾銃入りのインスタントカメラを手渡されたそうです」

 

報告に来た治安官はロトと今回の警備責任者の大佐に報告する。

 

「…」

「その記者は多額の報酬を提示したと言う事です」

「被害は?」

「死者二名、負傷者五名。尚ブルーナイト氏本人に怪我はありません」

 

報告を終え、ロトと大佐は軽く息を吐いた。

 

「そうか…」

「ご苦労だった。引き続き、逮捕した容疑者の聴取と侵入した記者の特定にあたってくれ」

「はっ!」

 

敬礼をして治安官は指揮車を出ると、二人は少し顔をしかめた。

 

「まさか記者に紛れて仕掛けてくるとは…」

「再入場の際に金属ゲートとX線検査を行わなかったのが痛いですね…」

 

そう言いパーティーの後の一回目の談合で再入場する際に検査を行わなかった事を憂いていた。

 

「今後の警備体制の見直しを図る必要がありそうですね」

「既にマスコミは暗殺騒ぎで大騒動ですよ…」

 

そう言い複数の報道機関で緊急速報で流れている暗殺未遂事件を騒ぎ立てている様を見ながら言う。

 

「フリーの記者の接触となると…」

「報道機関を追い出しますか?」

 

大佐は聞くと、ロトは首を軽く横に振る。

 

「それをやると、おそらく非難が届くでしょう…」

「我儘ですな…」

 

大佐は思わず溢すと、ロトは軽く鼻で笑った。

 

「民衆はそんなものです。特に企業の注目も集まっている現状、下手に報道機関を追い出して会場を盲目にされては良い顔はしないでしょうね…」

「ですがどうしますか?これ以上の増援は厳しいものがありますぞ」

 

既に二個大隊が警備にあたっており、彼らの衣食住も考えると、これ以上の増員も限界があった。

 

「大佐、主要な報道機関…大手報道機関以外の人員に帰還命令を出してください」

「了解しました」

 

警備担当者はロトに頷くと、すぐに部下に指示を出す。

 

「我々も情報統制、並びに接触してきた人物の解析を行います」

「宜しく頼みます」

 

大佐は言うと、ロトは指揮通信車を降りると通信を繋げる。

 

『ライル、聞こえるか?』

『ああ、随分な騒動になったな』

 

ライルは状況を把握しており、ロトに言う。

 

『すまんがお前のところから人を借りたい』

『いいぞ、こちらも情報を転送する』

 

彼は言うと、ロトの視界に一つのデータが送られてきた。

 

『これは?』

『赤砂傭兵団離脱後のアイリーン上層部の動きだ…アイツら怖ぇくらい静かなもんだ』

 

ライルは言うと、ロトは驚いた。

 

『暗殺未遂があったのにか?』

『あぁ、この動き…他の企業連合傘下の仕業かもしれんな』

『…だとすると厄介だな』

 

一番怪しい企業の動向を警戒してロトも六課の面々のリソースをアイリーンに割いていた。それが今回は仇となっていた。

 

 

『アイリーンが傘下をけしかけた情報は?』

『悪いが、今の所それはねぇな。対象者の状況は?』

『今は緊急でホテル別棟に隔離中だ。中の傭兵達にはもう一度荷物検査と身体検査を行っている』

『信頼できる治安官か?』

 

ライルは聞くと、ロトは自身ありげに返す。

 

『見張っているのは俺の部下と、彼を一番怪しんでいる傭兵だぞ?』

『そうか…それなら安心だな』

 

どこに隔離したのかライルは一瞬で理解すると、ロトはそこで続ける。

 

『人員はいつ頃到着できる?』

『多分、四時間後には到着できる』

『じゃあ会議再開はその後だな…』

 

ロトはそう返すと、ライルとは通信を繋げたまま報道機関に帰還を促す伝達を行う准尉の階級章を下げるアンドロイド兵の肩を掴んだ。

 

「どうされましたか?准佐」

「伝達はどうなっている?」

 

聞くとその治安官は少し苦く答える。

 

「ダメですね、奴ら報道の自由を叫んで帰りません」

「こんな状況でか…」

 

フリーの記者が暗殺事件に関わっていると言う情報は同調圧力という形で今は封殺されていた。

最も、数十分後には正式発表がされるのでその後は向こうも動きづらくなるだろう。

 

「とりあえず、島内に居る確認が取れない記者は随時拘束を行っております」

「了解だ」

 

そう言いその治安官は報告を終えると、ロトは言う。

 

「帰らないようなら報道規則第四条を該当させても構わん。兎に角報道機関の数を減らしてくれ」

「了解しました!」

 

敬礼をして返すと、アンドロイド達は拡声器や規制線を用いた人海戦術で報道機関を蹴散らす。

 

「くそっ!」

「離しやがれっ!!」

「俺を誰だと思ってやがる!!」

「何すんのよっ!?」

 

その横では自称フリーの記者が全員、暗殺未遂事件の容疑者として拘束されながら装甲兵員輸送車に押し込まれていく。

拘束した傭兵の証言で、接触してきたフリーの記者の捜索を行なっているが、おそらくもう遅いだろう。

 

「(大体、傭兵のいるホテル棟に記者が入り込んだ時点で怪しめってんだよ)」

 

悪いが、簡単にインスタントカメラを受け取った傭兵にも非があると内心愚痴りながら、ロトは銃を持った治安官を撮影するカメラマンの獣人を見ていた。

 

『大佐、会議再開は四時間後に設定してください』

『了解しました。会場内の招待客にも連絡を行います』

 

了解するとすぐ様、警備隊全員に連絡が行き渡った。




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